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アナログゲームの祭典「ゲームマーケット2017秋」をレポート。今年の大賞は「8ビットモックアップ」に
規模が大きくなるにつれ,会場スペースが広くなっていくのはよかったのだが,ここ数年は「1日ではまったく回りきれない!」という意見も目立ち,今回は少しスペースを狭くしつつ(2016秋は東7,8ホール開催だった),そのぶん2日開催として「ゆっくり見て回る」ことに重点を置いたようだ。
とくに企業ブースは,1日目の物販コーナーの混雑と比べて,2日目は比較的おだかや。むしろ2日目はじっくりと試遊する人が多かった。
参加者数は,主催者発表で1日目が1万人,2日目が8500人。2万人はいくかなと思っていたが,あと少しだったようだ。出展者数は,1日目がエリア出展9ブース,企業出展61ブース,一般398ブース。2日目がエリア出展9ブース,企業出展59ブース,一般332ブースとなる。
というわけで,過去最大規模となったゲームマーケット2017秋。今回はゲームマーケット大賞2017と,おもに企業ブース/大手ブースを中心にお届けしたい。
ゲームマーケット大賞2017は「8ビットモックアップ」に決定
2015年より,年に1回開催されているゲームマーケット大賞も,今年で3回目となる。2015年は「海底探険」(オインクゲームズ),2016年は「ビンジョー×コウジョー」(すまいる120円工房)と,いずれも個性的なタイトルが大賞を獲得した。
今回はゲームマーケット2016秋,ゲームマーケット2017神戸,ゲームマーケット2017春に初出したゲームが対象となる。一般からの新作評価アンケートと審査員による選定によって,ノミネートとなる優秀作が選出され,その中からゲームマーケット大賞が選ばれる。今回からキッズ賞(子ども向け),エキスパート賞(ゲーマー向け)も設けられ,注目を集めていたのだが,結果は以下のとおりとなった。
大賞
「8ビットモックアップ」(さとーふぁみりあ)
キッズ賞
「Kittys」(リトルフューチャー)
エキスパート賞
「エンデの建国者」(imagine games)
優秀賞
「イアルへの道 -Path to Yaaru-」(梟老堂)
「ボブジテン」(TUKAPON)
特別賞
「-KUFU-クフ」(るりるりゲームズ)
「8ビットモックアップ」は,タイルをうまく並べて国を作っていくパズル感覚のゲーム。全員が同じタイルを配置するのに,できあがる国はまったく違っているのが面白く,各自の思いが盤面に反映される。結果がどうであれ,ゲーム終了後の盤面がドット絵のように美しく,感想戦がとにかく盛り上がる。1プレイ15分程度でありながら濃密なゲーム体験で,リプレイ性も高いということで,今回大賞に選ばれた。
【受賞コメント】「8ビットモックアップ」アートワーク担当/長谷川登鯉氏
私は代理で来ておりまして……代表の佐藤敏樹さん本人がココにいないのが非常に残念です! 今ごろ飛行機に乗って北海道に帰っている最中だと思います。大賞,本当にありがとうございます。たくさんのゲームの中から選んでいただいて嬉しいです。私も佐藤さんもお酒は飲めないのですが,手伝って方々を誘って飲みに行きたいと思います!
「Kittys」は,ねこの縄張り争いを題材にしたバッティング形式のカードゲーム。可愛いイラストが特徴で,大人と子どもが一緒に遊べる点が評価され,キッズ賞となった。
【受賞コメント】リトルフューチャー/エミユウスケ氏
たくさんの子どもに遊んでもらいたいと思います。会社名がリトルフューチャーと言いまして,子どもの未来を作る,という意味を込めたこともあって,この賞は本当に嬉しいです。ホントは犬派なんですが,ネコにも感謝です
「エンデの建国者」は,「枯山水」の山田空太氏による最新作。リソースマネージメントで建物をグレードアップさせていく。アクションカードを使って建築,資源獲得などを行うのだが,このカードセットはプレイヤーの間をぐるぐる回っていくため,特定のアクションをやりたいときにそのカードを持っていない,なんてこともある。次にくるカードを踏まえて今やるべきアクションを考える……というあたりが非常に奥が深い。
【受賞コメント】imagine games/山田空太氏
正直,驚いています。本作は自分たちとしては実験作ということもあり,調整に時間がかかりました。もう在庫はない状態なのですが,これからルールとアートワークをブラッシュアップして再販に向けてがんばりたいと思います
授賞式後,「8ビットモックアップ」のアートワークを担当している長谷川登鯉氏に話を聞くことができた。長谷川氏は開発初期から携わっていたとのことだが,このゲームは最初の段階で完成形に限りなく近かったという。また長谷川氏は,「タイル枚数を減らしたらどうか,という話はしました。何度もやりたくなるゲームだったので,サクサク進むようにしてほしかったんです」と話しており,そこから実際にタイルを減らして現在の形になったという。
これで一段と面白くなり,「僕らが普通に何度も遊びたくなったので,これは売ってもいいんじゃない?」と提案して,2017年春に発売となったそうだ。最後に長谷川氏は,「佐藤さんは昔からたくさんゲームを作ってきた人なので,こうして結果が出たことが友だちとして本当に嬉しいです」と,機上の人となって北海道に向かっている最中の佐藤さんにお祝いのお言葉を贈っていた。
そのデザイナーである佐藤氏にも別途コンタクトをとってコメントをいただいたので,ここに掲載しよう。
ゲームマーケット大賞2017大賞受賞は,嬉しさとともにゲーム製作に関わってくださった多くの方への感謝の気持ちでいっぱいです。
タイルの各辺に図書館や製鉄所,武器工場などの施設を書き入れ,それらのタイルを配置することで様々な国力を高めていく,というタイル配置ゲームを2015年に作っていました。
それを簡略化して「8ビットモックアップ」の原型を創ったのが,2016年冬のことです。簡略化して組み合わせを数え上げたら30種類くらいに収まったので,これはいける!と思いました。
発売後の反響が大きくて嬉しかったのですが,製作数が少なくて本当に申し訳なかったです。製作資金面で,妻を説得するのが難しくて……。
今回のゲームマーケット2017秋タイミングで第2版を作りましたが,こちらも完売してしまいました。さらなる増産を考えていますので,しばらくお待ちください。
今後は,2018年春向けに街づくり系のカードゲームを考えてます。それ以外にも進行中のプロジェクトがいくつかありますので,リリースされたらぜひ手に取ってみてください。
次回ゲームマーケット2018春は再びゴールデンウィーク開催!
2018年のゲームマーケットについても触れておこう。まずトップバッターとなるのは,ゲームマーケット2018大阪だ。こちらは2018年4月1日にインテックス大阪1号館で開催され,関西最大規模となる。
そして東京のゲームマーケット2018春は,2018年5月5日と6日の2日間,ゴールデンウィークの真っ最中に行われる。会場は2016年春と同じ,東京ビッグサイトの西3,4ホール。今後,2日間開催がどのように定着していくのかも注目していきたい。
ということで最後に,筆者が個人的に気になったブースをまとめて写真で紹介しよう。今回は企業や大手ブースを中心にお届けする。
■アークライト
注目作は「MONSTER MAKER モンスターメーカー」。1988年に発売されたゲームのリメイクとなっており,2日間とも午前中で売り切れた。また,OKAZU brandが2014年にリリースした「漁火が,アークライトより再販されるということで,こちらも先行発売された。
そのほかの先行販売作品は「袋の中の猫 フィロー」「凶星のデストラップ 完全日本語版」「パスファインダー・アドベンチャー:ルーンロードの帰還 完全日本語版」など。また,試作品としてゲームマーケット大賞2016大賞作「ビンジョー×コウジョー」が展示されていた。発売は2018年1月予定だ。
■ホビージャパン
ゲームマーケット2016秋にHOY GAMESから出展された「老師敬服」。そのブラッシュアップ版が,ホビージャパンより発売される予定で,会場では試遊コーナーが設けられた。2018年初頭にKickstarterでクラウドファンディングを開始し,全世界に向けて展開する予定だという。
ゲーム内容は,老師となって自分の道場を大きくしていくというもの。SPIEL'17で評判だった「ノーリア」は,1日目早々に完売。そのほかの先行発売作品は「イスタンブール:ダイスゲーム」「コードネーム:デュエット」「インディアンサマー」など。
■アルジャーノンプロダクト
「進撃の人狼」は,大人気アニメ「進撃の巨人」を題材にした人狼ゲーム。人類陣営は,紛れ込んでいる知性巨人を駆逐,巨人陣営は毎晩ひとりずつ人類を殺害していく。
■オインクゲームズ
新作「トロイカ」を出展。「海底探険」など多くのタイトルを手がけている佐々木隼氏の最新作だ。ゲーム内容は,神経衰弱のように裏向きになったタイルをめくり獲得していくというもの。欧州のみで販売していたオインク版「モダンアート」も出展されていた。
■カナイ製作所
カナイセイジ氏の新作「ローレルクラウン」は,闘技場に出場させるダイスゲームだ。SPIEL'17にも出展し,日本ではこのゲームマーケット2017秋が初出しとなる。
■ギフトテンインダストリ
「アニュビスの仮面」など,VRボードゲームをリリースしていた同社が,今度はARゲームの「バケタージュ美術館」を発売。カード裏側のARマーカーをかざすと,スマホ画面に写っている自分の顔が変化するので,それと同じ表情のカードを探していく。
■グランディング
「街コロ」の作者・菅沼正夫氏の新作「赤の国 青の国」は,2人専用の対戦カードゲーム。すべての拠点を占拠するか,敵の王を倒せば勝利となる。
■クロノス
Alex Randolph氏の名作タイルゲーム「ドメモ」が,木製タイル版となって再販。以前はプラスチック製が販売されていたが絶版となり,現在一般店舗で売られているものは紙製である。
■ジーピー
人気海外ドラマ「ゲーム・オブ・スローンズ」の世界観で遊ぶ「ゲーム・オブ・スローンズ カタン」をリリース。ゲームマーケットでは先行して限定100個が発売された。
■ジャンクション
シリーズ第3弾となる「横暴編集長〜映画三昧〜」は,2枚のカードを組み合わせてタイトルを考案するゲーム。過去2作は本の名前だったが,今回は映画名を使っている。
■すごろくや
注目の新発売ゲームは,タイルプレイスメント「カルバ」のカード版「カルバ:カードゲーム」。オリジナル版とまた違ったプレイ感覚だという。そのほか,リリースされたばかりの「キャプテン・リノ:スーパーバトル」を試遊スペースで展開しており,大きな注目を集めていた。
■Smile
両日とも絶えず卓が埋まっていた「ネコSHOGIバトル」は,将棋に慣れ親しんでもらうために作られたカードバトルゲーム。特殊な能力のカードなどが使えるため,初心者でも逆転できる可能性がある。会場ではスペースを大きくとり,対戦会を開いていた。
■聖書コレクション
「バイブルハンター」で話題となった聖書コレクション(キリスト新聞社)だが,これまでは比較的手軽に遊べるゲームが多かった。今回の新作「ルターの宗教大改革」はかなりの重量級ゲーム。価格も6000円と高額だったにも関わらず,速攻で売り切れた。
■Tactical Games
タイルプレイスメントゲーム「スペースエディター」。パッケージやコンポーネントはかなり本格的な作りだが,ボードゲームの製作は今回が初だという。パッケージに「日本語版」とあるが,作ったのも販売しているのも日本人である。
■テンデイズゲームズ
会場先行で「セイミ・イン・ザ・スーパークレイジーワールド」と「ウーロン」を発売。「セイミ・イン・ザ・スーパークレイジーワールド」は2人用名作と名高いReiner Knizia氏の「二つの塔カードゲーム」をリメイクしたもの。発売したばかりの「ガイアプロジェクト」と「クイーンドミノ」も出展されていた。
■DOMINA GAMES
新作「Miraris」を出展。相変わらず幻想的なパッケージやカードデザインで,迷わずジャケ買いしてる人も多かった。
■ニューゲームズオーダー
長らく絶版で中古価格が高めだった「ババンク」は,2001年に発売されたギャンブルを題材とするブラフ系ゲーム。「パトロネージュ」は,第2回東京ボードゲーム賞 ニューゲームオーダー特別賞作品だ。
■BakaFire Party
デジタルゲーム化も決まっている「桜降る代に決闘を」は,シリーズの3つめの拡張「陰陽事変」を発売するも早々に完売していた。
■YAMATO GAMES
YAMATO GAMESは,ゲーマーが大好きなボードゲームメカニクス(ドラフトやデッキビルディング)を,初心者にも分かりやすくした作品が多い。新作の「アクアリウム・デザイナー」は,タイルプレイスメントを題材にしている。
■ワンドロー
カナイセイジ氏による2人用ゲーム「文絵のために」は,ループ型の物語をカードゲームで体験できるというもの。死ぬ運命にあるヒロインを救うべく,過去に戻ってその運命を変えていく。
ゲームマーケット 公式サイト
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