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[SPIEL’17]世界最大規模のアナログゲーム見本市「SPIEL’17」,今年も規模を拡大してドイツ・エッセンにて開催
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印刷2017/10/26 15:30

イベント

[SPIEL’17]世界最大規模のアナログゲーム見本市「SPIEL’17」,今年も規模を拡大してドイツ・エッセンにて開催

 現地時間の2017年10月26日から29日までの4日間,ドイツ・エッセンにて,世界最大規模のボードゲーム見本市「Internationale Spieltage SPIEL’17」(以下,SPIEL’17)が開催される。

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 アナログゲームのイベントと言えば,日本ではゲームマーケットが有名だ。ゲームマーケットは,その規模が年を追うごとに拡大する傾向にあり,日本におけるボードゲームの盛り上がりをよく反映している。

 この盛り上がりは日本に限ったものではない。世界最大規模のボードゲーム見本市であるSPIELもまた,年々その規模が拡大の傾向にあるのだ。実際,SPIEL’17の出展者数は51か国から1100ブース(昨年は1021ブース)と増加し,これに伴い会場となるエッセンメッセも7万2000平方メートルを利用している(昨年は6万4000平方メートル)。
 8000平方メートルの増加と聞いてもピンと来ないところがあるが,日本で言えば国際展示場が1ホールあたり6750平方メートルなので,それ以上ということだ。当然ながら参加者数の増加も見込まれており,今年は17万5000人程度になるのではないかというのが,SPIEL側の予測だ。

設営中の会場
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SPIEL主催者の1人,Dominique Metzler氏
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アナログゲームのイノベーション賞「InnoSPIEL」の制定


 SPIEL’17における大きな特徴は,新しいアワードの制定ではないかと思われる。「InnoSPIEL」と名付けられたこのアワードは,最もイノベーティブなゲームデザインに対して,SPIELから与えられることになっている。

InnoSPIELの発表と表彰はプレスカンファレンスで行われた
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 この動きは非常に興味深い動向と言えるだろう。コンピュータゲームと比較しても,ユニークなゲームシステムを持つ作品が多いのがボードゲームだ。その一方で確かにワーカープレイスメント,エリアドミネーション,カードドラフト,トリックテイキングなど,「定番」と呼べるシステムもいくつか存在する。

 そんななか,SPIEL側が「イノベーティブなゲームデザイン」を表彰するということは,よりクリエイティブなゲームの創出に挑むクリエイター(あるいはパブリッシャ)を増やしていきたいという意図が見られる。
 同時に,ボードゲームシーン全体がその規模拡大に伴うマンネリ化と,過度の商業主義化への道を辿りかねないことに対する,ある種の危機感の現れと言えるかもしれない。

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 ちなみに,初のInnoSPIELには「Fabelsaft」「LYNGK」「Magic Maze」の3作品がノミネートされ,「Magic Maze」が受賞している。

 「Magic Maze」は協力型ゲームで,ファンタジー世界の住人達がショッピングモールから武器を盗んで脱出するという筋書きになっている。プレイヤーはカードに従ってキャラクターを移動させて目的を達していく。
 これだけなら実にありふれたゲームでしかないが,本作にはInnoSPIELにふさわしく,シンプルかつ独創的なシステムが採用されている。

初のInnoSPIELは「Magic Maze」が受賞
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 まず,プレイヤーは4種類のキャラクターのうち,どれを動かしてもいい。「緑色のコマはプレイヤーAが担当する」といったルールが存在しないのだ。
 続いて,各プレイヤーは非常に限られた役割しか果たせない。「北に1歩進む」「西に1歩進む」といった形でその役割が分担されているので,たとえ「この状況では緑色のコマが北に1歩進むべき」だと思っても,「北に1歩進む」担当がそれに気づかなければ(あるいは別のプランを持っていたら),緑色のコマは北に動いてくれない。

 また,「Magic Maze」においてはプレイヤー間の会話が禁止されている。このため,協力型ゲームにありがちな「1人のプレイヤーが指示を飛ばして場を支配する」問題も起こらない。
 そのうえで,完全にリアルタイムで進行するので,任意のプレイヤーが好きなタイミングでコマを動かせる。ただし,シナリオクリアまでの制限時間は設定されており,状況に応じて自分が打つべき手や可能性をしっかり考えないと,あっという間に時間切れになってしまう。なるほど,InnoSPIELを受賞するだけのことはある作品だ。

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 新しいゲームシステムをもっと発展させていこうという動きは,デベロッパ側にも強く見られる。
 昨年のSPIEL会場を席巻した,いわゆるリアル脱出ゲーム系の作品だが,今年はこのジャンルの新作が多数発表されるようだ。もちろん,この手のゲームは「イベントではとくに目立つ」という利点があり,まさにSPIELのような会場にはもってこいだが,新しい可能性を探る試みとしても前進を遂げている。

 とくに注目すべきは「Escape Room Virtual Reality」シリーズだろう。潜水艦や敵の前線から脱出を図るという状況設定もマニア心をくすぐるが,本作はプレイヤーがVRゴーグルを着用してプレイする。技術的なトライも行っているのだ。
 VRゴーグルをアナログゲームで活用するというのは,日本の「アニュビスの仮面」が先行例となり,VRコンテンツとしての脱出ゲームであれば,PCゲーム側での開発も行われている(関連記事)。それがアナログゲーム側でも開発されていることは大変に興味深い。

HMDとしてスマートフォンを利用する「Escape Room Virtual Reality」
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 また,SPIELを見本市としてではなく,「イベント」として利用する例も増えている。
 最も顕著な例は,SPIEL初となるクラシックコンサートだ。そのほかにも「さまざまな協力型ゲームがプレイできるコーナー」であったり,ゲームのトーナメント(「カルカソンヌ」の競技会が毎年開催されているが,今年は「Ice Cool」といったゲームも競技会を開催する)が,会場のあちこちで行われ,より“イベント”としての色彩も強まっている。

コスプレもちらほら
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急激に拡大するドイツのアナログゲームシーン


 さて,SPIELと言えばファンが選ぶ「ドイツゲーム賞」の授賞式が開催されることでも知られている。今年のラインナップは以下のとおり。「大鎌戦役」のようにとてもボリュームのあるゲームが4位に入っているあたり,「ゲーマーが選ぶ賞」の面目躍如といったところか。

順位 タイトル デザイナー メーカー
大賞 Terraforming Mars(邦題:テラフォーミング・マーズ) Jacob Fryxelius Schwerkraft-Verlag
2位 Great Western Trail(邦題:グレート ウエスタン トレイル) Alexander Pfister eggertspiele, Pegasus Spiele
3位 Ein Fest für Odin(邦題:オーディンの祝祭) Uwe Rosenberg Feuerland Spiele
4位 Scythe(邦題:大鎌戦役) Jamey Stegmaier Feuerland Spiele
5位 First Class Helmut Ohley Hans im Glück Verlags-GmbH
6位 King Domino(邦題:キングドミノ) Bruno Cathala Pegasus Spiele
6位 Räuber der Nordsee Shem Phillips Schwerkraft-Verlag
7位 Fabled Fruit(邦題:フルーツジュース) Friedemann Friese 2F-Spiele
8位 Captain Sonar Roberto Fraga, Yohan Lemonnier Pegasus Spiele
9位 Magic Maze Kasper Lapp Pegasus Spiele
10位 The Quest for El Dorado Reiner Knizia Ravensburger Spieleverlag GmbH

子供向け部門受賞作品
タイトル デザイナー メーカー
Ice Cool(邦題:アイスクール 日本語版) Brian Gomez AMIGO Spiel + Freizeit GmbH
※昨年まで存在した,優れたルールブック構成・記述に与えられる「金の羽賞」は発表されなかった。

Terraforming Mars
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Ice Cool
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 資料によると,2015年から2016年にかけて,ドイツではアナログゲームの市場規模が10%拡大したという。また若いボードゲーマーも増加しており,ドイツにおけるアナログゲームの定着と市場拡大は,今後も確実なトレンドになると見て間違いないだろう。SPIEL参加者の平均年齢が回を追うごとに若返っていることも,これが一過性のブームではないことを予感させる。
 こうした盛り上がりの中心的な存在となる巨大イベント「SPIEL」。その模様を今年も4Gamerでは随時現地からお届けしていく。アナログゲームファンはもちろん,ちょっと変わったゲームに飢えているPCゲーマーもぜひ注目してほしい。

 最後に,プレス向けの展示会に出ていたゲームから気になる作品をピックアップしてみた。こちらも合わせてご覧いただきたい。

ドイツの有名な小説家 セバスチャン・フィツェック氏が協力者とともに作ったスリラーゲーム「Sebastian Fitzek Safehouse」「アンドールの伝説」をデザインしたイラストレーター ミヒャエル・メンツェル氏といい,アナログゲームのデザイナーには天が二物を与えた人が散見される
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20年近い歴史を持つ,「ちょっと変わった日本」を舞台とした「Legend of Five Rings」が装いを新たに登場。いわゆるトンデモ日本な世界観だが,海外のクリエイターに与えた影響は小さくない。今なればこそ日本でもヒットしそうな予感がする
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美しいマップと凝ったトラックが印象的な「NORIA」
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FPS「SUPERHOT」がカードゲームに
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政治ゲーム「StateCraft」
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ギミックが楽しい「A tale of Pirates」
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理由は不明ながら,トイレをテーマにした新作が2つも(しかも立体を駆使した作品だ)
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「進撃の巨人」をベースにしたゲーム
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「カタンの開拓者たち」の「ゲーム・オブ・スローンズ」版。ご存じの人も多いと思うが,この手のバリエーションは意外にも完成度が高い
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モノを作るのって,それだけで楽しいですよね
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3Dプリンタで作られたUBOATを舞台にしたサバイバルCo-op。こんなの面白いに決まってるでしょう……
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