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[E3 2006#099]Sigilの第3世代MMORPG「Vanguard:Saga of Heroes」の全体像が見えてきた?
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印刷2006/05/13 21:55

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[E3 2006#099]Sigilの第3世代MMORPG「Vanguard:Saga of Heroes」の全体像が見えてきた?

 「Vanguard: Saga of Heroes」は,初代EverQuestを開発したVerant Interactiveの中核スタッフ達が立ち上げた開発スタジオSigil Games Onlineで,現在開発中のMMORPGだ。パブリッシングは,最近までマイクロソフトが行うことになっていたのだが,E3 2006直前にSigil Games OnlineとSony Online Entertainmentが共同でパブリッシュすることが発表され,MMORPGファンを驚かせた。より自由な開発環境を求めて独立したBrad McQuaid氏らが,再びSOEと接近することになるとは,なんとも不思議な話である。

 そんな経緯があり,昨年のE3でマイクロソフトのGames for Windowsブースで展示されていた「Vanguard: Saga of Heroes」は,今年はSOEブースで紹介されていた。試遊台はβテストサーバーに接続された状態で,画面上には,まさに今クローズドβテストに参加中のプレイヤーキャラクターが表示されていた。



Sigil Games Onlineのアソシエイトゲームデザイナー Doug Cronkhite氏
 さて,この「Vanguard」,着々と開発が進んでいる様子はなんとなく伝わってきていたのだが,いま一つ輪郭がはっきりと見えてこないために,やきもきしているMMORPGファンは少なくないはずである。筆者もその一人だ。今回のE3ではクローズドブース内で開発者に直接取材する機会に恵まれたので,かねてよりの疑問点についていろいろと聞いてみた。

■Vanguard独自のスフィアによるクラスシステム

 Vanguardでは,クラスを選択するときに「Adventuring(戦闘)」「Crafting(生産)」「Diplomacy(外交)」という三つの「スフィア」から,クラスをそれぞれ一つずつ,つまり一人のキャラクターに三つのクラスを指定する仕組みになっている。

 Adventuringスフィアに存在するクラスのいくつかを紹介しておこう。このスフィアには最低で15のクラスが用意される予定となっている。

●Heavy Fighters
・Warrior
・Paladin
・Dread Knight

 ディフェンス能力の高い重戦士クラス。Dread KnightはEverQuestのシャドウナイトに近いクラスだとのこと。

●Light Fighters
・Ranger
・Rogue
・Monk
・Bard

 攻撃能力の高い軽量級戦士。Monkは“死んだふり”が可能。Bardはテンポ,ハーモニー,メロディを組み合わせて曲を作ることができる。さらに曲の組み合わせをほかのBardと教えあうことができる。

●Healers
・Cleric
・Shaman
・Disciple

 各ヒーラーはヒーリング以外に戦場で活躍するための能力も持っているので,“後方でヒールのみ”といったプレイにはならない。Discipleはマーシャルアーツを使った攻撃も可能なヒーラーだ。

●Arcane Casters
・Sorcerer
・Psionicist
・Druid
・Necromancer

 Psionicistはチャームや催眠を得意とする魔法使い(Enchanterか)。Druidは天候に関する魔法を操れる。Necromancerは倒した敵の身体のパーツを組み合わせることで自分用のペットを作れるので,これがいまクローズドβテストでは大人気だそうだ。


 戦闘時の役割で以上のようにクラスが分かれる。同様に,生産用,外交用でそれぞれいろいろなクラスが用意されているようだ。

 それぞれのスフィアのクラスは独立したレベルを持っており,あるスフィアのクラスレベルによってほかのスフィアのクラスレベルが影響を受けることはない。「Adventuring」スフィアのクラスレベルは戦闘で,「Crafting」スフィアのクラスレベルは生産で,「Diplomacyスフィアのクラスレベルもその技能を使うことで,それぞれアップしていく。
 なお,それぞれのスフィアで選んだ内容が,ほかのスフィアに直接的な影響を与えることもないようだ。「Craftingスフィアで鍛冶を選んだから,戦闘ではハンマーのダメージにボーナスを得られる」とか,「Diplomatcyで選んだ交渉技能で戦闘時の挑発能力がアップする」といったことはないらしい。

■Adventuring:予知と連携によるインタラクティビティ

 今回取材に応じてくれたSigil Games Onlineのアソシエイトゲームデザイナー Doug Cronkhite氏は,VanguardがほかのMMORPGとは異なっているポイントとして,戦闘が非常にインタラクティブであることを挙げている。そのインタラクティビティを実現するために用意された仕組みが“パーセプション”“チェイン”そして“シンパセティック”だ。

 “パーセプション(予知)”とは,敵の行動の先を読むことにより,その行動に対してより効果的な対処をするための仕組みだ。昨年のE3でもだいたいの概念は公開されたのだが,今回はもう少し具体的な話が聞けたので紹介しよう。
 例えば,敵が武器を振り上げたときに,「あ,これはまっすぐ振り下ろしてくるな」と先読みができれば,その攻撃を効果的にブロックできる。敵が呪文を唱え始めたときに「あ,これは○○の呪文だな」と分かれば,効果的な相殺魔法や反射魔法を繰り出すことができる。
 戦闘中に先読みに成功すると,専用のホットバースロットのようなところに,その読みに対応した反応アイコンが現れるので,プレイヤーはそれを急いでクリックする。すると防御なりカウンターなり,効果的な反応が実行されるという感じだ。この先読みはキャラクターのパーセプション能力が上がるほどうまくなるという。上手に使えば,飛んできたファイアボールを相手に打ち返すようなことも可能になるようだ。

 “チェイン(連鎖)”というのは,自分の技を次々とつなげることで,より大きな効果を生み出すコンビネーションだ。分かりやすいものとしては,決まった攻撃を順序よく実行することで追加の攻撃やダメージを発生させる,というチェインがある。チェインの得意不得意はクラスによっても差があるようで,例えばモンクなどはとくにコンボをつなげやすいクラスであるらしい。

 “シンパセティック(共鳴)”は,“チェイン”が一人で行うものであるのに対して,グループチェインとも呼ぶべきものだ。グループを組んでいるキャラクター同士が,互いの技を順序よく繰り出すことにより,さらに大きな効果が期待できるというものだ。「それはEQ2のヒロイックオポテュニティのようなものか」と尋ねたところ,「HOでは,使用する技や魔法と発生するエフェクトの間になんの関連性もなかったのに対して,シンパセティックでは使用された技に応じた結果が生じるところが違う」との返答だった。シンパセティックでは「魔法使いの水の魔法とドルイドの雷の魔法を組み合わせると雷雨の魔法になる」「二人以上のヒーラーが力を合わせて,一時的に戦士を強化する」「戦士が強力な一撃で敵の姿勢を崩し,防御が薄くなった部分をスカウトが目ざとく見つけて急所攻撃を行う」といった,理にかなった連携と結果が発生するようだ。

 実際の戦闘では,これらの仕組みを使う機会が頻繁に発生するという。刻々と変化する状況に,こちらの反応をあわせることができる=インタラクティビティが高いというわけだ。これらの仕組みは,必ず使わなければならないというものではなく,Skilledなプレイヤーのプレイの幅を広げるものであるという。

 さらに興味深いことに,これらの仕組みは戦闘だけに使用するものではなく,クラフティングやディプロマティックなスキルの行使時にも使われるらしい。例えば,鍛冶仕事をしているときに炎の温度をパーセプションで予知して,素早くそれに対処することで,さらに高品質な武具を作ることができる。また会話中に交渉相手の反応を予知して,素早く次の言葉を発することによって嫌われるのを防ぐ,といったこともできるようだ。

■Crafting:すでに1万以上のレシピを実装

 Vanguardのクラフティングはシステムに深く根ざしたものになる。ゲーム中に存在する最高品質のアイテムは,クラフターが作るものが半分,モンスターからドロップするものが半分といった比率を予定しているらしい。
 また,Mobドロップのよいアイテムをクラフターがさらに鍛えるということも可能なようだ。しかし,そのためにはダンジョンの奥地にあるフォージが必要……といったこともあるので,クラフティングをメインの活動としていないプレイヤーとの交流が必要になったりする。
 クローズドβテスト段階の現在でも,作成可能アイテムのレシピは1万種以上に上っている。Doug Cronkhite氏の見解では,本作のクラフティングシステムは,かなり取り組み甲斐のあるものなので,ゲーム内でクラフティングしかしないプレイヤーも出てくるはずだという。

■Diplomacy:まだまだ謎に包まれた外交能力

 Adventuringのクラスがフィールドやダンジョンを冒険するためのクラスであるように,Diplomacyのクラスは町の中を冒険するためのクラスだという。ただ,このDiplomacy周りにはまだ公開できないことも多いようで,今回はこれ以上つっこんだ内容を知ることはできなかった。



■本当にインスタンスが存在しないのか?

 2004年に行ったインタビューでは,Vanguardにはインスタンスが完全に存在しないということだったのだが,それは現在も変わっていないのだろうか? 念のために確認してみた。
 最近では,MMORPGであればインスタンスを実装していることは半ば当然だと思われているフシもあり,そんななかですべてのゾーンがパブリックなMMORPGを作ることは,開発者にとって大きなチャレンジだという。この決断は,MMOゲームにとっては,コミュニティの形成が非常に重用なものだということを,開発側が理解していることの現れなのだそうだ。大ピンチのときに助ける/助けられることは,プレイヤー同士が友情を培うために欠かせない要素だと考えているようだ。

 それは分かるのだが,であれば,これまでパブリックなゾーンでざんざん問題になってきたキャンピングなどの問題はどうなるのだろうか? Doug Cronkhite氏は以下のように語っている。
 「そういった問題を回避する仕組みはもちろん用意してある。一つ例を挙げると,あるダンジョンの奥地にいるドロップのよいBossは,途中の通路にあるいくつかのポイントをきちんと通過してきたグループの前にしか現れないようになっている。だからこのBossを待ち伏せで倒すことはできない。それに加えて,こちらがもっと重用なのだが,“すべてのプレイヤーが持っていなければいけないようなアイテムが存在するゲーム”というのは,その時点で“うまくデザインされたゲーム”とはいえない。そして我々はVanguardをうまくデザインされたゲームにしたいと考えている」

 UnrealEngineを使用したり,新しいクラスの仕組みを取り入れたり,インタラクティビティを追求したりと,第3世代のMMORPGとして注目されるところはたくさんあるのだが,こういった基本的なバランスを重視しているところが,さすがといえる。史上最強を目指して開発されているゲームの仕上がりに期待したい。(ライター:星原昭典)

  • 関連タイトル:

    Vanguard: Saga of Heroes

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