インタビュー
ついにOBT開始! MMORPG「ルナティア」はどう変わったのか,エムゲームジャパンの取締役とプロジェクトマネージャーに話を聞いてみた
本作は当初,「プラチナファンタジーオンライン」というタイトルでエムゲームジャパンがサービスを予定していた。その後,ジャレコへの運営移管が発表され,2007年には3回のβテストが実施されたものの,2008年に再度,エムゲームジャパンに運営移管された経緯がある(関連記事)。
それからしばらく目立った動きのなかったルナティアだが,2008年12月には,サービス再開に向けたテクニカルテストとクローズドβテストが相次いで実施されている。
とはいえ,いずれも実施期間が短く,参加人数も少数に限られていたため,実際のところどんなゲームなのか分からず,ヤキモキしていたというプレイヤーも多いことだろう。
今回4Gamerでは,エムゲームジャパンの取締役であるホン・ソクピョ氏と,プロジェクトマネージャーのイ・ヨンヒョク氏にインタビューを行い,これまでの経緯や,日本版の仕様,オープンβテスト以降のスケジュールなどについて話を聞いた。
正式サービスに向け,ついに本格的に動き出したルナティアの見どころや,今後の展開をお確かめあれ。
2度の運営移管を経ていよいよオープンβテスト開始
キャラの可愛らしさとコミュニティ性の高さがウリ
本日はよろしくお願いします。
さて,ルナティアは2007年の発表以降,2回の運営移管を経て,結局のところエムゲームジャパンがサービスすることになりました。まずは読者のために,あらためてこのあたりの経緯について説明をお願いします。
ホン・ソクピョ氏(以下,ホン氏):
もちろん当初は,私達が運営する予定でした。しかしジャレコさんから,「ぜひサービスを行いたい」とアプローチされ,当社としてもとても悩んだのですが,ジャレコさんであれば良い方向に持っていってくださると信じ,お任せすることにしたわけです。
4Gamer:
確かに,2007年に行われたβテストでの,ジャレコの運営に対するテスターの評価は高かったと記憶しています。
ホン氏:
ええ,私達もそう感じていました。ところがその後,ジャレコさんの内部事情が変わり,残念ながらオンラインゲーム事業が縮小されることになりました(※参考:ジャレコ株式譲渡に関するニュース)。
そのとき両社で確認し合ったのは,最初にゲームファンに示した「ルナティアを日本でサービスし,成功させる」という約束を果たさなければならないということです。いろいろと模索した末,当社が運営するのが最善との結論に至ったわけです。
4Gamer:
なるほど。
ホン氏:
また,韓国では2008年に,「Holic」(ルナティアの原題)から「Holic 2」にシステムを移行していたといった事情もあり,日本でのサービス開始が延び延びになりました。結果として,期待していただいている皆さんをお待たせしてしまった点について,お詫びします。
4Gamer:
ルナティアは,そのHolic 2をベースにしているそうですが,HolicからHolic 2への移行時にどのような要素が追加されたんでしょうか。
ホン氏:
まず,キャラクターが追加されました。そのほか,クエストが以前の10倍以上に増え,ゲームの大きな特徴である「ユーザー・クリエイト・ダンジョン」(以下,UCD)にも新たな要素が追加されています。詳しくはプロジェクトマネージャーに任せますが,彼は韓国で開発スタッフとともに,ルナティアを日本向けに調整する作業を5か月にわたって行ってきました。
4Gamer:
2008年12月のテクニカルテストとクローズドβテストで,その一部が公開されたわけですが,テスターの反響はどうでしたか?
ホン氏:
クローズドβテストでは3000人のテスターを募集したんですが,当社の予想をはるかに上回る応募がありました。テスターのほとんどがテスト期間中にログインしており,多くの参加者からポジティブな感想をいただきました。かなり良い手応えを感じています。
4Gamer:
実施期間はそれぞれ2日間,3日間とやや短めでした。
ホン氏:
ええ,そのためルナティアのより深い部分をお見せできなかったのも事実で,私達としてはそのことが残念です。
4Gamer:
ジャレコがβテストを2007年に行いましたが,当時の参加者から,現在のルナティアについての感想は寄せられていますか?
ホン氏:
クローズドβテストで追加したキャラクターについて,当時の参加者からは上々の評価を得ていますし,情報を公開しているだけでまだ実装していない要素についても,「絶対に実現してほしい」との意見を多数いただいています。
私達は,ルナティアのコミュニティサイト「ルナティア広場」(関連記事)を用意したんですが,ありがたいことに,最初に集まっていただいたのは以前のテスターの皆さんだったんですよ。
4Gamer:
本作に対する期待の大きさがうかがえます。では,新たにルナティアを展開するにあたって,見どころとなるのはどんな点でしょう。
まずは,キャラクターの可愛らしさです。これまで当社がサービスしてきたタイトルの中で,最も日本向けに仕上がっているといえるでしょう。
それから,コミュニティ要素にも注目していただきたいです。ルナティアは,プレイヤーが二つの国家に分かれて戦うという内容ですが,もちろん戦争ばかりでなく,コミュニティ要素にも注力しています。先ほど触れたルナティア広場は,ファンの皆さんが情報交換したり,交流を深めたりするのに活用していただけると思いますよ。
もう一つ,プレイヤー自身がダンジョンを作成できるUCDも,ゲームの大きな魅力となっています。
当初からグローバル展開を意識していた
「ルナティア」の開発体制
キャラクターの追加を含め,時間をかけて日本向けの調整を行ってきたという話がありましたが,そのことからも,エムゲームジャパンはルナティアに相当な力を注いでいるように感じます。
ホン氏:
その理由は二つあります。まず,運営移管を繰り返したことで皆さんをお待たせしてしまったことです。楽しみにしていただいている方の期待には,絶対に応えなければなりません。
もう一つは,今回,ワールドワイドでほぼ同時にスタートを試みたことと関係があります。
4Gamer:
といいますと?
ホン氏:
韓国のオンラインゲームを日本などの海外で展開する場合,ひととおり完成させ,それをローカライズするのが一般的です。しかしルナティアでは,当初から日本向けの要素を組み込みつつ開発してきました。そういう意味で,ほかのコンテンツとは少々扱いが異なるといえます。
4Gamer:
なるほど。つまり韓国MGAMEではもともと,Holicの海外展開を念頭に置いて開発が進められていたんですね?
ホン氏:
ええ,そのとおりです。すでに北米,韓国,中国,台湾でサービスインしています。
4Gamer:
ということは,それぞれのマーケットに向けた要素が個別に組み込まれていたりするのでしょうか。
ホン氏:
今のところ,そこまで大きく変えてはいません。例えば,韓国ではPKがあって当たり前ですが,日本ではまだ受け入れられているとはいえませんので,できるだけ目立たない形にするとか,その程度の差別化です。とはいえ内部的には,各国のプレイヤーのリクエストに応えられるよう,非常に柔軟性の高い作りになっています。
4Gamer:
各地域のニーズに合わせて,細かく調整できるわけですね。それではホンさん自身は,日本でどのようなMMORPGが求められているとお考えですか?
ホン氏:
コンシューマゲームが主流となっている日本でMMORPGを遊んでいるゲーマーが求めているのは,当然ながら人と人とのつながりだと思います。だからこそ,コミュニティ性の高さがポイントとなるのではないでしょうか。
4Gamer:
なるほど。それでは最後に,ルナティアに期待している人や,4Gamer読者に対してメッセージをお願いします。
ホン氏:
これまで当社が扱ってきたタイトルとルナティアが大きく異なる点は,運営のスタンスです。これまでの作品では,プレイヤーを“見守る”立場で運営してきたのに対し,ルナティアでは,ゲームを遊ぶ皆さんのパートナーとなり,“一緒に楽しみながら手助けする”スタンスでやっていくつもりです。
ルナティアに用意されているサーバーは一つだけであり,すべてのプレイヤーが同じ世界を共有することになります。たくさんのプレイヤーと一緒にルナティアの世界を作り上げたいと考えていますので,ぜひ期待してください。
4Gamer:
ありがとうございました。
プレイヤーの動向を見つつ,PKシステムのバランスを調整
4Gamer:
2008年12月にテクニカルテストとクローズドβテストが矢継ぎ早に行われましたが,手応えはどうでしたか?
イ・ヨンヒョク氏(以下,イ氏):
事前に大きく告知したわけではないのですが,かなりの数の応募があり,驚きました。参加者からの反応には,さまざまなシステムが用意されていることを評価する声が多い印象です。
実は,2007年のβテストのときに寄せられた不満点で最も多かったのが,コンテンツ不足に関するものでした。そこで今回は,できるだけ多くのコンテンツを用意し,参加者に触れてもらうというコンセプトでテストを行いました。
4Gamer:
なるほど。その狙いが的中したわけですね。
イ氏:
その一方で,先行してサービスしている韓国で実装されたPKシステムについて,日本でどうなるのか不安だとの意見も寄せられています。
いずれにしろ,参加者からの感想/意見には熱いものが多く,そこまで期待して待っていただいていたんだとあらためて感じました。その期待に応えるため,気を抜かずに運営していく決意です。
4Gamer:
プレイヤーからPKシステムに対する不安の声が寄せられたということですが,日本ではどのような扱いになるんですか?
イ氏:
ルナティアはそもそも,二つの国家に分かれて戦いを繰り広げるゲームなので,PKを全面的に廃止するのは難しいです。しかし日本では,「ほかの人を倒すことが楽しい」という人より,「ほかの人に倒されると悲しい」「ゲームを楽しめない」という人が多いので,当然,調整が必要となります。
4Gamer:
具体的にはどのように?
イ氏:
ほかの国ではPK可能となっているフィールドについて,日本ではPKできない仕様に変更し,ダンジョンについてはほかの国と同様,PK可能のままにしておきます。そして今後,プレイヤーの動向などを調べつつ,調整を重ねたいと思います。
4Gamer:
プレイヤーの反応に応じて,柔軟に対応していくわけですね。
イ氏:
ただし現状では,PKを完全に排除するのはかなり難しいと思います。というのも,ダンジョンでのPKがプレイヤーの名誉値に関わる仕様で,さらに名誉値は,ギルドのランキングに影響するからです。
名誉値を獲得する手段さえ増えれば,必ずしもPKを行う必要はなくなるわけですから,例えば,国家戦を毎週のように開催することや,UCDに名誉値を得られる仕組みを追加することなどが,対応策として考えられます。
4Gamer:
プレイヤーがPKについてどんな反応を示すか,注目したいと思います。
オープンβテスト以降,ルナティアが目指す方向性とは
さて,1月15日からオープンβテストがスタートしますが,その内容を具体的に教えてください。
イ氏:
今回のテストでは,ついに敵対国家のプレイヤーとフィールド上で対面することになるんです。
4Gamer:
先ほどの話では,PKはダンジョン内でのみ可能ということでしたね。
イ氏:
ええ,そうです。ただし日本版では,ダンジョンでもPK可能条件がより厳しく設定されています。先行してサービスしている韓国や台湾でのデータに基づいて調整していますので,少なくとも,一撃で勝敗が決まるような状況は生まれないでしょう。
4Gamer:
PKにあまり馴染みがないという人も,安心してプレイできそうですね。
ところで,ルナティアのウリの一つにUCDがありますが,このコンテンツについて説明をお願いします。
イ氏:
UCDは,プレイヤー自身がオリジナルのダンジョンを作れるというものです。専用のエディタ機能を使ってマップの構造をデザインしたり,モンスターの出現場所を指定したりできます。
また,カメラで撮った写真や,自分で描いた絵をテクスチャとして利用可能になっています。正確には,ダンジョンを構成するブロックのテクスチャを変更できるという意味です。
4Gamer:
ユニークなダンジョンが登場しそうですね。
イ氏:
私達も楽しみにしています。今のところ,UCDはレベル35以上のキャラを対象としたコンテンツですが,低レベル向けのUCDも企画していますので,楽しみにしてください。
4Gamer:
実をいうと,2007年のβテスト時に初めて触れたUCDはかなりシンプルなもので,最初は面白いけれど,すぐ飽きてしまうのではないかという印象を持ちました。今の話を聞く限り,大幅に改良されているようですね。
イ氏:
当時は単に,「こういう遊び方もありますよ」という提案に近いものでしたね。今後は,ほかのコンテンツと連携させることで,楽しみの幅を広げていきたいと思います。先ほど少し話しましたが,例えば,作成されたダンジョン内でレアアイテムを使うと名誉値が上がるようにすることも検討しています。
それでは,やや気が早いかもしれませんが,オープンβテスト以降に実装される要素について話を聞かせてください。
イ氏:
今後は,「クラスリボルビングシステム」(関連記事)がより重要な位置づけとなるでしょう。
4Gamer:
といいますと?
イ氏:
このシステムでは今のところ,一つのキャラクターで二つの職業を選べるだけですが,サブ職業を何にするかによって,メイン職業のスキルツリーが変化するといった仕組みを検討しています。
4Gamer:
どのような組み合わせで職業を選ぶかで,さまざまな遊び方ができそうですね。例えば,サブ職業に回復職を選ぶと,メイン職業の攻撃スキルに回復効果が付くようになったりするんですか?
イ氏:
細かい部分についてはまだ検討中で,スキルツリーの話も確定しているわけではありません。とはいえ,サブ職業の選択によって,これまで以上にさまざまなメリットを得られるようなシステムにしたいと思っています。できれば,数か月以内に実現したいです。
オープンβテストに合わせて公式サイトオープン
“あの”仕掛けももちろん用意
そのほか,アピールしたいポイントはありますか?
イ氏:
私達がルナティアで目指しているのは,キャラクターに愛着を持ち,育成そのものに喜びを感じられるゲームです。そのため,これからさまざまな装備アイテムやエモーションを追加していきたいです。狩りや戦闘も大切ですが,まったりと楽しめる要素も重視しています。
また,シナリオやイラストについても,韓国で先行実装されたものとは異なる日本向けのバージョンも用意しています。
ルナティアのイラストはインパクトがありますよね。
イ氏:
ありがとうございます。日本展開するにあたり,イラストレーターを起用して描いてもらったのですが,とても出来が良かったため,今ではワールドワイドでこのイラストが使われています。その代わり,「イラストと実際のキャラのイメージが異なる」とのツッコミも,各国のプレイヤーから寄せられるようになりましたが……(笑)。
4Gamer:
イラストといえば,ルナティア広場にもさまざまな仕掛けがあって面白いですよね。
イ氏:
ルナティア広場はあくまでティザーサイトで,公式サイトではないんですよ。オープンβテスト開始に合わせ,プレイガイドなどのコンテンツを用意した公式サイトがオープンする予定です。
ルナティア広場は,サービス開始まで待っていただいている皆さんのために,ちょっと遊べるコンテンツとして企画しました。掲示板に書き込んだり,ミニゲームで遊んだりすることで,ポイントや称号を集めていくという趣向です。
4Gamer:
ルナティア広場で獲得したポイントや称号は,ゲーム内で使えますか?
イ氏:
そうできれば一番良かったんですが,今のところ実現していません。Webとゲームとの連携については,ほかにもいくつか考えていることがありますので,期待してください。
4Gamer:
ところで新しい公式サイトにも,一部のファンに評判の“あの”仕掛けが?
イ氏:
あー,あれですか。用意してはいますが,今回は少し難度が高いかもしれませんね。そもそもあの仕掛けは,スタッフがちょっとしたお遊びとして追加したという経緯があります。最初はあんなに評判になるとは思っていなかったんですが,今では期待していただいている人も多いので,ちょっとがんばっています(笑)。
4Gamer:
それでは最後に,ルナティアに期待している人や,4Gamer読者に対してメッセージをお願いします。
イ氏:
ルナティアでは,ゲームにもWebにもさまざまな「遊び」を用意しています。それらの遊びに飽きてしまったら,リクエストをいただければ積極的に対応していきます。
以前,ジャレコさんがファンの皆さんと交わした,「すべての人を満足させることはできないかもしれないが,より多くの人を満足させる努力を惜しまない」という約束を,これからは私達が果たすべくがんばっていきます。
4Gamer:
ありがとうございました。
インタビュー終了後にイ氏から聞いた話によると,2007年のβテストで寄せられた要望には,アバター装備ややり込み要素の充実など,独特なゲーム文化を持つ日本の参加者ならではのものが多く含まれていたそうである。
エムゲームジャパンの取締役を務めるホン氏は,インタビューの中で「当初から日本向けの要素を組み込みつつ開発してきた」とさらっと述べている。しかし“現場レベル”では,日本からの要望をどこまで取り入れるべきか,韓国の開発チームとのあいだで激しい議論が行われてきたようだ。
インタビューの中で説明されているように,ルナティアは柔軟性の高い作りとなっており,それぞれの国のニーズに合わせて仕様を調整できるとのこと。日本のゲーム事情や関連文化に詳しいイ氏は,正式サービス開始に向け,日本のゲーマーに向けたさまざまな企画を進めている最中だ。
またイ氏は,プレイヤーから寄せられるリクエストこそが,ルナティアを日本ならではの作品へと育てていく鍵を握ると強調していた。
ルナティアに関心を抱いた人は,ぜひオープンβテストに参加し,エムゲームジャパンの意気込みを確かめてみよう。
「ルナティア」公式サイト
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