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[CEDEC 2012]時代はFlashからHTML5に移行するのか? DeNAが推進する“Flash&HTML5”という選択
冒頭,Mobageの世界展開などを軽く説明した水島氏が示したのが,
8.15
という数字だ。
これは2012年8月15日をもってAndroidのWebブラウザでの「Flash Player」のサポートが終了したことを意味する。
では,これからAndroidでFlashベースのゲームはどうしたらいいのか,という問題についてのDeNAの回答が「ExGame」というシステムである。以前,「こちら」でも軽く紹介したことがあるのだが,これはもともと,Flash再生機能を持たないiPhoneなどでFlashゲームをそのまま動かすための環境として作られたものだ。
FlashのないiOSで有効だったのなら,FlashPlayerがなくなったあとのAndroidでも使えそうだというのはだいたい分かるだろう。Android 2.2以降なら利用できるとのこと。
ちなみに,同社は「ngCore」というミドルウェアも提供しており,スマートフォン用のアプリを作成する方向も推進している。現在はWebベースのゲームとアプリベースのゲームが混在しているわけだが,それぞれの利点について水島氏はまとめていた。
総合的に見ると,Webベースのもののほうがメリットは大きいようだ。とくにAndroidでは端末間の差が大きく,対応が大変なことや,イベントを行うたびにアプリをアップデートさせるようなことは難しいといった事情があるためだ。ブラウザ間でも挙動の違いはあるが,機種の差に比べるとさほど大きなものではないという。これまで同社ではFlashPlayerがあればそれを,インストールされていなかったらExGame版を利用させるような流れを用意して対応していたのだが,FlashPlayerが期待できなくなるというのは,それなりに痛手であるようだ。
アプリの事例では,シリコンスタジオ制作の「Fantasica」が挙げられた。これはngCoreで作られたゲームだが,コンシューマタイトルを思わせるような見栄えで,DeNA社内でも注目を浴びたゲームだそうだ。海外展開も好調で,日本と同等のKPI(重要業績評価指標:ここでは単に業績と考えていいだろう)を記録しているという。つまり,高品質なアプリであれば,洋の東西を問わずビジネスになるということだ。
次に,Web系の事例が紹介された。
Web系といっても,多くはアプリとして提供されているものであり,煩雑な縦スクロールをしたり,データを逐次ロードしたりするため,電波状況の悪い海外では通用しないのではないかと考えられていたタイプのゲームだ(実際,そのように考えたからngCoreを推進したのだとのこと)。
そこに出たのがCygames制作による「神撃のバハムート」だ。
前述のような懸念はあったようだが,蓋を開けてみれば,神撃のバハムートは海外で記録的な大ヒットとなった。それに続いて出された「Deity Wars」も同様に好調。神撃のバハムートとは違ったテイストの作品でも大丈夫なようだ。パケ放題のない海外では,ゲームを進めるだけでパケット料が発生するわけだが,そういったことも問題にならないらしい。ちなみに,これら2作とも,ExGameによるタイトルだという。
さて,DeNAではこれら同様にWebベースの,あるソーシャルゲームを海外に持っていったのだが,そちらは惨敗だったという。理由は簡単で,ExGameを利用していなかったためだ。海外ではAndroid携帯(もちろん8月15日以前の機種)でもFlashPlayerが搭載されていないことが多いのだそうで,内容はどうあれ,全然動かないゲームでは評価されようがない。
半面,ExGameはフィーチャーフォン用のFlashコンテンツを動かすことを目的に作られたものであり,互換性を重視した結果,スマホ本来のパフォーマンスが発揮できていないという問題もあったという。ゲームの中身も,基本的にはフィーチャーフォン用のコンテンツであり,ちょっと古めのゲームになっているのも否めない。
しかし,Post ExGameは単なる高速版ExGameではないという。DeNAでは,ゲーム自体はHTML5に移行しつつ,アニメーションなどを行う部分ではFlashで作成したコンテンツをパーツとして利用するという利用法が想定されているようだ。
HTML5の台頭により,世間では,従来Flashが行っていた部分がどんどん置き換えられていくのではないかという見方が強いわけだが,オーサリングツールの優秀性やFlashコンテンツ作りに慣れた人的資源なども考えると,Flashが得意な部分はFlashで作成し,それをHTML5から簡単に利用できるようにするほうが効率がよい,そういう考え方だ。
それぞれに得意な部分を生かしつつ,生産性を上げることで,よりリッチなゲームを生み出す環境を整える。それがDeNAによる次のプラットフォーム展開につながってくる。なお,Post ExGameは速度を維持しつつFlashとの互換性や機能を拡大する方向で鋭意開発中とのこと。
海外展開へのさまざまな懸念がなくなった現在,日本のソーシャルゲームやアプリは,これまで以上に海外に進出していくだろう。競争も激化する中,より表現力のある柔軟なツールの投入は,ゲーム開発者にとって歓迎すべきものといえそうだ。
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