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[COMPUTEX 2007]NVIDIA担当者インタビュー「DirectX 10世代こそSLI」
■で,結局IntelチップセットでのSLIはどうなるの?
■第2世代SLIも未だ藪の中
デスクトップGPU担当のプロダクトマネージャであるJustin Walker氏(Product Manager - Desktop GPU)いわく「現時点で話せることはない。少なくとも,デスクトップGPUグループでは,Intelチップセットへの対応についてまったく分からない」。というわけで,同じ質問を,チップセットのテクニカルマーケティングを担当するThomas A. Petersen氏(Director, Technical Marketing - MCP)にぶつけてみると,「SLIは,NVIDIAにとって重要な“資産”」という答えが返ってきた。「我々のプラットフォームが持つアドバンテージであるSLIライセンスを他社に譲るということは,成長を続けるチップセットビジネスに大きな影響を与えることになる。その意味では,我々よりも多くのボリューム(※編注:「シェア」とほぼ同義)を持つベンダーの主力製品にSLIライセンスを与えることは考えにくい」と,同社のSLIに対する考え方を説明する。
ここで注目したいのは,「あり得ない」という全否定ではないことだ。今回,複数のNVIDIA関係者に同じ質問を投げかけたが,「分からない」「考えにくい」といったように,スタンスが微妙に変わってきている。2007年6月8日の記事でお伝えしているように,NVIDIAに近いOEM関係者は,NVIDIAとIntelのSLIライセンス締結に関してポジティブな情報を持っており,少なくとも,交渉が続いていることだけは確実だろう。
今なおなかなか安定しないGeForce 8シリーズのSLI環境だが,ピクセルシェーダユニットやバーテックスシェーダユニットといった固定機能を持たない統合型シェーダアーキテクチャのほうが,SLI構成時にリソースを有効に利用できる。とくに,固定機能シェーダユニットの数で制約が大きかったエントリーモデルやミドルレンジモデルでは,SLIによるパフォーマンスアップの恩恵は大きいはずだ。
来たるべきPCI Express Gen2対応については,詳細は話せないとしながらも,「PCI Express Gen2でバス帯域幅が倍になると,エントリーやミドルレンジのGPUで,SLIブリッジなしにシームレスなデータのやりとりができるようになる。このことでSLIのスケーラビリティが向上する可能性もある」とWalker氏。ただし,3枚または4枚のグラフィックスカードによるSLI環境の可能性については,「3枚以上のカードをどのように接続するかも含め,物理的な制約もあり難しい」と語るに留まった。SLIブリッジコネクタを二つ持つGeForce 8800シリーズなら,SLIブリッジをたすき掛けにすることもできるはずなのだが,噂される第2世代SLIの詳細は,当面明かされそうにないようだ。
■AMDチップセットからの撤退を完全否定
■DDR3やPCI Express Gen2対応チップセットはいつ?
また,Intelが「Intel X38 Express」ならびに「Intel P35 Express」チップセットにおいて,SLI Memoryと同様の「Intel Extreme Memory」を採用したことについては,「Intel Extreme Memoryの詳細が分かっていないので,詳しいことはいえないが……」と断わったうえで,「我々は,Corsair Memoryなどと,SLI Memory,EPP(Enhanced Performance Profile)に,かなり前から取り組んできた。Intel X38 Expressなどで同様のテクノロジが採用されたことは,NVIDIAのアドバンテージを認めることになるうえ,ユーザーにとってもメリットが大きいので,歓迎したい」とコメント。また,DDR3やPCI Express Gen2対応チップセットの投入時期についてはコメントを控えたものの「さらなる進化を期待してもらっていい」と,自信を覗かせた。
■プロセス進化がカギを握る次世代GPU
■PCI Express Gen2対応カードは2007年末以降に
同社でノートPC向けグラフィックスチップビジネスを統括するRene Haas氏(General Manager-Notebook GPU)は,「我々はPCI Express Gen2グラフィックスの検証作業を,密にIntelと協力しながら行っている」という。さらに「現在,ほとんどのGPUはPCI Express Gen2 x16の帯域を必要としない。その意味では,互換性や性能に満足のいくレベルの製品が出来上がるのを待つべきだと考えている」と述べる。
PCI Express Gen2では,帯域幅が広がる分だけ,コントローラの消費電力や発熱も増えるといわれている。Haas氏の発言は,現在80nmプロセスを採用しているNVIDIA製GPUを,65nmまたは55nmといった製造プロセスに移行させる必要があることを受けたものである。
Haas氏は,「競合他社が65nmプロセスを採用したのは知っている。しかし,現行ラインナップでは,80nmプロセスの生産性の高さとコストパフォーマンスから得る恩恵のほうが大きい。その意味で,65nmなど先端プロセスへの移行は,生産性やコストなどのバランスが取れたのを見極めてからにすべきだ。早急に65nmプロセスへの移行を進めることはない」と,当面は80nmプロセスを使い続ける考えを示す。
台湾の大手半導体業界関係者は,「OEMやグラフィックスカードベンダーへ,安定したチップ供給を実現するためには,成熟した製造プロセスを採用するNVIDIAの判断は妥当」と見る。しかし,NVIDIAが製造を委託しているTSMCの80nmプロセスはリーク電流が多く,このことがミドルレンジ以下のデスクトップGPUやノートPC向けGPUにとって,性能向上の足かせとなっているのも事実だ。また,ミドルレンジ向けグラフィックスカードの発熱量を抑えるためにも,プロセス技術の進化は不可欠である。
Haas氏は「当然,我々も65nmプロセスなどの先端製造プロセスには積極的に取り組んでいる。しかし,新プロセスへの移行には,単に現行デザインをシュリンクさせただけでは意味がない。NVIDIAは各プロセスに最適な製品開発を行なっている」とし,新ラインナップの開発が順調なことを匂わせた。(ライター:本間 文)
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