インタビュー
[インタビュー]大庭葉蔵は僕とちょっと似ている。主演の笹森裕貴さんに「桜花浪漫堂 朗読劇『人間失格』」への意気込みを聞いた
本公演が旗揚げとなる「桜花浪漫堂」は,“いまだ色褪せぬ営みを若き鼓動が呼び覚ます。”をキャッチコピーに,さまざまな「文学」作品を題材としたステージを展開していく新たなプロジェクトだ。第1弾の題材となる「人間失格」は,ご存じのとおり太宰 治氏の小説である。
本稿では,主人公の大庭葉蔵を演じる,笹森裕貴さんへのインタビューをお届けする。本作への意気込みはもちろん,大庭葉蔵の魅力をたっぷりとうかがった。撮り下ろしの写真にも注目だ。なお,記事後半ではプロジェクト発足の経緯を聞いた統括プロデューサー 塩原俊夫氏へのメールインタビューも掲載するので,最後までチェックしてもらいたい。
「桜花浪漫堂 朗読劇『人間失格』」公式サイト
演じることに運命を感じた大庭葉蔵。
彼の中に見た魅力とは……
4Gamer:
まずは,今回の朗読劇への出演が決まったときのお気持ちをお聞かせください。
笹森さん:
小説は結構読んでいるのですが,純文学に触れる機会がこれまであまりなくて,「人間失格」は今回の出演が決まってからあらためて読ませていただきました。もちろんタイトルは以前から知っていましたし,長く親しまれている不朽の名作に自分が主演として立つことになり,とてもうれしかったです。それと同時に,責任の重さもすごく感じました。
4Gamer:
「人間失格」に触れてみて,作品に対してどのような印象を持ちましたか。
笹森さん:
最初は「結構深いな」「ちょっと重い話だな」という印象でしたが,読み込んでいくと主人公の大庭葉蔵の心が揺れ動く日々の中にこそ,この作品の魅力が詰まっていると感じました。彼は精神面が少し不安定ではありますが,どこか魅力を感じさせる人物ですよね。
僕は,何か脆いもの,壊れやすいものを見たとき,人間は喜怒哀楽だけでは表せられないような複雑な感情になると思っています。葉蔵は,見ている部分が自分と合っているというか。弱々しいではないですけど,触れたら壊れてしまいそうなメンタルを持っているところとか。僕とちょっと似てるのかもしれないなと共感しました。
4Gamer:
今回,共演されるキャストの印象をお聞かせください。
笹森さん:
実はキャスト全員,一緒にお芝居をするのは初めてなので,役者としての印象はほぼゼロです。井澤(勇貴)さんは歌のイベントでお世話になったことがあります。佐奈(宏紀)さんは「ACTORS LEAGUE」(俳優たちによるエンターテインメント企画)でのバスケットの試合で一度お会いしました。平賀(勇成)くんに関しては同じ事務所の後輩なので,その関係で何度かお仕事をしたくらいで……。北村(健人)さんと伊藤(昌弘)さんに関しては,お会いしたことがなく“はじめまして”なんですよ。
この仕事をしていると,1人くらいは共演経験のある人がいることが多いんですけど,今回のようなケースは珍しいです。だからこそ,皆さんがどのようなアプローチでお芝居をされるのかが楽しみです。
4Gamer:
では,そんな今回の朗読劇のおすすめのポイントは何でしょうか。
笹森さん:
台本や稽古もこれからなのですが,映画化もされている「人間失格」を,今,朗読劇でお届けするという意味が,必ずあると思っています。この配役も,きっと選んでくれた方々が意味を持ってキャスティングしてくださったと信じていますし,僕がこの主人公を演じることも,きっとなにかの運命だと感じています。
まだどうなるのか分かりませんけど,役者各々がどうやってこの朗読劇を,作品に込められている言葉を届けるのか。今回の朗読劇はおそらく,全員のお芝居のアプローチがまったく異なるものになると思うので,ほかの作品などでの僕や,井澤さんたちのお芝居を見たことがある人は,これまでとは違う印象を受けるんじゃないかなと。そこはすごくおすすめのポイントというか,見どころの1つかなと思っています。
4Gamer:
ご自身が演じる大庭葉蔵の魅力を,教えていただけますでしょうか。
笹森さん:
僕は,人を惹きつける力って,努力では得られない生まれ持ったものだなと思っています。葉蔵はそういう華を持っているところが魅力的ですし,先ほども話したのですが,不安定な状態から見えてくる魅力的な部分は,すごく共感できるところでもあります。
それは,ミステリアスとはまた違っていて……儚い,脆いものを見たときに「なんだかきれいだな」と思うことがありませんか。今,一瞬一瞬の中で生きている姿がステキだなと思ったり。言葉にすると難しいんですけど,そういう魅力が彼にはあると思います。
実際にこういう人,いそうですよね。何かしら自分の非を認める,認めないみたいなことって,役者をやっているうえでもすごく大事なことだなと痛感すること多々あります。それを人にさらけだすのがどれだけ怖いことか。これができる人間ってすごく強いなと僕は思います。葉蔵は,すべてがいい方向にいったわけではないけれど,そういう行動が取れる,実はすごい強い人なのかなと思ったりしますね。
4Gamer:
笹森さんから見たら,葉蔵は強い人なんですね。
笹森さん:
多分,彼が取る行動は強い意志のもとで体が動いていることだと思います。作者の太宰 治も,自殺未遂が何度かあったという話もありますし……。
「人間失格」は,彼が自分の人生を投影した遺作とも言われてますけど,そういう人の命を扱う物語って,演じる側も相当労力を使うんですよね。僕,実際にそういう物語に出ているときに結構,暗くなっちゃった経験があって。でも,それも今となってはすごく良い経験になったなと思うんですけれども,今回もめちゃくちゃ難しいだろうなって覚悟もしています。朗読劇だからこそ,なお難しい。形だけでやっちゃったら,すごく寒いことになってしまうだろうなと思うし,僕も作品にのめり込みすぎない程度に,がっつり沈んでいこうかなと思っています。
4Gamer:
確かに役柄にのめり込みすぎると危うい感じがしますね。
笹森さん:
本当,やばい気がしますよね(笑)。気を付けつつ,休みながらギリギリでやっていこうかなと。
4Gamer:
葉蔵以外で気になる登場人物を教えてください。
笹森さん:
堀木さんですね。いろいろ知っていて,葉蔵に「俺が教えてやるよ!」と,生き方をいろいろと教えてくれたというか,葉蔵にとっても人生を変えてくれた人だと思いますし,一番気になる役です。あとは,とてもクールで,僕とは本当に真逆の人だなと思います。堀木の役を井澤さんが演じることが,すごく楽しみですね。どういうアプローチで来るんだろうと気になります。
4Gamer:
朗読劇の堀木もとてもかっこよさそうな予感ですね。
笹森さん:
そうですね,井澤さんぽいなってすごく思います。アプローチといえば,今回は皆さん,女性の役を演じるわけじゃないですか。そこもどういう感じで来るんだろうとすごく気になります。僕は本役だけですけど,「ちゃんと恋をしないと」と思っています。
4Gamer:
ちなみに,恋の相手となる女性の中で,一番気になる子はいらっしゃいますか?
笹森さん:
いやぁ……それを言っちゃうと何かぶれてしまいそうですし(笑)。……いや,全員愛します! 行くとこまで行ってやろうと思います。
4Gamer:
ありがとうございます! では,最後に朗読劇を楽しみにしている人にメッセージお願いします。
笹森さん:
こんにちは。笹森です。今回「人間失格」の主人公,大庭葉蔵という役をやらせていただきます。きっと,今まで見たことがない笹森裕貴が見られるだろうし,ほかの役者も新たな一面を見せてくれると思います。今まで見たことない朗読劇にしたいし,絶対にします。
皆さんがそれを受け取って,中には気分がズーンとなって帰る人もいるかもしれないけれど,それもそれで正解です。演じる側も十人十色,いろいろな演じ方がありますけど,お客様の感じ方もきっとたくさんあると思いますし,今から皆様の感想を聞くのがすごく楽しみです。
まだ稽古も始まってないのですが,いろいろと組み立てて,その中で僕自身も新しい自分と出会えたりするのかな,なんて期待しています。ぜひ,観に来てください,お願いします!
4Gamer:
本日はありがとうございました!
――2023年7月26日収録
純文学ステージブランド「桜花浪漫堂」
発足の経緯や今後の展開を聞く
4Gamer:
新プロジェクト立ち上げの経緯をお聞かせください。いつ頃から企画は始まっていたのでしょうか。
統括プロデューサー 塩原俊夫氏(以下,塩原氏):
株式会社劇団飛行船(以下「劇団飛行船」)は1966年に設立されました。以来50年以上にわたり,童話や絵本の物語を題材とした児童演劇を制作,上演し国内外の子供たちに物語を届けてきました。
文学作品とゆかりの深い弊社としては,純文学をステージにのせるということは,抵抗が無く自然な成り立ちであったと思います。企画に関しては,2022年の年末頃より進行しており,企画から解禁までのスパンは比較的早かった印象があります。
4Gamer:
本プロジェクトはブシロードミュージックとの協力のもと立ち上げたとのことですが,劇団飛行船とブシロードミュージックはそれぞれ本プロジェクトにおいてどういった役割になるのでしょうか。
塩原氏:
私の在籍が,株式会社ブシロードミュージック(以下「ブシロードミュージック」),劇団飛行船を兼務する形で存在しているため,劇団飛行船主催・ブシロード/ブシロードミュージック協力という形での開催となりました。
ブシロードミュージックの強みは「BanG Dream!」で培ったリアル演奏にあります。今回のステージでも和楽器による生演奏を実施いたしますので,キャストさんのお芝居と生演奏の融和をお楽しみいただけると思います。
4Gamer:
どういった層に向けたプロジェクトでしょうか。
塩原氏:
既存の舞台ファンはもちろん,普段本を読まないような層にも届くとうれしいです。文学小説というのはハードルが高いイメージがありますが,今回「人間失格」を朗読劇にするにあたり,想像をしやすい構成になるよう意識しておりますので,多くの方にお楽しみいただけると思います。
4Gamer:
笹森裕貴さんをメインキャストとした理由もお願いします。
塩原氏:
笹森さんは,凄く輝いていてオーラのある役者さんだという印象を持っています。時折見せるアンニュイな表情に役者さんとしての奥行を感じ,人間失格の主人公である大庭葉蔵を演じていただきたいとご依頼しました。
4Gamer:
朗読劇はいろいろありますが,本プロジェクトの強みは何でしょうか。
塩原氏:
今回の朗読劇は音楽監修に日本最大流派の1つである小山流の三代目 小山豊氏や国内外で作品を発表している新進気鋭の着物デザイナー・キサブロー氏を迎え,上質かつ説得力のあるステージをご用意しております。すてきな役者さんとクリエイターが集まっている点が本プロジェクトの強みだと思います。
4Gamer:
今後はプロジェクトとしてどういった展開を想定されているのか,差し支えのない範囲で教えてください。
塩原氏:
文学作品を今後も定期的に上演していく予定です。朗読劇だけではなく,舞台やイベント的なものなど多角的に展開していければと考えております。上野の地を拠点に文学の世界を皆様にお届けしてまいります。
4Gamer:
読者の皆様へのメッセージをお願いします。
塩原氏:
純文学作品は「難しそうなジャンル」や「昔の話だから共感できない」という印象があると思いますが,本作は現代を生きる人々にもきっと響く作品です。素晴らしい文学の世界と柔らかい椅子を用意してお待ちしております。
4Gamer:
ありがとうございました。
「桜花浪漫堂 朗読劇『人間失格』」は,2023年10月27日から30日にわたり全7公演行われる。現在,イープラス(外部リンク)にて一般チケットが発売中なので,気になる人はチェックしてほしい。
桜花浪漫堂 朗読劇『人間失格』
公演概要・チケット情報
■公演概要
公演名:桜花浪漫堂 朗読劇「人間失格」
日程:2023年10月27日(金)〜10月30日(月) 全7公演
10月27日(金) 19:00☆
10月28日(土) 13:00● / 18:00☆
10月29日(日) 13:00● / 18:00☆
10月30日(月) 12:00● / 17:00☆
☆:伊藤昌弘 / ●:北村健人
※公演終了後にはアフタートークを予定しております。
※アフタートークのスケジュールは公式サイトをご確認ください。
会場:I’M A SHOW
(東京都千代田区有楽町2丁目5番1号 有楽町マリオン(有楽町センタービル)別館 7F)
■出演者
笹森裕貴 井澤勇貴 平賀勇成 / 北村健人(Wキャスト) 伊藤昌弘(Wキャスト) / 佐奈宏紀
声の出演:三森すずこ / 難波圭一
津軽三味線:小山清雄 尺八:瀧北榮山 Key.:山本真央 Key.:KeiTaro ※10月28日(土)のみ
■スタッフ
原案:『人間失格』太宰治
脚本・演出:吉田武寛
音楽監修:小山豊
衣装:キサブロー[FOGHORN]
ヘアメイク:earch
主催:株式会社劇団飛行船
協力:株式会社ブシロード、株式会社ブシロードミュージック
【チケット価格(税込/全席指定)】
S指定席(前方7列・特典付き):11,000円
S指定席(見切れ):11,000円
A指定席:7,700円
<S指定席特典内容>
トートバッグ / アザーカットL判ブロマイド6枚セット / 日付入り2L判ブロマイド(キービジュアル柄)
【チケット販売スケジュール】
■一般販売
販売開始:8月19日(土)10:00〜
販売URL:https://eplus.jp/nolongerhuman/
「桜花浪漫堂 朗読劇『人間失格』」公式サイト
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