インタビュー
「グラナド・エスパダ」の物語は,いよいよ佳境へ。12周年アップデートのキーパーソンが語る,「8年後の2つの未来」の意味するところとは
今回4Gamerでは,12周年アップデートのコンセプトと概要を,「グラナド・エスパダ」の日本プロデューサー兼ディレクターを務めるHUEの加瀬圭翼氏と,12周年臨時プロデューサーであるエスパーダ CEO & Founderの中尾圭吾氏に聞いた。
12周年アップデートの軸となるのは,新エリア「アルトリア」と「ミッションプレイ」
4Gamer:
本日はよろしくお願いします。まずは中尾さんが「グラナド・エスパダ」の12周年臨時プロデューサーに就任した経緯などを教えてください。中尾さんは長らく本作の日本プロデューサーを務め,2017年にHUEから独立してエスパーダを設立していますけれども。
加瀬圭翼氏(以下,加瀬氏):
私は去年の11月より本タイトルのプロデューサーを務めていますが,12周年はより大きく盛り上げたいということで,本作に10年以上携わっておられた中尾さんに私からお願いしました。
エスパーダは,運営の作業協力やデータセンターの管理などで「グラナド・エスパダ」の運営をサポートしているんです。
ただ今回は,アップデートの方針決めやプロモーションを弊社が行うなど,サポートの範囲を超えているので,私が12周年臨時プロデューサーとして召喚されました。
4Gamer:
アップデート内容にはどの程度関わっているのでしょうか。
中尾氏:
アップデートのコンテンツのコンセプトと開発作業に関わっています。
どちらかというと,プロモーションよりもアップデートの内容に関する相談が先だったんです。それで最近のプレイヤーの動向を分析して,HUEとエスパーダでコンテンツをどうするか協議していくうちに,「それならプロモーションもこうしたほうがいい」という感じになっていって。
4Gamer:
それでは12周年アップデートのコンセプトを教えてください。「8年後の2つの未来」と名付けられていますが,これはどういう意味が込められているのでしょうか。
中尾氏:
アップデートの軸は2つあります。1つは新エリアの「アルトリア」,もう1つはゲームプレイのキモである「ミッションプレイ」です。その両軸において,これまで展開してきた「グラナド・エスパダ」から8年の時を経た未来を描いていきます。
実は12周年のキービジュアルもこの両軸をモチーフとしており,左側がアルトリアで展開する8年後の物語を,そして右側が新しいミッションプレイを通じて描かれる“もう一つの物語”を表現しているんです。
4Gamer:
アップデートでは2つの物語が展開されるということですか?
中尾氏:
そうなりますね。12年もサービスをしていると,新しい挑戦をしなければプレイヤーに飽きられてしまうんです。かといって,変えてすぎてしまうと,今度はついて来られないプレイヤーも出てきてしまいます。
そこでアルトリアは,従来路線を少し進化させた物語の拡張を入れています。そしてミッションプレイは,今まで1つずつ完結して,続いていく物語はあまりなかったのですが,今回から物語を軸にした新しい形式のものが展開されていきます。
加瀬氏:
従来路線とはいっても,メインストーリーのシナリオアップデートは久しぶりということもあって,作りためていただけに,アルトリアの物語はかなり大規模になっています。
アルトリアには,これまでゲーム内に登場したすべての勢力が終結
4Gamer:
まずは,アルトリアの物語について教えてください。
アルトリアでは,これまで展開してきたメインストーリーから8年後の世界が描かれていきます。
「グラナド・エスパダ」の世界にはブリスティアやベスパニョーラなど4つの大型勢力といくつかの中小勢力があり,これまでのシナリオではそれら1つ1つをクローズアップして来ましたが,今回はすべての勢力がアルトリアに集結します。逆にいうと,これまで大型アップデートと銘打って実装してきたコンテンツは,このアルトリアのために作られたものだったというわけです。
4Gamer:
8年後ということですが,ゲーム内全体の時の流れはどうなっているのでしょうか。
中尾氏:
アルトリアのエリアだけが8年後の世界になっています。そのほかのエリアは,今までどおりです。
今回の舞台設定からお話すると,メインストーリーのキーキャラクターであるフェルッチオ・エスパダが消息を絶ったのが「北の大地」とされています。そしてアルトリアは,その北の大地の先にあります。
4Gamer:
いよいよ,メインストーリーの核心に迫っていくと。
中尾氏:
ちょっと裏話をすると,今回のフェルッチオの消えた先という内容のアップデート構想は,遥か前にすでにあったので,本作の軸はブレていません。ただ,当時のメインストーリーは,まだ新大陸の中だけで展開していましたから,そこで世界中の勢力が集結するといってもプレイヤーにはピンと来ません。そこで深みを出すために,舞台を新大陸から旧大陸の各勢力に移し,メインストーリーを進めていったんです。
加瀬氏:
アルトリアは,開発にも相当時間がかかりましたからね。何しろ,1年前の11周年記念オフラインイベントで発表したんですから。
中尾氏:
そういえば,「Coming Soon」って書かれていたような……。
加瀬氏:
でも,お待たせしただけあって,かなり作り込まれています。とくにビジュアル面には,これまでと違ったチャレンジが見られます。
中尾氏:
全勢力がそろうということで,登場キャラクターがとにかく多いんですが,アルトリアでは8年の時を経た姿になっているキャラも多いです。
加瀬氏:
それぞれの衣装も新しくデザインされています。もともと大人だったキャラクターは多少風貌が変わった程度ですが,子どもだったキャラクターはかなり大人びた印象になっているかと思います。カノはもともとですが,ほかにも新規で8年後の姿になるキャラも複数登場します。
4Gamer:
全勢力が集結とのことですが,そもそもなぜアルトリアに集まるのでしょう?
加瀬氏:
神を自称する“星の伝令”「オルデン」と,人類の存亡を懸けて戦うためです。各勢力は,打倒オルデンという名目のもと,団結しています。
中尾氏:
オルデンはこれまでのメインストーリーの中で,旧大陸の軍事力の高い主要国家のうち,ベスパニョーラの次に強いのではないかとされるイノリーを占拠しました。その中でオルデンは,魔獣を従えるなど,神としか説明できない力を発揮しており,各勢力がバラバラに立ち向かったのでは到底敵いません。そこで各勢力が集まって,人類最前線軍を作ることになります。
加瀬氏:
ただ,もともと敵対関係にあった勢力が集まっているわけですから,作戦会議などでは頻繁にいざこざが起こります。
中尾氏:
あとは「世界を変える力」を持つといわれる,フェルッチオ・エスパダの遺産の存在ですね。アルトリアは北の大地の先にある場所なので,各勢力とも表向きはオルデン討伐を謳っていますが,その裏ではフェルッチオ・エスパダの遺産を狙っている……かもしれませんね。
加瀬氏:
狙ってはいるけれども,どの勢力もそれを口にせず,ほかの勢力を出し抜いてやろうと考えている……かもしれません。
中尾氏:
各勢力それぞれの事情もありますしね。そうした,ある種の政治的な駆け引きも見どころの1つです。
4Gamer:
各勢力に焦点を当てたアップデートは,これまで数か月かけて行われてきましたが,今回は完結するまでにどのくらいの期間を予定しているのでしょうか。
中尾氏:
この7月に入るものだけでもかなりの量がありますが,結構かかると思います。直前のイノリー編が1年かかりましたから……。
加瀬氏:
今回は佳境のアップデートですので,さらにかかるかもしれません。
中尾氏:
アルトリアのメインストーリーはこれまでの集大成ですから,可能なかぎり多くの方が触れられるよう,休眠プレイヤーが復帰してもすぐに楽しめるよう設計しています。12周年とアルトリア実装のダブルを記念して,ある意味では10周年に並ぶ過去最大の復帰特典も用意していますので,ぜひ遊んでみてください。
プレイヤーの行動によって次々に展開していく新ミッションシステム
4Gamer:
もう1つの軸であるミッションプレイについても教えてください。
中尾氏:
私自身も「グラナド・エスパダ」だけでなく,ほかのMMORPGもプレイするんですが,最近,インスタンスミッションで作業感が強いと常々感じていました。新しいミッションが追加されても,「用意されたギミックをこなして,ボスを倒したら終わり」で,次のミッション実装を待つ,みたいなルーチンワーク感ですね。
4Gamer:
確かに,一度攻略法を覚えてしまうと,あとは繰り返すだけになりがちです。
中尾氏:
今回,そこを変えたいと考え,「戦いの舞台を自分達で見つけ変化させていく冒険感の復活」と「かといって昔みたいに長時間にならない設計」の2つのテーマを掲げました。
具体的には,まず今回実装するミッションでは,プレイヤーが集まる街を用意しています。
4Gamer:
インスタンスミッション内にですか?
中尾氏:
はい。最初は街からスタートします。そして,街の中で複数のほかのミッションに派生します。ミッションクリアの手順によっては,新たなミッションが発生します。分かりやすい例ですと,あるルートでミッションをクリアして力を示すことやアイテムを手に入れることで,街のNPCから「協力してくれないか」と言われ新しいミッションが始まる,といった感じでストーリーがどんどん広がっていきます。
そして街では,プレイヤー同士で「あのとき,このアイテムが出たから」「ひょっとしたら,このアイテムを持っていれば」「NPCの,あのときの発言が関係しているかも」といったような情報の交換をしてもらおうというわけです。ミッションをいくつ実装したかなどの情報は伏せておくので,プレイヤーはどうすれば物語が進むのか,新ミッションが発生するのかというところから冒険を始めることになります。
加瀬氏:
どこまでストーリーが続くか分からなくて,次の展開はどうなるかワクワクできる,RPGらしい遊びになります。
昨今のMMORPGでは「ここまでストーリーが入ります」「このコンテンツが入ります」「新しいミッションはこれだけ入ります」という情報を教えられた状態でプレイすることになるので,ワクワク感がそのぶん減っていると思うんです。
そこで今回は「戦いの舞台を探していく冒険感の復活」を実現しています。
中尾氏:
一方で,昔のMMORPGそのままを今持ってきたら,ダルくてプレイできたものではありません。そこで「昔みたいに長時間にならない設計」というテーマを実現するべく,今回実装するミッションは,1日にプレイできる回数や,1プレイの制限時間を設けて,毎日少しずつ進める形式にしました。
4Gamer:
制限時間はどのくらいでしょう。
中尾氏:
1つのミッションの時間は従来のミッションと一緒で,1プレイを20分ぐらいで想定しています。街はもっと滞在できるかもですが,長く滞在する必要はありません。
ミッションの中には,少数精鋭のほうが有利なものもあれば,人数が多いほうが有利に設計しているものもありますが……。これらの意図は改めて詳細を出します。
4Gamer:
1つの街には,何人のプレイヤーが入れるのでしょう。
中尾氏:
今のところ,24人か30人を考えています。
全員が同じミッションに参加するのではなく,街に集まったプレイヤーで手分けして,同時に複数のミッションにチャレンジすることも可能です。
4Gamer:
手分けした場合,新ミッション発生のフラグはどうなるのでしょう。その街にいるプレイヤー全員で共有できるのでしょうか。
中尾氏:
新ミッションのフラグが立つのは,実際にミッションをプレイして,新ミッションを発生させたプレイヤーのみです。
それ以外のプレイヤーは,フラグを立てるまで新ミッションにはチャレンジできません。
加瀬氏:
運営的には,街で情報を共有する,あるいは一度フラグを立てたプレイヤーが,そうでないプレイヤーに同行してフラグを立てるサポートをすることを推奨します。
ただ,12周年アップデートから再びゲームを始めるプレイヤーの皆さんもいらっしゃるでしょうし,そういった方達のために,既存プレイヤーの皆さんが過度に繰り返し同じミッションをプレイするという状況は避けなければなりませんから,きちんと対策は考えています。
中尾氏:
またミッションは,プレイヤーの動向に合わせて随時追加していきますが,いくつ追加したかは伏せておく予定です。ただ,「上級者向けミッションが追加された」くらいは発表するかもしれません。
加瀬氏:
中には,いくつかのルートに分岐するミッションもあるんです。ほかのMMORPGでは見ないコンテンツに仕上がっていますよ。
4Gamer:
「8年後の2つの未来」ということは,このミッション内の街も8年後なんですか?
中尾氏:
アルトリアのメインストーリーを正史とすると,一連のミッションに付随するストーリーは,現在の「グラナド・エスパダ」の中でとある地点で分岐した,ifの8年後の物語になります。とある地点を追っていくのが重要ですが……詳細は伏せます。まずはバハマルベースキャンプで人類が生き残っていく戦いから始まりますね。
加瀬氏:
ミッション内の経済も既存のものとは違います。世界が一度滅んでしまっているので,既存の貨幣に価値がなくなってしまっているんです。ほかにもいろいろな要素がありますが,詳細はまた別途に発表します。
中尾氏:
新ミッションでは,「グラナド・エスパダ」自体の仕組みを変えることなく,どうやって新しい日々の遊びを提供するかを重視しています。メインストーリーとミッションは完全に切り離された話になっていますから,どちらも楽しんでいただけると思いますよ。
12周年記念オフラインパーティーは,休眠プレイヤーがストーリーを思い出す内容に
4Gamer:
7月15日には,12周年記念のオフラインパーティーも開催されますが,アップデートのより詳しい情報はここで発表されるんですよね?
その予定です。ほかにも,今回はアルトリアにつながる「グラナド・エスパダ」のメインストーリーのダイジェストを,声優さんによる朗読劇で披露します。これまで12年間にわたって繰り広げられてきた壮大な物語ですので,忘れているプレイヤーも多いと思うんです。
その一方で,人間は,ビジュアルと音声を使って説明されると思い出すことも結構あります。そこで今回は,単に面白いものを見せるというよりも,「朗読劇で楽しく思い出してもらう」という記憶を呼び覚ます内容を目指しました。
4Gamer:
朗読劇の部分も,ニコニコ生放送で中継されるんですよね。アップデートに期待している人は必聴という感じですか。
加瀬氏:
ええ,ぜひチェックしてほしいです。ただ,ネタバレは凄まじいのでご注意ください。
中尾氏:
それと,恒例となっている楽曲演奏は,久保田先生(音楽家の久保田 修氏)と相談した結果,新しいチャレンジということでDJ形式になっています。生演奏よりも高いクオリティが出せるし,またアレンジにも自信があるようです。そちらも楽しみにしていてください。
4Gamer:
それでは最後に,12周年アップデートと,そのあとの「グラナド・エスパダ」の展開に注目している人に向けてメッセージをお願いします。
加瀬氏:
旧大陸の物語が始まってから約6年,今回再び新大陸の物語が展開します。全勢力が集結する佳境のアップデート,また私がプロデューサーに就任してから初の大型アップデートということで,私自身もかなり力が入っています。遊び方がガラッと変わる部分と,シナリオが盛り上がっていく部分を皆さんに楽しんでいただけるよう,ギリギリまで作り込んでいくので,ぜひプレイしてみてください。
4Gamer:
ありがとうございました。
また,インタビューとは別に,エスパーダが今回の「グラナド・エスパダ」12周年関連企画にかける意気込みを中尾氏に語ってもらった。それを掲載して,本稿の締めとしよう。
「実は今回の12周年のプロモーションは,エスパーダが請け負っています。前例がない形ですし,完全に赤字になるので迷いましたが,私はサービス初期からグラナド・エスパダに関わっていましたので,ユーザーの皆様やHUEおよびデベロッパのIMC Gamesに恩返しをしたかったという気持ちもありました。グラナド・エスパダは,今ある以上に高いポテンシャルを持っているタイトルだと思っていますし,私がグラナド・エスパダにもっと深く関わっていきたいという意志でもあります。今回のオフラインパーティーとアップデートはもちろん,エスパーダの今後の活動にも注目してくださると幸いです」(中尾氏)
「グラナド・エスパダ」公式サイト
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