ニュース
Intel,高速インタフェース「Thunderbolt」の概要を公開し,「Ivy Bridge」世代で標準搭載へ。“ノートPC用外付けGPU”の登場も予告
同社でThunderboltのプロダクトマーケティングを担当するRay Askew氏いわく,Intelは周辺機器メーカーやマザーボードベンダー,ケーブルベンダーに対して,2011年第3四半期を目処にThunderbolt技術を供与していく予定とのこと。先にAppleが「MacBook Pro」で搭載したThunderboltと同等の機能を持った,開発キットが提供されるそうだ。
そもそもThunderboltとは
開発コードネーム「Light Peak」(ライトピーク)ことThunderboltのアーキテクチャ。ThunderboltのコントローラはDisplayPortおよびPCI Express 2.0 x4でGPUやチップセットと接続される |
2つの信号は,片方のThunderboltコントローラによって1つのプロトコルに変換し,転送されるが,接続先の機器側にあるもう1つのThunderboltコントローラによって再度それぞれの信号へ分離される設計。これにより,特別なドライバを必要とせず,OSからはDisplayPortもPCI Expressもそのまま利用できるのが大きな特徴だ。
対応機器はディスプレイ1台を含む7台まで(※ディスプレイ以外の機器は最大6台)デイジーチェーン(daisy chain,数珠つなぎ)で接続でき,7機のデバイスを接続した状態でもレイテンシがわずか8nsしかかからないという高速応答性も仕様面のポイントといえる。
PCI ExpressとDisplayPortの信号をまとめて送受信し,コントローラで各信号の分離と結合を行っている |
PCI ExpressとDisplayPortのプロトコルをそのまま使っているため,特別なドライバを使う必要がない |
周辺機器は2つのコネクタを装備。給電できる機器は,その先につながる機器にも10Wの電力供給が可能 |
Thunderbolt用のケーブル。最長3mという制限があり,1コネクタあたり10Wの電力が供給できる |
互換性を持たせた理由についてAskew氏は,「DisplayPort対応ディスプレイをそのまま利用できる利便性もさることながら,すでにDisplay Portのケーブルが10Gbpsを超えるデータ転送速度を実現していたことが大きい」と説明する。
ただ,Thunderboltで採用されているMini DisplayPortのバージョンは1.1と古く,DisplayPort Version 1.2でサポートされるマルチストリームに対応していないため,数珠つなぎで複数台のディスプレイを接続することはできない。また,USB Over AUX Channel(AUXチャネルを用いたUSBデバイスのサポート)も行われないので,この点は注意が必要だろう。
Thunderboltで「外付けグラフィックスボックス」が可能!
Thunderboltシステムの構成例。ノートPC向けに外付けグラフィックスのサポートも明言していた |
Askew氏はその用途として,「将来的にはThunderboltテクノロジーを利用した外付けグラフィックスアダプタや,PCI Expressカード拡張ボックスなどにも応用される」と予告している。
まず,大きなネックとなるのが,DisplayPort接続が圧迫する帯域幅である。例えばThunderbolt経由で,2560×1600ドットの画面を垂直リフレッシュレート60Hzで表示しようとした場合,このディスプレイ信号だけで約6Gbpsもの帯域幅を占有することになる。また1920×1080ドット・120GHzの3D立体視なら約10Gbpsだ。これらは極端な例だが,外部ディスプレイ出力を行う場合は,それだけで一定量の帯域幅が圧迫される。
つまり,DisplayPort出力を伴わず,Thunderboltコントローラと外付けグラフィックスボックスが1対1で接続される環境で,ようやく10Gbpsの帯域幅が確保されることになる。「外付けのグラフィックスボックス」と聞くと,ゲーマーは,最低でもミドルクラス程度のデスクトップPC向けGPUが利用できることを期待してしまうが,実際にどの程度の実効帯域幅が得られ,どのクラスのグラフィックスカード(やGPU)を利用できるかは,今後のデバイス開発状況を見守るしかなさそうだ。
本格的に普及し始めるのは2012年以降
ただその点に関しては,Ivy Bridge(アイヴィブリッジ,開発コードネーム)世代で動きがあるかもしれない。というのも,IDF 2011 Beijing 2日めの基調講演で,IntelのKirk B.Skaugen(カーク・スカウゲン)副社長が,「2012年に投入する次期Core iシリーズのプラットフォームは,USB 3.0を標準サポートするほか,Thunderboltコントローラのバンドルも検討している」と述べていたからだ。また「検討している」段階ではあるものの,Thunderboltの本格的な普及が始まるとすれば,ここからということなのだろう。
Ivy Bridge世代では,今度こそ,ノートPCの3D性能を飛躍させる外付けグラフィックスボックスが商品化される可能性があるわけで,そのほかの周辺機器ともども,Thunderboltの動向には注目していきたいところだ。
- 関連タイトル:
Core i7・i5・i3-3000番台(Ivy Bridge)
- この記事のURL: