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マビノギ開発者インタビュー:2周年を迎えたマビノギ,日本サービスの印象と今後のアップデート予定
オンラインゲームの常として,今後もさらなるアップデートが続くわけだが,日本における過去2年のマビノギに対する感慨と,現在も進行中の「チャプター2」がこれからどのような展開を見せるのかといった将来展望を,韓国側開発スタッフdevCAT 1室 室長 イ・ヒヨン氏,同マビノギチーム海外開発ユニット ユニット長 キム・ソンアン氏,同マビノギチーム 企画ユニット ユニット長 ユン・ソングック氏に聞いてみた。
気になる話題といえば,2周年記念オフラインイベントでも話題になった女性ジャイアントがあるが,その日本における導入は思ったよりも早く,なんと今週の木曜,6月7日になるという。
■少しずつ異なる「マビノギ」の各国プレイヤー
日本で「マビノギ」が2周年を迎えたということで,本日はマビノギのここまでの歩みについてと,今後の展開に関していろいろお聞きしたいと思います。最初に,この2年間で印象に残っている出来事を教えてください。
イ・ヒヨン氏:
日本の場合,マビノギが初めて海外に進出した場所ですので,国によってプレイヤーさんの傾向が本当に違うと感じたのが,一番印象深かったですね。
4Gamer:
日本のプレイヤーとほかの国のプレイヤーは,どのように違いましたか?
イ・ヒヨン氏:
日本にはゲームの種類がいろいろあって,オンラインゲームというのは,そのうちの一つといった感じですよね。オンラインゲームを選択したプレイヤーさんは,世界観を忠実に受け入れているという感覚があります。
韓国などでは,日本のプレイヤーさんほどゲームの世界観に没入していないですね。あと,日本のプレイヤーさんはゲーム内でのオープンチャットが少ない気がします。全体にゲーム内での動きが静かですね。
4Gamer:
では,マビノギのサービス対象として,日本以外の外国となる中国や台湾のプレイヤーに関しては,どのように感じていますか?
キム・ソンアン氏:
中国におけるマビノギはPvPに特化した仕様になっているのですが,これはマビノギに限ったことではなく,中国ではPvP主体のオンラインゲームが好まれる傾向にあるので,中国サイドの要望でそのような形になりました。また中国では「ほかの人に見せるための外観」にこだわるプレイヤーが多いですね。赤や緑などの目立ちやすい色の装備を好んでいる傾向があります。
一方台湾の場合は,韓国で入れている仕様,日本で入れている仕様を,そのまま喜んで受け入れてくれていますね。
4Gamer:
なるほど……。それでは日本独自の展開についてお聞きします。好評の「キュアレスゴーグル付きキャスケット」や「らふティオズアーマー」などは日本のデザインコンテストの入選作品ということで,日本ではNPCから購入できます。そのほかの国々ですと,モンスターのドロップアイテムとしてしか入手できない仕様になっていますが,例えば同様のコンテストをほかの国でやる計画はありますか?
イ・ヒヨン氏:
デザインコンテストは国によって事情が違いまして,韓国ではあまりそのようなコンテストが一般的ではないので,当面は開催の予定がありません。国によって違うコンテンツを導入するというのは,コンテストに限らず行っていることですので,これからも続けていく予定です。
4Gamer:
マビノギの今後についてですが,日本では近々,ジャイアントの女性が実装される予定になっています。ジャイアントの女性はデザイン面で相当苦労されたというお話でしたが,どのような面にとくに気を遣ったのでしょうか?
イ・ヒヨン氏:
ジャイアントを企画するときに,「力」というのがキーワードになっていましたので,マッチョなイメージで考えていました。ジャイアントの男性に関しては,マッチョなイメージで作ることは,それほど難しくなかったのですが,女性のマッチョなイメージは,あまり思いつかなかったので(笑),最初はジャイアントの女性を実装しなかったんですね。
しかしジャイアントの男性を導入してみたら,韓国プレイヤーなどから女性のほうの導入も強く要望されまして。内部のイラスト担当の者が,マッチョなだけではない女性を具体的に提案してくれたので,導入を決めたんです。「力」だけではなくて,「強いながらも美しい」という女性になるよう考えて企画しました。
日本でも,6月7日のアップデートで,いよいよ女性ジャイアントが導入されます。
4Gamer:
今まで男性のキャラクターしかいなかったところに,女性のキャラクターも実装されるということで,「マビノギ」のシステムの一つである結婚ができるようになったのは,喜ぶべきことですね。韓国では人間,エルフ,ジャイアントの異種族間の結婚も実装されているようですが,それが日本に導入される予定はありますか?
イ・ヒヨン氏:
6月に予定されているアップデートで日本でも導入されます。
■変身したエルフとジャイアントには独自スキルも
「マビノギ」ではエルフとジャイアントが敵対関係にあります。このような関係になった理由は,これからゲーム内で明らかになるのでしょうか?
イ・ヒヨン氏:
エルフとジャイアントの敵対関係に関しては,韓国ではすでに実装されているエルフ,ジャイアントの変身スキル入手クエストの中で,その理由が少し説明されています。それ以外にも,いまジェネレーション7(G7)を企画しているのですが,その中で巡る遺跡などを通して,より明らかになっていく予定です。
4Gamer:
おお,それは楽しみですね。日本では7月に導入される予定の,エルフとジャイアントの変身スキルに関してですが,人間と違って,エルフとジャイアントの変身スキルはメインストーリー内ではなく,クエスト方式で入手できるそうですが,なぜそのような形になったのでしょうか?
イ・ヒヨン氏:
マビノギには「チャプター1」と「チャプター2」があり,今は「チャプター2」が進行中です。「チャプター1」はストーリーによってゲームが展開していきますが,「チャプター2」は「冒険/探検」というのがキーワードになっていますので,大規模なストーリーによるゲームの進行は考えていませんでした。
それで,エルフとジャイアントの変身スキル入手に関しては,ストーリー形式ではなく,クエスト形式になりました。ただ,大規模なストーリーはないですが,クエスト進行中のNPCなどのセリフという形で背景のストーリーは入っていますので,韓国のプレイヤーには,「クエスト内で久しぶりにストーリーが楽しめて嬉しい」という反応が多かったです。
4Gamer:
淡々と条件を満たしていくだけではなく,クエストの中にストーリーが入っているのですね。過去のコンテンツのものなので難しいとは思うのですが,エルフやジャイアントでプレイを始めた新規のプレイヤーが「チャプター1」の「ジェネレーション1〜3」のストーリーをエルフやジャイアントで楽しむというのは,できないものでしょうか?
イ・ヒヨン氏:
エルフやジャイアントを最初に選択したプレイヤーが「ジェネレーション1」から「3」までのメインストーリーを行うのは,やはり難しいです。メインストーリー自体が人間という種族を中心に企画されたものなので。
うーん,残念ながら難しいと。では,パラディン,ダークナイトといった人間の変身と,エルフ,ジャイアントの変身との違い,特徴を教えてください。
ユン・ソングック氏:
例えばパラディンの場合,特有のスキルはありません。また,ダークナイトもモンスターのテイミング(コントロールオブダークネス)だけです。
それに対してエルフとジャイアントが変身した場合は,それぞれ変身後の専用スキルがあります。エルフは「エルヴンマジックミサイル」という,弓と魔法を合成したような強い攻撃ができるスキルを持てます。
同じくジャイアントの場合も,周囲の敵を攻撃する強力なスキル「フルスイング」を使うことができます。そこが大きな特徴ですね。
4Gamer:
エルフやジャイアントは変身スキル導入という大きな動きがありましたが,人間に関しては「ファイナルヒット」以降新しいスキルが導入されていません。今後,人間に関して新しいスキルの導入の予定はありますか?
イ・ヒヨン氏:
エルフとジャイアントは人間より遅れて導入された種族ですので,人間を選択したプレイヤーの累積レベルを考えると,強さの面でまだ劣っている状態です。それで,少しでも早く追いついてもらうために,今はエルフやジャイアントに力を注いでいますが,人間に新しいスキルを入れる予定がないということではなくて,この差がある程度埋まったら,エルフやジャイアントと人間に共通の新しい魔法などといったスキルの導入も考えています。
4Gamer:
新スキルではなく,これ以上はまだランクが上げられないという制限のかかったスキルが生活系の一部にまだありますが,上位ランクの実装予定はどうなっていますか?
イ・ヒヨン氏:
上限があるスキルとしては「料理」や「休憩」などがありますが,そのスキルを上げることによって,どういったメリットが付与されるかという面で,まだよい企画が上がっていないというのが実情です。
例えば「料理」は,いまランク8で制限がかかっている状態ですが,ただ単に「料理が上手にできるようにする」というだけでは足りないと思います。新しいアクションとかメリットを面白く入れていきたいと考えているので,保留状態ですね。
4Gamer:
では料理との関係でお聞きします。「マビノギ」は食物によってステータスがアップする仕様になっていますが,韓国では,アップするステータスの上限に制限がかけられました。日本でも近いうちに制限が入るのでしょうか?
八木沢彰彦氏:
ジャイアントの女性実装と同じタイミングで,食事によるステータスアップの制限も導入される予定です。
4Gamer:
ではスキル以外の新要素に関して。韓国では「アルビ上級ダンジョン」という新しいダンジョンが実装されていますが,日本での実装はいつになりそうですか?
八木沢彰彦氏:
女性ジャイアント実装と同じ,6月7日のタイミングです。
■G7新フィールドでは船での移動と戦闘が
「アルビ上級ダンジョン」の特徴を教えてください。
ユン・ソングック氏:
すでに実装されているアルビダンジョンは,クモなどの虫系モンスターが多く出るというコンセプトで,アルビ上級ダンジョンもそれを引き継いでいます。難度としては現在実装されている「キア上級ダンジョン」よりも少し難しいですね。キア上級ダンジョンで遊んでいるプレイヤーが「簡単すぎて退屈だな」と思ったら,アルビ上級に移動するといった形で,ティルコネイルに行くプレイヤーも多くなると思います。
4Gamer:
それでは,さらに先のお話になりますが,先日行われた「マビノギオフラインイベント」で,新しいフィールドの構想案が発表されました。この「水」をテーマにした新フィールドに関しては,現在,どのくらい開発が進んでいますか?
イ・ヒヨン氏:
プロトタイプが完成したところですね。川があって,川の上に船があって,その船の上で人が動けて,何かをするという一連の動きに関し,検証して順次クリアしていっています。ワールドの基点のコンセプトがだいたい決まって,現在は川の位置や幅など細かいところを決めているところです。
1か月前に情報を公開したときには,コンセプトだけがある状態でしたが,今は技術的な問題をクリアした状態で,これから組み上げていく段階ですね。
4Gamer:
新フィールドができる場所はどのあたりになりますか?
イ・ヒヨン氏:
イリア大陸のほうの方にラノ地域があって,上のほうにピシス地域があります。現在はその中間が空いていますが,そこに入る予定です。
4Gamer:
新フィールドでは船に乗って戦闘ができるそうですが,これに関して詳しく教えてください。
イ・ヒヨン氏:
新フィールドでは,船を自分で操作できます。プレイヤーは船に乗り,川に沿って移動しながら,川辺に出現するモンスターとどうやって戦っていくか,戦略的に考えなければなりません。また川辺だけでなく,川の中にもモンスターが配置されるので,どうやってそのモンスターと戦うか,そういったことを考えながら進めるコンセプトになっています。
4Gamer:
敵が船に乗って現れて,プレイヤーが敵の船に乗り移って戦ったり,敵がプレイヤーの船に乗ってきて戦ったりといった動きはありますか?
イ・ヒヨン氏:
現段階では,敵は人間型ではないモンスターばかりですので,お互いが船に乗っての戦いは行われません。船自体が流れの速い川に沿って移動するという形になるので,水の上での戦闘は行われないはずです。
4Gamer:
分かりました。同じく水のフィールドで,日本向けに温泉が作れないかという話があったと思うのですが,これは実現しそうですか?
イ・ヒヨン氏:
温泉は入れたいと思っているんですが,今回の新フィールドはアマゾンのような暑い地域になっているので,ちょっと温泉は似合わないですね(笑)。寒いところに温かいイメージで入れたいと考えていますので,今後,適当な場所があったら導入したいと思います。
4Gamer:
ちなみに,温泉に入ると,プレイヤーには何かメリットがあるのでしょうか?
イ・ヒヨン氏:
温泉に入るとイベントが起きるようにしたいですね。個人的に温泉に浸かっている猿が大好きなので(笑),温泉に入ったら猿にアイテムをもらえるとか,面白いイベントにしたいと考えています。
■日本での「ラットマン人気」に開発陣がびっくり
最近のアップデートで増えたフィールドはイリア大陸のものがほとんどですが,今後,ウルラ大陸に新しいフィールドや町が出来る予定はありますか?
イ・ヒヨン氏:
現在はチャプター2が進行中ですが,チャプター2はイリア大陸の冒険がメインのキーワードですので,現在はウルラ大陸の新フィールドや町の実装予定はありません。
4Gamer:
日本にはハウジング(家)の要素がまだ入ってきていませんが,今後の実装予定はどうなっていますか?
八木沢彰彦氏:
まったく予定がないというわけではないのですが,今はまだ話し合いの段階です。日本にだけ導入されていない状態ですし,「今後絶対に入れません」というわけではないのですが,日本に入れるときにどういう風にするかというのを詰めている段階です。
4Gamer:
プレイヤーが飼えるペットの種類もだいぶ充実してきましたが,今後,どのようなペットを実装していく予定でしょうか?
キム・ソンアン氏:
新しい騎乗ペットとして,ダチョウの実装を企画していまして,早ければ夏休みには入れられるのではないかと考えています。
4Gamer:
では,あらためてこの2年間を振り返ってなのですが,日本でのサービスを軌道に乗せ,運営していくに当たって,また日本側からの要望を検討したり実現したりするに当たって,印象に残ったことや苦労した点を教えていただけますか?
キム・ソンアン氏:
そうですね……日本は人気があるモンスターに特徴がありますね。昨年ペットとして導入されたラゴデッサもその一つなのですが,日本では「ラットマンをペットとして飼いたい」という声が多くて,韓国やほかの国ではそういう要望が全然なかったので,けっこう衝撃を受けました(笑)。モンスターの好みがはっきりしているのは面白いですね。人間型に変身するペット(黒オオカミ,ペルシアン)も,ほかの国と比べて日本での評判がよかったのが印象深いです。
ユン・ソングック氏:
韓国ではダンジョンのロビーでパーティメンバーを募集することが多いのですが,日本の場合はゲーム外の掲示板でメンバーを募集したり,ダンバートンで集まってからダンジョンに出かけたりといったケースが多いようです。こういう,ゲーム外の要素が介在している点は,ほかの国と違う部分で,強く印象に残っています。
イ・ヒヨン氏:
ゲーム内でオープンチャットをしている人があまり多くないというのが,日本プレイヤーの見た目での特徴だと思います。ほかの国での状況と比べたとき,生産も戦闘も特別に盛んというわけではないのですが,演奏を好むプレイヤーは実に多いです。楽器を追加してほしいといった要望が多いですね。
4Gamer:
では最後に,日本のプレイヤーに向けてメッセージをお願いします。
キム・ソンアン氏:
ここまでマビノギをプレイしていただいて,ありがとうございます。これからも楽しくプレイしてもらえるようにがんばりますので,よろしくお願い致します。
ユン・ソングック氏:
韓国と日本でプレイヤーの特徴が異なる部分もありますが,日本のプレイヤーのニーズに応えられるよう,日本向けコンテンツの企画もがんばっていきたいと思います。これからもぜひマビノギを楽しんでいただけるよう,よろしくお願い致します。
イ・ヒヨン氏:
マビノギでは以前から,競争や,よいアイテムを手に入れる,よいスキルを得るというだけでない,「ほかの面白さ」を追求したいと思っています。そういう目標と照らし合わせたとき,日本のプレイヤーさんが楽器を演奏して楽しんでいる姿というのが,ある意味一番このゲームにふさわしいようにも思えます。
ほかのプレイヤーさんとの競争ではなくて,ゲームのコンテンツを楽しめる,本当の面白さを追求できるように作っていきたいと思いますので,日本のプレイヤーさんにもそういった部分を,ますます楽しんでもらえたら嬉しいです。
4Gamer:
本日はありがとうございました。
マビノギが次に大きな転換を見せるのは,おそらく年内いっぱいのタイミングで終了予定のチャプター2から,チャプター3へと移行するときであろう。そのころにはインタビュー内で言及されていた人間,エルフ,ジャイアントの種族間の強さの差も埋まり,新たな展開が期待できるはずだ。
とくにマビノギ開発陣のリーダーであるイ・ヒヨン氏は,かつてない新しい感覚のオンラインゲーム作りに大いなる意欲を見せてくれているので,今後の展開に期待したい。
果たして来年の今ごろ,マビノギが3周年を迎えるころには,どのようなゲームに進化しているだろうか。今から楽しみである。(ライター:キーオ林)
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