2004/11/01 18:21 |
2004年10月30日,ブロードバンド推進協議会は,オンラインゲーム専門部会(SIG-OG)の第4回研究会を開催した。今回は,韓国や欧米を中心に動きが活発化しつつある「e-Spotrs」がその議題。ビジネスとしてのe-Sportsの可能性や,現状の課題などについて発表,議論が行われた。
まず最初に,World Cyber Games(WCG)やCyberathlete Professional League(CPL)といった国際大会の日本予選の運営などを務めるテクノブラッド イベント事業部の犬飼博士氏が,海外で放映されたニュースの映像などを交えながら,WCGやCPLを始めとしたe-Sportsの現状についてレポートを発表。韓国などで誕生しているプロゲーマーについての解説も行った。解説の中で犬飼氏は,韓国のプロリーグで活躍するイム・ヨハン選手や,北米を中心に活躍するフェイタリティ選手などを紹介。イム・ヨハン選手は,LG/IBMのテレビコマーシャルに出演するなど,年収は2500万にものぼるとした。 続いて氏は,WCGやCPLの成り立ちの経緯や,各国のe-Sportsイベントの実例を紹介。CPLは,プレイヤーが自分のPCを持ち寄って遊ぶ「LANパーティ」が文化的な母体となっていること,WCGは,韓国における国家的なブロードバンド施策の流れや,サムスングループによる大規模な投資があることなどを説明した。犬飼氏によれば,WCGの運営費用としては20億円ほどが費やされているという。これは野球やサッカー,格闘技などといった大型のスポーツイベントと比べても,まったく遜色がない規模の投資額だ。 現在e-Sportsは,新たな国際イベントとして注目を集めつつあり,韓国を始め,シンガポール,ロシアなどといったIT産業を推進する各国で,政府レベルで支援が行われているという現状があるが,そういった大きな流れは,この金額からも分かるというもの。WCGを運営するWCG委員会の名誉会長には,韓国のノ・ムヒョン大統領が就任しているなど,他国(とくに韓国)におけるe-Sportsは,日本における「ゲーム大会」などとはまったく感覚が違う代物だといえるだろう。
犬飼氏の講演の後,実験店舗LEDZONEで「カウンターストライク ネオ」の運営を手がけるナムコの土屋哲夫氏が登壇。土屋氏は,LEDZONEのコンセプトが漫画喫茶/ネットカフェとは異なることや,オフラインで対戦できる環境の必要性を説明。また店舗単位の事業形態という視点で,大会など各種イベントが十分ビジネスとして成り立つとし,またそういったイベントの開催によって顧客を取り込んでいくことの重要性を解説した。 また土屋氏は,e-Sportsの可能性について「スポーツマーケティングの実現が必要」だとしたうえで,「今はまだ儲かる段階ではなく,畑を耕し種を撒く時期」だと説明し,LEDZONEが,e-Sports(カウンターストライク)の間口としての役割を果たしていくだろうとコメントした。 土屋氏は,8月にカウンターストライク ネオが導入された南松本店での様子など,実際の現場の興味深い動向も説明。南松本店では,対戦格闘系のゲーマーを中心に広まりつつあること,またそういったプレイヤーは,プレイヤー自身が客を連れてくる傾向がある(一緒に遊ぶ対戦相手が欲しい)ことなどを報告した。 土屋氏によれば,e-Sportsの競技となりえるようなゲームタイトルは,立ち上がる(ゲームを認知させ,理解させる)までの時間はかかるが,一度立ち上がってしまえば,収益性の高いコアユーザーが付くようになるという。土屋氏は,「作って終わりという既存のゲーム販売の枠に囚らわれず,まずは,1タイトルが5年は飽きられずに遊ばれるということに自信を持つのが重要。そのうえでしっかりとした運営/サービスを心がける必要がある」として,公演を締めくくった。
今回の研究会の最後に行われたパネルディスカッションでは,講演を行った犬飼氏,土屋氏の両名に加え,e-Sports関連の記事を多数寄稿しているフリーライターの杉山淳一氏が参加。日本でのe-Sportsの実情や今後の課題について議論が行われた。 最初は「日本でe-Spotrsの認知度はまだまだ低いが,どうして他国との格差があるのか」というテーマが投げかけられ,それに対して犬飼氏は,そもそもPCゲームが日本では遊ばれていない,情報が英語ベースなため一般ユーザーに届かない,などの問題点を指摘。杉山氏は,ライターの観点から「ゲームメディアといった趣味誌(専門誌)で情報が"閉じている"問題もある。より一般的なメディアへの露出も必要だ」とした。 ただ犬飼氏や杉山氏によれば,日本国内におけるe-Sportsイベントへの参加人数などは,年々着実に増加の一途を辿っており,認知度が上がってきているという確かな感触は感じているという話であった。
PCゲーム市場自体が小さく,プレイヤーが参加するための間口が狭いなどといった根本的な状況の違いもあり,まだまだ大きなムーブメントとは言えない日本でのe-Sports。ただ昨今,オンラインゲームの普及もあって,"PCでゲームを遊ぶ"ことの広まり(まだまだ一部ではあるが)や,アーケードゲーム的なアプローチで挑戦を試みるLEDZONEの活動など,その間口の狭さという問題については,若干だが改善の兆しも見えるところ。日本でe-Sportsが普及するのか否か,今後の動向が注目される。(TAITAI)
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