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アナログゲームの祭典「ゲームマーケット2017春」レポート。「SAO ボードゲーム」やTCG「レギオンズ!」など人気タイトルは開場と同時に大行列
アナログゲームの祭典としてすっかり定着した本イベント。「春」のゲームマーケットは例年のゴールデンウィークの開催だったが今年は少し時期がずれて,GW明け一週間後の日曜日となった。
2016年12月に開催された「〜2016秋」は東7・8ホールで開催されたが,今回はさらに広い東1・2ホールで行われ,ブース数は40ほど増加して570ブースに。来場者数も前回比1000人アップの1万3000人だったが,通路はゆったりめに確保されていたため,ボードゲームを大量に購入して両手に大荷物を持っていても十分に歩きやすかった。
人気ゲームは開場と同時に行列! 会場の外まで列ができる“壁サークル”も
開場すると各自お目当てのブースへと向かっていくのはいつもの光景だが,今回はとくに目立ったゲームがいくつかあったので紹介しておこう。
まずは,企画・開発アークライト/発売・販売KADOKAWAの「ソードアート・オンライン ボードゲーム ソード・オブ・フェローズ」だ。「ラブレター」でおなじみカナイセイジ氏がゲームデザインを手がけ,2017年6月29日に発売するところを,会場では1か月半ほど先行発売されるということで早くから行列ができていたようだ。
たくさんのダイスを使って,1〜4人で遊ぶ協力ゲームで,ボードゲーム初心者でも遊びやすい内容となっている。筆者は開場30分後にアークライトブースに到着したが,ちょうど売り切れたタイミングだった。
「ソードアート・オンライン ボードゲーム ソード・オブ・フェローズ」公式サイト
もうひとつは「Heart of Crown〜ハートオブクラウン〜」(以下,ハトクラ)でお馴染み,FLIPFLOPsが満を持して放つ「レギオンズ!」だ。「ゲームマーケット2016秋」では試遊卓が用意されていただけだったが,今回ついにゲームマーケットでの先行発売が行われた。
ハトクラはデッキ構築型ゲームだったのに対し,「レギオンズ!」はトレーディングカードゲームということもあって,カードショップでの販売も行われるとのこと。スターターセットは2人ぶんのデッキが入っており,ブースターパックは1パック10枚封入。まずは全110種ということで,これからトレーディングカードゲームを始める人にも手頃なボリュームと言えそうだ。
「レギオンズ!」公式サイト
ホビージャパンがオリジナルゲーム開発を本格始動
ホビージャパンブースは新作先行販売やダメージ品の格安販売などがあって,いつもにぎわっているのだが,今回は「ホビージャパン ゲーム開発部」というブースを別途構えており,ホビージャパンが独自に開発したボードゲームを展示・販売していた。
というわけで,オリジナルゲーム開発に至った経緯をホビージャパン ゲーム事業部 部長の一戸健史氏に話を聞いた。
これまでスクウェア・エニックスと共同開発という形で「ファイナルファンタジー・トレーディングカードゲーム」や「チョコボのクリスタルハント」を展開していく中で,日本のボードゲーム市場の盛り上がりもあって「ボードゲーム開発チームを編成して,国内市場向けにオリジナルタイトルを作っていくことになった」そうだ。
ホビージャパンによるオリジナルタイトルとしては,2016年12月に発売された「たたらばと森」が最初となるが,これは手作りボードゲームチーム「たなごころ」がゲームマーケットで試遊展示したものをホビージャパンが製品化したという経緯で発売されたもの。今回出展した「ペアっと!」がホビージャパン完全オリジナルゲーム1作目となる。
「今後も半年に1本のペースで新作をリリースしていく予定です」とのことなので,これからの展開にも期待したい。
伝統ゲームコーナーに「クリベッジ」登場
イギリス生まれのトランプを使ったパブゲーム
伝統ゲームコーナーは,その名のとおり昔から伝わる伝統的なゲームを紹介・試遊できるコーナー。これまでも「ドミノ」「バックギャモン」「テキサス・ホールデム」「ごいた」といった王道なゲームが多く出展されている。有名なゲームだから名前は聞いたことあるけど遊んだことない……なんて人でも,ルールを教わって体験できるという貴重なコーナーだ。
今回,扱われていたタイトルはトランプの「クリベッジ」。17世紀ごろ,イギリスで産まれたゲームで,現在もイギリスのパブなどで広く遊ばれている。ゲームプレイ時はクリベッジボード(専用のスコアボード)を使うと雰囲気が出るのだが,これは必須ではないので紙に「正」の字を書いてスコアを記録してもいい。
ゲームは2人プレイで進行し,だいたい1ゲーム30分程度で決着が着く。プレイ中にスコアが加算され,先に121点以上獲得したほうが勝ちとなる。抜きつ抜かれつの接戦が続くため,最後までどっちが勝つかわからないのが「クリベッジ」の魅力だ。
今回,このゲームを伝統ゲームコーナーに推した日本ゲーム協会(JAGA)の諸隈 純氏によると,「日本ではまだまだ広まってないと思います。私がJAGAの例会でみんなに教えて広めているくらいですね」とのことで,日本のプレイヤー人口はそれほど多くなさそうだ。ボードゲーム業界全体が国内で注目されるようになって,少しずつではあるが「クリベッジ」のゲーム性に注目するファンも増えてきたという。
トランプとプレイヤー2人さえ揃えばいつでもどこでもプレイ可能であり,ルールもネット検索で調べることができる。手っ取り早く遊びたいと思ったら,「JAGAの例会に来てくだされば教えますし,プレイヤーもいます」とのことなので,興味がある人はJAGA公式サイトをチェックしてみてほしい。
5分でプレゼンテーションを行う「ライトニングトーク大会」
特設コーナーでは,12時から16時まで4時間にわたりライトニングトーク大会が行われていた。ライトニングトークとは,5分という短い時間でプレゼンテーションを行うもので,何人もの人が入れ替わり立ち替わりでプレゼンを行う。
気になる内容は,というと,「自分なりのカードゲームの作り方」「ボドゲ仲間をどう作る?」「初心者が楽しめるゲーム会とは」といった,日頃何となく疑問に思っているようなことをテーマに,ギュッと濃縮した形でプレゼンが行われた。基本的にはプレゼン5分,質疑応答5分といった形で進行した。
このライトニングトーク大会でいちばんギャラリーを集めていたのは,Antoine Bauza氏による「PLAYTESTING」(テストプレイについて)だった。「最低50回,できれば100回はテストプレイすべき」「テストプレイヤーに関して,最初は友人に,次は友人の友人に,最終的にはまったく知らない人たちに遊んでもらう」と,テストプレイの重要性を力説し,ルールブックに関してもできれば同様に多くの人に読んでもらうべきだとしていた。
そのほか,いくつか気になったライトニングトークをピックアップしておこう。
次回「ゲームマーケット2017秋」は12月2日(土)と3日(日)の2日間開催!
さて,次回の「ゲームマーケット2017秋」は,サークル数増加などさまざまな状況を鑑みて,12月2日(土)と3日(日)の2日間開催となった。サークルは申し込み時に土曜か日曜,もしくは両日を選ぶことになるが,基本的にはどちらかのみの参加サークルが多いと見込んで,今回の6割ほどのスペースとなる東7ホールでの開催となる。1日では難しかった大小いろいろなイベントを企画検討中ということなので楽しみにしたい。
また,今回のカタログでは「ゲームマーケット2018神戸は2018年2月予定」と書かれていたが,キャパシティを増やすために日程と場所が変更された。「ゲームマーケット2018神戸」は,「ゲームマーケット2018大阪」となり,2018年4月1日(日)にインテックス大阪で開催される。こちらも徐々に規模が大きくなっており,西日本でもボードゲーム熱が高まっていることがうかがえる。
以下,筆者が気になったブースをまとめて写真で紹介する。会場に足を運べなかった読者も,雰囲気を少しでも味わってもらえたらと思う。
【KITERETSU】スマホやブラウザなどで展開している「ズーキーパー」のKITERETSUが初出展。推理ゲーム「猫と死体と12人の容疑者」など新作2タイトルを販売 |
【グランディング】「街コロ」のデザイナー菅沼正夫氏の新作「東京ダンガン」と「ツンダール」を出展 |
【グループSNE/cosaic】「王への請願」リメイク作となる「ファラオの恩恵」。今回は特殊ダイスや特殊能力タイルが加わり,ゲームごとに違った戦略を楽しめる |
【戦闘破壊学園ダンゲロス】作家の架神恭介氏が自身の作品「戦闘破壊学園ダンゲロス」をクラウドファンディングでボードゲーム化 |
【ジーピー】タイル系ゲーム「コスタリカ」が日本語版で登場。このサイズのボードゲームなら4000〜5000円くらいしそうだが(現に輸入版はそのくらいの価格だった),この日本語版は2700円でリリース |
【すごろくや】試遊のみだったが,「キャプテンリノ スーパーバトル」が注目を集めていた。タワーが大きくなり,ヒーローの数も増えた正統派続編。今秋発売予定 |
【DOMINA】探索で土地を広げていくカードゲーム「Argoat」。DOMINAのゲームは相変わらずの人気で,午後早々には当日分が完売していた |
【New Games Order】テンデイズゲームズとNew Games Order共催の第2回東京ドイツゲーム賞査員特別賞「六次化農村」と最終候補作品「ハツデン」を発売。セットで購入していく人が多かった。 |
【ITTEN】「TOKYO HIGHWAY」の第2版は開場早々に完売。今後はイベント販売だけでなく,ボードゲームショップでの販売も検討中だという |
【EJIN研究所】「ハコオンナ」第3版は,箱が大きくなりカードはエンボス加工,マップボードが厚めになり,より豪華な仕様になった。店頭販売も増え,入手しやすくなりそうだ |
【Okazu Brand】重ゲー第3弾「エンペラーズ・チョイス」はプレイ時間120分級。家臣となって始皇帝の政策を操作し,富と人材を集めて名声を得るゲーム |
【カワサキファクトリー】ルールが変っていくという斬新なルールの「ルールの達人」。早くから話題となり,3時間で600個が完売した |
【しのうじょう】麻雀のルールを題材にしたカードゲームを作り続けている「しのうじょう」から新作「ジャンドイッチ」が登場。麻雀とサンドイッチをモチーフにしている |
【スパ帝国】「ナショナルエコノミー・メセナ」は基本システムは前作のまま,より深みのあるプレイ感覚になった。拡張ではなく,単品で遊べる続編的な位置付け |
「ゲームマーケット」公式サイト
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