テストレポート
緊急検証。ATI Catalyst 9.3+β版Windows 7は,Windows Vistaより高速か?
2009年3月版ATI Catalystのアップデート詳細は,ぜひ別記事をチェックしてほしいと思うが,トピックは,Microsoftがβテスト中の次世代OS,「Windows 7」に,早くも正式対応してきたこと。そしてなんといっても,そんなβ版OS上で動作するCatalyst 9.3のパフォーマンスが,すでにWindows Vista+Catalyst 9.3のそれを上回っているとされていることだ。
→ATI Catalyst 9.3のアップデート内容紹介記事
ただ,同じバージョンの正式版グラフィックスドライバで横並び比較すれば,少なくとも,AMDの主張に正当性があるか,あるならば,Windows 7世代のATI Catalyst(≒ATI Radeon)にどれくらいの期待が持てそうかは,ある程度見えてくるのではないか。
というわけで今回は,ハードウェアとドライバの構成を揃えた状態で,OSだけ変更することにより,ベンチマークスコアにどのような変化が生じるのかをチェックしてみることにしたい。
ATI Radeon HD 4850ベースの環境でテスト
通常とは異なるその方法に注意
今回用意したテスト環境は表のとおり。「ATI Radeon HD 4850」ベースの,ミドルハイクラス構成となる。β版Windows 7は,一般に公開されたBuild 7000を用意した。
なお,これも別記事で紹介しているが,Catalyst 9.3では,Windows 7用とWindows Vista用が統合された一つのドライバパッケージになっているため,今回は,どちらのOSにも,同じセットアップファイルからインストールを行っている。
さて,今回は19日中にテスト結果をお伝えすべく,テスト内容は4Gamerのベンチマークレギュレーションから大幅に変更している。テストに用いたアプリケーションと具体的なテスト方法は下記のとおりだ。
- 3DMark06 Build 1.1.0(以下,3DMark06):テスト方法はレギュレーション6.0準拠だが,解像度はデフォルトの1280×1024ドットのみ
- 3DMark Vantage Build 1.0.1(以下,3Mark Vantage):解像度1280×1024ドット,アンチエイリアシング&テクスチャフィルタリング無効の「Performance」と,同1920×1200ドット,4xアンチエイリアシングおよび16x異方性フィルタリング適用の「Extreme」のみ
- Call of Duty 4: Modern Warfare(以下,Call of Duty 4):レギュレーション6.0準拠だが,1024×768ドットでのテストは省略
- Far Cry 2:ゲームに付属の「Far Cry 2 Benchmark Tool」を実行。Benchmark Toolの設定は「Overall Quality」を「Very High」に設定し,「DirectX 10」にチェックした状態とした。解像度やアンチエイリアシング&テクスチャフィルタリング設定は基本的にレギュレーション6.0準拠だが,やはり1024×768ドットでのテストは省略する
テスト条件によっては
Catalyst 9.3+Windows 7が確かに速い
さっそく,二つの3DMarkから見ていこう。結果となるグラフ1,2は順に,3DMark06,3DMark Vantageのテスト結果だが,端的に述べて,ここからは何も見えてこない。もっとも,β版のOSと,発売から2年が経過したOSを並べたときに,3Dベンチマークソフトのスコアが変わっていないというのは,十分,評価に値するのだが。
では,実際の3Dゲームではどうか。Call of Duty 4のテスト結果では,標準設定において,β版Windows 7のスコアが目に見えて高い(グラフ3,4)。1280×1024ドットでは,その差なんと6.7%である。高負荷設定のスコアも踏まえるに,描画負荷が高くなると優位性は縮まっていくが,それにしても大きな違いである。
この違いが何によって生じているのか,現時点では推測するほかないのだが,描画負荷が軽いときには,GPU以外のパフォーマンスが影響しやすくなることを踏まえるに,β版Windows 7もしくはCatalyst 9.3(あるいは両者の組み合わせ)で,ゲーム実行時におけるCPU,GPUの負荷分散周りが,Windows Vistaよりも最適化されている可能性はありそうだ。
最後にFar Cry 2だが,グラフ5,6を見ると,傾向自体はCall of Duty 4と似ているものの,最適化不足で,スコアが伸びきっていない印象を受ける。このあたりは,今後のドライバチューンに期待,といったところか。
恐るべきCatalyst 9.3の完成度
Windows 7はゲーム環境として期待できるかも
4Gamer読者であれば経験的にご存じかもしれないが,GPU業界において,まったくの新製品に対する“景気のいい話”というのは,あまり信用できなかったりする。そのため,筆者もAMDの主張を話半分に聞いていた部分が否めなかったのだが,現実に,Windows 7+Catalyst 9.3が,β版OS上であるというハンデをもろともせず,代表的な3DベンチマークソフトでWindows Vistaと互角の勝負に持ち込み,さらにCall of Duty 4では目に見える形でスコアの向上を見せているという結果を目の当たりにすると,もう驚くほかない。
しかも,テスト中に,ブラックアウトや強制終了に見舞われるといったトラブルは何一つなく,危なげなくテストを完了できたのも衝撃的だった。
ただいずれにせよ,Catalyst 9.3で比較したとき,β版Windows 7環境のほうが,Windows Vista環境よりもゲームのパフォーマンスで上回るというAMDの主張には,相応の根拠があるとはいえるだろう。まだ,パフォーマンスチューニングが完全ではないはずのβ版OSでこの結果だと,今後のCatalyst月例アップデートが,実に楽しみになってくる。
まだ気の早い話ではあるが,「Windows XPよりもパフォーマンスが低い」という観点からWindows Vistaを敬遠し続けてきた人にとって,Windows 7は“次期ゲーム用OS”として期待に応える存在となるかもしれない。
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