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[インタビュー]ヴァナ・ディールの今後,そしてその軌跡を残していくこと。「FFXI」3代目プロデューサー・藤戸洋司氏に話を聞く
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印刷2023/08/05 08:00

インタビュー

[インタビュー]ヴァナ・ディールの今後,そしてその軌跡を残していくこと。「FFXI」3代目プロデューサー・藤戸洋司氏に話を聞く

 2002年5月にサービスを開始した,スクウェア・エニックスのオンラインRPG「ファイナルファンタジーXI」。今年の5月16日で21周年を迎えた,7月10日には「蝕世のエンブリオ」の後日談を配信。さらにこの8月には,オフラインイベントである「ヴァナ・ディールの秘蔵展」が控えており,今なお多くのプレイヤーを楽しませている。

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「FFXI」プロデューサー兼ディレクター・藤戸洋司氏
 運営には大きな変化があり,2012年からプロデューサーを務めていた松井聡彦氏が3月に勇退,ディレクターであった藤戸洋司氏がプロデューサーに就任して,P/D兼任の新体制での開発・運営がスタート。運用サーバーがリプレイスされることもあり,今後もプレイヤーたちは長く安心してプレイしていける雰囲気だ。

 本稿では,3代目プロデューサーである藤戸氏に,「FF11」のこれからや,久しぶりのオフラインイベント,そしてクラブ族やクラーケンクラブのぬいぐみなどが話題になったグッズの展開などについて聞いた。

「ファイナルファンタジーXI」公式サイト



「FF11」今後の運営方針について


4Gamer:
 本日はよろしくお願いします。
 今年の5月にシナリオ「蝕世のエンブリオ」が完結し,この先,大きなコンテンツの導入はなくなるとのアナウンスがありました。
 今後については,“快適なプレイ環境の構築維持”を進めるとのことですが,具体的にはどういったことを行っていくのでしょうか。

画像集 No.009のサムネイル画像 / [インタビュー]ヴァナ・ディールの今後,そしてその軌跡を残していくこと。「FFXI」3代目プロデューサー・藤戸洋司氏に話を聞く

藤戸洋司氏(以下,藤戸氏):
 今までのアップデートで積み重ねてきた地層状の仕様のなかで,ちぐはぐになっている部分や,過去のシステムの管理上,別々の状態になっているところをまとめてすっきりさせるように見直す,ということを目標にしています。
 ゲームとしての見た目は大きく変わらないけれど,「こうだったらよかった」と思っていた部分が,少しずつ改善されるような,そういうアップデートですね。

4Gamer:
 システムの調整以上は行わないのですか。

藤戸氏:
 いえ,シーズナルイベント的な盛り上げに関してもフォローしていこうと思っています。5月に配信した「もぎヴァナ」でも触れましたが,ワールド間で何かをみんなで協力してやるようなイベントの企画も進めていますし。
 少し実験的なことも考えているのですが,プレイをする上では,特別なことをしているとは感じない人が多いんじゃないかな。こちらはコミュニティチームと協力して進めていますが,具体的なお話については,もう少しお時間をください。

4Gamer:
 藤戸さんが新プロデューサーに就任してから,開発チームの構成は変わったのでしょうか。人数の増減とか。

藤戸氏:
 大きな変化はないですね。「FF11」専任は減りましたが,その分兼任で関わってもらっているんですよ。ゲームを運用していく上で,必要な人数は確保できています。

4Gamer:
 兼任の人が多いんですね。

藤戸氏:
 以前もお話しましたが,「FFXI」は,基本的にコアとなる開発環境に更新がかけられないんです。20年前のPS2ベースとなっている環境で頑張っていくしかないのですが,その開発機材がもう生産されていないわけです。骨董品を扱うようなものですし,今からわざわざ古い技術を新しく入ってきた人に覚えてもらうのは,その当人にとってもかなりリスクがあるので,経験者にカバーしてもらうことを前提にしています。

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 スクウェア・エニックスが開発・運営するMMORPG「ファイナルファンタジーXI」が,2022年5月16日で20周年を迎えた。本作のプロデューサーである松井聡彦氏と,ディレクターの藤戸洋司氏にさまざまな話を伺ったので,前後編の2回に分けてお届けする。

[2022/05/16 09:00]

4Gamer:
 今から,PS2の新作ソフトを開発することもないですからね。

藤戸氏:
 「FF11」も,いつかはサービスが終了する時期が来ると思うんですが,その時に彼らの知っている技術が,30年前とかのものじゃ,新しいものについていけないですよね。
 専任ともなると,新しい技術を並行して勉強していくのは厳しく,その人の人生のリスクをすごく高めてしまうんですよね。

4Gamer:
 「FF11」も大事だが,メンバーの未来も大事だと。

藤戸氏:
 はい。ですので,今いるメンバーの多くは,別プロジェクトや別部門を兼任してもらったり,一時的に別部署に移動してもらって,最新の技術を吸収してもらうことにしています。結果的に少し戦力は減っていますけど,新しいことが全くできないわけではないですね。

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4Gamer:
 以前,サーバーのリプレイスを進めるというお話を伺いましたが,数年のサービス継続が確定した,と考えてよいのでしょうか。

藤戸氏:
 もちろん,すぐにサービスが終了するといったことはありません。なぜなら,すごくお金をかけてリプレイスするからです!(笑)
 「FF11」のサーバーですが,古くてもう保守の契約ができなくなってきたんですよ。ギリギリまで引っ張っていたのですが,昨年の20周年の段階で「サービス終了」か「サーバーを入れ替える」かの選択をしなければならなくて。

4Gamer:
 難しい決断を迫られたわけですね。

藤戸氏:
 「FF11」のサービスを続けていくかどうかの検討は,実は,数年前から行われていました。ただ,今でも収益がしっかり出ていることもあって,サーバーを入れ替え,ハード面を保証して続けることになったんです。

4Gamer:
 リプレイスを行うと,物理的にどのぐらいの期間,サーバーを維持できるのでしょうか。

藤戸氏:
 今回のリプレイスで,10年は続けられるんじゃないかなと思います。ちなみに,機材面のスペックが上がったので,そこにエミュレートする形で古いソフトウェアを動かすということをやっていますが,それが大変みたいです。
 弊社の「スクエニの作り方」というYouTube番組で,情報システム部のサーバー担当者が,前回のサーバーリプレイスの苦労話をしています。興味のある人はぜひ見てください。


4Gamer:
 30周年が見えてきましたね!

藤戸氏:
 そうですね(笑)。サーバーを維持するためには毎月固定費がかかるので,そこは最低限の採算をとらないといけません。現在のところは十分やっていける感じなんですが,どうせなら次のサーバーリプレイスの時期も迎えたいですね。

4Gamer:
 もちろん,プレイヤーも望んでいるでしょう。30年続くと,すごいですよね。

藤戸氏:
 このタイトルより長くサービスを続けているものは,大先輩である「ウルティマオンライン」や「エバークエスト」などがパッと思いつきます。ただ「FFXI」は,コンシューマーゲーム機からスタートした初めてのMMORPGで,しかも日本発というところがあるので,そういう立て付けのなかではパイオニアになるのかなと。

4Gamer:
 先の2作品はPCベースで,リニューアルはしやすいのかもしれません。そちらも続いてたとしたら40周年とかですよね。ありえそうですが(笑)。

藤戸氏:
 先ほども話しましたが,「FF11」の開発環境はPS2ベースで,挙動が確認された開発機材が必要です。開発当初は,それに合わせたミドルウェアをお手製で作っていて,専用のファイルフォーマットを使用していたりするんです。

 今となっては,ファイルの数なんかもう十万単位で存在しますから,別システム向けに全部を変換して使えるようにするには,もう膨大な工数が必要で。やるとなると,新しいゲームを作るのと同じか,それ以上のコストが掛かることになり,それだったら新しいゲームを作った方がいいという話になってしまう。

画像集 No.006のサムネイル画像 / [インタビュー]ヴァナ・ディールの今後,そしてその軌跡を残していくこと。「FFXI」3代目プロデューサー・藤戸洋司氏に話を聞く

4Gamer:
 「FFXI」のオフライン化を望む声もありますけど,厳しそうですからね。

藤戸氏:
 オンライン版,オフライン版問わず,「FFXI」をもう一回作り直すことで,今以上のお客様が見込めるのであれば実現の可能性もありますが,たぶん,そうはならないので。これはビジネス的な視点になりますけど,なかなか難しいですね。


コラボイベントや展示会開催は

「熱意」の奔流が形になった!?


4Gamer:
 次に,20周年企画について伺います。「グランブルーファンタジー」× 「ファイナルファンタジーXI」コラボレーションイベント「ファイナルファンタジーXI 幻想のウタイビト」が大好評だったことは記憶に新しいですが,ほかにもコラボ予定はあるのでしょうか。

藤戸氏:
 自分たちは,いまのところ考えていないですね。というか,20周年のコラボ企画自体,我々から提案したものではないんですよ。
 むしろ,「うちとコラボなんてしなくても,十分盛り上がっているじゃないですか……?」っていう感じのところからスタートしています(笑)。

4Gamer:
 コラボって,話題作や人気作にお願いすることが多いですからね。

藤戸氏:
 どうやら,Cygamesさんの中の人たちが「FFXI」の熱心なプレイヤーだったみたいです。加藤英美里さんの番組を通じて,遊んでいる人がいることは存じていましたが,コラボ企画を持ってこられたときは,「なにかあるのかな……?」と,訝しんでいましたよ(笑)。

4Gamer:
 不審に思っていたんですか(笑)。

藤戸氏:
 予兆のない話だったのでびっくりしたんです。その上でも話を進めていくとすごく熱意が伝わってきて,これは本気なんだなと理解できたんです。企画は立ち上げから2年ぐらいかけてゆっくり進めていきました。ほとんどが先方で作られて,こちらがしたことは主に監修のみですね。

4Gamer:
 Cygamesさんの熱意が動かした企画なのですね。

藤戸氏:
 あとこれ,ちょっと驚いたのですが,「FFXI」のゲーム内容を紹介するためだけのWeb番組も配信してくださったんですよ。


4Gamer:
 見ましたが,本当に「FFXI」の話だけの番組でしたね。

藤戸氏:
 コラボどころか,「グランブルーファンタジー」のことを一切言わないんですよ(笑)。「グランブルーファンタジー」の話がほとんど出てこないですけど本当にいいんですか,と何度も確認しました。「FF11」を知らない人はついてこられないのでは……と思いつつ,その本気度はかなり高かったですね。「FF11」経験者にとっては最高の番組だったんではないでしょうか。

4Gamer:
 本当に「FF11」を好きで作っている,という感じでした。今後も,熱い申し出があれば,ほか作品とのコラボもあり得るということでしょうか。

藤戸氏:
 コラボは双方にプラスがないと意味がないことなので,基本的にこちらが出来ることはあまりないことを考えると,現実的には難しいと思います。別にコラボじゃなくても,好きだという気持ちを持ってもらえるだけで十分ですね。

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4Gamer:
 スクウェア・エニックスの,別のタイトルにも,シャントット博士など「FFXI」のキャラクターが登場したりしますよね。

藤戸氏:
 そうですね。最近だと「ディシディア ファイナルファンタジー オペラオムニア」や「ファイナルファンタジーレコードキーパー」は,継続的に登場キャラクターを出演させたいという話を頂いています。

4Gamer:
 シャントット博士はプレイヤー人気も高いですよね。冒険者が初期からお世話になっていたこともありますし。

藤戸氏:
 「FFXI」のNPCって,オリジナルのフェイスを持ったキャラクターがあまりいないんですよ。ただ,シャントット博士は非常に個性的なこともあり,プレイヤーからの人気も高いんですよね。なので「FF11」の顔として動いてもらってます。


2023年8月に開催される

ヴァナ・ディール秘蔵展


4Gamer:
 「FFXI ヴァナ・ディールの秘蔵展」ですが,前回のインタビュー時には,オフラインイベントを行うのは難しいという雰囲気でした。
 ここにきて,まさかの開催決定なわけですが,そこに至る経緯を教えてください。

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「FFXI ヴァナ・ディールの秘蔵展」特設サイト


藤戸氏:
 これも先ほどの「熱意」の話になるんですよ。「ヴァナ・ディールの秘蔵展」を企画進行しているムービックの担当さんが,めちゃめちゃ「FFXI」の大ファンというか,これまで発売したグッズや書籍,パッケージをほぼ持っているというすごい人なんです。
 もう売られていないグッズも,海外のオークションサイトで見つけて手に入れるなど,熱意が本当に半端なくて。

4Gamer:
 これもまた,「FFXI」の熱烈なファンであった他社の人から持ち込まれた企画だったと。

藤戸氏:
 そうなんです。昨年発売された時計とかのグッズを企画したのが彼ですね。グッズ製作の流れの中で,「何かできるといいですね」みたいな話をしてはいたんですが,去年の夏前くらいに,「リアルで展示会の企画を」との話をいただきました。

4Gamer:
 「FF11」好きは,アクティブな人が多いですね。

藤戸氏:
 20周年の最中で,プロデューサーの入れ替わりについて検討中だった時期でもあったので,具体的な話に入るまでに時間が掛かってしまいましたが,それでもお互い前向きに話を進めていった結果,開催することになりました。

4Gamer:
 秘蔵展の公式サイトを見ましたが,今までなかった感じの面白いグッズが多いですよね。個人的には,ヘクトアイズのマルチスタンドがツボでした。これも,「FF11」に対する愛の深さがあってのものなのかなと。

藤戸氏:
 ムービックの担当者さんは「FF11」へのこだわりというか,すごく造詣が深いんですよ。

4Gamer:
 今までのグッズも素敵でしたが,今回のグッズは,たとえばTシャツひとつとっても,ネオンサインっぽいギルドアイコンのデザイン,英語ロゴ,モノトーンの天体図,近年流行のフォトTシャツっぽいデザイン,バンドのツアーT的なタイトルロゴデザイン,と,さまざまなバリエーションがありますよね。
 着ている服の傾向に合わせて選べるように作っているんだなと。そういうところにも細かな気配りがあって,また違った面白さを感じました。

藤戸氏:
 作品に対する愛の深さがグッズの形に現れるんだなって。あと,本職の方が考えるグッズっていうのはひと味違う良さがあります。感性を信じてお願いしてよかったです。

4Gamer:
 秘蔵展の展示内容についても教えてください。未公開資料や造形物の展示があると伺っていますが,規模的にはどのぐらいのものになるのでしょうか。

藤戸氏:
 会場の面積はそこまで大きくはないので,ざっと見るくらいだったら30分もあれば回れると思います。
 展示物は,開発資料……キャラのイメージイラストや設定テキストを中心に,大多数が未公開のものですね。「ヴァナ・ディール カフェ」などでも飾っていた造形物が一部ありますが,それ以上に外に出していなかったものが展示されます。
 業界的にも稀な展示けど,それは会場で見ていただくとして,初出しのものが多いので,ぜひじっくりと見て回ってください。

4Gamer:
 相当の「FFXI」マニアを自認している人が行っても,これは全然見たことないぞ! というようなものが……。

藤戸氏:
 はい。あります! というか,ほとんど見たことないと思います。ある特定の展示の前から動かなくなるような人が出てくるんじゃないかな……。

4Gamer:
 どんな展示でしょうか,見るのが楽しみです。
 グッズの話に戻りますが,秘蔵展で用意される商品にはどんなものがありますか。また,秘蔵展以降も新作グッズを作る予定はありますか。

藤戸氏:
 グッズ関係は特設サイトで公開しています。バーミリオクロークをイメージしたパーカーや白虎佩楯をモチーフにしたハーフパンツなど,今までにないグッズが揃っているので,気になるグッズあるようならぜひ会場まで足を運んでください。

 新規グッズは,需要があればといった感じですね。この辺はシビアで,収益が見込めれば……というところにはなりますが,できれば作りたいです。

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4Gamer:
 気が早いですが,次回のイベントなども考えていますか。

藤戸氏:
 開催はしたいと思っていますが,まずは,今回の秘蔵展の結果を見てからになると思います。大好評だったら第2回があるかもしれないし,ほかの地域でも開催できるかもしれない。

4Gamer:
 秘蔵展で販売されるグッズは,通販を行わないのでしょうか。

藤戸氏:
 こちらについては検討中なので,今後の発表をお待ちください。

4Gamer:
 リアルイベントの開催について,ファンからの反応はいかがですか。

藤戸氏:
 「全国各地で開催してほしい!」という声が多いですね。遠方の人が,わざわざ東京まで来るというのは大変ですから。あと先ほど話が出ました,「通販はあるのか」といった問い合わせも多くありますね。

4Gamer:
 秘蔵展の開催は,お盆の後ですが,混みあう時期をずらした?

藤戸氏:
 お盆自体はあまり意識してなかったんですが,多くの人がお休みを取りやすい時期でもあるので,たまたま条件が折り合ったこの時期にこの場所で,ということになりました。
 あと開催の決定に関しては,コロナの自粛規制が大きく緩和されてきたことが理由です。少し前までは,何かイベントをするのに,感染対策をどうするかというのがまずスタートにあって,実施自体が大変だったんです。


キーとなるのは「人」。「FFXI」の今後は?

何かしらの形でアーカイブ化も


4Gamer:
 コラボ企画や秘蔵展のお話を伺ってきましたが,そこには「熱意」を持った人の存在があって。やっぱり「FF11」は,多くの“人”によって支えられているんだなと思いました。

藤戸氏:
 そうですね。私自身も「ファイナル・ファンタジーXI 記念サイト WE ARE VANA'DIEL」を作っているときに,その「人」っていうところをすごく感じましたね。
 自分は対談の場にはいなくて,文面をチェックしていた立場なのですが,皆さんの「FF11」に対する熱量が高くて。

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4Gamer:
 話が長くなりすぎて,全部は載せられなかったとの話も聞いていますが。

藤戸氏:
 さくらインターネットの伊勢幸一さんの回なんかは,パート4まであるのに,かなりカットしていますね(笑)。もったいないですが編集上仕方なく落としました。
 皆さんの話を聞いていると,「FFXI」というゲームが人と人をつないでいって,そこから始まる“何か”の起爆剤になれたんじゃないかなと思いました。

4Gamer:
 私自身もプレイヤーですが,ゲーム体験だけでなく何かを感じ取れる,得られる作品なのかなと思いました。

藤戸氏:
 「WE ARE VANA'DIEL」を立ち上げた理由のひとつに,「たくさんの人たちが存在していたからこそ「FFXI」がここまで来たんだよ,という証明を残す」ことがあります。なので,“20周年サイト”ではなく“記念サイト”という形にしてあるんですよ。今後も機会があれば更新していき,盛り上げていきたいですね。

4Gamer:
 「FF11」のアーカイブという役割も担っているんですね。今後,秘蔵展に出展する開発資料なども,形に残すことは考えていますか。

藤戸氏:
 プロデューサーになった自分に課しているひとつの目標が,「FFXIを何かしらの形でアーカイブしよう」ということなんです。
 それが,“オフラインの「FFXI」”という形にできればいいんですが,現実的にはかなり難しくて。ですので,まずはストーリーや音楽,絵などを残すことができればと考えています。

4Gamer:
 期待しています! いち冒険者として,自分が生きている,生きてきた世界の証が欲しいという気持ちもあるので。

藤戸氏:
 “インターネット”というものが広がり始めたころに,サービスを開始したのが「FFXI」です。それは電子の海の上でたゆたう,ある意味,形には残らないものの一つなんですよ。
 今のアプリゲームなどもそうですが,サービスが終わったら基本的に何もなくなってしまうじゃないですか。「いい音楽だったのに,サービスが終わっていて聞けなくなった」とか,普通にありますし。「FFXI」も,多分そういう運命にあるもののひとつだと思います。

4Gamer:
 オンラインゲームの宿命でもありますね。

藤戸氏:
 サービスが終了してしまったら,これまで情熱をかけてきたものがいったい何だったのかということにもなりかねない。物理的なソフトが残っているレトロゲームであれば,再度ブームがやってきて話題になることもあります。ただ,もう二度と遊べないゲームは,忘れられていくだけなんですよ。

4Gamer:
 そうですよね……。

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藤戸氏:
 「FF11」を語り継ぐための“何か”は,どんな形でもいいので残さないといけないと,強く思っているんです。

4Gamer:
 できれば,現物に残るものがいいですよね……書籍とか。オフライン版も諦められないですけど(笑)。

藤戸氏:
 できるできないはともかく,今の「FFXI」をそのままオフライン化すると,ゲームとしてはかなり物足りなさを感じるはずなんですよ。懐かしいっていうのは感じられると思うんですけど……。

4Gamer:
 20年以上前のゲームなので,システム的に古いからですか。

藤戸氏:
 多人数でのプレイが大前提にある作りですから,オフラインで遊ぶための要素は大幅に省略されてますし,オンライン前提だからこそ生きるシステムや遊びが主要素になるからです。
 欲しい人は「FF11」プレイヤーに限られると思うのですが,忠実に作ると,本当にその層の一部にしか需要がない。でも,新規を狙って今の感覚で遊べるゲームに変えると,それは「FFXI」じゃなくなるんですよ。

4Gamer:
 最近のRPGのように,クエストを受注したら画面に進捗が出て,そこをクリックしたら,ファストトラベルでその場所に飛ぶみたいな流れは違いますからねえ。今風にすると,おっかなびっくりしながらフィールドを歩くドキドキ感もなくなるでしょうし。

藤戸氏:
 これまでのアップデートで「FFXI」もだいぶ変わりましたけど,冒険の基本的な進め方は昔と一緒です。初めて足を踏み入れるフィールドには危険なモンスターも生息しているので,それを「調べる」し,戦ってもまるで歯が立たない「とてつよ」の敵であれば避けて進んだりと……。
 そういうことが必要なゲームだったんだよということは,内容を変えてしまっては伝えられないんですよね。

4Gamer:
 新たに作るからには新規の人にも楽しんでほしいですけど,“「FF11」らしさ”がなくなるのは困ります。これは確かに難しい問題です。

藤戸氏:
 おこがましい言い方になりますが,「FFXI」が礎になって,そこで不便だったところをよくしていったのが,今のゲームだと思っているんです。だから,このままのシステムで作ると「なんでわざわざ不便に?」と考える人の方がおそらく多くなります。
 仮にUIなんかを新しくしても,ゲームシステムは多人数で遊ぶことを基本にしたデザインですし,納得感のある落としどころを追及するのはなかなか難しいですね。

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4Gamer:
 世界観と物語を残すことに関してはどうでしょうか。

藤戸氏:
 できるところから進めている感じです。物語ですが,誰が何をしゃべって,というところを全文記録するなら,動画でカットシーンなどをすべて撮っておく方法もあるのかなと。ただ膨大な量になるので,手間もコストもかかって現実的ではないですね。

4Gamer:
 イベントは,テキストだけでなくグラフィックスを含めたシーンを見たいという需要もありそうです。

藤戸氏:
 残す方法については課題がありますが,なるべく当時の記憶がよみがえる形を優先しつつ,「FFXI」を知らない人が見ても理解できて,納得感のあるものに仕上げる必要があると思っています。

4Gamer:
 なかなか険しい道ですね。

藤戸氏:
 そもそも運営を長く続けられれば,オフライン版がなくても,いつでもつないで遊べますよね。見たいイベントシーンも再生できるので,アーカイブもゲーム内にあるような感じですし。
 「サービスを継続する」ことが,いつでも体験できることにつながるので,今はオリジナルとしての「FFXI」を長く運営していくということが大事でもあるのかなと。

 それがどうしても叶わない状況になった時点で,忘れられてしまうようなことがないように“アーカイブ”というワードを使って,色々と残していきたいと思っています。

4Gamer:
 プレイをやめてしまった人も,また遊び始めれば物語や音楽を楽しめますからね。

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藤戸氏:
 アーカイブとは直接関係ないのですが,拡張ディスクでシナリオがたくさん追加されてきたこともあり,新規でプレイすると同時にそれらが進行してしまうんです。
 どのイベントがどの物語の続きなのか分からなくて混乱することもあるので,2023年7月のバージョンアップから追加シナリオの進行を止められるようにしました。
 新たにスタートする方にしか効果がない仕様変更ですが,ストーリーは追いやすくなったのではないかと思います。

4Gamer:
 昔からプレイしていると,最初の物語が終わってから追加シナリオを進めることになるので,気にならなかったんですけどね。

 最後の質問になりますが,今現在でプレイヤーに発表できるトピックスがあれば教えてください。

藤戸氏:
 ゲームの外のコミュニティとして,プレイヤーが集まれるようなことができるといいなと思っています。何をするのかとか,具体的なことはまだこれからですが,そういう提案は,できるだけ前向きに検討したいですね。

 ゲームの方は,サーバーのリプレイスや今後のアップデートなどで,ヴァナ・ディールという世界と安定して遊べる場所の土台を,しっかり固めているところです。先の「もぎたて ヴァナ・ディール」で,「実家感」「戻れる場所」といったワードを使いましたが,今後もお家はバッチリ維持するので,プレイを休止してしまった人もぜひ「帰省」してください。いつでも安心して戻ってこられる場所を作ってお待ちしています。

4Gamer:
 本日はありがとうございました。

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