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「キネマ51」:第29回上映作品は「ホドロフスキーのDUNE」
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印刷2014/08/16 00:00

連載

「キネマ51」:第29回上映作品は「ホドロフスキーのDUNE」


 グラスホッパー・マニファクチュアの須田剛一氏が支配人を務める架空の映画館,「キネマ51」。この劇場では,新作映画を中心としたさまざまな映像作品が上映される。第29回の上映作品は,映画史上最も有名な“実現しなかった映画”,「ホドロフスキーのDUNE」

「ホドロフスキーのDUNE」
2014年6月14日 新宿シネマカリテ,ヒューマントラストシネマ有楽町,渋谷アップリンクほか,全国順次公開

「ホドロフスキーのDUNE」公式サイト



須田:
 というわけで,今回は「ホドロフスキーのDUNE」でございます。

関根:
 というわけでっていう導入も不思議な感じですが。

須田:
 いや,もうね,須田剛一といえばホドロフスキーってなもんですよ。だから説明不要かなと。

関根:
 なるほど。確かにホドロフスキー監督の傑作「エルトポ」[1]は,支配人に影響を与えた最も重要な映画として,2010年に行われたグラスホッパー・マニファクチュア主催のイベント「Hopper's 4」でも大々的にフィーチャーされてましたよね。

須田:
 そうですそうです,よくご存じで。

関根:
 それは分かっているのですが,ホドロフスキーのDUNEって,確か撮影されずに終わったんじゃ?

須田:
 そうなんです。「スター・ウォーズ」が撮られる前の1975年,制作の準備は進められながらも,結局形にはならなかった幻のSF超大作映画が「DUNE」。そして今回紹介するのは,それを追ったドキュメンタリー作品なんですよ。

関根:
 なるほど,そういうことなんですね。

須田:
 僕とTeTさんはもう観ているので,今日は,この作品がどんな映画だったのか部長にご紹介しようと思いまして。

関根:
 分かりました。4Gamer読者と同じ立場で支配人のプレゼンをお聞きしたいと思います。


支配人の「DUNE」プレゼン,スタート


須田:
 部長は,「デューン」[2]という作品はご存じですよね。

関根:
 ディヴィッド・リンチ版の「デューン/砂の惑星」を観たことがあるくらいですよ。原作も読んでないレベルです。でもホドロフスキー監督が映画化しようとしていたという話は聞いたことがあります。

須田:
 さすが毎晩バーで映画業界の裏情報を収集しているだけのことはありますね。

関根:
 そんな悪い感じの業界ゴロみたいな例え,やめてくださいよ。

須田:
 僕はですね,デューンにも興味がありました。さらにね,ホドロフスキー監督のエルトポには,10代の頃にとてつもない影響を受けているということもあって……何というかこう,彼は僕にとって親戚のおじちゃんみたいな存在なんですよね。

関根:
 ちょっと変わったおじさん。親からは,あんまり仲良くするななんて言われてしまうような。

須田:
 そうそう,そんな存在。ところがこの,ホドロフスキー監督がDUNEを撮ろうとしていたことは知らなかったんです。

関根:
 今になって初めて教えてもらったんですね。きっと大人として認めてもらえたんじゃないんですか,おじさんに。

須田:
 ちょっと嬉しいですね,それ。まあ,なので新しく知った秘密を覗きにいくような感じで映画を観たんですよ。そしたら,やっぱりまたまたものすごい衝撃で。

関根:
 そんなに凄かったんですか。

須田:
 この映画で語られる真実の物語の一片一片が驚きに満ち溢れているんですよ。

関根:
 なるほど。ふと頭によぎりましたが,裏をかえすとトンデモエピソード満載ってことですかね,ホドロフスキー監督だけに。

4Gamer:
 凄かったです。スタッフとメインキャスティングまでは決まっていて中止になる。結局は資金が集まらなかったからなんですけど,この映画を観たら納得しました。

須田:
 ホドロフスキー監督はメキシコで映画を撮ったあと,パリに拠点を移すんですよ。そのとき,プロデューサーから何を撮りたいかを聞かれて,瞬間的に1965年にスタートしたSF小説シリーズ「デューン」を映画化したいと答えたそうなんです。

関根:
 日本でも人気があった作品ですよね。

須田:
 でも,彼はその後に言うんですよ,「読んだことないんだけどね」って。読んだこともないのに撮ろうとする。このカッコよさ。

一同:
 (笑)。

須田:
 「この作品が完成したら……」。えっと,なんて言ってましたっけ?

4Gamer:
 未来が変わるぐらいのことを言ってましたよね。

須田:
 そうですそうです。

4Gamer:
 映画ではなくて,哲学であると。

須田:
 そのためにはまず,一緒にこの作品を作る戦士が必要だと考えるんですよ。

関根:
 スタッフ=戦士なんですね。なんかいちいちカッコいいですね。

須田:
 でしょ。戦いなんですよ,監督にとってこの映画は。で,まず,最初に声をかけたのがメビウス[3]

関根:
 バンド・デシネの巨匠ですね[4]

須田:
 彼に絵コンテを任せるんですよ。そして特殊効果は,最初「2001年宇宙の旅」の特撮スタッフとして名を馳せていたダグラス・トランブルにオファーしたんですが,ホドロフスキー監督は彼の態度が気に食わなかった。


4Gamer:
 「彼は魂の戦士ではない」って言ってましたね。

関根:
 (笑)。

須田:
 そのあと,「ダーク・スター」のダン・オバノン[5]にオファー,さらに敵の基地のデザインなんかをH・R・ギーガー[6]に依頼するんですよ。それも個展を見てそのまま声をかけたらしいんですよね。知り合いじゃないところから,才能を次々に見つけてくる。


関根:
 戦士が集まってきましたね。

須田:
 いやいや,それがほんの序の口で。音楽はどうしようかと。あ,今最も世界で売れてるバンド,ピンク・フロイドだ! って,イギリスのレコーディングスタジオまで行って口説いちゃう。
 でも,メンバーはハンバーガーかなんか食べながら,あんまり気乗りしない風で聞いていたらしいんです。そうしたらホドロフスキーが,「俺は未来を変える映画の話をしているんだ。ハンバーガーなんか食いやがって。お前らなんかと一緒に仕事できない!」って怒って帰ったんですって。そうしたら彼らが,あーすまないすまないとかいって打ち解けて。

4Gamer:
 彼らは戦士になった。

関根:
 それ自体がSFものみたいですね。

須田:
 まだまだ終わらないですよ,戦士集めは。映画を作る戦士は集まった。じゃあ,次は演じる戦士だと。で,最初に決まったキャスティングは主人公。ホドロフスキーの息子です。

関根:
 え! 自分の子供ですか?

須田:
 そうです。でも親の七光りとかそういうレベルじゃないんです。なんせ魂の戦士ですから。

4Gamer:
 息子が演じる役は戦士だから武道に長けてなくてはならないということで,当時フランスで名の知れた武道家に息子を3年も預けてしまうんですよ。

須田:
 凄くないですか,修行させてるんですよ。

4Gamer:
 で,息子が当時を振り返って言ったセリフが,「悪夢のような3年間だった」。

須田:
 いい話ですよね。

4Gamer:
 いや,ひどい話ですよ(笑)。

須田:
 あとは,ミック・ジャガー。

関根:
 いきなりローリング・ストーンズ!

須田:
 彼ともたまたまパーティー会場で会って,その場でオファーしたら即OKをもらうんですよ。

関根:
 歴戦の勇者達は目を見れば分かるんでしょうね。

須田:
 さらに,オーソン・ウェルズ[6]

関根:
 大巨匠じゃないですか。家出のドリッピー。

須田:
 彼は当時,もう映画には出ないと公言していたんですね。そこでホドロフスキーは,食通で知られる彼の行きつけのレストランに乗り込んで,もしOKしてくれたらこのレストランのシェフを撮影スタッフに迎え入れると約束するんですよ。オーソン・ウェルズはそれで口説き落とされる。

関根:
 ふふふ。

須田:
 極めつけは敵の皇帝役,一番悪い奴ですよ。

関根:
 誰ですか。

須田:
 ダリです。

関根:
 だから誰なんですか!

須田:
 だからダリなんです!

関根:
 ダリってまさか芸術家のですか?

須田:
 そう,サルバトール・ダリ[7]ですよ。

関根:
 それも凄いですね。

須田:
 交渉は手こずるんですが,最終的にダリは出演をOKする。ただ,条件として,「ハリウッドで一番ギャラが高い俳優になる。要求は撮影1時間につき10万ドル」と。
 これですよ。奇人どうしの闘いはこれでダリの勝利目前じゃないですか。

関根:
 戦士だけども,敵同士という感じですよね。

須田:
 でも,それに対しホドロフスキーも反撃をします。出演時間はたぶん5分くらいだろうと。だから出演時間1分につき10万ドル払うと言ったんですよ。この駆け引き,ホドロフスキーの勝利。言葉のインパクトが違いますから。出演時間は短かったとしても,歴史に残るギャラですからね。

4Gamer:
 そして,ライバルが仲間に加わった。

関根:
 なんか駆け引きというより……とんち合戦ですよね。

須田:
 いやぁ,僕はもっとめちゃくちゃな人だと思っていたんですよ。でも映画を観ていくうちに,なんて気配りの人なんだろうって。感動しちゃいました。

4Gamer:
 いや,やってることはめちゃくちゃですよ。映画会社との交渉で,長すぎるから2時間にしろと言われるんですよね。でも,「俺は10時間の作品を撮る」って。

一同:
 (笑)。

4Gamer:
 僕,ホドロフスキー監督に特別な興味はないんですよ。でも,一つ一つのエピソードが完璧すぎて,途中からこれはモキュメンタリー(フェイク・ドキュメンタリー)なんじゃないかと思っちゃうくらい。

須田:
 プロレスラーの話を聞いているみたいなんですよ。武勇伝が凄すぎる。

関根:
 ホドロフスキーの「すべらない話」。

須田:
 とんでもない映画ができそうじゃないですか。でもまあ結果はもう想像するしかないんですがね。

関根:
 まさに戦いの記録なんですね,このドキュメンタリーは。



ホドロフスキー監督の戦いの記録は,未来を作った?


須田:
 映画って産業じゃないですか。娯楽という位置付け。でもホドロフスキーは言い切っているんです。「映画とは芸術であるべきだ」と。
 この潔さは失われてはいけないと僕も思っていて。僕らもゲームを作っている。あくまで娯楽だし,いわゆる工業製品,消費されるものじゃないですか。だけど,どこかで芸術でなければならない。僕はそう信じているし,それを貫きたいなと思っているんですよね。

関根:
 なるほど。

須田:
 この映画を観て,やっぱり間違ってなかったなって。

関根:
 支配人も,戦士を集める旅の途中といったところですね。

須田:
 集めなきゃって思いましたよ。

関根:
 ちなみに支配人が集める戦士,まずは誰に交渉しますか。

須田:
 やっぱり,鈴木福君?

4Gamer:
 最近,福君見ないよね〜なんて話をしていたら,実はブラジルのシュートボクセ・アカデミーの道場で3年間修業させられていた,なんてね。

須田:
 腹も凄い割れててね。

関根:
 そんなところで,ホドロフスキー監督の影響受けなくてもいいじゃないですか。

4Gamer:
 このドキュメンタリーを撮ったフランク・パヴィッチ監督が言っていたことで印象的な話があるんですよ。もし,ホドロフスキー版のDUNEが完成していたとして,成功していれば多大な影響をその後のSF映画に与えていたに違いないが,もし失敗していたら映画会社はもうSF映画というジャンル自体を捨てていたかもしれない,という。

須田:
 監督,冷静ですね。でも,結果的に多くの後世の映画に影響を与えることになるんですよ。

関根:
 どうして未完だったのにそうなったんでしょうか。

須田:
 まず一つは,資金集めのためにいろんな映画会社に,メビウスが描いた分厚い絵コンテを配ってるんです。これを見た多くのクリエイターが衝撃を受けたということ。

4Gamer:
 スター・ウォーズのチャンバラシーンなんかにも影響が見られるらしいですよ。

須田:
 そしてなんといっても,DUNEの遺伝子がそのまま後の映画界に広がっていったことですよね。

関根:
 その代表作は「エイリアン」[8]ですね。

須田:
 そうです。もう,直系といってもいいくらいですよ。

4Gamer:
 あの作品に関わったクリエイターはやはり真の戦士だったということですよね。

須田:
 部長,どうでしたか,こういう説明で。

関根:
 いやぁ,このドキュメンタリーも観たくなりましたし,成功したかは分からないですけど,やはりホドロフスキー監督作のDUNEを観てみたかったですね。


戦士を集めるゲームといえば……


関根:
 あと,聞いていて思ったのはRPGみたいな話だなと。まるで「ドラゴンクエスト」シリーズですよ。

4Gamer:
 ルイーダの酒場で仲間を集めるみたいな。

須田:
 あー,戦士を集めるということですね。

関根:
 ただ,結局冒険には行けないんですけどね。

須田:
 確かに。オンラインゲームでロビーでダベってるみたいな感じですかね。

関根:
 ホドロフスキー作品自体,ちょっとRPGっぽいところもありますよね。

須田:
 確かに。「ホーリーマウンテン」は顕著ですよね。

関根:
 ですね。

須田:
 4Gamer読者の皆さんもなかなかドキュメンタリー作品って観る機会がないと思うんですよ。でも,物作りに命をかけている人達の話,しかもいちいちカッコいいセリフとともに展開するこの作品。リアルRPGとして楽しんでもらえると思いますよ。

4Gamer:
 本当に思い入れのある作品は,なんとしてでも作らなきゃいけないっていう狂気に取り付かれた人の暴走の記録ですよね。

須田:
 そうですね。あれだけの人を巻き込んだ,とんでもない人間力。熱の入った語り口調も面白いし。この人の魅力で人が集まってくるんだなって分かりますよね。これぞ物作りの人だなって勇気をもらいました。
 DUNEのとき,ホドロフスキーは46才だったんですって。僕も46才なんですよ。だから僕もまだまだ遅くないなと。まだまだこれからだなと。

関根:
 なるほど,たまにはこういう熱い話で終わってもいいですかね?

4Gamer:
 いつもそれでいいんですよ。

二人:
 あ,すいませんー。

 
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