レビュー
古代の神話世界を冒険するハック&スラッシュタイプのアクションRPG
ロキ 日本語マニュアル付き英語版
» オーバーランドから発売されている「ロキ 日本語マニュアル付き英語版」は,古代の神話世界を舞台とする,ハック&スラッシュタイプのアクションRPG。同ジャンルのゲームと比べた場合,本作にはどのような特徴があるのだろうか。ライターChun氏にじっくりと検証してもらった。
本作の世界観は,古代世界の神話がテーマになっており,封印を解かれた邪悪な神セトを倒すことがゲームの目的だ。セトに立ち向かうのは,ギリシャ,古代スカンジナビア,エジプト,アステカの4人のヒーローで,登場するモンスターやクエストに関わるNPCなども,各国/地域の神話にゆかりあるものが多い。
ステータスとスキルの選択で個性的なキャラクターに
プレイヤーが選択できるキャラクターは,古代スカンジナビアの戦士「ノルディックウォリアー」,ギリシャの戦士「グリークファイター」,エジプトの魔術師「エジプシャンソーサラー」,アステカの魔術師「アズテックシャーマン」の4人。それぞれ異なる時代/地域からスタートするが,最終的には邪神セトを倒すため,お互いの時代を行き来することになる。
これら4人のヒーローは,それぞれが3柱の神を信仰しており,その信仰神がキャラクターのスキルツリーに対応している。この信仰神はいつでも変更可能で,どのスキルツリーを成長させるかを任意で切り替えられるのだ。
現在信仰している神のスキルツリーには,戦闘によるキャラクターレベルの経験値とは別に,スキルツリー用の経験値が入り,スキルレベルが上がることでポイントを獲得し,獲得したポイントで習得条件に見合ったスキルを得るという流れになる。
選択されている神にしかスキルポイントの経験値が入らないため,異なるツリーを成長させるには信仰神を変更して育て直す必要がある。それぞれの上位のスキルを使おうと思ったら,すべての信仰神を選択してスキルレベルに必要な経験値を溜めなければならないことになるわけだ。
とはいっても,キャラクターデータはそのままに,ゲームを最初からやり直すことも可能なので,ある程度育ててから信仰神を変更し,また別のスキルレベルを伸ばしていく,という遊び方も可能だ。ボス級のモンスターを倒すと多くの経験値がもらえるので,スキルレベルを効率よく高めていきたいという人は,その手を使うのがいいだろう。
キャラクターのレベルが上がると,ステータスポイントが5ポイント得られる。ウォーリアならStrengthとVitality,ファイターならDexterity,シャーマンやソーサラーはIntelligenceとEnergyを中心にポイントを割り振るといいだろう |
なお,キャラクターはレベルが上がるごとに,5ポイントのステータスポイントを得る。これを,戦闘スタイルや装備したい武具を考慮しつつ配分し,キャラクターを強化していくのだ。
それに関連して重要なのが,使用武器/スキルとの兼ね合いだ。本作には,それぞれのヒーローが得意とする専用武器と,誰でも使用条件さえ満たしていれば使える汎用武器とが用意されている。そして,専用武器を使うときに有効なスキルと,汎用武器を使うときに便利なスキルは,必ずしも重複していないので,使う武器に応じて信仰神を変更すれば,敵との戦闘をより有利に進められるだろう。
また飛び道具は,画面内ギリギリに表示されている敵を倒せるので,上手く使いこなせば非常に頼もしい武器だ。基本的にはStrengthを高めて行きたいウォーリアでも,弓を使うだけで戦闘がラクになる。プレイヤー自身のテクニックやプレイスタイルに応じて,ステータスの配分(この場合はDexterity)を調整していくといいだろう。
実際にプレイした限りでは,本作はとにかく敵の密集度が高く,いくら屈強なウォーリアでも,そこへ無闇に突っ込んでいくのは自殺行為だ。敵の陣形を崩し,自分に有利な展開を導くためにも,最低限の遠隔武器が使える程度のステータス配分は必要となるだろう。
ちなみに,魔法を使うソーサラーやシャーマンで戦っているとき,敵に向かって魔法を連射していると,魔法がヒットしているはずなのにダメージがうまく与えられないケースが確認できた。連射を止め,確実にダメージが入ったのを確認してから次を撃てば,ダメージがちゃんと通るようになる。どうやら,ダメージ判定中は次のダメージが入っていないようなのだ。このあたりの作りの甘さは,魔法を使うヒーローにとっては死活問題。なるべく防御を高めておかなければ,あっという間に敵に囲まれて大ダメージを受けてしまうことがあるので,注意してほしい。
各ヒーローのスタート地点となる村には,自分の信仰する神を設定するための巨大な神像が設置されている。育てたいスキルツリーに合わせて信仰を切り替えよう |
スキルツリーにはそれぞれ17個のスキルがあり,スキルレベルに応じて習得できるようになっている。最終スキルを覚えられるのがスキルレベル30と,道のりはなかなか遠い |
豊富な武器をさらに強化して戦いを優位に
金属を利用するアイテム強化としては,使用されている金属を変更するReforgeと,金属を追加するOverlayがある。武器はReforgeのみ,防具はどちらも可能だ。基本性能があがるのでメインの武器にはぜひ施したい |
とはいっても,ロキでは武器セットを2パターン登録でき,それをホットキーで切り替えながら戦える。近接攻撃が得意なウォーリアでも,設定1にツーハンドソードを,設定2にショートボウをセットすれば,向かってくる敵をショートボウで減らしつつ,間合いをつめられたらツーハンドソードに持ち替えて迎撃,という戦い方ができる。この場合,弓はあくまでサブウェポンと考えて,スキルセットは近接武器特化でも十分だろう。
一方ファイターであれば,弓に特化したスキルが使えるため,遠隔攻撃をメインにしたスキルセットを用いても面白い。こういったプレイスタイルの多様さは,ロキの大きな魅力といえるだろう。
さて,それら豊富な武器は,その性能を強化することも可能。武器の強化は,特殊な金属を用いて基本性能を高めるものと,ルーンストーンを用いて属性を付与するものの2種類がある。
基本性能(主に攻撃力)の上昇は,使用する金属によって異なり,現在適用しているものよりも劣った金属を使用した場合,性能が落ちてしまう。よりよい金属を使用して基本性能を上げ,さらにルーンストーンによって属性攻撃を追加していけば,マジックアイテム/レアアイテムに匹敵する武器になる。高性能な武器を入手するまでは,こういった武器強化システムを有効活用し,ゲームを進めていくのが無難だ。
Diabloシリーズや,それに連なるハック&スラッシュタイプのアクションRPGでは,レアアイテムの入手がキャラクター強化のポイントであり,また魅力でもある。もちろんロキにもレアアイテムが存在するが,それらのドロップ率は極めて低く,たとえドロップしたとしてもお目当てのアイテムが出るとは限らない。
そんなとき,アイテム強化システムを上手く活用することで,ゲーム序盤〜中盤の装備を補うことが容易になる。本作の武器強化システムは,レアアイテムが手に入るまで,長く苦しい時期を過さなくてもいいというメリットをもたらし,ゲームの中弛みをも緩和する。上手いアイデアだといえるだろう。
グラフィック面は納得。操作面では不満も
背後視点までカメラ位置を下げれば,地形の高低差もはっきりわかる。高低差があると,敵に見つかりにくくなったり,遠距離攻撃が普段より有利に行えたりするので,地形をうまく利用していきたい |
戦闘では,オーソドックスなハック&スラッシュのアクションRPGのように,マウスクリックによる攻撃と移動を中心とし,テンキーによるポーションの使用や,フルキーの1〜0に登録したスキルの使用が基本となる。カメラの操作はW / A / S / Dキーに割り当てられており,A / Dキーによるカメラの回転と,W / Sもしくはマウスホイールによるカメラの上下移動が行える。
こうして見ると,普通に移動したり戦ったりするだけでも,キーボードの使用率が高いことに気付くだろう。実際に右手にマウスを握って,これらの操作をイメージすると,とくにポーションの使用操作に違和感を覚える人が多いのではないだろうか。
ポーションやスキルホットキーを別のキーへ変更することは可能だが,基本のキーアサインは若干手触りが悪い印象を受ける。
マウスとキーボードを併用して,アクション性の高いゲームをプレイする場合には,キーボード側のキーを片手操作に適した配置にすることが遊びやすさのポイントとなるはずだ。多くの敵に囲まれながら,それらを攻撃しつつ,カメラを回転し,ポーションを飲み,スキルを切り替える……。そういった操作が,基本キーアサインではちょっと扱いづらい。そういう点では,本作はあまり初心者向きとはいえない設計だ。
一方グラフィックス面では,これといった不満は感じなかった。むしろ,全体的にやや暗めではあるが独特の雰囲気があり,溶岩地帯や雪原などの空気感もうまく表現されている。
また,視点の回転が可能なので,物陰に配置されている宝箱を探したり,ビクビクしながら索敵したりといった楽しさも味わえる。キャラクターが物陰に入った場合には,自分の周囲が透過表示されるが,これは補助的なもので表示範囲はそれほど広くない。やはりカメラの回転を意識した基本とした作りになっていると感じた。
ただし,カメラを背後視点まで下ろした場合には,操作面と絡めての不満が出てくる。普段は画面に表示されない遠方が確認できるのは便利なのだが,そのままの視点ではプレイヤーキャラクターが邪魔で移動/攻撃が満足にできないのだ。デフォルトの操作系統がもう少し練り込まれていれば(例えば,W / A / S / Dキーによる移動を基本とするなど),背後視点のメリットをゲーム性に直結できたのではないだろうか。やや残念だ。
ちなみに本作の動作環境は,最低でもPentium4/2GHz程度,メインメモリ512MB,グラフィックスカードとしてGeForceTiもしくはRadeon9000シリーズ以上となっているが,グラフィックスレベルをある程度上げるためには,Pentium4/3GHzで,GeForce 6800GTクラスのスペックはあったほうがいいだろう。
また,グラフィックスレベルを上げることにより,マップのローディングなどで使用するメモリ量が変わるため,メインメモリも1GB以上はほしいところ。実際に長時間プレイすると,それでも物足りなさを感じてしまったので,このあたりは,体験版で事前に動作確認をしておくといいかもしれない。
灼熱の溶岩地帯。地形ダメージを受けるわけではないが,見ていてとても熱い(暑い?)気分になる。ファイヤーゴーレムやフェニックスなど,炎にまつわるモンスターも多数登場する |
氷のダンジョンはキーンと冷えた雰囲気。氷独特の研ぎ澄まされた印象だ。ちなみに,アイスゴーレムの攻撃を受けると動きが鈍くなる |
少々不満も残るが正統派アクションRPGをプレイしたい人にはオススメ
エジプトエリアではラムセス2世も登場。神々だけでなく,こういった歴史上の人物も,クエストにしっかりと絡んでくる |
また本作には,ゲームの難度としてMortal/Hero/Dietyの3段階が用意されている。MortalがクリアされるとHeroが,HeroがクリアされるとDietyが開放されるという,この手のゲームとしてはお約束の方式だ。スキルツリーの成長も考えると,じっくりキャラクターを成長させて挑戦する必要があり,やり込み要素は十分だ。
なお本作では,最大6人のマルチプレイが楽しめる。ソロプレイで使用できるヒーローは,LANを介してのネットワークプレイでのみ使用可能だ。
付属のインターネットマルチプレイソフトである「GameCenter」を使用すれば,インターネットを介してのマルチプレイも楽しめるが,その場合は専用のキャラクターを作成して,育てる必要があるので注意してもらいたい。
ダンジョンでの地形の使いまわしが多い点や,ダラダラと長いマップが多く中弛みを感じる場面が,ところどころ見られたのが気になった。初めて入るダンジョンではやはり新鮮味がほしいし,退屈なマップ移動を強いられるのは楽しくない。このダンジョンを攻略したら休憩しよう……と思っていたのに,マップが想像以上に広く,ストレスを感じることが少なからずあった。
とはいえ,ゲームの随所に登場する大型のボスモンスターは,実に倒しがいがあるし,なんといっても正統派のアクションRPGという点では,久しぶりにじっくりと遊べる作品である。あくまで日本語マニュアル付き英語版なので,ストーリーを理解するのがちょっと難しいかもしれないが,クエストジャーナル機能でクエストを選択すれば,行き先がレーダーに表示されるので,ゲームの進行は比較的スムースに行える。
操作系統の練り込み不足が少々残念ではあるが,正統派アクションRPGが好きな人ならば,十分「もとのとれる」タイトルといえそうだ。
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