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舞台「桃源暗鬼」-練馬編- ゲネプロ公演レポート。鬼と桃太郎による戦いは京都から東京へと突入
本稿では,公演に先駆け行われたゲネプロ公演の様子をレポートしていく。物語や演出のネタバレとなるような記述,写真が含まれるため,今後観劇予定の人は注意してほしい。
原作の解像度がグンと上がる演出や表現
舞台「桃源暗鬼」は,漆原侑来氏による漫画作品「桃源暗鬼」(秋田書店「週刊少年チャンピオン」)を原作とした舞台作品であり,おとぎ話としても親しまれている“鬼”と“桃太郎”の末裔による戦いを鬼視点で描いた作品だ。
主人公の一ノ瀬四季は,ある日,自分が“鬼の子孫”であることを父,一ノ瀬剛志から知らされる。
実は桃太郎の血を引きながらも正体を隠し,四季を育ててきた剛志だが,桃太郎機関「桃屋五月雨」の襲撃を受け命を落としてしまう。
父の仇を討つべく,対桃太郎機関専用の軍隊学校「羅刹学園」へ入学した四季は,個性豊かな仲間たちとともに,桃太郎との戦いに身を投じていく。
前作では,羅刹学園への入学から京都での戦いまでを上演していたが,今回は東京/練馬が主な舞台となる。
京都での一戦から数週間が経ち,羅刹学園の生徒たちは鬼機関見学のため東京へと訪れていた。道中に立ち寄った縁日で,四季は年上の青年,神門と出逢い,意気投合。
徐々に仲を深めていく2人だが,実は神門の正体は“桃太郎”であり,互いに真実を知らないまま時間は過ぎて行ってしまう。
そんななか,神門の上司であり四季の命を狙う桃巌深夜は,民間人を巻き込む騒動を展開。さらに四季と神門が知り合い同士だと知った彼は,神門が四季と敵対するよう仕向けていく……。
本作は記事冒頭でも申し上げたとおり“続編”になるが,舞台「桃源暗鬼」シリーズを初めて観劇する人でも物語に没入しやすい工夫が多く施されている。
開演時間になるとスクリーンには前作の映像が映し出され,これまでのストーリーを振り返ることができるのだ。この映像を通じ,桃太郎機関の隊員が桃巌深夜へ状況説明を行う場面から本編が始まる……という点も舞台ならではのポイントではないかと考えられる。
また,今回四季たちは練馬区偵察部隊に所属する淀川真澄や並木度 馨と出会い,彼らの仕事ぶりを目にすることになる。
ここでは偵察部隊だけでなく,戦闘部隊や医療部隊についての説明もあり,観客にとってはあらためて「鬼機関」を知る良い機会にもなっただろう。
続いては鬼と長きにわたり戦いを繰り広げている“桃太郎”に焦点を当てていく。
前作にあたる舞台「桃源暗鬼」で四季と対峙した桃宮唾切は,鬼を「蛆虫」と呼び研究対象として捉える人物だった。
しかし,本作で主に四季と関わっていく桃寺神門は,「人を救う鬼は殺さない」と口にするなど,強い正義感を持ち合わせている。
本来対立する立場にある2人の友情や,桃太郎の中でも珍しい彼の考えは,私たち観客にとっても“桃太郎”の見方を変化させてくれるはず。
加えて「桃源暗鬼」は鬼目線で描かれていることもあり,桃太郎=悪役といったイメージを思い浮かべる人も多いと思うが,作中では桃太郎たちの事情や過去回想がたびたび描写され,敵ながらも憎めない存在となっているのも面白い。
本作では神門の他にも彼の上司であり,上昇志向が強い桃巌深夜や,占い師のミョリンパ和歌子に心酔する桃華月詠,無陀野無人との戦いを望む戦闘狂の桃角桜介といった桃太郎たちが登場する。彼らの性格や人間性に着目し観劇してみてはいかがだろうか。
そして筆者が舞台「桃源暗鬼」シリーズを観劇して感じたのは,“再現度の高さ”である。
無陀野無人がローラースケートで滑る場面は前作でも観客を驚かせていたが,本公演でも再度目にすることができ,「無陀野先生がいる!」とあらためて感銘を受けた人も多そうだ。
また,原作ファンが最も気になるであろう“血蝕解放”演出は,小道具や映像などを使用し表現され,とくに四季が銃で一撃を放つシーンは音響からもその威力が十分にうかがえた。
原作「桃源暗鬼」は,アニメ化(2025年放送予定)の前に舞台化を果たしたからこそ原作の解像度がグンと上がり,臨場感や迫力が身にしみて感じられる。
さらに舞台「桃源暗鬼」-練馬編-では,原作では詳しく描かれていなかった“とある”シーンが加筆されていたりと,ファン必見の内容となっていた。
本公演は1月19日まで上演しており,公演最終日はニコニコ生放送でのライブ配信が決定している(該当ポスト)。当日券も用意されているため,気になった人はぜひ足を運んでいただきたい。
舞台「桃源暗鬼」公式サイト
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