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TGS2005に来場した韓国ゲーム業界著名人に聞く「オンラインゲーム市場の未来」(前編)
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印刷2005/09/29 23:40

ニュース

TGS2005に来場した韓国ゲーム業界著名人に聞く「オンラインゲーム市場の未来」(前編)

 東京ゲームショウのために来日する海外ゲーム業界人は,数多い。正確な統計をとったわけではないが,やはり最も多いのは,韓国のゲーム業界関係者だろう。
 地理的に日本に近いということも,もちろん理由の一つではある。だが,それ以上に,日本のゲーム市場のトレンドをとらえ,そこで得たアイデアを韓国市場向けにアレンジして投入することで,成功を得てきた例が過去にいくつもあり,現在でも日本市場が注目されているからだろう。
 とはいえこれまでは,PCゲーム中心の韓国と,コンシューマゲームがメインの日本とでは,直接的な競合にはなりにくかった。だが,2002年のプレイステーション2,Xbox,ニンテンドーゲームキューブ,そして2004年末のPSP,ニンテンドーDS登場以降,オンラインゲーム市場においてコンシューマゲーム機も少しずつ存在感を増してきている。
 そんな状況を,韓国のゲーム業界関係者はどう見ているのか。幕張メッセに訪れていた韓国ゲーム業界の"要人"達を,4Gamerでは現地でつかまえ,ショートインタビューを行ってみた。(Text&Photo by Kim Dong Wook)

■Neowiz ゲーム事業本部長,Oh,Seung Taek氏

 Neowizでゲーム事業本部長を務めるOh,Seung Taek氏は,ガンホー・オンライン・エンターテイメントのブース前で,「ヨーグルティング」のステージイベントを見守っていた。
 彼は,ヨーグルティング,「Special Force」など,Neowizがサービスを提供している人気タイトルで,運営からマーケティングまでを統括する人物。最近では,成功するオンラインゲームの立ち上げ専門家として,有名になっている。

4Gamer:
 こんにちは。東京ゲームショウの会場内ということで,少々周囲が騒がしいですが,いくつか質問をさせてください。
 Neowizのゲームポータル「Pmang」でサービス中のヨーグルティング,Special Forceが非常に好調とのことで,パブリッシャとして高い評価を得ていますよね。となると次は,日本市場を含めた海外展開を検討しているのではないかと思うのですが,そのあたりはいかがでしょうか。

Oh,Seung Taek氏(以下,Oh氏):
 韓国では,2006年の上半期までに7〜8個の新タイトルを公開する予定です。そのうちミュージックレースゲーム「R2BEAT」を含め,2タイトルぐらいを2006年上半期内に日本と中国市場に投入しようと考えています。ただ,まだ具体的なことは何も決まっていないというのが,正直なところです。

4Gamer:
 ちょっと先の話になるわけですね。とはいえ2005年も残すところ3か月強ですから,近々,何らかの動きがあるのではないかと期待しています。
 ところで,ヨーグルティングは,オープンβテスト開始2日目で10万アカウントを突破と,日本市場でかなり好評のようですね。

Oh氏:
 はい,おかげさまで。日本向けのカスタマイズ作業は,現在も継続して行っていますが,非常に順調に進行しています。
 クローズドβテストの初期には,いわゆる"正統派MMORPG"ではない部分が,日本のプレイヤー達のとまどいを招いてしまったようです。でも現在は,日本のプレイヤー達の文化を理解したうえで,アップデートを行っているんです。

4Gamer:
 ただの日本語化,というわけではないんですね。
 ヨーグルティングといえば,同作を日本で運営しているガンホー・オンライン・エンターテイメントは,つい先日「エミル・クロニクル・オンライン」(以下,ECO)のサービスを開始しました。
 この二つのタイトルは,何となく雰囲気が似ているような気がするので,プレイヤー層が重複しているのではないかと思うのですが……。

Oh氏:
 私自身はそうは思っていません。ECOは可愛らしいキャラクターに,MMO的なゲーム性を組み合わせたものですよね。一方ヨーグルティングは,スタイル的には可愛らしいですが,内容は高いグレードを追求しています。なので,プレイヤー層がかぶることはないと考えています。
 むしろ……,そうですね,ECOは「ラグナロクオンライン」のプレイヤーを奪うことになるのではないかと心配しています(笑)。

4Gamer:
ところで最近では,ラグナロクオンライン以外にも数多くのオンラインゲームが日本市場に投入されていて,市場が拡大傾向にあります。Oh氏は日本のオンラインゲーム市場についてどう考えていますか?

Oh氏:
 日本には,一人暮らしをしている人が,韓国よりもかなり多くいるようです。またインドア派も多いようですから,オンラインゲームは親しまれやすい環境であると認識しています。一人暮らしの寂しさを紛らわしたり,日々のうっぷんをサイバーワールドで晴らしたりするには,オンラインゲームが最高だと思いますよ。
 市場の拡大は少しずつでしょうが,長期的に見れば非常に高い可能性を秘めていると考えています。

4Gamer:
 とはいえ,日本のゲーム市場は,コンシューマゲーム機が牽引してきた歴史があります。今回の東京ゲームショウに出展されているプレイステーション3やXbox 360といった新しいハードウェアは,オンラインゲームにも対応していますが,PCのオンラインゲームとどちらが有利だと思いますか?

Oh氏:
 個人的な考えでは,コンシューマゲーム機は,デバイスの限界とアップデートの問題などから,PCオンラインゲームを超えることはできないと思います。
 ただ,マーケットトレンドに関しては別問題でしょうね。今後2〜3年間でコンシューマゲーム機とPCとが激突をし,その結果,どちらかに軍配が上がることになるとは思いますが。

4Gamer:
 今後の2〜3年で,日本のオンラインゲーム市場の形が固まるかもしれないというわけですね。
 それでは,中国市場についてはどのように考えていますか?

Oh氏:
 私があらためて言うまでもないことですが,中国はPCオンラインゲーム市場としては,世界最大規模の可能性を秘めた,新天地だと思います。北京オリンピック以後にはさらに,オンラインゲームを遊ぶ人が増えるでしょう。
 韓国や日本のゲームメーカーは,将来の展開を念頭に置いて,今のうちに現地の有力企業と提携しておいたほうがいいでしょうね。

4Gamer:
 中国は人口も多いし,市場としては魅力的ですもんね。
 では最後に,韓国市場についても聞かせてください。ちょっと変な質問になりますが,現在,韓国オンラインゲーム市場が抱えている問題点は,どこにあると思いますか?

Oh氏:
 そうですね……。オンラインゲームの技術力,そしてオンラインゲームコミュニティは,世界で最も優秀であることは,事実だと思います。
 しかし,資本力と企画力が不足していますね。とくに企画力は,ノウハウが全然蓄積されていない点が,本当に致命的です。
 Neowizとしても,この問題を乗り越えるべく,韓国内の有力開発スタジオとの提携やM&Aを活発に展開しています。また,ノウハウを持っている日本のメーカーとの提携も,前向きに検討しています。
 こうしたことは,韓国のオンラインゲーム会社が,グローバル企業として成長するために,必要不可欠だと考えています。

4Gamer:
 グローバル企業として,ワールドワイドな展開を目指しているということですね。
 では,ワールドワイドなレベルでは,今後のオンラインゲームのトレンドをどう予測していますか?

Oh氏:
 うーん。私はそういった予測に関しての専門家ではありませんから,それは結構難しい質問ですね。多くのオンラインゲームのサービスを手がけてきて感じているのは,やはりコミュニティ性がより強化される方向で進化していくのではないかということです。
 例えば,現在のコミュニティは,オンラインゲームの補助的な要素のうちの一つですよね。これがより進んでいくことで,ゲーム自体がコミュニティになるのではないかと。社会性が深く解け合って成立するゲームが,未来のオンラインゲームになるかもしれませんね。

4Gamer:
 ゲームの中でも,これまで以上にコミュニティが大切になっていくと考えているんですね。
 本日はありがとうございました。

Oh氏:
 ありがとうございました。



■L&K LOGIC KOREA社長 Nam,Tack Won氏

 「レッドストーン」を開発したL&K LOGIC KOREAの社長,Nam,Tack Won氏は,真面目そうな外見とは裏腹に,美少女系のゲームがお好み。東京ゲームショウでは,Xbox360用タイトル「DEAD OR ALIVE Ultimate」に注目していたようで,テクモブースの周辺でキャッチすることができた。
 レッドストーンが日本市場で好評を博していることもあり,これまで以上に日本市場への関心を深めているNam氏に,インタビューを行った。

4Gamer:
 お久しぶりです。今回の東京ゲームショウでは,DEAD OR ALIVE Ultimate以外にはどのようなタイトルに興味を持ちましたか?

Nam,Tack Won氏(以下,Nam氏):
 こんにちは,お久しぶりです。そうですねぇ……,実際のところ,コナミのXbox360用タイトル「ランブルローズXX」に,非常に心惹かれたんです。ただ記事上では,マイクロソフトブースに出展されていた「N3」(編注:韓国のPhantagramと水口哲也氏が共同開発中のタイトル)ということにしておいてください(笑)。

4Gamer:
 じゃあ一応書いておきますね(笑)。
 さて,ほかのブースも見に行かれるでしょうから,早速質問をさせてください。Nam氏は,日本のオンラインゲーム市場について,どう考えていますか?

Nam氏:
 ありきたりの意見になってしまいますが,日本のオンラインゲーム市場は,成長中の市場だと思います。
 韓国では,PCオンラインゲームが市場の主流ですが,日本では最近の「Quest of D」(セガ),「三国志大戦」(セガ),「アイドルマスター」(ナムコ)などのように,アーケードオンラインゲームが発展していくような気がします。

4Gamer:
 つまり,日本ではPCのオンラインゲームはそろそろ頭打ちいうことですか?

Nam氏:
 PCオンラインゲームも,数多くのタイトルが登場するでしょうが,何となくまだまだ難しいと思っています。コンシューマゲーム機についても同じく,まだ難しいでしょうね。

4Gamer:
 それはどうしてでしょうか?

Nam氏:
 アーケードオンラインゲームの場合は,カードを利用するといったオリジナリティを魅力にしていますが,コンシューマゲーム機やPCでは,日本市場において何が魅力であるかを打ち出し切れていないと思うのです。
 それに,やはりコンシューマゲーム機では,キーボードを使えないというインタフェース的な部分ですね。私の個人的な考えでは,オンラインゲームの真価を味わうには,キーボードというデバイスが不可欠だと思うんですよ。

4Gamer:
 ではそんな日本市場で,レッドストーンは,どういった方向性を目指しているのでしょうか。

Nam氏:
 日本でのPCオンラインゲーム市場は,まだ隙間産業的な印象がありますので,そこをピンポイントに狙って展開しています。この隙間が広がっていき,主流になっていくといいのですが,日本の人達にとって,まだ"PC=OA機器"というイメージが強いと思うんです。まずはこのイメージがなくならないことには……。
 とはいえ日本でも,ブロードバンドの普及率が急速に高くなっていますから,ここ数年のうちに,PCやコンシューマゲーム機でオンラインゲームを楽しむ環境が完成するでしょうし,そうなれば市場も広がってくるでしょうね。

4Gamer:
 確かにそうかもしれませんね。
 ところでオンラインゲームの開発ノウハウという点では,やはり韓国に一日の長があるように思うのですが,そのあたりはいかがでしょう。

Nam氏:
 そうですね,ネットワークインフラはもちろんですが,韓国のクリエイターにとって最大の恩恵というのは……非常に変な言い方かもしれませんが,たとえゲームがフリーズしてしまっても,またログインしてくれるプレイヤー達が大勢いるということでしょう。
 彼らからは,大量の批判を聞いたりもしますが,ここまで積極的にテストに参加してくれるプレイヤー達がいるという状況は,お金を出しても手に入れられないものですから。

4Gamer:
 それは確かにありますね。前評判の高いタイトルのクローズドβテストへの応募も,なかなか凄いものがありますし。
 さてそれでは,中国のオンラインゲーム市場のことは,どのように見ていますか?

Nam氏:
 中国では,レッドストーンもまだオープンβテストの段階ですから,具体的に何か断言することはできません。ただ,現在の印象では,大きな市場である割に実利につながりにくいかな,と。
 韓国のゲームが中国市場で成功したという事例は,いくつかあるんですが,大きな収益に結びついたという話はあまり聞きません。
 可能性は大きな市場ですが,ビジネスとして運用していくには,細心の注意を払う必要があるようですね。

4Gamer:
 ビジネスとしての難しさが,中国市場が抱える問題点なのですね。
 でも,韓国市場にも問題点はないわけではありませんよね。長い間韓国でゲーム開発を行ってきて,実感している問題点があったら教えてください。

Nam氏:
 あまり大きな問題を感じたことはありませんね。ただ,競争が熾烈になっていること,そしてプラットフォームがPCにほぼ限定されていることは,長い目で見ると市場の発展を阻む原因になりかねないと思っています。

4Gamer:
 確かにそれは確かに難しいところですね……。
 それでは最後の質問をします。ぜひ,今後のオンラインゲームのトレンドを予測してください。

Nam氏:
 これまではMMORPGにかなりの力が注ぎ込まれてきましたが,今後はほかのジャンルへの挑戦が目立つようになるでしょう。市場が成長していくためには,もっと一般の人達が遊びやすいような,やさしいジャンルがメインストリームになる必要がありそうですね。もちろん,既存のゲーマー達のためのジャンルは,これまでと同じようにそれなりの発展をするでしょうし……。
 今回の東京ゲームショウでは,セガ,コナミ,ナムコなどの大手が,オンラインゲームに取り組む姿勢をアピールしていましたので,日本のオンラインゲーム市場が発展する可能性は,確かにあると思いますよ。

4Gamer:
 なるほど。L&K LOGICとしても,レッドストーンの実績に満足することなく,新しい挑戦を考えているんですよね?

Nam氏:
 これはまだ,どこの媒体にも言ったことがないのですが……,2006年秋頃のリリースを目標に,当社の過去の作品をオンラインゲーム化した「鏡の戦争オンライン」を開発中です。まだサブタイトルは決まっていないんですが……。これ以上は,まだ言えません(笑)。

4Gamer:
 分かりました。それでは,後日の発表を楽しみにしています。
 今日はありがとうございました。

Nam氏:
 ありがとうございました。



■ハンビットユビキタスエンターテインメント取締役 Song,Jin Ho氏

 Song,Jin Ho氏は,日本で「グラナド・エスパダ」のサービスを担当するハンビットユビキタスエンターテインメント(以下,HUE)に,数か月前に取締役として赴任してきたばかり。韓国のゲーム業界では,長期にわたって営業とマーケティングを行ってきた有名人だ。
 現在は日本と韓国の市場の動向を把握すべく,HUEと,韓国の本社であるHanbit Softを行き来しているという。
 Song氏からは,筆者が東京ゲームショウ期間中に宿泊していたホテルで話を聞いた。

4Gamer:
 わざわざこのホテルまで来ていただき,ありがとうございます。Song氏は,韓国と日本のオンラインゲーム事情について,おそらく誰よりも細かいことをご存じではないでしょうか。
 まずは,日本のオンラインゲーム市場についての見解を教えてください。

Song,Jin Ho氏(Song氏):
 日本に来てからまだ数か月ですが,さまざまなことを身をもって体験しています。ご存じのように,日本ではネットワークインフラの急速な拡大とともに,インターネット利用者も増え,それによってオンラインゲーム市場が成長してきています。
 しかし,「ラグナロクオンライン」「リネージュ」「マビノギ」以後,市場を牽引するようなタイトルが不足している感じです。とくに2005年中盤からは,停滞気味という印象が強いですね。
 ただ東京ゲームショウでは,多くのメーカーが新作オンラインゲームを発表していたので,またブームがやってくるかもしれません。

4Gamer:
 確かに停滞している印象はありますね。そんな状況下で,HUEは「グラナド・エスパダ」を投入するわけですが,何か特別な仕掛けなどを準備しているのでしょうか。

Song氏:
 ええ,もちろんですよ。私達は,韓国と日本で同時に開発作業を行っています。言語のローカライズだけでなく,日本人のアート・ディレクターやミュージシャンを起用することで,日本のプレイヤー達により親しんでもらうための試みも同時進行しています。それに,開発過程から,日本のゲーマー達の意見に耳を傾けています。
 これまでの韓国産オンラインゲームは,韓国でサービスを行ってから,言語だけを替えて日本に投入するような流れでしたが,今後はそれでは日本市場での成功は難しいと思います。

4Gamer:
 やはり日本市場でも,"Culture+Localization"が重要だということですね。
 では,日本市場と比較して,中国のオンラインゲーム市場に対しては,どう考えていますか?

Song氏:
 そうですね……。ビジネス的な側面を見ると,日本市場は中国市場に比べてARPU(Average Revenue Per User:一人あたりの平均売上高)が非常に高いので,プレイヤー数に比べて売上高が高いという,魅力的な市場だと思うんです。
 一方中国は,韓国産オンラインゲームで市場を拡大してきたのは事実ですが,最近になって中国産のゲームが現地の市場を牽引し始めているようです。そういう意味では,韓国や日本のメーカーから,進出しにくくなったと見ています。

4Gamer:
 つまり,中国のオンラインゲーム市場が今後成長していくにつれて,中国産のゲームのシェアが増すという予測ですね。
 では,そんな中国市場に向けて,グラナド・エスパダはいつ頃投入するのでしょうか?

Song氏:
 残念ながら,それは私が答えられることではありません。現地パートナーの第九城市の計画に従って,サービスが開始される予定です。

4Gamer:
 では質問を変えましょう。Song氏は韓国のゲーム業界でも働いてきていますから,韓国のオンラインゲーム市場が抱える問題点もご存じですよね。

Song氏:
 個人的に,最大の問題点として指摘したいのは,流行に便乗するゲーム開発姿勢だと思います。ヒットタイトルが出ると,それを模倣したゲームを開発し,競争するという……。「リネージュ」が成功したら,各社が一斉に3D MMORPGを作っていましたよね。最近では「メイプルストーリー」のヒットにあやかってカジュアルRPGを開発したり……。
 こういう姿勢は,はっきり言ってダメですよ。ゲームごとに固有の色を打ち出して,新たなゲーマーを作りだそうという努力を放棄しているに等しいですから。
 Flagship Studiosの「Hellgate:London」のように,RPGとFPSを絶妙に組み合わせ,新たなジャンル,新たな市場を開拓しようとしている姿勢を,韓国の各社に見習ってもらいたいです。

4Gamer:
 では,それを解決するには,どうすれば良いのでしょうか。

Song氏:
 オンラインゲーム市場の中だけでも,常に新しい市場やビジネスモデルを模索し続け,生み出さなければならないでしょうね。
 ただこれは,メーカー単位では難しい部分なので,政府による政策的な支援が必要でしょう。デベロッパが開発に集中でき,企業への実質的な支援を背景に,健全な自由競争体制が成り立てば,自然に良いゲームが多数登場すると思いますよ。
 なんだか,きつい話をしてしまって,すみません。

4Gamer:
 いえいえ,韓国だけでなく,日本の多くのデベロッパも,似たようなジレンマを抱えていると思います。
 それでは最後の質問です。ワールドワイドレベルで,今後のオンラインゲームのトレンドは,どのような形になっていくと思いますか?

Song氏:
 うーん,とても難しい質問ですね。私個人は,オンラインゲーム業界は今後,"規模の経済"と"コンテンツ確保の競争"になると考えています。
 オンラインゲームのトレンドということで言えば,コミュニティ,クエスト,キャラクターなどを抱えやすいRPGジャンルが主導すると思います。
 さらに,ユビキタス性をサポートするオンラインゲームが多数登場し,オンライン上のキャラクターやアイテムを,モバイルで取り引き/管理できるようになりそうですね。

4Gamer:
 方向性ががらりと変わるというよりも,一つのゲームへさまざまな形でアクセスできるようになる,ということですね。
 本日はありがとうございました。

Song氏:
 ありがとうございました。



■Sonnori社長 Lee,Won Sool氏

 韓国ゲーム業界で初めて,PC用のパッケージRPG「Astonishia Story」を開発した,Sonnori。現在,韓国のデベロッパでMMORPGを開発しているスタッフ達にとって,このタイトルはまるでご先祖様のような存在だ。
 そんな伝統ある"名家"のSonnoriだが,これまでそれほど幸運に恵まれてきたわけではない。だが現在,同社は"オンラインゲーム機"という概念を標榜する「スタイリア」を開発し,再度飛躍のチャンスをうかがっている。
 そんな同社の顔であるLee,Won Sool社長に,Gravityブースで話を聞くことができた。

4Gamer:
 お忙しいところすみません。早速ですが,いくつか質問をさせてください。
 まず,スタイリアの日本サービスのために,日本のオンラインゲーム市場について,さまざまな検討を行ったと思います。そこで,日本市場についての見解を教えてください。

Lee,Won Sool氏(以下,Lee氏):
 日本市場では,韓国のようにPCオンラインゲームが無限に成長していくようなことはないでしょうね。PCオンラインゲームは,ある程度の水準に限界があると思います。ただ,オンラインゲームそのものが駄目なわけではなくて,コンシューマゲーム機やアーケードのオンラインゲームが盛んになっていくでしょう。

4Gamer:
 それでは,Sonnoriが準備しているスタイリアは,コンシューマゲーム機に慣れた日本のゲーマー達に,どのようにアピールしていくのでしょうか。

Lee氏:
 日本で,どの会社がスタイリアをサービスすることになるかはまだ決まっていませんが,パッケージにパッドを同梱するといったことを検討中です。

4Gamer:
 現地の市場特性を考慮した展開は,必要ですよね。
 では,東京ゲームショウでの反応を見て,スタイリアが日本で受け入れられるためには,何が必要だと思いましたか?

Lee氏:
 日本市場は,想像していた以上に複雑で,もっと徹底的に分析する必要があると思いました。とくにスタイリアは,既存のゲームポータルとも異なる概念ですから,単純に"オンラインゲーム機"という概念のみを強調しても,理解してもらえないだろうと考えています。

4Gamer:
 慎重な姿勢で,万全を期して日本市場に進出するということですね。
 それでは日本ではなく,中国のオンラインゲーム市場についてはどのように考えていますか?

Lee氏:
 率直に言ってしまいますが,中国のオンラインゲーム市場について,あまり考えたことはありません。非常に大きな可能性を秘めた市場ではありますが,中国産のゲームが続々と登場しており,韓国や日本のゲームが進出して成功するのは難しいと考えています。

4Gamer:
 現時点ではあまり中国市場に積極的に取り組むつもりはないということですね。
 では続いて,韓国オンラインゲーム市場について聞かせてください。韓国オンラインゲーム市場は,どのような問題点を抱えていると思いますか?

Lee氏:
 新しい試みがあまりないという点が問題点だと思います。各社がMMORPGばかりを開発していて,新しい挑戦が不足しています。最近は徐々に改善されてきていますが,その速度はとても遅いですね。
 その点,スタイリアという冒険的な試みには,こういった問題点を正面突破しようという意志を込めています。

4Gamer:
 スタイリアには,そういう意味も込められているんですね。
 ではスタイリアのようなサービスが,今後のオンラインゲームのトレンドをリードすると思いますか?

Lee氏:
 これは個人的な感想ですが,スタイリアという新たな試みに挑戦できたこと自体に,非常に満足しています。たとえSonnoriが成功しなくても,これをベースに誰かがもっと発展させ,新たなパラダイムを生み出してくれることを期待しています。

4Gamer:
 では,世界的な規模で見て,オンラインゲームのトレンドはどのように変化していくと考えていますか?

Lee氏:
 それがはっきりと分かったら,Sonnoriとしても非常に楽ですね(笑)。私個人の希望的な観測ですが,プラットフォームの境界がますます崩れるのではないかと見込んでいます。例えば,「ファイナルファンタジーXI」のように,異なるプラットフォームを同じサーバーで管理し,多くのゲーマーが一緒に遊べるようなものが,もっと増えていくのではないかと。
 そんな環境になれば,スタイリアもコンシューマゲーム機向けに移植できるでしょうね。

4Gamer:
 なるほど。それは,決して遠い未来の話ではないかもしれないんですね。

Lee氏:
 もちろんです。そういった市場のトレンドに,うまく対応できる会社だけが生き残れるのでしょうしね。

4Gamer:
 本日はありがとうございました。

Lee氏:
 ありがとうございました。スタイリアに多くの声援をお願いいたします。



■MOWEL SOFT社長 Song, Dae Hyun氏

 以前,お伝えしたことがある戦車MMORPG「Blitz 1941」を開発しているのが,MOWEL SOFT社。今回の東京ゲームショウでは,ソウルアニメーションセンターの共同ブースに出展していた。だがブースでは,3日間ともSong,Dae Hyun社長自らが直接来場者の対応をしていたことから,日本市場進出への強い意志が感じ取れた。
 そんなSong,Dae Hyun氏に話を聞いてみた。

4Gamer:
 こんにちは。今回の東京ゲームショウで,Blitz 1941を見た人達の反応はいかがでしたか?

Song,Dae Hyun氏(Song氏):
 非常に新鮮なものとして受け止めてもらえたようです。日本サービスについての問い合わせも,何件がありましたよ。

4Gamer:
 手応えはまずまず,といったところでしょうか。とはいえ,Blitz 1941の描く世界はミリタリー,しかもさらに限定された戦車ということで,日本のゲーマー達に受け入れられるでしょうか。

Song氏:
 非常に限定的でマニアックなテーマであることは確かです。しかし逆に,兵士達の銃器類を全部収録したような,包括的なミリタリーよりも,"戦車戦"に限定したテーマを打ち出すことで,ほかのミリタリーゲームとの差別化ができていると思います。
 戦争からは,過去の歴史のつらい記憶を思い出す人もいるでしょうが,日本の若い世代の中にもミリタリーマニアがかなりいると聞いています。彼らをメインのターゲットにしたいですね。

4Gamer:
 日本市場をきっちり分析しているんですね。それでは,日本のオンラインゲーム市場について,どのようにお考えですか?

Song氏:
 まだ成長中の市場ではありますね。しかし,世界中のどの国よりもエンターテインメントを楽しむ水準が高い国だと思いますので,一度火がつけば一気に爆発するでしょう。
 日本のゲーム市場は,全般的にコンシューマゲーム機で形成されていて,それに向けたオンラインゲームも続々登場していますよね。ただ,オンラインゲームにとっては日常的なアップデートを,コンシューマゲーム機でどこまでうまく行えるのか,まだ疑問が残ります。
 次世代機では,アップデートをうまくダウンロードし,適用するための仕掛けが用意されるかもしれませんが,現在のところ容易な道のりではないと思います。

4Gamer:
 確かにそうですよね。今後の展開に注目したいところです。
 ところで,中国では,Blitz 1941を投入する予定はありますか?

Song氏:
 現在,中国のパブリッシャと具体的な契約条件の交渉をしているところです。ただ問題は,中国政府が過去の戦争をテーマにしたゲームを,あまり好んでいない点なんですよ。なので,現代風またはファンタジー風に変更しようという話も出ています。
 一方で,ヨーロッパのパブリッシャは,本作が持つ第二次世界大戦という舞台背景に大きな関心を持って,交渉を持ちかけてきているんですよ。
 私達としては,2005年中にグローバルサーバーを設置して,ワールドワイド展開の準備を行おうと考えています。

4Gamer:
 やはり中国進出にはさまざまなハードルがあるんですね。では中国市場については,どのように捉えていますか?

Song氏:
 中国のゲーマー達は,韓国のゲーマー達とよく似た性質を持っているようですから,私達にとっては大きなチャンスが隠れていると思います。
 ただ,ShandaやOurgameなどの大手パブリッシャと手を組まないことには,中国全土へのサービス展開は難しいでしょうね。

4Gamer:
 続いては韓国の話を聞かせてください。
 韓国のゲーム業界には,現在どのような問題点があると思いますか?

Song氏:
 そうですね,やはり開発もゲーマー達の嗜好も,MMORPGに偏重していると思います。ほかに類のないジャンルが,たくさん登場してくれば,市場が全体的に成長すると思うんですよ。でも,韓国のゲーマー達は,"オンラインゲーム=MMORPG"という物差しを設定して,それに符合すればプレイしたうえで評価を下すんですね。MMORPG以外のジャンルには,関心さえ抱かないか,関心を持っても5分ぐらいプレイしてみて,理解ができないとすぐやめてしまう傾向があるようです。これは非常に惜しいことだと思います。

4Gamer:
 新しいジャンルに挑戦するデベロッパにとって,MMORPGに偏重したゲーマー達の嗜好というのが,大きな足かせになってしまっているんですね。
 それでは最後の質問です。今後,オンラインゲームのトレンドは,ワールドワイドで見るとどのように変化していくでしょうか。

Song氏:
 ワールドワイドを見通すのは,私にとってはとても難しいことです。韓国市場のみを見ると,子供達から大人まで,ますます年齢層が拡大しながら,市場自体も安定していくと思います。が,世界的に見ると,コンシューマゲーム機のオンライン対応というのが,大きな潮流になるでしょう。韓国はコンシューマゲーム機が非常に弱いので,コンシューマゲーム機向けのオンラインゲームというものにも早期に準備しておく必要があるでしょうね。

4Gamer:
 本日はありがとうございました。

Song氏:
 ありがとうございました。

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