レビュー
記念すべきシリーズ第1作を新エンジンで完全リメイク
トゥーム レイダー:アニバーサリー
日本語版
10周年を機にシリーズ1作目が装いも新たに再登場
余談ではあるが,イギリスのテレビ局が2007年にインターネット投票で決定した「100Greatest sex symbols」では,1位がアンジェリーナ・ジョリーなのは分かるとして,なんと6位にララ・クロフトがランクインしている。発売元Eidosのお膝元イギリスでのアンケートとはいえ,ララがいかに欧米で一般に浸透したデジタル・アイドルであるかを物語る結果だ。
こーんなところにも行けちゃうのである。高所恐怖症の人には向かないゲームかも? |
ロープを使ってターザンのように離れた場所にジャンプする。こんなところから落ちたら即死 |
そんな有名なシリーズでありながら,高すぎるゲーム難度や,あまり日本人好みではない初期作品のララの容姿からか,日本ではそれほど衝撃的なセールスを記録していない。また世界的に見ても,シリーズの過去を振り返ると,実は常に順風満帆だったわけでもないのである。大ヒットを飛ばした第1作から第3作頃までは順調だったものの,それ以降は徐々に人気も薄れ,6作目となる「Tomb Raider: Angel of Darkness」(邦題:トゥームレイダー 美しき逃亡者)では,従来とは異なった世界観やバグの多さ,アクションの動きの悪さなどから酷評を受け,同じ頃(どちらも2003年)に公開された映画の2作目も不振に終わる。
かといって経営難に陥っていたEidosは,貴重な収入源を失うわけにもいかなかった。そこで傘下にあったCrystal Dynamics社と手を組み,新たに開発したのが2006年の「トゥームレイダー:レジェンド 日本語版」(以下レジェンド)だった。まずはグラフィックスを大幅にチューンナップし,複雑になりすぎていたストーリーの明快化,新しいアクションの追加と操作の簡便化および軽快化を図る。さらにシリーズ本来の単刀直入な冒険アクションへの懐古を目標とした。
これが見事に功を奏し,レジェンドは古くからのファンに好意的に受け入れられたばかりではなく,新しいファンの獲得にも成功し,大ヒットを記録することとなった。その新生トゥームレイダーの流れに乗り,シリーズ10周年を記念して第1作をリメイクしたのが,この「アニバーサリー」というわけである。もっとも,TRAの制作が発表されたのが10周年(2006年)だったということであり,本稿を書いている時点ではシリーズ12周年に突入していることは付け加えておこう。
休暇中のララのもとに突然依頼をよこしたジャクリーヌ・ナトラ。ストーリーに深く関わる人物だ |
体力の回復には,あちこちに落ちているメディパックを使用する。(大)ならば完全回復 |
さてトゥームレイダーシリーズといえば,主人公ララの鍛え抜かれた身体能力を生かした,アクロバットアクションがウリ。飛んだり跳ねたり飛び移ったり,あるいは撃ったり泳いだり動かしたりと,とにかく多彩で派手なアクションがてんこもりである。一見すると解決不可能にも思える難関を,多彩なアクションと絞りに絞ったアイデアで切り抜け,目的を達成していく悦び。このスタイルは第1作から最新作まで一貫して変わりがない。
オリジナルのプレイ経験があっても一筋縄にはいかない
時は流れ,現代のイギリス。すでにいくつもの冒険を成功させ,トレジャーハンターとしての地位と名声を得たララ。しばし休息中の彼女のもとへ,一件の依頼が舞い込む。依頼主は世界有数のエレクトロニクス会社であるナトラ・テクノロジー社の創設者でありCEOの,ジャクリーヌ・ナトラだった。ほとんどメディアに出ることもなく,謎の多い人物である彼女は,ララが亡き父・リチャードと共に追い求めて発見できなかったインカ帝国の都市「ビルカバンバ」を特定したという。話の信憑性に疑問を感じつつも,父との思い出と,トレジャーハンターとしてのプライドにかけ,ララは南米ペルーへと旅立つ……というストーリーだ。
水中だからといって安心できない。息の問題もあるが,ちゃんと(?)敵も存在するのだ |
うーん,どこかで見たようなシーン。まさかスローモーションで銃弾避けたりしませんよね? |
TRAが第1作のリメイクであることはすでに述べたとおりだが,新エンジンで旧作を作り直しただけではなく,随所に新しい要素がちりばめられている。レベル構成や仕掛けなどは基本的に同じだが,攻略にはレジェンドから登場したアイテムが必要になるなど,1作目をプレイした古くからのファンでも一筋縄ではクリアできないようになっている。
定評のあるレジェンドのエンジンをさらに改良したものが使われているだけに,ゲームの動作は実に軽快だ。ララのアクションはキビキビとしていて気持ちいいし,やや癖のある操作も,いったん慣れてしまえば華麗なアクションを連続でばんばん出せるようになる。またチェックポイントが要所要所に設定されているうえ,ロード時間も非常に短いので,安心して何度も死ねる。なにせよく死ぬゲームで,とくに難関では数十回はトライするようなゲームなのである。ロード時間が長ければウンザリするはずだが,本作は実に快適だ。
アイテム/ガジェット面では,前作レジェンドで初登場したアイテム,グラップルを多用することになる。レジェンドでのグラップルは,高いところに引っかけて離れた場所に飛び移ったり,アイテムに投げつけてたぐり寄せたりといった使われ方をしていた。TRAではそれらに加え,ウォールウォーク(壁走り)という新しいアクションができるようになった。これは高所に引っかけたグラップルに体重を預け,振り子のように垂直の壁を走るというもの。これが初めて成功したとき,思わず「おおっ!」と声を上げてしまったほどの,ダイナミックなアクションである。ぜひ体験してほしい。
ジャングルの表現も,なかなかのクオリティを持っている。やはり滝が気になるところだ |
古代遺跡になぜかこのような装置が。うかつに近づけば容赦なく電撃が襲ってくることだろう |
難解なパズルは相変わらずなのだ
レジェンドでは無線でアドバイスを受けるといったことも可能だったが,今回はそれがなく,代わり(?)に「日記」というものがある。しかしこの日記,試しに覗いてみると「ふーん,面白いわね」とか「この遺跡の状態はかなりいいほうね」とか,まぁ使えないものばかり。要するにヒントはないと思ったほうがいいだろう。
お馴染みのクロフト邸。ホールには荷物が積み上げられ,プールとトレーニングルームは工事中である |
巨大なティラノザウルスに拳銃で立ち向かえるのか…? レイジ・モードを有効に活用しよう |
レジェンドでは難度が低めに設定されていたというのもあって,一本道のルートをガンガン進めていくという感じだったが,TRAはもっと回りくどい方法で仕掛けをクリアするものが多い。例えば一つの扉を開けるにも,あっち行ったりこっち行ったりという感じで,このあたりは初期シリーズの難度が高かった理由でもあるだろう。とにかく三次元的な思考をしなければ,とても解けないようなパズルが多いのである。難度が高いだけあって解決したときの喜びも半端ではない。ただし攻略の自由度というものはないと思ったほうがいい。あらかじめ一つの解があり,それをいかに導き出すかという感じである。
このように新要素も加わって,単なるオリジナル版のリファインというに留まらない進化を遂げたTRAだが,難点を挙げるとすればカメラワークの悪さだろうか。三人称視点のため,ララの移動に合わせて自動でカメラ位置が移動するのだが,これによって周囲を見渡せなくなる場面があった。またカメラ移動により方向キーの基準が変化し,思わぬ方向にジャンプしてしまって墜落死ということもたびたびあった。こうしたカメラワークに関する部分は,次回作ではぜひとも改善されていることを望みたい。
ムービー中にもアクションを求められることがある。矢印に合わせた方向キーを押せばいいだけだ |
使用できる武器は4種類。ショットガンは威力が強いが連射性が弱く,SMGは連射に向くが1発ごとのダメージが弱い |
リメイクとしての完成度は高い。軽快なアクションを楽しもう
またパズルの難度はさておき,動作が軽快で,かつアクション操作も簡便である点は非常に優れている。この出来ならば最後までモチベーションを削がれることもないだろう。お馴染みの「クロフト邸」やリワード収集によって得られるスペシャルボーナス,さらにタイムトライアルなどもあり,リプレイ性も十分に高い。ちなみに,レジェンドの連載「着せ替えララちゃん」でも好評だった着せ替えコスチュームは,TRAでは10種類用意されている。
ララが見ているのは夢なのか現実なのか,そしてこの神々のような存在は何なのか……? |
一見ただのオブジェクトも,あることをすればパズルを解く重要なアイテムに。試行錯誤の連続なのだ |
古くからのファンにも新しいファンにも楽しめる作品となっており,いまプレイしてこれだけ面白い作品の原型が,十数年前に登場していたことに驚かされる。TRAではさらに磨きがかかっているわけで,面白くないはずがない。惜しむらくは,以前の作品のように追加マップやレベルエディタといったサービスに欠けることだが,こちらは今後の展開に期待したいところである。グラフィックスにさらに磨きのかかった次回作,「Tomb Raider: Underworld」の発売は年内に予定されており,これからのララの冒険にも目が離せない。ぜひとも軽快でダイナミックなパズルアクションを楽しんでもらいたい。
今回の着せ替えコスチュームは10種類が用意されている。これはドッペルゲンガーと呼ばれるもの。見えすぎちゃってセクシーじゃない? |
さらに「クラシック」として,オリジナル版のララになれるコスチュームも。こりゃ笑えるけどきつい……。今回はネタっぽいものが多い |
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トゥーム レイダー:アニバーサリー 日本語版
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Lara Croft Tomb Raider: Anniversary Edition(C)2007 Eidos Interactive Ltd. Developed by Crystal Dynamics, Inc. Published by Eidos, Inc. 2007. Lara Croft Tomb Raider: Anniversary Edition, Lara Croft, Tomb Raider, the Tomb Raider logo, Eidos and the Eidos logo, Crystal Dynamics and the Crystal Dynamics logo are all trademarks of Eidos Interactive Ltd. Uses Bink Video. Copyright(C)1997-2007 by RAD Game Tools, Inc.