企画記事
あなたの部屋,物が住んでいませんか? 新年度を迎える春だからこそ,参考になるかもしれない「ゲーマー的整理術」教えます
筆者は愚かなことに,その事態を想定していなかった。「エアコンの真下は空けておけ」とはよく言われることだが,部屋にあふれる物の密度はほぼ倉庫であり,真下どころか,エアコンの交換作業に必要な通路の確保も難しい状況だった。
結局,その夏,筆者は地獄を見た。「暑い」という現象が一定のラインを超えると,人は何もできなくなる。冷えピタ,サーキュレーター,デスクファンを駆使して全力で冷やそうにも,それを遥かに上回る暑さだった。あまりの暑さに,近所のスーパーの生鮮食品のコーナーで涼んだりしたほどだ。エアコンの故障前に受けていた仕事は大きく遅れて多方面に迷惑をかけてしまい,そして,身をもって理解した。
来年の夏までに部屋を片付けなければ,確実にどうにかなってしまう──と。
しかし,片っ端から物を捨てればいいという話ではない。要らない物をため込んでいたわけではないからだ。では,どうやって空間を確保するのか。筆者にとって2023年は「整理の年」だった。
2024年になった今,実はまだ全部の整理が終わっているわけではないのだが,新年度を迎えようとしているタイミングに部屋をスッキリさせたいゲーマーは多いはず。というわけで,筆者が(現在進行系で)実践している整理術を書き残してみよう。同じような境遇にある誰かにとって,何かしら参考になるところがあれば幸いだ。
最大の難敵は“本”
お前も電子書籍にしてやろうか!
まず,最も多くスペースを占めていたのは本だった。その大半がゲーム攻略本で,今となっては貴重なものも多い。
だが,残念なことに貴重ではあっても価値が追いつかず,古本屋に売却したところで二束三文にしかならない。だからといって軽々に処分してしまうと,再び手に入れるのが難しいものが多く,それが「捨てるわけにはいかない」最大の理由になっていた。
とはいえ,このままにしておくこともできない。そこで,筆者が取り組んだのが電子化だ。自前で本を裁断してスキャンする──といった工程を経て電子化する,いわゆる「自炊」。実は何年も前に裁断機とスキャナーを購入し,自炊環境は作っていたのだが,この作業はけっこう時間がかかるため,なかなか進められずにいた。
裁断機もスキャナーもある程度使ってみてから,初めて分かることがある。
まず,裁断機。このタイプの裁断機は包丁で食材を切るように,本の上から刃が入っていくわけだが,筆者のやり方が悪いのか,本の下のほうの切り口がどうしても斜めになってしまう。とくに厚い本は斜めになりやすく,あらかじめ本を2つに割っておくこともあった。
多少斜めになっても,スキャン画像の傾きを補正すればなんとかなる。裁断機にもいろいろあるので,もっと使いやすくて斜めになりにくいものもあるだろうが,重くて場所を取るため,おいそれと「これはイマイチだったから,買い替えよう」というわけにもいかない。そもそも場所を作るために整理をしているのに,物を増やしてどうするんだ……。
電子化には「ドキュメントスキャナー」が必須だ。普通のスキャナーと違い,複数枚の書類を連続スキャンする目的の製品なので,裁断した本のスキャンに向いている。スキャンスピードが速く,両面同時にスキャンできるのも強みだ。
ただ,通常の一般的なスキャナーが1万円程度で購入できるのに対し,ドキュメントスキャナーは4万円前後するものが多い。普通のスキャナーで1冊の本をまるまる取り込むと,とんでもない時間がかかるので,ドキュメントスキャナーは欠かせない。ここの出費を抑えることは難しいだろう。
スキャナーのローラーが汚れたり,劣化したりしてくると,紙質によっては滑ってしまい,正常にスキャニングができなかったり,紙が傾いたままで巻き込んで,スキャン画像が微妙に斜めになったりする。紙送りがミスるようになると,スキャン画像がビローンと伸びてしまうこともある。
ローラーが汚れただけなら,ウェットティッシュなどで表面を拭いた後に普通のティッシュで拭けばいいが,こうしたメンテナンスをマメに行う必要があることが分かった。
ローラー部分だけを買い替えてもいいが,驚いたのは価格だ。「高くても1000円くらいかなー」と思っていたら,なんと4000円もした。定価は5000円くらいなので,これでも安く手に入ったほうだ。こうした部品は古い物から手に入りにくくなっていくので,ドキュメントスキャナーを買うときはできるだけ最新型をオススメする。
スキャン後の本は処分する予定だったので,再スキャンはできない。縦線が入った画像はやはり気になるので,画像によく目を凝らして,許せないレベルの縦線だったら,納得がいくまでスキャナーの読み取り部分を掃除してやり直すしかない。
スキャン時の画質は完全に好みの問題ではあるが,高画質になるほどファイルサイズは大きくなり,スキャンに時間がかかる。筆者の場合,表紙を通常のスキャナーで600dpiで取り込み,中のページは300dpiで取り込んでいる。カラーの攻略本は400dpiくらいのほうがキレイだが,300dpiと400dpiではスキャンスピードが段違いなので,そこは妥協して300dpiにしている。
さて,スキャンを終えると,フォルダに大量の画像ができている。筆者が使用しているスキャナーは「2023年●月●日●時●分●秒.jpg」みたいなファイル名になっているので,これはページ数に変更したいところだ。
ファイル名をページ数に一括変換するなら,「Flexible Renamer」というフリーソフトがオススメだ。たとえば,リネームのスタートを1ページではなく3ページ(003.jpg)にしたいといった,細かい要求にも応えてくれる。本のページ数は,表紙を開いて最初のページを1と数えるものもあれば,表紙とその裏(表1,表2)を1,2として中身は3ページから始まるものもあるので,ありがたい機能だ。
スキャン画像が妙に傾いていて気になる……という場合は,「eTilTran」というソフトウェアを使用している。自炊用に作られたようなソフトで,スキャン画像の傾きを補正してくれる。ドキュメントスキャナーによっては,自動的にある程度の補正をしてくれるものもあるが,それでも傾いているときはある。そういうときはこのソフトにおまかせ。
自炊後の保存方法も重要だ。デジタルデータの怖さは,失われるときは一瞬で大量に失われること。DVDやBlu-rayディスクにまとめて保存すれば,電子化した攻略本は何十冊〜何百冊でも1枚に収まるが,ディスクが傷ついたり割れたりして読み込めなくなったら,一気にすべてを失う。
しかも,自炊した本は処分しているのだから,取り返しがつかない。長時間を要した作業も泡と消える。
こうした事態を防ぐためにも,複数のディスクや媒体に保存しておくべきだ。いつまで保存できるのかは分からないが,5〜10年ごとに焼き直したいところ。筆者はとくに重要なものをDVDやBlu-rayディスクのほか,USBメモリやHDDにも保存している。
「100年保存できる」という触れ込みの超頑丈な「M-DISC」という規格もあるが,価格が高すぎたのか,生産終了になったとかなっていないとか……。正確なところを知りたいところだが,ある時期からAmazonなどではあまり見られなくなってしまった。
最初のうちは「この本は裁断したくない」と渋ったり,スキャンの質にこだわったりしていたが,今は「中に書かれている情報が大事。最悪,読めればいい」と割り切って,どんどん処分を進めている。
とはいえ,やはり思い入れのある本を裁断するか否かの判断は後回しになる。まずは全体量を減らすことが先決だ。
昨今ではアルティマニアシリーズをはじめ,電子書籍の攻略本も見られるようになってきた。紙の本を持っている場合,当然,これを裁断してスキャンすれば買わなくて済むわけだが,筆者は「電子書籍を買ったほうが早い」という結論に達している。
電子書籍版は目次をワンクリックすれば目的のページに飛べるし,スキャンの質も良好。dpiは低めのものもあるが,少なくとも傾いていることはない。何より,常に保存していなくても,必要なときに再ダウンロードすればいいだけの話だ。数百ページもある本の場合,自炊の手間も膨大になる。ただ裁断してスキャンするだけでも長時間かかるが,縦線が入っていないか,傾きを調整するかを考え出したら労力が半端ない。
現在,筆者が困っているのは,攻略本にありがちな折込ポスターや三つ折りのマップ類。紙が長すぎると,ドキュメントスキャナーが紙詰まりと判断して処理してくれないし,通常のスキャナーだと収まりきらない。
結局,紙を折った状態で数回に分けてスキャン後,画像編集ソフトでつなげるしかないが,さすがに継ぎ目は分かってしまう。良質な1枚の画像として保存したいが,折込ポスターやマップ類は鬼門だ。
通常のスキャナーは最大A4サイズに対応しているものが多く,ポスターを丸ごとスキャンできる機種が欲しい今日このごろ……。ただ,スキャン面がちょっと大きくなるだけなのに,価格がとんでもなくハネ上がる(少なくともン十万円以上)ため,手が出せない……。
ゲーマーに立ちはだかる壁
パッケージソフトを“圧縮”せよ!
次はゲームソフトだ。今やダウンロード版の存在が当たり前になっているので,ゲームは“物理的に”場所をとらないものになった。ここ数年,筆者もほとんどのゲームはダウンロード版を購入している。
ただ,今度は保存媒体の容量が圧迫される「デジタル積みゲー」問題があり,だからといってデータを消してしまうと,急に遊びたくなったときに困るというジレンマが……。
しかし,それ以前のゲームソフトはそもそもダウンロード版が存在しなかったわけで,あったけど販売を終了しているもの,今となってはディスク版が貴重なものもある。年季の入ったゲーマーであればその数も多く,本に負けず劣らず場所をとるのだ。
捨てられないのであれば,どうしようもないように思えるが,空間を確保するためにできることはある。パッケージを圧縮すればいい。筆者はジャケ紙,説明書,ゲームソフトが保管できればそれでいいので,プラスチックケースにご退場願おうというわけだ。
実は音楽CDや映画DVDの分野では,スリム化のためのアイテムがいろいろと販売されている。標準のプラケースをこれらに変えることで,地味だがけっこう圧縮できる。
まず,初代PSなどのプラケース。音楽CDと同じタイプであれば,隙間に爪をねじ込んで手でこじ開けるのも容易だが,ちょっと厚いタイプのケースは爪が剥がれそうになることも。ヘラなどを差し込んで開けるほうが安全だ。
これでジャケ裏の紙を取り出せば,プラスチックケースは処分できる。では,ジャケ紙や説明書,ゲームソフトをどう保管するのか。
まずはディスクが1枚,かつ音楽CDの薄いタイプと同じケースに入っているゲームは,コクヨの「メディアパス」またはタワーレコードの「タワレコスマートケース」が適している。
スリムなケースに入れ替えると,厚さは3分の1くらいに抑えられる。ただし,分厚い説明書を入れるのはちょっと厳しいので,その場合は説明書を無理に入れずに,ディスクと裏紙と一緒にOPP袋(透明な袋)で包むといい感じになる。
これらのケースにも不安がないわけではない。
まず,メディアパスは不織布の部分が網目状の模様になっていて,密着状態で長期間保存すると模様がディスクに転写するかもしれない。縦に積み重ねて圧迫していたり,寒暖差が激しかったりするなどの劣悪な環境でなければ大丈夫だろうが,そういう可能性があることは頭の片隅に置いておくといいだろう。
実はコクヨの「メディアパス+」も使いやすかったのだが,単価が高く,現在は生産を終了している。残念。
一方,タワレコスマートケースは不織布がない。そのため,ディスクを出し入れする際に擦れて傷が付かないかと心配になるかもしれないが,筆者の感想は「あまり気にする必要はない」と思う。
さて,ディスク2枚組や3枚組,4枚組のゲームの場合だが,タワレコスマートケースの2枚組用を使うか,フラッシュ・ディスク・ランチの「CDソフトケース」などがちょうどいい。これも音楽CD向けに販売されているものだ。
実際にやってみて気づいたことだが,初代PS特有のケースに入っているジャケ紙は,音楽CDサイズより少し大きい。そのため,スリムケースが合わないことがある。前述のメディアパスやタワレコスマートケースも合わない。
こういうときは,ディスクを不織布やタワレコスマートケースに入れてから,OPP袋などでジャケ紙や説明書と一緒にまとめている。
PS2以降はDVDケースになるわけだが,映画DVD用の圧縮ソフトケースが利用できる。タワレコスマートケースのDVD版,ディスクユニオンの「DVD収納革命」あたりが候補になるだろうか。
こうしたソフトケースの悩みとして,「決して安くはない」ことが挙げられる。たとえばタワレコスマートケースのディスク1枚用は30枚入りが1500円(税込)なので,1枚あたり50円といったところ。所有ソフトが10本程度であればいいが,「全部で500本あります」みたいな話になると単純計算で2万5000円である。
もちろん,大量にまとめて買えば多少は安くなる。
タワレコスマートケースのディスク1枚用の場合,60枚入りが2500円(税込),120枚入りが3980円(税込)だ。120枚入りであれば,単価は約33円まで下がる。ちなみに500枚入りは1万3000円(税込)なので,かなりお得感がある。
少々困ったのはPSP用ソフトだ。媒体のUMDは特殊なため,音楽CDや映画DVDのスリムケースが使えない。
とはいえ,スペースを作るにはケースを圧縮するほかないので,UMDとジャケ紙&説明書を別々に保管することにした。
まず,UMDの保管には無印良品のアクリルケースがピッタリ。2500円くらいで販売されている。
もっと安く済ませたい人は,100円ショップで売られている立方体のアクリル小物入れをオススメ。頻繁に取り出すことがなければ,湿度対策としてセロテープなどで密封しておくといいだろう。
整理を進めていると,「ケースは捨てないし,そのまま保管する予定だけど,保管状態が気になるソフト」が出てきた。DVDやBlu-rayタイプのケースを積み上げると,その重さで下のほうのケースがヘコんでいたりするのだ。完全に自分が悪いのだが,これにはヘコむ……(年齢を感じさせるギャグ)。
こうした事態を防ぐには,透明のプラケースが有効だ。正式名称は分からないが,コレクターの間では比較的メジャーな商品だろう。1つ1つプラケースに入れることで,積み上げたときに荷重がかかるのを防げる。「そもそも積み上げるのが,いかがなものか」と思われるかもしれないが,ホコリや汚れなどからも守ってくれるので,大事なソフトはしっかり保護したいところだ。
オレは ようやく のぼりはじめたばかりだからな
この はてしなく遠い 整理坂をよ…
ここまで紹介してきた圧縮方法にはリスクもある。ケースを捨てる以上,その価値を大きく損ねることになり,ゲームソフトを一種の資産として捉えている人にはオススメできない。
また頻繁に取り出すことを想定していないため,きっちりと管理していないと,どれがどこにあるのかも分からなくなるだろう。
正直なところ,ゲーム機本体の寿命が先に尽きるだろうから,ここまでして保存することに意味があるのかと思わなくもない。ただ,近年はさまざまな互換機が登場しており,ディスクさえ保管していれば,それが役立つときが来るかもしれない。ゲームライターのような仕事をしていると,ゲームのパッケージや説明書の画像が必要になるときもある。
本の裁断を決断したキッカケは,間違いなく「部屋に場所がなくなったから」ではあるが,もうひとつ「老眼」の問題もあった。眼鏡をかけていると「ウソだろ?」と言いたくなるくらいに,手元の本の文字が読み取れないのだ。攻略本には小さな文字のアイテムリストなどがよく載っているが,これがホントに見にくい。腕を伸ばして本を遠ざけるか,眼鏡を外して本に近づくしかない。
その点,スキャン画像をPCのディスプレイに表示すれば,老眼の影響はほぼなくなる。若いころはその名のとおり,「老人になってからなるもの」だと思っていたが,40代でも老眼になるんだな……と痛感している。
ちなみに,紙箱のROMカセット類はほとんど手付かずの状態だ。透明のプラケースを全部捨てて,箱をペタンコにしてまとめて保管。カセットを別に保管するのがベストではないかと思っているが,まだNINTENDO64用ソフトの一部しか実現できていない。試行錯誤の段階である。
今回の記事では,整理の初心者向けというか,筆者が整理に取り組み始めてから比較的初期に気づいたことをまとめている。本気のコレクターや整理熟練者であれば,「もっといい商品があるぜ!」「もっと,こうすべきだ!」といった意見が当然あるだろうが,こうした情報は検索してもなかなか出てこない。
実際,情報が見つからなくて筆者自身も困ったので,できるだけ書き残しておきたかったのだ。願わくば,同じような経験をしている人がもっといい方法やテクニック,いいアイテムの情報を広めてほしい。同志諸氏よ,頼んだぜ!
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