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「グラナド・エスパダ」が目指す“短時間化”と「ゲームデザインを一新する」の言葉が意味するものとは? 大型アップデート「アルモニア」実装直前インタビュー
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印刷2014/05/10 00:00

インタビュー

「グラナド・エスパダ」が目指す“短時間化”と「ゲームデザインを一新する」の言葉が意味するものとは? 大型アップデート「アルモニア」実装直前インタビュー

画像集#012のサムネイル/「グラナド・エスパダ」が目指す“短時間化”と「ゲームデザインを一新する」の言葉が意味するものとは? 大型アップデート「アルモニア」実装直前インタビュー
 ハンビットユビキタスエンターテインメントは,同社がサービスを提供しているMMORPG「グラナド・エスパダ」(以下,GE)の大型アップデート「アルモニア」2014年5月に実施する。このアップデートでは,ゲームの新たな舞台となる“神聖市国”ことアルモニアが登場するのはもちろんだが,それ以上に強調されているのが,同時に行われる「プレイヤーが一人でも遊べ,かつ短時間で楽しめることを目指したゲームデザインの“リニューアル”」だ。

 年1回の大型アップデートよりも重要な変更とはなんなのか? 今回,4Gamerでは,GEの日本プロデューサーを務めるHUEの中尾圭吾氏と,新たにアシスタントプロデューサーに就任した松田勇樹氏に,そのリニューアルとアルモニアアップデートの意図するところなどを聞いてきた。
 なお,以下では,同時に行われる施策の2つの内容のうち,「短時間化リニューアル」を“リニューアル”,大規模アップデートの「アルモニア」を“アルモニアアップデート”と表記しているので,その点を意識して読み進めてほしい。

HUE「グラナド・エスパダ」日本プロデューサー中尾圭吾氏(左),同アシスタントプロデューサー松田勇樹氏(右)
画像集#001のサムネイル/「グラナド・エスパダ」が目指す“短時間化”と「ゲームデザインを一新する」の言葉が意味するものとは? 大型アップデート「アルモニア」実装直前インタビュー


短時間化は「MMORPGは目新しい遊びではなくなった」という認識から生まれた


 まず,リニューアルに至る経緯を聞いてみると,2013年12月に実施された「インフィニティ」アップデートのコンセプト自体は「MMORPG本来の遊びの復活」だったが(関連記事),その裏にはさまざまな試みがあったのだと中尾氏は語る。その中に,「プレイ時間の短縮」をはじめ,日本におけるオンラインゲーム市場の状況を鑑みた施策も含まれていたのだという。
 そういった,いくつかの実験を含んだインフィニティアップデートは成功し,プレイヤーの数も増えている。2014年4月になってもその数を維持できているところから,基本的な方向性に間違いがないことを確信し,それをさらに進めたのが,今回のリニューアルということになる。

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 「実を言うと,日本市場を踏まえたリニューアルは,2014年7月のGE 8周年に合わせて行う予定だったんです。しかし,ゲーム内容をガラっと変えるのは怖かったので,試験的にいろいろやってみたのが2013年12月のアップデートでした。実は“∞”(インフィニティ)という名前は,8周年の“8”を横(前倒し?)にしたものなんです。ともあれ,この結果により,GEの方向性に対する確信が持てましたから,今回のリニューアルやアルモニアアップデートでは,さらにそれを推し進めていきます」(中尾氏)

 「私としては,インフィニティアップデートはもう1歩踏み込みが足りなかったという認識があり,もっとできることはあるんじゃないかと感じていました。今後は,そうした部分もきちんとフォローしていきたいと思います。しかし,インフィニティのコンセプトが8周年の前段階だというのは初めて聞きました」(松田氏)

 「おそらく,私より現場に近い視点を持った松田のほうが具体的な中身についてはうまく調整できるだろうと思い,最後の決めは松田に任せて,8周年では本番をやってもらう予定でした。誰にも言ってませんでしたが,あとで8周年の前倒しだったことがちゃんと種明かしできる名前ということでインフィニティ(∞)にしていたんです(笑)」(中尾氏)

画像集#016のサムネイル/「グラナド・エスパダ」が目指す“短時間化”と「ゲームデザインを一新する」の言葉が意味するものとは? 大型アップデート「アルモニア」実装直前インタビュー
 GEでは,今回のアップデートにて,「従来のゲームデザインを一新する」というキャッチコピーのもと,「さらなるプレイの短時間化」を軸としたリニューアルを図る。

 両氏は,1日数時間プレイしても,「レベルが上がらない」「装備に変化がない」「ゲームが進行しない」というMMORPGのゲームデザインは,今後の市場を考えると厳しいのではないかと語る。MMORPGが,まだ目新しい遊びとして認識されていた頃ならともかく,多くのタイトルが出回り,MMORPGの刺激に慣れた人が増えた2014年の今,それではもう高い満足感を提供することができないというのだ。

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 「GEを含めて,昔からMMORPGを遊んでいる人は, 1日に何時間かプレイしても変化が表れないことに飽きつつあります。私自身がそうなんですが,たとえ面白いと思っていた新作であっても,最初に用意された一定の内容をクリアしてアップデートを待つ状態になると,変化が乏しくて1か月もすれば飽きてしまいますから」(松田氏)

 「自分も,数時間遊んで変化を感じられないのであれば,同じインドアの娯楽でもドラマを観るとか,漫画を読むとか,もっといろんなことができると思ってしまうんですよね。昔は,ただひたすら毎日同じモンスターを繰り返し何体も倒すとか,経験値バーを5%伸ばすために朝5時までプレイして,2時間寝てから出社するなんてことは,割と普通だったんですけどね。実際,私も当時それが楽しかったんです。しかし,今はもう,ただ同じモンスターを倒すとか,選択肢が1つのインスタンスミッションしかないというのでは,数日で飽きてしまいます」(中尾氏)

 実際,GEの新規プレイヤーのデータを調べると,初めてオンラインゲームをプレイする完全初心者は1日平均4時間以上遊んでいるのに対し,ほかのオンラインゲームのプレイ経験がある人では,長くて2時間程度という傾向があるという。そして前者の絶対数は,以前と比較すると明らかに減っていると中尾氏は説明した。
 なお,この数値は中尾氏がコツコツと人力で集めたデータを基にしているという。このような統計はいろいろな条件を加味せねばならず,とくにGEの場合,放置狩りなどもあるためプレイ時間の判定は簡単ではないのだが,プレイヤーの動向を調べるため,丹念にデータを追っていたようだ。

 「そうした中では,日々の成長を短いプレイ時間の中で体感できることが重要となります。モチベーションを保てるかは,ゲームプレイ中の体感によるところが大きいですので,しっかり成長を体感できるレベルの調整をしていきたいですね」(松田氏) 

 「広い意味で“アイテム”に関わるすべての部分を大きく変更します。さっきから“短時間”を前面に出していますが,決して,短時間しか楽しめないというものではなく,「長時間プレイもより楽しく」という形に調整していきます。この辺りはうまくバランスを取りたいです。あくまで,従来のプレイスタイルにプラスして,短時間プレイという選択肢を取り込む感じですね」(中尾氏)

 このあたりは,プレイヤーがただ“短時間”で遊べるだけではなく,より“充実した”遊びが体感できるゲームデザインを柱とするリニューアルを図るという。


「ソロでも楽しめるMMORPG」を実現するために


 プレイヤーが短時間でより充実した遊びを体感できるようにする方針から必然的に導かれたのが,ソロプレイを楽しめるようにすることだったと中尾氏は説明する。
 つまり,各プレイヤーが1日に数時間遊ぶのが当たり前なら,プレイ時間が重なるプレイヤーは多くなり,パーティプレイもやりやすい。しかし,それが1時間となると,そもそも同じ時間帯にプレイしている可能性も低くなってくるのでパーティプレイはやりにくくなるというわけである。

 「一人あたりのプレイ時間が短くなると,党(ギルド)の責任者は,最も多くの人が参加できるであろう夜の時間に「毎日23:00からミッション」とか,みんなで集まる時間を設定するような傾向が増えてきました。しかし,それでもいろいろな事情で,その時間にインできない人も出てきます。そうなると,時間がズレた人はゲーム内でやれることがかなり少なくなってしまうんですよね。そこで我々としては,『皆で集まったほうが面白いけど,一人でも十分に遊べる』環境を提供しようと考えたわけです」(中尾氏)

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 「現在遊んでいるプレイヤーの方だけではなく,新規プレイヤーと休眠から復帰するプレイヤーでもソロ化の傾向が進んでいます。とくに休眠プレイヤーの場合,数年ぶりに復帰したのはいいけれど,かつて所属していた党がなくなっていたりしますしね。そうなると,自分がプレイしていたときと何が変わったのか,環境を確認するところから始まるのですが,いきなりパーティを組めといわれても『まずどこに行ったらいいの?』という状態です。パーティの募集を見かけても『自分の装備やレベルで行けるコンテンツなの?』となるじゃないですか。そこで,一人でもゲームを進行できる──できるかできないかギリギリではなく,ソロでもガンガン進行できる環境の準備を進めています」(松田氏)

 「実は,前のインフィニティのときに,多くの休眠プレイヤーに戻ってきていただいたのですが,ソロ用コンテンツが足りなかったことで,プレイが厳しくて止めてしまったケースが結構あったんですよ。お問い合わせにも,そういったご意見が多くありました。
 前回,試験的にじゃなくて本格的にやっていればと後悔しましたねぇ。でもイキナリ全部変えるのはどうしても怖くて……。きっと若い頃ならやっていたのですが,私も年を取ったということだと思っています」
(中尾氏)

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 ソロで楽しめるコンテンツの拡充ということだが,感覚的な目安としては,これまでのパーティプレイの楽しさを10,ソロプレイを1だったとすると,今回のリニューアル以降はソロプレイでも7ぐらいまで楽しめるものになる見込みだという。
 具体的には,新しい拠点で周囲のフィールドに見合った武器が販売されていたり,ミッションでは一人用のものが用意されたりといった調整が施される。すでにその一部は実装が始まっている状況だ。また,遊ぶたびにダンジョンの内容が変化するという,これまでGEになかったソロ用コンテンツなど,新規コンテンツの企画開発も進んでいるという。

 ただ,そうは言っても,もともとのMMORPGが持つ“皆で遊ぶ”というコンセプトを排除してしまうつもりはないと両氏は語る。また,ゲームである以上,誰でも簡単にクリアできる内容だけでは面白くないので,意識してレベルを上げたり,優れた武器を強化したりして初めて達成できるような,目標となるチャレンジコンテンツも用意するとのことだ。具体的には,以前から利用者が多いギミックにこだわったレイドボスや,よりプレイヤー間の連携を促す12人用のミッションなどを継続的に投入していくとのこと。


新国家「アルモニア」では,GEの世界観の根源が明かされていく


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 GEのストーリーを進める大型アップデートでは,神聖市国アルモニアが実装される。
 ゲームの新たな舞台となるアルモニアは,あらゆる面においてブリスティアとは異なった存在になると松田氏は説明する。例えば,ブリスティアは,GEの中ではもっとも近代化が進んだ文明地域だったが,アルモニアは中世の色を強く残し,GEのファンタジー世界としての根源を表すような宗教国家であり,ストーリーも精神的な側面を描いていくという。

 「コンセプトは“もう一つの中世ヨーロッパ”です。ブリスティアはGE世界の社会情勢を描いていたので近代的だったのですが,今度は神聖アルモニアを中心に据え,GE世界の根源,そして剣と魔法の中世ファンタジーを掘り下げていく感じです。まぁ,ブリスティアとは真逆の方向ですね」(中尾氏)

 「もともとGEの街並みは,中世ヨーロッパを思わせるものでしたが,アルモニアは少し時代をさかのぼり,より深く宗教的なイメージを打ち出しています。登場する敵もブリスティアでは銃を持っていたり盗賊だったりしていたものが,アルモニアでは剣や魔法を使ったり,悪魔っぽいイメージが強いものが多いですね。ちょっとグロテスクなのもいたりします」(松田氏)

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 また,待望の新キャラは,やはりアルモニアのイメージに合った,昔ながらの剣術や魔法を使う者が多いようだ。すでに開発チームでは5〜6キャラ分の構想を練っているとのことだが,それぞれの実装時期はまだ未定だ。非アルモニア系のキャラクターも継続して追加されていくとのことだが,そのあたりの詳細はまだ確定していないという。

懐かしのディロスラテムさん
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 ちなみにアルモニアは,GEの冒頭で対決するボスキャラ「ディロスラテム」の出身地でもあり,8年の時を経て,ようやく彼の司教時代のストーリーが明かされるとのこと。βテスト時代から登場していたキャラだけに,古くからのプレイヤーは気になるところかもしれない。

 そのほか,アルモニアアップデートでは,以前人気のあった,PvPとPvEを組み合わせたコンテンツも装いを変えて再登場する予定だ。これは,以前のコンセプトをベースに開発元が改良し,より新しい遊び方を体感できるものになっているという。

画像集#006のサムネイル/「グラナド・エスパダ」が目指す“短時間化”と「ゲームデザインを一新する」の言葉が意味するものとは? 大型アップデート「アルモニア」実装直前インタビュー
 「アルモニアアップデートはただ新しいではなく,あちこちに原点回帰の要素も混ざってます。インフィニティアップデートでも試験的にいろいろな日本向けの調整を行いましたが,今回は本番ですので,量も質も根本的に違います。多くの部分がガラッと変わります。正直,インフィニティアップデートで成果があがらなかったら,もう無理かなぁと思ってたんですけど,ある程度の結果は残せました。そのおかげで開発チームの人員も増え,アルモニアも,当初の予定より早く皆さんに提供できるようになりました。個人的にはそれでもかなり待ちきれない感じですが」(中尾氏)

 すでに冒頭でお伝えしたように,これらのアップデートは5月中に行われる見込みだ。アルモニアアップデートが「2014 SUMMER」であるとされていた告知以降(関連記事),韓国で4月中の前倒し実装が行われたことで(関連記事),日本での実装も早くなるのではと予想した人もいるだろうが,予想以上の早さに驚いた人もいるのではないだろうか。
 また,長らくGEの中心人物として携わってきた中尾氏だが,今後は方向性を指導する程度の役割に留まり,より若い感性をゲームに生かすため,具体的な進行はすべて今年の2月から松田氏に引き継いでいるとのことだった。そこで最後に,松田氏から今後のGEに関する意気込みを語ってもらった。

画像集#004のサムネイル/「グラナド・エスパダ」が目指す“短時間化”と「ゲームデザインを一新する」の言葉が意味するものとは? 大型アップデート「アルモニア」実装直前インタビュー
 「私は,GM時代に生放送でPvPを紹介していた過去があるので、それを覚えているプレイヤーさんにはPvP寄りの人だというイメージを持たれているようなのですが,実は個人的にはPvEのほうが好きなので,この機会に正しておきたいと思います。PvE,PvPともにGEの重要な要素だと思っています。今回のリニューアルは,まず誰もがプレイできて,さらに自分が好きなPvEから手を付けていきますが,そのあとにはPvPについてもしっかりと調整を加えていきます。
 今後は中尾と並んでGEのプロデューサーを務めていきます。プロデューサーの仕事は,GEという絵具を使って絵を描く仕事ではないかと思ってますので,最高の絵画を描き出すような気持ちで頑張りたいと思います」
(松田氏)

 なお,このインタビューで言及したリニューアルとアルモニアアップデートのさらなる詳細は,5月13日配信のニコニコ生放送にて公開される予定なので,興味のある人はチェックをお忘れなく。

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