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[TGS 2006#35]紙でできたキャラクターが激しく戦う「Paper Man」のプロデューサーに話を聞いた
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印刷2006/09/24 02:35

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[TGS 2006#35]紙でできたキャラクターが激しく戦う「Paper Man」のプロデューサーに話を聞いた

 「Paper Man」は,カジュアルなFPSだ。だが,“カジュアルなFPS”という言葉はそもそも成立するものなのだろうか。最先端の技術を惜しみなく投入してPCのリソースを食いまくり,目も綾なグラフィックスと迫真のサウンドで臨場感を追い続けるゲーム,という共通認識が少なくとも欧米のプレイヤーの間にはある。いわゆるゲームPCが「このゲームがストレスなく遊べます」と謳う場合,「このゲーム」の多くはFPSである。
 Paper Manは,そんなカジュアルなFPSに対する数多くある試みの一つだ。ゲームシステムは一般のFPSとそう変わらないが,最大の特徴は登場するキャラクターがペラペラの紙で作られていること(だからPaper Manなのである)。正面から見ると人間に見えるが,横からだとやたら薄っぺらいキャラクターがネット上で銃撃戦を繰り広げるのである。



 本作の制作発表は2004年の11月頃に行われたが,その月に韓国のソウルで行われたゲームショウ「G★ 2005」に出展(関連記事)されて以来,しばらく情報が途絶えており,この東京ゲームショウ2006が久々のお披露目ということになる。我々はショウの二日め(9月23日)にCykan Entertainmentの主催で行われた共同記者会見に参加する機会を得,Paper Manの開発を統括するPark Myung Gyu(パク・ミュンギュ)氏から話を聞くことができた。

 記者会見は,韓国および日本のメディアが集まるなか,パク氏の経歴紹介の後に「質疑応答」という形式で進められた。ちなみに,パク氏はかつて我々と同じゲームメディアで仕事をしており,Paper Manの開発にはかなり初期の段階から参加していたとのことだ。
 また,多くの記者からの質問にパク氏がそれぞれ答える(さらに質問と解答に通訳が入る),という形で進められたため,インタビューに比べて短く,やや散漫な印象を受けるかもしれないが,そのへんは一つご了解いただきたい。



Q:
 どうして紙で作ったキャラクターを使おうと思ったのですか?

A(すべてパク氏):
 ごく簡単に説明しますと,苦い薬に甘い砂糖の衣をつけるように,FPSは難しいのでなかなか始められない,という人にプレイしてもらおうという意図がありました。

Q:
 最近では韓国でもFPSの人気が高く,正統的なFPSのキャラクターの形を変えただけ,というのでは物足りないのではないでしょうか。そのへんは何か考えていますか?

A:
 特徴や設定がとても大切でしょう。ミリタリーだと(武器や兵器に関する)いろいろな知識が必要だし,SFでもプレイヤーを選んでしまう。その点,紙ならイマジネーションを喚起して,いろいろなことが可能になると思います。また,従来のFPSにはなかったような,新しい特徴もできる限り取り入れたいと思っています。

Q:
 どのような特徴ですか? また,ゲームモードやシステムなどについても新しい特徴が何かあるでしょうか。

A:
 ゲーム内通貨を利用してさまざまな武器やアクセサリを購入したり,キャラクターの見かけを変えるなどのカスタマイズが行えたり,ということですね。ほかにもいろいろ考えていますが,ともかく“紙”であることを上手に使ったシステムを採用したいですね。
 ゲームモードについてはチーム戦を用意してあり,内容はこれまでのFPSとそれほど違ったものではありません。とはいえ,それ以外にも「ミッションモード」といったものを考えていますし,また武器などに関しても,通常の銃器だけでなく,扇風機で吹き飛ばすようなユニークなものを試しています。
 いずれにせよ,内部的にはさまざまなアイデアがあるのですが,それはオープンβテストのときに試してみることになるでしょう。



Q:
 キャラクターを紙,つまり2Dにした理由と,そのメリットなどを教えてください。

A:
 個人的にFPSが好きなのですが,我々がFPSを作ろうと思ったとき,すでに韓国内では14種類のオンラインFPSがサービス中でした。同じようなものを制作したのでは,ただの「15種類目のオンラインFPS」になってしまうだけです。何か違うものを作ろうと思ったときに影響を受けたのが,アニメの「サウスパーク」です。あの「切り絵」のようなグラフィックスを見たとき,これでFPSを作ったら面白いだろうな,と思いました。3Dの世界に2Dが入ってくるとどうなるのか見てみたかったんです。
 2Dキャラクターを採用するメリットとしては,まず,使用するポリゴンの数を減らせるため,PCに対する負荷を軽減できることが挙げられます。FPSといえば,高いスペックのPCが必要だと思われがちです。コアユーザーが購入するパッケージソフトならそれでも構わないかもしれませんが,オンラインで多くの人に楽しんでもらおうとするなら,そうはいかない。
 しかし本作の場合,実際,私の使っているPCの一つは1GHzのCeleronを搭載していますが,問題なくプレイすることができます。ノートPCでのプレイでも問題ないわけです。

Q:
 ポリゴン数が少ないので,一画面により多くのキャラクターを表示することが可能になり,かなり大規模な戦闘などもできると思います。ゲームに参加できる最大プレイヤー数はどれくらいですか?

A:
 ポリゴン数と表示キャラクター数の関係は確かにご指摘の通りですが,参加人員に最も関係するのは,ネットワークの通信速度です。現在,各種のテストを行っていますが,32人対戦までは可能になると思います。
(※Cykanブースのプレイアブル展示では,最大16人が遊べるとしていた)

Q:
 ああいうアニメ調のキャラクターにしたわけは?

A:
 開発の初期段階で,その暴力的なところが嫌でFPSをやらないプレイヤーが多いと聞いたので,この点についても何か対応できないかと考えました。実は,この点でもサウスパークが参考になっています。サウスパークの内容は非常に暴力性の高いものが多いのですが,キャラクターが可愛いため,それをあまり暴力的とは感じられません。それと同じことがFPSでもできるかと思ったのです。つまり,紙(2D)と可愛いキャラクターによって,FPSの持つバイオレンスを減らすことができるのではないかと。

Q:
 FPSはサウンドも重要だと思います。紙だと“足音”がしないでしょうから,足音で敵が来ることを察知できないなど,ゲームを制作するうえでの制約も多かったのではないですか?

A:
 ええ,これについてはいろいろと悩みましたが,結局何もしませんでした。バイオレンスについてはできるだけ軽減したかったのですが,FPSファンが喜ぶポイントは最大限に尊重し,ゲーム性を下げることはしたくなかった。撃ち合いの楽しさや,戦略の面白さなどはできる限り生かしたかったので,そういう面では,紙であることにあまりこだわらないことにしました。



Q:
 制作発表以降,あまり情報が出なかったようですが,理由はなんですか?

A:
 開発は,Gravityがグラフィックスを担当し,企画やプログラミングなどを私のチームが行っていましたが,Paper Manの版権がGravityからCykanに移った(関連記事)ため,チームの再設定が必要になりました。それに時間がかかってしまったのです。

Q:
 開発期間,また現在の完成度。それから今後の予定などを教えてください。

A:
 開発がスタートしたのは2004年5月です(※制作発表は11月)。7月にはもうキャラクターが動いており,G★ 2005に出展したのはαバージョンとなります。今のところ,2006年後半にクローズドβテストを開始する予定です。時期は未定ですが,オープンβテスト,そして正式サービスの開始を期待してください。

 カジュアルなFPSの試みに関するパク氏の話で興味深かったのは,結局のところ,そうしたタイトルを成功させるには,「コアなFPSプレイヤー以外の層を獲得する」アプローチが必要だとする点だ。低スペックのPCに対応したり可愛いキャラクターを使用したりするのは,現在ハードなFPSをプレイしている人への訴求力とはあまりならない。また,FPSのゲーム性を生かしつつ,バイオレンス性を薄めるのはやはり至難の業といえるだろう。
 とはいえ,コアゲーマに特化したイメージが強く,日本では今一つ人気のないFPSというジャンルに別の方向性を示したともいえる,こうしたカジュアルFPS。ビギナーからベテランまで幅広く楽しめることがジャンルの成熟という気も個人的にするので,(日本でのサービスは未定ではあるものの)Paper Manに期待する部分も大きい。(松本隆一)

  • 関連タイトル:

    ペーパーマン

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