インタビュー
[gamescom]ヨーロッパ最大のゲームイベントに成長したgamescomを第1回から支えてきたディレクターにインタビュー
gamescomは,ドイツの商都にある大型施設“ケルンメッセ”で2009年以来続けられている,ヨーロッパ最大のゲームイベントだ。年末にリリースされる作品を中心に,一般入場客がプレイできる試遊台が並べられた巨大なスペ―スが連なり,毎年30万人をゆうに超えるゲーマー達が集まる。会場がどれくらい大きいかというと,11個のホールが連なったフロアスペースは,ホールの先が霞んでよく見えないほどだ。
このケルンメッセというイベント会場とそれを運営する同名企業については,「Access Accepted第547回:「gamescom 2017」が開催されるドイツのゲーム市場をおさらい」で紹介しているのでチェックしてみてほしい。
4Gamer:
本日はよろしくお願いします。まずは自己紹介をお願いします。
Tim Endres氏(以下,Endres氏):
ケルンメッセでgamescom 2017の企画や運営を担当する専任ディレクターのTim Endresです。入社して18年になるでしょうか。gamescomについては,第1回となる2009年からずっとディレクターを務めてきました。
4Gamer:
ずっとgamescomを陰から支えているわけですね。私も第1回目から参加しているので,お会いできて嬉しいです。
Endres氏:
毎回参加していただいているのですか! それはありがたいことです。
今年も会場でさまざまな業界関係者にお会いしており,すでに2018年度の企画も始めています。
4Gamer:
2009年から比べると,gamescomの規模はずいぶんと大きくなりましたよね。
Endres氏:
ええ。2009年の出展メーカーは35か国から480社でした。展示スペースとして利用した総床面積は12万平方メートルほどです。それが2017年になると,54か国から910社,総床面積は20.1万平方メートルまでに増えています。展示メーカー数でいうと8年間で90%以上,展示スペースは70%の増加ということになりますね。入場者数を見れば,2009年度は24万人だったのに対して,昨年は34.5万人ですから約40%の上昇を記録しています。イベントとしての成長は甚だしいもので,我々は非常に満足しています。
4Gamer:
確かに当初は,今ほどホール全体を使っていなかった覚えがあります。
Endres氏:
ええ。Hall 6からHall 9の4つの展示スペースのほか,Hall 4とHall 5をビジネスエリアとして利用していました。今年はHall 1から11までをすべて使っています。
4Gamer:
イベント会場のキャパシティとしては,もう限界に近付いているということでしょうか?
Endres氏:
いえ,gamescomで利用している屋内の総展示スペースは20.1万平方メートルですが,ケルンメッセ全体の屋内総展示スペースは,28.4万平方メートルありますし,現在ビーチバレーなどのエンターテイメントエリアとして利用している屋外のスペースもありますので,まだ参加者や展示企業のニーズに合わせて成長していけると考えています。
4Gamer:
現在は,ケルンメッセの正門である,駅に近い南口部分で大きな工事が行われていますね。
Endres氏:
あれは土地開発企業が「MesseCity Koln」というオフィス群を建設しているのです。協議の結果,駅から正門に直線で続く,十分な広さのある通路を綺麗に整備していただけますし,通路沿いにはショッピングやレストランのあるスペースも確保される予定になっていますので,我々ケルンメッセやgamescomを始めとするイベント来場者の皆さんにも大きな恩恵があるでしょうね。
4Gamer:
拡大が続くケルンメッセの内外ですが,まさにビーチバレーからe-Sports,即売会やコスプレ大会に至るまで, “遊び”について非常に盛りだくさんにフィーチャーしているという印象を受けます。
Endres氏:
そうですね。我々は「360度全方向のイベント」と銘打っているのですが,今年のスローガンである「The Heart of Gaming」もそれをよく表していると思います。
e-Sportsに関しては,力を入れている部分です。とくに,ケルンを本拠にするe-Sports運営団体ESL(Electronic Sports League)は第1回から参加していただいており,徐々にフロア面積も大きくなっています。そのほか,Blizzard Entertainmentが主催しているゲーム大会などもあり,e-Sports文化の後押しもできているのではと考えています。今年はほかにも,「SPOBIS Gaming & Media 2017」というe-Sports専用の業界向けカンファレンスも6月21日に実施しました。
4Gamer:
今年は,オープニングセレモニーにアンゲラ・メルケル首相が参加されました。ゲームイベントに首相が参加するのは珍しいことではないでしょうか?
Endres氏:
そうですね。オープニングセレモニーに参加していただいただけでなく,ショーフロアの視察もなさってくださいました。我々の国が,ゲームを1つの産業として重視した結果なのでしょうが,このことはドイツ内外のゲーム産業にとっても,それからgamescomを運営してきた私のチームにとっても非常に光栄なことであり,感無量な思いです。
4Gamer:
メルケル首相は,オープニングセレモニーでどのようなお話をされたのでしょうか?
Endres氏:
ビデオゲームが文化の重要なアセットの1つとなり,経済活動や技術のイノベーションを引っ張っていく産業であることを認識していると話されていました。gamescomが世界最大のゲームイベントとして成長していることを理解されている様子で,e-SportsやVRテクノロジーを中心に視察されていたようです。
4Gamer:
ケルンメッセはケルン市や,ドイツのゲーム業界団体であるBIU(Bundesverband Interaktive Unterhaltungssoftware)とも連携しながら運営をしている様子ですが。
Endres氏:
BIUは,2009年の第1回の運営に満足してもらえて,それからは会合を重ねてさまざまな連携を図っています。また,今年はカナダと“パートナー国家”として公式提携し,お互いの友好を深めています。カナダは国家規模でゲーム産業を誘致した大きな成功例であり,我々も見習っていく部分は多いと思います。
それと,gamescomではヨーロッパの主要国を中心に“パビリオン”というブース施設をビジネスエリアに展開しており,アジア地域から南米まで38か国の政府機関が参加して,投資や企業誘致などの商談を行っています。今年は南アフリカやブラジルから初めて出展がありました。
4Gamer:
日本はパビリオンを持っていないようですが,日本のゲーム関連企業がgamescomに出展するメリットは,どのようなものだとEndresさんはお考えですか?
Endres氏:
ケルンという土地がヨーロッパの中央に位置しているため,gamescomには100か国以上もの国々から3万人ものビジネス参加者が来場します。そのため,商品の露出効果は非常に高いと言えます。しかもgamescomは,大きな企業も独立系の中小メーカーも出展し,PC,コンシューマ機,モバイルといったさまざまなプラットフォームから,e-Sports,VR,そして周辺機器やグッズ販売までも網羅した,全方向に対応できるゲームイベントです。それだけに,パブリッシャであれデベロッパであれ,新しいビジネスチャンスを開拓できる場所として受け入れられてもらえるのではないでしょうか。
4Gamer:
では,日本のゲーマーが一般来場者としてgamescomに参加する魅力はなんでしょう。
Endres氏:
さまざまな新作情報が得られるのはもちろんですし,gamescomの特徴である数多くの試遊台に触れられるのも大きなメリットですね。日本から参加するのは大変かとは思いますが,ケルンの街での観光を含めて,旅行として満足いただけるのではないでしょうか。
4Gamer:
2018年度はいよいよ10回目のイベントになりますが,最後に,その抱負をお願いします。
Endres氏:
今の段階で詳しくはお話しできませんが,きっと素晴らしいイベントにしますので,より多くの企業やゲーマーの皆さんに参加してもらえると嬉しいです。
4Gamer:
本日はありがとうございました。
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