連載
【月イチ連載】友野 詳の「異世界Role-Players」 第2回:ドワーフ〜そいつらは難攻不落の頑固者
とある日の冒険……に出かける前
戦士:職業? 趣味じゃなくて?
魔術師:お前は筋トレ以外に何かあるのか?
戦士:おいおい,褒めるなよ(真顔)
魔術師:(ため息)私は……代筆業などかな。ドワーフちゃんは……
ドワーフ:職人だと思うのよ,あたしの場合。ドワーフってそういうもんっしょ
戦士:武器とか防具を作る鍛冶師とか?
ドワーフ:やっぱ冒険で役立つのがいいわね。車輪職人とか
魔術師:……なんでそれが役立つと思う
ドワーフ:聞いた話なんだけど,戦場で馬車の操作に大失敗して,敵に襲われかけたとき,車輪職人のドワーフがいたおかげで逃げ切れたって
魔術師:……そこまでピンポイントで役立つ状況とか,そうそう起きないと思うが
ドワーフ:でもまあ,憧れちゃうよね,そういうの
魔術師:会話がつながってない
ドワーフ:つなげる……金継ぎ職人もいいな。爺ちゃんがリアルで茶器の収集を趣味にしてて,見学にいったことあるから
戦士:金継ぎ……なに?
語り手:陶器やガラスが割れた時に,漆なんかでつなぎ合わせて,その継ぎ目を金粉とかで装飾して美しく仕上げる技法のことだよ
魔術師:知らなかった。詳しいな,語り手
語り手:今日の冒険は,王家に奉納する魔法の壺が割れてしまって,修復のための金継ぎ職人を迎えに行く話の予定だったからね。調べたのよ。ハハハ
戦士:そんな役に立たない技能を持っている冒険者はいるまいと思ったら,だな。あるある
ドワーフ:あたしが主役だー
ドワーフも,多くのファンタジー作品に登場する異種族ですね。エルフのあるところドワーフあり,という印象もあるくらいセットで登場します。歴史を辿ればそれも当然といえば当然なのですが,まずは彼らドワーフの特徴を列挙すると,
- 「身長は低く,体重は重い」
- 「分厚い筋肉をそなえている」
- 「足は遅いが手先は器用」
- 「金属の採掘や加工に秀でる」
- 「酒を浴びる。もとい,浴びるように飲む」
- 「意志が強い。言い換えれば頑固」
- 「けっこう欲張りで意地汚いところもある」
- 「ヒゲ!」
というところでしょうか。
彼らもまた,エルフと同様にルーツはやはり北欧の神話です。闇の妖精,原初の巨人ユーミールの死せる肉体に生じた蛆虫が,人の形をとったドヴェルグあたりが直系の祖先となるでしょう。人間や神々からすると,最初は悪いほうの存在だったんですね。
けれどやがて,手先が器用で,金属の扱いに長けている妖精達というイメージとなり,神々と対立することも減って,むしろ北欧神話の神々のために,さまざまなアイテムを作る職人になっていきます。ほかにもヨーロッパには,地の底に住み,小さな姿でモノづくりを得意とする存在の伝承があって,これはドイツの民話などにツヴェルク(Zwerg)という呼び名で登場する種族です。有名なのは童話「白雪姫」のディズニーアニメ(1937年公開)に登場した,「ハイホー,ハイホー」と歌ってるあの7人でしょう。20世紀前半におけるドワーフのビジュアルイメージは,まさにアレなわけです。もとはグリム童話ですから,ドイツで伝えられてきた物語です。彼らなんかは,可愛い系の妖精タイプですよね。
それが,いまのような,いかついオッサンの風貌として認識されるようになったのは,J・R・R Tolkien(トールキン)の「ホビットの冒険」からでしょう。そして「指輪物語」を経由して「ダンジョンズ&ドラゴンズ」(以下,D&D)でゲーム界に定着します。いずれもエルフとペアで登場してますし,以降ずっと「強敵と書いて『とも』と読む」関係が続くことになるわけです(指輪とD&Dについては,エルフの回をご参照ください)。
タイトルにあるように,「ホビットの冒険」における主人公のビルボ・バギンズはホビットです。人間の半分ほどの背丈の,すばしっこい民ですね。彼らホビットについては次回に語るとして,王であるトーリンに率いられた13人のドワーフ達が,このビルボを冒険に誘いにやってき来て,物語が始まります。かつて,ドラゴンに奪われた祖先の宝を取り戻すための探索を手伝ってほしい,自分達は戦士ばかりなので忍び(忍者ではなく,斥候とか盗賊の職分)として参加してほしい,とかなり強引にビルボを連れ出すわけです。この「宝を求める探索の旅」こそが,後の「D&D」へと受け継がれていきます。いえ,もちろん神話や伝承が下敷きにはあるのですけれど,それを近現代において語りなおしたファンタジーとして,ダイレクトにゲームへとつながってゆく出発点になったわけです。
そういう意味で,元祖冒険者はドワーフであった,とも言えるでしょうか。13人のドワーフにスカウトのホビットが一人,魔法使い(スペック的には魔法戦士だと思いますが)のガンダルフという,ゲーム的には「バランス悪いなー」としかいえないパーティですけど。
原典である小説もよろしいですが,2012年から2014年にかけて公開された映画版3部作――「思いがけない冒険」「竜に奪われた王国」「決戦のゆくえ」(Amazonアソシエイト)がまずはお勧めです。通して見ると8時間近く(長尺版だともっと)になりますが,ファンタジー好きなら「これはたまらん」という映像の連続で,まず飽きることはありません。
背が低く,体形に幅と厚みがあって,凝った鎧に身を包んだ髭面のおっさん(何人かはお兄さん)がぞろぞろ13人。そう聞くと華のない絵面だと思われるでしょうし,実際エルフに比べて華やかさには欠けるのですが,見ているうちにどんどん見分けがつくようになって,渋い魅力がじわじわと浸透してきます。
ちなみに,英語において「ドワーフ」というのは「小さな体格のもの」を指す一般語であったりもします。うさぎの品種にもネザーランド・ドワーフなんてのがいますね。もちろん「ホビットの冒険」や「指輪物語」の舞台である中つ国(ミドルアース)は,言語からして異世界なので,この種族も本当は別の名前で呼ばれています。それがどれも,中つ国の言葉で「背が低い」という意味合いだった,という設定なのです。
トールキンは,もともと中つ国の言語で書かれた物語を,自分は英語に訳したのだ,という体裁で,作品を書きました。だからこのドワーフという言葉は,この種族を呼ぶ名として“彼があてた訳語”という扱いです。なので,ほかに英語ならではの言い回しが出てきとしても,「原語では別だが自分はこう訳したのだ」と,言い張れたのですね。たまに「ファンタジー世界で,現代日本の比喩やことわざが出てくると違和感がある」という意見が話題になったりますが,その答えはトールキン先生が既に提示しちゃっているのです。
ドワーフと鍛冶,そして戦い
このように,ドワーフの原典は北欧神話に登場する物作りの妖精ですから,ドワーフと鍛冶仕事は切っても切れないものと言えるでしょう。彼らは,自らが作り出したものにプライドを持っており,それがしばしばトラブルを招くことになります。頑固で融通がきかず,一度こうと決めたら譲りません。それは優れた資質でもありますが,ときに事態をこじらせる原因にもなります。他者を見下しがちなエルフと揉めることが多いのもむべなるかな。神代の諍いを,延々と数万年もひきずってるわけですからね。
頭が固くて退くことを知らないドワーフは,恐るべき戦士であります。彼らには,剣や槍といった「武器としてしか使えない武器」より,斧やハンマーのような「道具としても武器としても使える」ものが似合います。まあ,生々しく痛そうですよね,そっちのほうが。
ドワーフの住居は地下で,縦横無尽に掘った坑道をつなげて地下都市を築いている,という設定が出てくることも多く,そのためか,ほとんどの世界でドワーフは暗闇をものともしない暗視能力を持っています。悪の種族だと「そのかわり日光に弱い」となりがちですが,善の種族なのでさすがにそれはありません。
ドワーフの壮麗な地下都市というのは,ファンタジーの定番です。で,たいていは滅びています。かつ宝物が満載。「指輪物語」でも失われたドワーフの都市をくぐりぬけてゆく場面は印象的でした。ファンタジーゲームにおけるダンジョン探検の原型があれなのです。
戦士としてのドワーフは退くことを知りません。勇敢で命知らず。
ときにはバーサーカーのイメージとも重なります。イギリス生まれのゲーム「ウォーハンマー」の世界では,おのれの名誉を失ったドワーフは,髪をモヒカン状にそりあげて,刺青とピアスでパンクなファッションに身を固め,名誉ある死を求めて悪の陣営の強敵に戦いを挑み続けます。北欧を離れ,海をわたるとドワーフも変わるものですね。
一方,元祖「ダンジョンズ&ドラゴンズ」では,ドワーフは戦士のバリアント的クラスとして登場しました。のちに種族と職業を個別に組み合わせられるようになっても,やはり最適な職業は戦士です。「ホビットの冒険」を経て,「指輪物語」に登場したギムリが原型だからでしょう。
ギムリがさらに年をとって,まさに古強者となった姿といえるのが,先にもちらりと名前が出たフリント・ファイフォージ。さらに,ギムリから名がとられたドワーフの老戦士・ギムが「ロードス島戦記」(小説版は1988年〜)に登場して,ゲーム的ドワーフ像のイメージが固定化します。
ドワーフには「魔法に疎く,脳みそまで筋肉でできている」というイメージがあるからか,“神に奇跡を祈る”以外の魔法が使えないとする設定の作品も多くあります。ですが,ドワーフの魔術師がいないわけではありません。頑丈で疲れ知らずのドワーフは,ひとつの巧みな魔法を使うより,多くの小魔法を唱え続けるのに向いていたりもします。
テーブルトークRPG版も発売された人気ライトノベル「ゴブリンスレイヤー」(2016年〜)の主要人物にも「鉱人の精霊使い」がいます。ちなみに鉱人は“こうじん”ではなく“こうびと”と読みます。早口で言うと,“う”が詰まって“こびと”のような発音になるそうな。最近のライトノベルでなら「転生したらスライムだった件」(2014年〜 / 以下,転スラ)にもドワーフが登場し,ちらほらと魔法を使っていたりもしました。ただ「転スラ」のドワーフって鍛冶師とかは古典的なドワーフの見かけなんですが,王様とかは人間と区別つかない容貌だったりしますね。これは新たなドワーフの時代が来るってことなのでしょうか。
また初代「ソード・ワールド」(1989年)の背景世界であるフォーセリアにも,頭脳で勝負する賢者として名を馳せたドワーフがいました。記憶力もひらめきもイマイチ……のはずが,トンチンカンな発想と,そして運でもって,“斜め下から”真相にたどりついてしまう,“迷”探偵デュダがその人です。「名」じゃなく「迷」ですけどね。
ドワーフにはエルフのようなバリアント種族をあまり見かけませんが,ドワーフと同様に小柄で,どちらかというと「筋肉より知性」という種族にノームがあります。これも基本的には「D&D」の影響だと思いますが,彼らもまた「幻術魔法が得意」「からくり仕掛けが好き」といったユニークな特徴を持ち,さまざまな世界で存在感を示しています。
また,ノームは大地の精霊として登場することもあります。そもそもが地水火風の四大精霊のうち,「地」を司る精霊の名ですし,世界によってはドワーフ達と親族のように語られることもあります。神々によって,ドワーフの近縁種として創造された,といった設定も多いですね。
欧米では,庭にひげもじゃ小人の陶製人形が飾られていることがありますが,あれはドワーフじゃなくてノームです。「土地を豊かにしてくれる」という守護の妖精なんですね。
そのほか,グローランサ世界の「ロボット種族としてのドワーフ」や,世界で最多人口がドワーフというTRPG「アースドーン」,拙作「ルナル・サーガ」の黒い肌のドワーフも,ドワーフの変わり種ではありますが……言及する作品が,前回のエルフとかぶるあたりが,やっぱりなんだかんだ言いつつも名コンビなのだなあと思います。「迷宮キングダム」には,モンスターとしてドワーフや黒ドワーフがいましたっけね。ラクシア世界にも,黒い炎を使いこなして魔法の武具を生み出す悪役「ダークドワーフ」がいます。
冒険から戻った酒場にて
語り手:(くいっ)リアル飲みかよ。いいけど,冒険終わったし。しゃべりっぱなしは,喉が渇くからね
魔術師:それっぽい雰囲気のものを飲みたいのだが
戦士:(ごっきゅごっきゅ)ビールでいいだろ。ファンタジーでよく出てくるエールって,こんな感じなんだろ?
ドワーフ:原料とか醸造方法とかの細かいところは分かんないけど。ビールは喉ごしの切れ味で飲むけど,エールは香りと味を楽しみながら飲むの。ほら,口に含むと,ちゃんと小麦の香りがするよ
戦士:見たことない銘柄だと思ったら。さすがドワーフ,酒にうるさい
ドワーフ:ただの受け売り。けど,ファンタジー世界の酒って,まだ醸造だろうし,けっこうアルコール度数が低かったりしない? これなんかもたいしたことないわよ。蜂蜜酒(ミード)だけど
戦士:へえ,これが! 話には聞くけど初めて見た
魔術師:好奇心がうずくな。一杯,もらっていいか?
ドワーフ:どうぞどうぞ。ぐいぐいいってよ
魔術師:蜂蜜というから甘ったるいのかと思ったら,そんなこともないな。香りもいいし,飲みやすいじゃないか
(……しばらくして)
戦士:……も,もうらめら……
魔術師:……口当たりがいいので……油断した。度数,低いんじゃなかったのか
ドワーフ:(かっぱかっぱ)低いわよ。ウォッカとかスピリタスとか泡盛に比べれば
語り手:(ちびちび)……そんなもんと比べるなよ。2人ともつぶれたぞ。しかし,こいつらより飲んでるのによく平気だな
ドワーフ:鉄の肝臓持ちだから,ドワーフやってんのよ
というわけで,ドワーフといえば大酒飲みで大喰らい,というイメージですね。「歩く酒樽」なんて,失礼な呼び名があるほどです。言い得て妙,だと個人的には思うのですが,ポリティカルコレクトネス的にあれこれありそう……かな? それはともかく,酒好きのドワーフというイメージが,最初に登場した作品はなんだろうと思って,あれこれ調べてみたのですが,結局のところ結論は出ませんでした。
多くのファンタジー世界で銘酒に「ドワーフ殺し(スレイヤー)」なんて名が付けられているのも無理のないところ。しかし,先にも書いたように,ファンタジー世界のお酒ってそれほどアルコール度数が高いとも思えないので,案外現代のきっつい酒なんぞ飲むと,割とつぶれそうな気もします。もちろん,高度な技術を持っている設定の世界だと,蒸留酒なんかもあるのでしょうが。
ちなみに「銘酒ドワーフスレイヤー」を元ネタにしたタイトルのボードゲームもあります。その名も「ドワスレ」と申しましてな。プレイヤーは酒場でバカ飲みしてるドワーフという設定で,ほかのドワーフを先に酔いつぶして,そいつに勘定を任せてしまおうという,しょうがない連中でございます。出目に酒やらいびきマークやらが描かれた特殊なサイコロをふり,手元にあるカードの特殊能力を使って,酒と勘定を押し付けあいます。カードには,さまざまな名イラストレーターさんによる多様なドワーフが描かれてますので,いろいろなドワーフのイラストを見てみたい,という方にもうってつけですよ。
ドワーフをめぐる,ある大きな争点
古くからのドワーフ好きが熱くなる話題に,「ドワーフのヒゲがいかにかっこいいか」というものがあります。複雑に編み込んだり,髪飾りならぬヒゲ飾りを付けたりするのが,ダンディなドワーフのおしゃれのポイントです。映画「ホビット」でも,こうしたヒゲがドワーフ達を見分けるポイントになっていました。ドワーフの描き分けはヒゲにあり。
そしてこの中つ国では,ドワーフの女性もまたヒゲをはやしており,同族の男性にとっては,萎えるどころか,むしろセックスアピールとなっていました。それが「D&D」などを経由して多くのファンタジー世界――「ローズ・トゥ・ロード」の山小人,「ブレイド・オブ・アルカナ」の岩人,フォーセリアのドワーフに引き継がれていったのです。私も,どちらかというと「ドワーフは女性もおヒゲ」派です。
伝承上のドワーフですと「石から生まれるのでそもそも女性が存在しない」なんていう例もありますけど。ゲームでも,「トンネルズ&トロールズ」の背景世界・トロールワールドのドワーフには,石から大人の姿で生まれる(作られる)グリッスルグリムの民と,子供を作るミドガルド・ドワーフの2種類がいたりします。
しかし同時に,おヒゲのヒロインは,ちょっとハードル高いと思った男性陣を責めることも,私にはできません。かくして,誰かが思いついたのです。背の低い種族の女性……ならば,可愛いくて,ちょっと“いたいけな見かけ”でもいいんではないか,と。
ドワーフ女性が,ぷにっとした幼女風の姿になった最初の作品は何だったのか。正確に調べをつけることはできませんでしたが,2004年にサービスが開始されたMMORPG「Lineage II」によって一般化した,というのが通説のようです。
この解釈はその後かなり広まって,以後の多くの作品で,幼女型のドワーフが登場するようになりました。テーブルトークRPGでも「アリアンロッドRPG」(作中での種族名はネヴァーフ)とか「ソードワールド2.5」とか。成人すると見かけ上は老化しないため,150歳の幼女などといったパターンもあったりしますね。
かくて,長らくヒゲ派とプニ派の血で血を洗う抗争(?)が続けられることとなり,2013年にはさらなる複合型も出現します。漫画「スピーシーズドメイン」(野呂俊介作,少年チャンピオンコミックス)に登場する土和さんです。幼女でありながらヒゲ,ヒゲでありながら幼女。しかし実は高校一年生。すなわち「ヒゲ」+「幼女」。新しい!
こうしてドワーフの女性像は,今なお進化を続けています。一刻も早い,土和さんフォロワーの登場が望まれるところです。
ドワーフのロールプレイは?
では,ドワーフのロールプレイでは,どう振る舞えば“らしく”なるでしょうか。ここまでの話を踏まえると,「頑固一徹,不退転」に「職人気質」「酒飲みで大食漢」といったあたり。そして,扱いが微妙ではありますが,欠点としての「嫉妬,欲張り,執念」も欠かさない方がいいところでしょうか。
おっと,しかしまず最初に「ここは外さないほうが」というのが一点があります。
男性のドワーフなら,まず一人称を「わし」にしておくと,外れはありません。世のドワーフの9割は,老いも若きも自分を「わし」と呼ぶのが“らしい”のです。たまに「俺」と言うドワーフもいますが,ふと気がつけば「わし」になっていたりしますからね。あれ,私だけですか?
女性でも,おばあちゃんなら「わし」でいいんですが,若い場合の一人称は難しいところです。ちょいと古い感じになりますが「あたい」とか「わたい」を推したいところです。どちらでもなければ,難しいですが普通に「あたし」とかが無難かもしれません。その場合,口調だけでドワーフらしくするのはあきらめることになります。……種族を問わず「豪快なおばちゃん」というのはイメージしやすいでしょうし,共通点も多いことでしょう(大阪の下町育ちなので,「大阪のおばちゃん」イメージで語っております)。
さて,ではあらためてメンタル要素。先にあげたうち「頑固一徹,不退転」は,要するにあきらめない,自分を曲げない,ということです。どんなに不利な状況になっても前を向き,仲間を守り,目的を果たすことを目指す,という方向性になるとかっこいいですよね。
例えどんな困難に出会っても,「わしは,こうすると決めたんじゃ」とつぶやいて前進し。例え死に瀕するような傷を受けても,「わしにはまだやり残したことがあるんじゃ」とつぶやいて立ち上がる。どんな魅惑的な誘いにも,「わしは約束したんじゃ」と,決して裏切ることなく,おのれの身を犠牲にしても誓いを果たす。
まさに,これぞドワーフ。なので,ドワーフをやるなら何か一つ,自分なりの信条を決めておいたり,冒険に旅立つときに誰かに託された目的なんかを持っているといいでしょう。「失われた父祖の国を取り戻す」「行方不明の娘を探す」「未熟な小僧っ子どもを鍛え上げる」などなど。ただ「妥協を知らない」のは,かっこいいようで,一歩間違うと周りに迷惑が掛かっちゃうんで気をつけましょう。そのいい例が「父祖の財宝を取り戻す」という誓いが,もはやおのれ自身にかけた呪いへと変わってしまった「ホビットの冒険」のトーリン王です。
ですから,キャラクターはともかく中の人である皆さんは,ちゃんと落としどころを決めておく方がいいですね。エルフの時にも書きましたが,キャラの心情はさておいても,ほかのプレイヤーに協力を求めましょう。なんなら「こういうところをつかれると,きっと説得されると思う」という点を自分で提案するのもアリですよ。
続きましての「職人気質」は,こだわりとか蘊蓄とかを語ってみせれば,だいたいそれっぽくなります。あと,そのこだわった対象に関して,なにか実績も作っておきたいところですよねえ。鍛冶師なら,魔法の剣を鑑定したり,砕けた刃を鍛え直してみせたり。サムライのために,工房にこもって刀を打ち上げるドワーフ鍛冶とかかっこいいじゃないですか。
ただし,ここで難しいのは「ゲームにおいてはそういう試みが,必ずしもうまくいくとは限らない」ということ。鑑定や修理に失敗しちゃうこともあるわけです。ダイスの目とかで。成功をカッコよく語るのがロールプレイの出発点なら,失敗を魅せることこそが熟練テクニックといえましょう。
「ううむ,この剣は実に素晴らしい。このわしすら知らぬ技術が使われておる」
「すまぬ。力を尽くしてみたが,この槍に使われておる金属はもはや大地の命が尽きておった。よほどの達人が打ったものであろう。わしでは及ばぬ」
あるいはギャグに持っていくのも一つの手です。キャラを立てるには欠点も持たせてこそ。緊迫した状況が続きすぎても疲れてしまいますし,周囲の空気を読まず,食事と酒に関してだけは欲望のままにまっしぐら,というのも(限度を心得ていれば)ドワーフのロールプレイとしてありでしょう。そのあたりを学ぶなら,近年の大ヒット漫画「ダンジョン飯」(2014年〜)に登場するドワーフの冒険者・センシが参考になります。彼,酒は飲みませんけれど。
欠点の「嫉妬,欲張り,執念」も,ドワーフとして押さえておきたいところです。要するに「頑固さ」や「職人のプライド」の裏返しなんですよ。あまり良い印象を持たない言葉ですが,表に出しすぎず,ちらっとスパイス的に「こういう欠点もあるのだ」を見せると人間臭さ(というかドワーフ臭さ)が出るし,克服するドラマも演じられるというものです。
最後に,もし冒険仲間にエルフがいれば,仲良くケンカする友達なのか,それを乗り越えた仲なのか,ガチで嫌いだけど協力せざるを得ない立場なのか,あらかじめ相談しておいて,美味しいコンビネーションを作りあげましょう。やっぱり「指輪物語」のギムリとレゴラスの友情は泣けますからのう。種族を超えて「分かりあう」ことはできる,という証明でもあります。異種族を演じるのであれば,異種族同士が絆を深めてゆく,というところを目指したいですからね。
さて次回ですが,エルフ,ドワーフときたので,中つ国の住人は押さえておこうと思います。ホビットとその親族達,ということで掲載は6月25日の予定です。またよろしくおつきあいください。
■■友野 詳(グループSNE)■■ 1990年代の初めからクリエイター集団・グループSNEに所属し,テーブルトークRPGやライトノベルの執筆を手がける。とくに設定に凝ったホラーやファンタジーを得意とし,代表作に「コクーン・ワールド」「ルナル・サーガ」など。近年はグループSNE刊行のアナログゲーム専門誌「ゲームマスタリーマガジン」でもちょくちょく記事を書いています!(リンクはAmazonアソシエイト) |
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