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「グラナド・エスパダ」の大胆なリニューアルは,プレイヤーにどう受け止められたのか。1か月経った今だから話せる舞台裏を運営の現場に聞いてみた
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印刷2012/08/18 00:00

インタビュー

「グラナド・エスパダ」の大胆なリニューアルは,プレイヤーにどう受け止められたのか。1か月経った今だから話せる舞台裏を運営の現場に聞いてみた

画像集#005のサムネイル/「グラナド・エスパダ」の大胆なリニューアルは,プレイヤーにどう受け止められたのか。1か月経った今だから話せる舞台裏を運営の現場に聞いてみた
 ハンビットユビキタスエンターテインメント(以下,HUE)は,2012年7月18日,オンラインRPG「グラナド・エスパダ」(以下,GE)のリニューアルを実施した。このリニューアルでは,名称のマイナーチェンジや新規コンテンツの追加といった従来よくある内容に留まらず,50〜80%という有料アイテムの大幅値下げや1日18時間の運営チームによるゲーム内サポート,いきなり最高位レベルまでジャンプアップできるシステムの導入といった,サービスとしての本質的な部分にもメスが入れられている。

 リニューアルの構想を練ったのは,GEのインタビューなどでお馴染みとなっている日本運営プロデューサーの中尾圭吾氏である(関連記事)。今回は,中尾氏の大胆なリニューアル案を受けて舞台裏ではどのような動きがあったのか,リニューアルに対するプレイヤーの反応はどうだったのか,そして今後,どのようにGEを展開していくのかについて,運営ディレクターの田山佳裕氏と運営企画部の松田勇樹氏に,現場の立場からの話を聞いてみた。


どんでん返しの連続だった6年めのリニューアル。その成功要因と今後の課題


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HUE 運営ディレクター 田山佳裕氏
画像集#011のサムネイル/「グラナド・エスパダ」の大胆なリニューアルは,プレイヤーにどう受け止められたのか。1か月経った今だから話せる舞台裏を運営の現場に聞いてみた
HUE 運営企画部 松田勇樹氏
4Gamer:
 本日はよろしくお願いします。まずは,お二人がどういう立場でGEに携わっているのかを教えてください。

田山佳裕氏(以下,田山氏):
 自分は運営ディレクターとして,現場の企画のまとめをやっています。プロデューサーである中尾の指示をもとに,運営チーム全員で話し合い,具体的に何をするのか決めていくのですが,その方向性を具体的な形にするのが主な仕事です。

松田勇樹氏(以下,松田氏):
 私は運営チームで,実際にプレイヤーに提供する企画の細部を担当しています。企画に合わせたゲームの調整やイベント企画の策定,その進捗管理などをしています。例えば,翌週に実施するゲーム内イベントに問題がないか,販売アイテムの設定やアップデートが期日に間に合うかどうかといったことのチェックですね。

4Gamer:
 なるほど,分かりました。今回は,現場の視点でリニューアルの舞台裏について語っていただこうと思います。

田山氏:
 私はもう5年以上,中尾と一緒にGEに携わっていますので,舞台裏のことでしたらいろいろリアリティのある話ができると思います(笑)。

松田氏:
 今回は,中尾からも現場の視点で好きに話していいと言われていますので,逆に内容が薄いって言われないように努力いたします(笑)。

4Gamer:
 それでは,本題である今回のGEのリニューアルについてですが,実装後の手応えなどを教えてください。

田山氏:
 事業的な成果としては“非常によい”ですね。ただ,たくさんの内容を同時に実装しましたので,調整が必要な案件が大量に発生しています。

松田氏:
 ゲーム内の通貨バランスやミッションプレイを面白くするための修正,新キャラの調整などリニューアルが終わっても相変わらず日々作業に追われていますね。

4Gamer:
 実装直後に広報の方から伺った話だと,新しくログインしてくる人数は現在,1日あたりでリニューアル前の約3倍になっているとか。

田山氏:
 実はもっと伸びていて,以前の平均と比べると4〜5倍になっています。

4Gamer:
 なるほど。運営チームでは,この状況をどう分析していますか?

田山氏:
 いろんな理由があるとは思いますが,やはり,全有料アイテムを50%以上値下げしたのが大きかったと思います。値下げを発表した6周年記念オフラインパーティーでも,会場の反応は明らかに大きかったですし……。
 とはいえ,この値下げは社内的にはかなり大きな問題提起でした。HUEも企業ですから,売上目標という数字に対して,ここまで商品の価格を下げて大丈夫なのかと。ただ,「50%以上の値下げ」というコンセプトだけは,最初から決めていたんです。

リニューアルの反響
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4Gamer:
 それは中尾さんが言い出したんですか?

田山氏:
 発端は,自分と中尾の雑談でした。「これからの時代に合わせるなら,今の水準じゃ無理だよね」と中尾に言われ,「じゃあ半額でどうでしょう?」「じゃあ,それで」みたいな感じで。

4Gamer:
 軽いですね(笑)。

松田氏:
 もともと社内でも,以前から薄利多売の方向にシフトしようという空気はあったんです。とはいえ,いきなり半額というのは,さすがに僕も「本気ですか?」と聞き返しましたが。そのときはアイテムモールの値下げ以外にも,能力開放など育成関係の無料化の話も進んでいましたから。

4Gamer:
 ……実際のところ,有料アイテムが半額化や無料化になってビジネス面は大丈夫なんですか?

田山氏:
 うーん,まったく影響がないかといえば嘘になります。しかし,予想していたほどのダメージではありませんでしたし,アイテム購入に至る心理的なハードルが下がってくれたたことで,売上件数は大幅に増えています。

松田氏:
 影響があるとすれば,売上単価が下がったことで中尾が文句を言われている程度ですね。ただまあ,プレイヤー数も売上件数も増加しているわけですから,中尾も「これでいい。ゴチャゴチャ言われても気にしない! 現場はまったく気にする必要はないからって」って開き直っていました。


長時間のリアルタイムゲーム内サポートで気づかされた“本当の初心者の視点”


4Gamer:
 オフラインパーティーでは,「リアルタイムゲーム内サポート」についても大きな反響がありましたよね。中尾さんが「どうせ終電を逃したら帰れないんだから,始発が動き出す早朝5:00までやればいい」みたいなことを,本気か冗談か分からないような調子で発言していましたが。

画像集#006のサムネイル/「グラナド・エスパダ」の大胆なリニューアルは,プレイヤーにどう受け止められたのか。1か月経った今だから話せる舞台裏を運営の現場に聞いてみた
田山氏:
 ええ,今まさに,期間限定で1日18時間のサポートを実行しています。本来は,17:00から22:30までなんですけれど。当初は「25時くらいまではサポートしたいよね」って話だったんですけど,どうせ帰れないんだからということで朝5:00までサポートすることになりました。

4Gamer:
 サポートは,どんな体制で行っているのですか?

田山氏:
 今は,初心者の質問に答えるGMが1名,GEを始めて少し慣れてきた人とミッションなどを一緒にプレイするGMが1名という,常時2名態勢で回しています。

松田氏:
 初心者向けの質疑応答と,ミッションのプレイは時間を分けて実施しています。

開拓党のミッション体験会
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4Gamer:
 プレイヤーが増えている今,人数をさばくのは大変じゃないですか? とくにミッションは,短いものでも1回終わらせるまでに20〜30分くらいは掛かりますよね。

松田氏:
 そこは臨機応変にやっています。まったくミッションを経験したことがないという人達ばかりではありませんから,例えば,GMが主導して必要人数が集まったところで,経験者の方や,開拓党副党首のプレイヤーの方に先導をお願いすることもありますし。

4Gamer:
 なるほど,プレイヤー同士の助け合いもあるわけですか。
 では,もう一方の質疑応答では,どんな質問がくるんでしょうか?

田山氏:
 オンラインゲームは初めてという方もいらっしゃいますので,本当に基本的な質問が出てきて驚いています。「セーブはどうやるんですか?」とか。また最近では,学校の授業などを通じて,チャットをはじめとするオンライン上のコミュニケーションの取り方は学んでいるけど,ゲームはやったことがないという方がいらっしゃるんですよね。そういう方からすると,GEの世界に降り立ってから,どうやって移動すればいいのかさえ分からないんです。

4Gamer:
 それはなかなか大変そうですね。

松田氏:
 今までのGEのサービスには,そういった生の“初心者の視点”が足りていなかったんです。ベテランのプレイヤーと接しているうちに,初心者の感覚を忘れてしまうんですよね。今回,さまざまな視点からGEを見る必要があるとあらためて実感しました。

田山氏:
 自分や松田のように何年もGEに携わっていると,やはり慣れが出てしまいがちですし,新しく入ったスタッフでも,長く続けていると初心者の視点ではなくなってきます。“初めてで,何も分からない”状態を忘れてしまうと,本当に必要なサービスはできないんです。

党チャット中にも個別チャットでサポートを行うGMさんの様子
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4Gamer:
 リアルタイムゲーム内サポートは,正式にサービス化する前に試行期間がありましたよね。そのときとも印象が違いますか?

田山氏:
 全然違います。最近は非常にたくさんの新規プレイヤーさんが入ってきていますので「これで十分」と思っていたことも,正式にサービス化すると,もっと分かりやすく,もっと噛み砕いて説明しないとダメなケースがあると分かりました。
 また,質問は開拓党の党チャットでなくても,直接ささやいてもらってもOKですよと案内したところ,一斉に質問が飛んできて対応に追われたこともありました。始めたばかりで,他人に質問を聞かれるのが恥ずかしいという方も多いようで,分からないことがあっても質問できずにいた人も多かったんですね。ゲーム内サポートを強化してよかったと思いました。

4Gamer:
 なるほど。
 しかし,このまま順調にプレイヤー数が増えていくと想定すると,現状の体制では手が回らなくなることもありますよね。コストとの兼ね合いもありますから,簡単に人手を増やせるわけでもないでしょうし。
 何か対策は考えていますか?

田山氏:
 現状の1日18時間のサポート体制を維持していくことはできないでしょうが,ゲーム内サポートは時間短縮されることはあっても,今後も継続していく予定です。また,ミッション体験用に,既存のものより難度を下げた初心者専用のミッションを用意するという案が出ています。

画像集#010のサムネイル/「グラナド・エスパダ」の大胆なリニューアルは,プレイヤーにどう受け止められたのか。1か月経った今だから話せる舞台裏を運営の現場に聞いてみた
松田氏:
 現在使っているミッションよりも難度が低く短い時間で回れて,ミッションとはこういう段取りを踏んで進めるものなんだということが分かるようなものですね。

田山氏:
 実際,今回のリニューアルでも企画の一つとして提案しているんですよ。しかし,ほかのコンテンツの工数が予想以上にかかることが判明して,先送りとなっている状態なんです。

松田氏:
 通常難度のミッションでは,初心者が次々に倒されてしまうんですよね。「助けてー」とか言ってるのをGMや先導者が横から蘇生してあげる光景は,逆に和気あいあいとしていて楽しいんですけれど。

田山氏:
 皆さん,ゲームをやっていると,ちょっと背伸びしたいという願望を持っているんですよね。事前に「難度が高いので,大変ですけれどいいですか?」とも聞くのですが,たいていの人は「それでも行きたい!」と参加に積極的です。

4Gamer:
 ともあれ,初心者専用ミッションができるまでは,現状のミッションを使って体験会をやっていくわけですか。

松田氏:
 ええ。またそれと同時に,現在,GMに向けたリアルタイムゲーム内サポートのマニュアルを見直している最中です。今回のリニューアルのユーザーの方の反応を見て,より良いサポートを提供するため,バージョンアップしていくことになりました。

田山氏:
 GMの誰が担当しても一定の水準を保てるような体制を構築する必要がありますので。

GMさん仕事中
画像集#017のサムネイル/「グラナド・エスパダ」の大胆なリニューアルは,プレイヤーにどう受け止められたのか。1か月経った今だから話せる舞台裏を運営の現場に聞いてみた


ゲーム開始直後から最高ランクのキャラが使える「ジャンピング」。その反響は?


画像集#018のサムネイル/「グラナド・エスパダ」の大胆なリニューアルは,プレイヤーにどう受け止められたのか。1か月経った今だから話せる舞台裏を運営の現場に聞いてみた
4Gamer:
 それでは「ジャンピング」の反響についても教えてください。実際のジャンピングの利用率はどれくらいですか? 

田山氏:
 半分半分ぐらいでしょうか。利用する方法はさまざまで,GEやほかのオンラインRPGに慣れている方は,その場でMasterキャラを使い始めるケースが多いです。それ以外の方は,とりあえずMasterになれるカードをキープしておいて,ある程度ゲームに慣れてから使ってみようという感じでしょうか。

4Gamer:
 初心者が間違ってジャンピングを利用してしまうと,何だか分からなくなってしまうというようなことはありませんか? 

田山氏:
 そうならないよう,入手される前に「本当に手に入れますか?」と,二重三重の警告をうっとおしいほど出しています。

松田氏:
 「このシステムを利用すると,GE本来の楽しさを損なうおそれがあります」という内容の警告文ですね。とにかく注意を促して,「それでも」という方にだけご利用いただいています。

4Gamer:
 利用者からの反響はどうですか?

松田氏:
 良し悪しがありますね。レベル差が開いていたフレンドと一緒に遊べるようになって嬉しいという感想がある半面,本来ならMasterに到達するまでの間に身に付くはずだったことが,すべて飛んでしまうわけですから,プレイするうえではいろいろ不都合が生じることもあります。
 幸い,コンテンツ面についていえば,GEでは現在70を超えるプレイアブルキャラクターが存在します。数キャラをMAXにしても,その後にやることはいくらでもありますので,一般的な1キャラクターゲームのように大きく問題にはなることはありません。

画像集#019のサムネイル/「グラナド・エスパダ」の大胆なリニューアルは,プレイヤーにどう受け止められたのか。1か月経った今だから話せる舞台裏を運営の現場に聞いてみた
田山氏:
 導入してみると,初めてMasterキャラを持ったプレイヤーが,古参プレイヤーと一緒に遊ぶようなケースも増えています。そこで知識が足りないことが問題になることもあるようですが,基本的には「初めてなんですけれど」とアピールすることである程度解決しているみたいですね。
 とくに,不特定多数のプレイヤーとミッションなどを遊んだりする古参プレイヤーには,初心者に対して気遣いのできる方が多いので,運営チームとしても助かっています。

4Gamer:
 それでは,オフラインパーティーで発表されて,まだスタートしていない要素についても教えてください。
 2012年8月開始予定のワールド(サーバー)移住有料サービスは,予定どおり開始されますか?

田山氏:
 若干遅れて,2012年8月下旬から9月上旬にスタートできる見込みです。
 これもリニューアルと同時のサービス開始を目指していたのですが,不具合の修正が間に合いませんでした。実装しようと思ってテストをしてみると,移住先に自分のキャラクターがいなくて。もう,どうしようもありません(苦笑)。当然ですが,そういった不具合の起きない状態にしてから実装させていただきます。

松田氏:
 これは楽しみにされている方も多いはずのサービスですので,最優先で実現すべく作業を進めています。もちろんその間も,週間のアップデートや大型のアップデートの進行を止めないように進めていきます。

4Gamer:
 スマートフォン版「GEMOCON(ジモコン)」の進捗はどうでしょう?

松田氏:
 もう韓国ではサービスが稼動しているのですが,日本語版は現在確認している不具合を解決次第,開始する予定です。2012年8月下旬に,韓国からプログラマーが来日して直接作業をする予定となっています

田山氏:
 リニューアル以前に発生していたDump処理のエラーも,韓国からプログラマーが来てくれたとたん,解決できたんですよね。GEMOCONに関しても,早期に解決してもらいます。


運営チームの顔出しで始まった第1回「GE大会議」。今後は現場主導で“顔の見える”オープンな体制に


4Gamer:
 それでは,リニューアルに伴って行われた運営方針の改革について教えてください。今後は,すべてオープンにしていくとのことですが,先日の第1回「GE大会議」の生放送ではサポートの現場であるGMさんが顔出しで登場していましたよね。

田山氏:
 GEの運営は,元々プロデューサーの中尾がプレイヤーの方の意見を聞いてゲームやサービスに少しずつ意見を反映していました。しかし先日,中尾からそういったことを「現場主導でやっていく必要がある」と言われて,いきなり出ることになりました。

松田氏:
 元々,GEの運営はインドア属性の人間が多くて,表に出るようなタイプは少ないです。ですので,最初は現場からの非常に強い抵抗がありましたね。

田山氏:
 そうですね……。最初に中尾が全員顔を出そうと言ったときは,すぐには「分かりました,出ます」とは言えませんでした。

松田氏:
 正直,中尾自身が現場経験と表に出ることの両方をやっていなければ誰も納得しなかったでしょう。

田山氏:
 しかし,現場主導でやっていくにあたってお客様たるプレイヤーさんと逃げ場のない状況でしっかり向き合って行く必要があると思いました。

4Gamer:
 大会議を終えてみての感触はどうですか?

画像集#008のサムネイル/「グラナド・エスパダ」の大胆なリニューアルは,プレイヤーにどう受け止められたのか。1か月経った今だから話せる舞台裏を運営の現場に聞いてみた
松田氏:
 運営チームとプレイヤーの方とで,さまざまな部分において意識の差があることを感じました。
 そもそもGE大会議の開催日程からして,そうだったんです。私達は勝手に土曜日なら大丈夫だろうと考えていたんですが,実際には,それだと都合が悪いという人も多かったんです。
 そこで現在,公式サイトでアンケートを取り,開催日時を再設定することとなりました。このアンケートを実施することも,GE大会議の放送中に迅速に決められたのがよかったですね。

4Gamer:
 プレイヤーとしては,いつ開催希望なんでしょう?

田山氏:
 金曜日の夜と土曜日の夜,いずれも遅めの時間に人気が集まっています。ほかのゲーム内イベントとの兼ね合いもあるので,これから調整が必要になるでしょう。

4Gamer:
 分かりました。
 それでは,実際のゲームに関する意識のズレはあったんですか?

田山氏:
 ズレというほどではないんですが,ゲーム内イベントの報酬が不足しているという声が予想以上に多かったですね。

4Gamer:
 ということは,今後,報酬は増加傾向になりそうですか。

田山氏:
 それがあまり簡単な話ではないんです。というのも,イベント報酬がよくなりすぎると,通常のコンテンツに対するモチベーションが減少しますし,本当に難しい問題です。また,ゲームバランスに関わる問題ですので,一緒にゲームバランスを管理している開発元の意見も聞かなくてはなりません。

松田氏:
 とは言っても,プレイヤーの方から多く意見は出ていますので,イベントでしか手に入らないアイテムを考えるなど,うまく調整できないかと内部でいろいろ考えている最中です。

画像集#020のサムネイル/「グラナド・エスパダ」の大胆なリニューアルは,プレイヤーにどう受け止められたのか。1か月経った今だから話せる舞台裏を運営の現場に聞いてみた
4Gamer:
 なるほど。
 それでは,ゲームバランスのほうに話題を変えましょう。バランス調整に関しては,さまざまな立場のプレイヤーから,それぞれ相反するようなさまざまな意見が出るかと思うのですが,正直,それらをまとめることはできるのですか?

田山氏:
 本音を言えば,全部を反映するのは無理ですし,それは皆さんもある程度,理解していただけていると思います。
 しかし,運営チームに求められているのは,プレイヤー各自の意見を受け止めて,それをどれくらい汲み取って調整していくかという部分でしょう。これは中尾も述べていましたが,プレイヤーの方の過半数の賛成を得て実施した場合でも,それが結果的に良くなければ,責任は100%我々運営にあると内部でも話しています。ですので,意見の本質をしっかりと捉えて,よりよい形を提供できるチームを作っていければと思っています。

松田氏:
 実際に意見を聞いて,運営チームがまとめた結果を週間アップデートでゲームに反映させていきます。それに対して,またGE大会議を通じて意見をいただき,さらに調整を重ねるという形式でブラッシュアップを繰り返すことで徐々に精度を上げていくつもりです。

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総選挙でトップとなったカリュケ
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4Gamer:
 分かりました。
 では,GE総選挙の反響も教えてください。トップに立ったキャラは強化対象となるとのことですが。

田山氏:
 8月4日に行ったアンケートではカリュケがトップになりましたが(関連記事),正直,このキャラに強くなってほしいというプレイヤーがこんなに多いとは思っていませんでした。
 普段は,例えばレイヴンの強化を希望する声が大きいんですよね。必ずしもアンケート結果と声の大きさは一致しないと感じましたね。

4Gamer:
 それは,カリュケが女性キャラだからじゃないんですか?

画像集#023のサムネイル/「グラナド・エスパダ」の大胆なリニューアルは,プレイヤーにどう受け止められたのか。1か月経った今だから話せる舞台裏を運営の現場に聞いてみた
松田氏:
 もちろんGEは男性プレイヤーのほうが多いですし,女性キャラが有利という傾向は否めませんけれども(笑)。
 候補に挙がった14名のキャラクターの中では,クレアとカリュケという女の子キャラに人気が集中しました。想像どおりと言えば想像どおりでしたが,ここまではっきりと支持率に表れるとは思いませんでした。

4Gamer:
 また,総選挙については,もともと強いキャラがトップになることでさらに強くなるという懸念もあるかと思うのですが。

田山氏:
 いわゆる強キャラに関しては,運営チームで精査して投票の対象から外します。

4Gamer:
 あくまでも,「強化したら活躍できるのに」というキャラが対象というわけですね。
 キャラと言えば,GE大会議中に次回実装予定キャラのセリフを募集していましたが。

画像集#024のサムネイル/「グラナド・エスパダ」の大胆なリニューアルは,プレイヤーにどう受け止められたのか。1か月経った今だから話せる舞台裏を運営の現場に聞いてみた
松田氏:
 2012年9月から10月頃に日本オリジナルキャラを実装する予定なのですが,その名前とイラストだけ見せて,どんなセリフをしゃべらせたいか,その場のノリで意見を募ったんです。そしたらこれが,思いがけずコメントの意外な活用方法を見つけることになったんですが,……時間あたりのコメント数は,おそらく生放送中で一番多かったんじゃないでしょうか。なんかもう,皆さんの想像力というか妄想力を見せつけられました(笑)。

4Gamer:
 新キャラはどういう設定なんですか?

日本オリジナルの新キャラ“男の娘”「フリーデ」とそれに対する反応
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田山氏:
 容姿は女性,性別は男性という,いわゆる“男の娘”なんですけどね。プレイヤーの方が書いたイラストを開発チームに送ったら,案外,すんなり受け入れられて。

4Gamer:
 まあ,以前から話を聞いていると,韓国の開発企画チームは非常に日本のオタク文化に対する理解がありますよね。

田山氏:
 そもそも開発企画チーム長が日本のアニメ大好きですからね。言葉が分からなくても,とりあえず観るという。

4Gamer:
 顔出しの大会議を終えてみて,スタッフはどのように言ってますか。

田山氏:
 実際終わってみれば,やってみてよかったと感じる部分もあるようです。運営チームの提案に,リアルタイムでいいものはいい,ダメなものはダメ,と反響があるというのはやはり大きいですね。

松田氏:
 見てくださった方からの評価も悪くないんです。実際に顔を出すということが責任の所在につながり,安心感を抱いてもらっているのかもしれません。
 放送が終わったあとは,現場の状況を見ても「あれをやろう」「それはダメだ。修正が必要」と,チーム全体がより能動的になった感じがします。やる前は否定的な意見も多かったですが,終わったあとで考えると現場主導のほうが,プレイヤーに提供できるものがよくなっていく気もしてきました。

田山氏:
 当面はおぼつかない進行となる部分もあると思いますが,よろしくお願いいたします。

画像集#029のサムネイル/「グラナド・エスパダ」の大胆なリニューアルは,プレイヤーにどう受け止められたのか。1か月経った今だから話せる舞台裏を運営の現場に聞いてみた


リニューアル間近の現場を混乱させた「グラナド・エスパダ ZERO」とは? 


4Gamer:
 そのほかリニューアルに関して,運営チームとして思い出に残っていることはありますか?

田山氏:
 とにかく大変でしたね。すべてにおいて大変でした。

松田氏:
 実は,リニューアルの2週間前まで,正式名称が決まっていなかったんですよ。「7月に入ったのに,どうしよう」って(笑)。
 中尾はずっと「グラナド・エスパダ ZERO」がいいと言っていたんですよね。

きたるべき「ブリスティア」アップデートでGEの世界はさらに広がる
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田山氏:
 そもそも中尾は,2012年の年始からZEROを押していたんです。そして次に挙がった候補が,ブリスティア アップデートにちなんで,旧大陸の名称である「オルペシア」でした。ただ,後者のほうは,とある事情でだめになってしまったんです。そこで中尾が「やっぱりこれはZEROで行けという神の啓示だ」と言い出したんですよね(笑)。あと,韓国IMC Gamesの企画チーム長はZEROを強く推していました。これはアニメの影響みたいでしたが。

4Gamer:
 中尾さんと企画チーム長がそこまで押していたのに,結局,無印のGEになったのはなぜでしょう?

田山氏:
 運営チームで会議を行って提案したんです。リニューアルを機会に「サービスとは何だろう」と初心に帰る意味を持たせたい,と。そうしたら中尾も「今回は原点回帰ではなくてチャレンジがテーマだけど,まぁグラナド・エスパダの部分は変える気はないのでいいか」と納得してくれました。

4Gamer:
 ちなみに,そのときの社内やチーム内の空気はどうだったんですか?

田山氏:
 正直,「ZEROでも無印でもどっちでもいいから早く決めてよ」という感じでしたね(笑)。責任者の当人は否定するでしょうが,今回,明らかにゲームやサービスのほうに集中しすぎてギリギリまでプロモーションを忘れていたのでないかという説があります。

松田氏:
 タイトルが決まらなかったので,リニューアルや6周年記念関連のグッズに印字するロゴが作れなかったんですよ。

いま一つ不評だったという6周年記念のロゴ
画像集#027のサムネイル/「グラナド・エスパダ」の大胆なリニューアルは,プレイヤーにどう受け止められたのか。1か月経った今だから話せる舞台裏を運営の現場に聞いてみた
田山氏:
 仕方がないので,苦肉の策で,GEのタイトルとは別に6周年記念のロゴを作ったんです。それで,よかった,間に合ったと皆で喜んでいたら,そのロゴを見た中尾が「なにコレ,ダサい」と(笑)。結局,作り直していては間に合わないということで,そのまま通ったのですが……。

4Gamer:
 危うく,ちゃぶ台返しになるところだったわけですか。

松田氏:
 ええ。とはいえ,第1回GE大会議でも「6周年記念グッズのデザインが期待外れだった」というご意見が見受けられましたので,あながち中尾の指摘も間違っていないんですよね。次回グッズを作る際は,スケジュール管理まで含めて見直しを図り,きちんと皆さんに納得していただけるものを提供します。

4Gamer:
 期待しています。それでは最後に,リニューアル後のGEに期待している人達に向けてメッセージをお願いします。

田山氏:
 GEを含むオンラインゲーム業界は,ゲームを提供することはエンターテインメントでありサービス業であるという意識がまだ足りていないと考えています。今のプレイヤーの方が求める品質に少しでも応えられるような内部体制を構築していきます。すべてオープンにしていきますので,今後も積極的にご意見をいただけたら嬉しいです。

松田氏:
 GEはまだまだ未完成の状態ですが,今後はプレイヤーの皆さんと一緒に,完成形に近づけていきたいと思っています。まだまだ我々,現場のスタッフには大きく向上する余地があります。スタッフ一人一人のクオリティも高め,今後もよりよいサービスを提供できるよう努めます。

4Gamer:
 本日は,ありがとうございました。


画像集#030のサムネイル/「グラナド・エスパダ」の大胆なリニューアルは,プレイヤーにどう受け止められたのか。1か月経った今だから話せる舞台裏を運営の現場に聞いてみた
 これまでは,プロデューサーの中尾氏を前面に押し出してきたGEだが,当然ながら氏一人が奮闘しているわけではなく,その背後には運営チームという組織がある。運営スタッフが顔を見せたGE大会議や,田山氏と松田氏に話を聞いたこのインタビューは,多くのGEプレイヤーが運営チームの存在を認識し,彼らが何を考え,何をやっているのかを理解する一助となるのではないだろうか。

 さて,まずは成功と言えるGEのリニューアルだが,まだまだ課題は残っている。最も大きな課題は,GE大会議を通じたゲームバランスの調整やコンテンツの企画であり,これが今後プレイヤーを納得させる形で進まないようであれば,ほかがどんなに好評であろうと,リニューアルは成功とは言えないだろう。
 そうした意味では,初回のGE大会議を終えたばかりの今現在も,まだGEのリニューアルは始まったばかりなのである。今後の運営チームの動向に注目したい。

画像集#028のサムネイル/「グラナド・エスパダ」の大胆なリニューアルは,プレイヤーにどう受け止められたのか。1か月経った今だから話せる舞台裏を運営の現場に聞いてみた

「グラナド・エスパダ」公式サイト

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    グラナド・エスパダ

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