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RX 7900専用の「AMD Software Adrenalin Edition」がFORSPOKENに対応
本バージョンはWHQL(Windows Hardware Quality Labs,ウィクル)未通過の「Optional」(随意選択)版で,新作アクションRPG「FORSPOKEN」に対応したドライバだ。とくにパフォーマンス向上は謳っていないので,AMDが動作を確認したという理解でいいだろう。
そのほかに,Vulkan APIを使用する「Intermediate Representation Execution」(IREE)コンパイラのサポートや,新たなVulkan拡張命令に対応したとのこと。
IREEコンパイラは,AIの機械学習モデルを「Multi-Level Intermediate Representation Overview」(LLVMの汎用多言語中間表現,MLIR)に変換するコンパイラで,モデルの実行環境としてVulkanが利用できる。「TensorFlow」や「PyTorch」といった主要なフレームワークに対応しているようなので,AIの分野でNVIDIAに遅れを取っているAMD製GPUにとっては,有用なツールになりそうだ。詳しくはIREEの公式サイトを参照してほしい。
一方,Vulkan拡張への対応状況は,「Vulkan Driver Support」ページを参照してほしい。
AMDが最近リリースノートに掲載していなかったため,後追いになるが,Khronos Groupが2022年12月19日に発表した「Vulkan Video Extensions」には,「AMD Software Adrenalin 22.11.2」の段階で対応済みだったようだ。
Vulkan Video Extensionsは,Vulkan APIの枠組みで「H.264」および「H.265」のハードウェア動画デコードをサポートする拡張で,3Dグラフィックスと動画のデコードで利用するGPUリソースの調整が可能になる利点がある。
ちなみに,2022年12月に発表されたのは,デコードのみだ。エンコードは今のところ暫定的な仕様だそうで,「VP9」形式と合わせて2023年中に対応する計画とのこと。そのため,現在までのAMD Softwareは,エンコードの暫定仕様に対応していないようである。
というわけで,新作タイトルの対応までRadeon RX 7900シリーズが先行する格好になり,Radeon RX 6000シリーズやそれ以前のGPUのユーザーにとっては,置いてきぼり感がますます強まったかもしれない。ただ,Adrenalin 23.1.2 for RX7900の公開に前後して,AMDは公式ブログにRadeon RX 7900シリーズとRadeon RX 6000シリーズのゲームにおける強みをアピールする記事を掲載したりしている。なので,Radeon RX 6000シリーズが見捨てられたわけではないだろう。
Adrenalin 22.11.2以降,対応すべきタイトルが貯まっているので,近い将来Radeon RX 6000シリーズやそれ以前のGPUに対応するドライバソフトがリリースされるだろう。既存のRadeonユーザーも期待して待っていていいのではなかろうか。
なお,本稿掲載時点でAdrenalin 23.1.2 for RX 7900は,AMDのドライバ検索ページからはダウンロードできない。単に掲載が遅れているだけだと思うが,本ドライバを導入したいRadeon RX 7900シリーズのユーザーは,自己責任であることを踏まえたうえで,下記のリリースノートに記載されているリンクからダウンロードし導入してみてほしい。
→Adrenalin 23.1.2の英文リリースノート
https://www.amd.com/ja/support/kb/release-notes/rn-rad-win-23-1-2-kb
→AMDのドライバダウンロードページ
https://www.amd.com/ja/support
→4Gamerの最新ドライバリンクページ
https://www.4gamer.net/games/999/G999902/FC20110422001/
英文のリリースノートから,新機能を含めたポイントをまとめておこう。
●Adrenalin 23.1.2 for RX 7900の対応GPU
- Radeon RX 7900シリーズ
●Adrenalin 23.1.2 for RX 7900の対応APU
- 対応なし
●Adrenalin 23.1.2 for RX 7900が統合するコンポーネント
- 未確認
●Adrenalin 23.1.2 for RX 7900おける最適化
- 記載なし
●Adrenalin 23.1.2 for RX 7900における新要素
- FORSPOKENに対応
- VulkanにおいてMLIRベースのIREEコンパイラをサポート
- 新たなVulkan拡張に対応
●Adrenalin 23.1.2 for RX 7900で解決した問題
- Windows 11 22H2において,「Delayed Write Failed」というエラーメッセージが表示され,AMD Softwareが起動しないことのあった問題
- 「SpaceEngine」をプレイ中に,動作やロード時間が遅くなることのあった問題
- 「Emergency 4」をプレイ中に,テクスチャの欠けやチラツキが見られることのあった問題
●Adrenalin 23.1.2 for RX 7900における既知の問題
- 高解像度,高リフレッシュレートに対応する一部のディスプレイを接続すると,アイドル時の消費電力が高くなることがある
- マルチディスプレイ構成の一部で,ゲームや動画再生時にカクつきなどの性能低下が見られることがある
- 「Uncharted 4: A Thief's End」のオープニングで,カクつくことがある
- 「FORSPOKEN」でDynamic Resolutionを有効化すると,画面がカクつくことがある
- 「EA SPORTS FIFA 23」で「Premium Gold Pack」を開こうとすると,アプリケーションがクラッシュすることがある
- 「Sea of Thieves」をプレイ中に画面がカクつくことがある
- 「Battlefield 4」でポストプロセスのクォリティ設定を「High」または「Ultra」にしてプレイすると,(映像が?)破綻することがある
- VRゲームやVRアプリの一部で,想定より性能が低いことがある
- アプリによってはエンコードの最大ビットレートが100Mbpsに制限されることがある(※動画ストリーミングにおけるエンコードか録画時のエンコードかなどの詳細は未記載)
- 関連タイトル:
AMD Software
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