イベント
[SPIEL’16]2016年のボードゲームの潮流は? 脱出ゲームの流行や,宗教改革500周年の影響が語られた,SPIEL'16プレスカンファレンスレポート
登壇したのは,SPIELを主催する出版社・Fridhelm Merzの共同経営者であるDominique Metzler(ドミニク・メッツラー)氏と,ドイツゲーム出版社協会会長のHermann Hutter(ヘルマン・フッター)氏。スピーチの内容は,共に現在のボードゲームの潮流について紹介するものとなった。
「Internationale Spieltage SPIEL’16」公式サイト(英語)
ボードゲーム界,2016年の潮流
冒頭で数分間のトレイラーから始まったプレスカンファレンスは,まず本年度のSPIELの概略を語る,Metzler氏のスピーチで幕を開けた。
先の記事でも紹介したとおり,SPIELはこのところ,規模を年々拡大する方向に進んでおり,出展ブースはついに4桁に突入したことを報告。この出展者の増加に伴い,今年の展示スペースは新たに3つのホールを加えた構成になっている。また今回は,モロッコ,コロンビア,アゼルバイジャンといった国からの初出展があったことで,参加国も50を数えるに至ったとのことである。
出展タイトルの傾向としては,いわゆる脱出ゲームが注目すべきジャンルとして話題にのぼった。脱出ゲームというと,リアル脱出ゲームのような,広い場所で行う参加型イベントを思い浮かべる人も少なくないだろうが,ここで言う脱出ゲームとはそれを卓上に落とし込んだものを指している。脱出ゲームの醍醐味であるチームワーク,創造性,課される試練の相関などを,小さなテーブル上で体験できるというのは,まったく斬新なアイデアだと言い,参加者の注目を集めるに違いないと語っていた。
またMetzler氏は,今回のSPIELのもう一つの傾向として,マルティン・ルターによる16世紀の宗教改革をテーマにした作品群を挙げた。来年2017年は,宗教改革500周年ということもあって,ドイツでは今後さまざまな催し物が予定されている。その流れが,ボードゲームにも現れているのだとか。
さらに初の試みとして,購入した大量のゲームを持ち帰らなくて済むよう,宅配便の受付所が会場内に設けられるほか,公式グッズの物販がスタート(いままでなかったのが驚きだが)するなど,サービスの面でも,今年のSPIELはさまざまな点で進化を遂げているとのことである。
ヨーロッパでボードゲームが支持される理由
Metzler氏に続いて登壇したHutter氏は,現在のボードゲーム界の潮流について,「作り手側」の視点から見解を述べた。
独創的な新作が毎年多数登場しているヨーロッパのボードゲーム業界だが,その根っこには,多くのタイトルがメインターゲットとしている子供達からの支持がある。ドイツを初めとしたヨーロッパ圏では,クリスマスや誕生日のプレゼントとしてボードゲームを贈る習慣があり,そうして育った子供達は,20〜30代になっても,ドイツ語で「ゲームの夕べ」と呼ばれる集まりで,さまざまなボードゲームを趣味として遊ぶのだそうだ。
こうした大人から子供まで幅広い年齢層の人々がボードゲームを必要とし,日々の生活の中に取り入れていることこそが,隆盛を極める現在のボードゲーム業界を支えている。
また氏はインターネットの存在も,ボードゲーム業界にとっては大きなチャンスを生み出していると語った。プレイヤーがボードゲームに関連した情報にアクセスしやすくなり,各国のクリエイター達もネットを通じて交流を図れるようになった。その中で作品の完成度を高められるというわけだ。流通の側面でも,インターネットが果たす役割は少なくないとのことである。
なお,このプレスカンファレンス後には,SPIEL'16の新作を集めた展示会が開催され,こちらも大勢のプレスやバイヤーで賑わっていた。この様子については,追ってレポートをお届けする予定なのでお楽しみに。
「Internationale Spieltage SPIEL’16」公式サイト(英語)
- この記事のURL: