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韓国ゲームポータルの覇者CJ InternetのCEO,Youngjong Jung氏インタビュー。「大きく変わるCJの展望,および世界展開への布石」
人前に――韓国メディアの前にさえ――滅多に姿を現さないことで有名な,同社のCEOであるYoungjong Jung氏。今回運良く,氏とG★で接触することに成功した。その時間わずか1時間弱。限られた時間を使って何を聞こうかと散々悩んだのだが,やはり気になるのは同社の“本当の姿”と,ポータルサイトとしての“今後の展開”。その内容を色々と聞くことができたので,ここに公開しよう。
ゲームポータル,と聞いて思い浮かべるのは,カードゲームやボードゲームなどのカジュアルなものがあれこれごったに置いてあるサイト,というイメージ。しかしCJ Internetは現状のゲームポータルには飽きたらず,貪欲なまでに拡大し,世界展開さえも見据えている。いずれは日本にも導入されるであろう,という話も含まれているので,興味のある人はぜひ一読してみてほしい。(Interview by Kazuhisa,photo by kiki)
4Gamer:
わざわざお時間いただきありがとうございます。滅多に表に出てこないという噂のCJ InternetのCEOとお話できるということで,何を聞こうかなと考えていたんですけれども……。
Youngjong Jung氏(以下Jung氏):
何になったんですか?(笑)
4Gamer:
たぶん最初に聞くべきは「本当はCJ Internetってどういう会社なの?」というところかな,と思ったので,そこからお願いできますか。
韓国ではもちろん,CJ InternetのNetmarbleがトップなんですけれど,日本では後発なこともあり,まだまだトップのサイトであるとはいえないと思います。この機会に,CJって本当はこういう会社なんだ,ということを,私も含めて教えていただきたいと思っています。
Jung氏:
なるほど,いいですよ。
CJ Internetという会社は,今年で設立6年目なんですが,会員数が2600万のゲームポータルサイトです。1日の訪問者が200万人で最大同時接続者数が35万人,韓国でのトラフィックの規模は文句なしに1位なんです。ちなみに,一年間の営業利益が約3000億ウォン(およそ380億円)です。
4Gamer:
2600万アカウント……。
Jung氏:
ええ。あと,今全体で60個くらいのゲームをサービスしているんですが,今までは主に外部のデベロッパさんのゲームをサービスしてきました。しかし去年からは,自社開発用に「CJIG」(CJ Internet Games)というスタジオを運営して,そこで6タイトルくらいを開発中です。
4Gamer:
ついに自社開発に乗り出すんですね。
Jung氏:
そうです。来年には4タイトルくらいをサービスする予定で準備しています。
これからのCJ Internetは,“ポータルサービス+開発力”を持っている会社としてステップアップしていきます。
4Gamer:
当然海外進出も考慮されてるんですよね?
Jung氏:
まず日本にはCJインターネットジャパンがありますよね。中国は,T2CNという会社で来年から本格的に進出しますし,北米においてもサンノゼに法人を設立して,今は本社の人材を派遣しています。来年からは,海外マーケットの攻略も本格的にやっていくつもりです。
4Gamer:
海外の攻略というのは,いまおっしゃったもののほかにどのあたりを含んでいますか? ヨーロッパや,現状では未展開のアジア圏――ロシアであったりインドであったりフィリピンであったり――というあたりも考えに入っていますか?
Jung氏:
最終的には,もちろんヨーロッパを始めとした,マーケット的に未開拓なところにも進出しようとは思っていますが,実はCJ Internetとして一番大事な市場は,日本ですよ。その次はアメリカでしょうか。
アメリカでの事業の経過を見ながらヨーロッパ方面へとシフトして,その後は東南アジア,と言ったところでしょうか。東南アジアは,インドネシアを拠点にして広げる形で考えて準備しています。インドとかブラジルとかロシアとかも調査してみたんですが,環境としてちょっと早いんじゃないかという結果になりました。
4Gamer:
アジア圏でインドネシアを選んだ理由はなんですか?
Jung氏:
もちろん,環境的なものが今一番いいからですね。むろん,収益の面では東南アジアはまだまだ小さいですが。人口も2億人以上で,今後のステップとして大きな可能性があるので拠点として適しているだろう,と思った次第です。
4Gamer:
最近,北米のメーカーさんなんかもアジアの拠点を香港に移すことが多いですよね。EAも先日香港に移しましたし,Activisionも香港にHQを持っていた……ような気がします。その中でインドネシアというのは珍しかったので聞いてみました。
Jung氏:
やっぱりコストの面ではメリットがあると思うんですよね。
■CJ Internetだけで,なんと14タイトル!
4Gamer:
韓国のゲーム事情というものを,この4年くらい真面目に追っかけているのですが,大作MMORPGという“重厚長大路線”が陰りを見せ,次はカジュアルゲームが流行ると言われていたのが,昨今の状況です。
しかし実際には,カジュアルゲームを中心に据えた中小のパブリッシャでは,CJさんを筆頭とするほかのポータルサイトにはまったく勝てず,どこも成功できていないというのが現状です。そんな中,成功者であるCJ Internetが進んでいくべきステップというものを,やや遠い展望までを踏まえると,どのあたりに見据えていますか?
Jung氏:
うーん,そうですね……今までは韓国内にそのリソースを集中していたんですが,これからは先ほど申し上げたようなグローバル市場を見つめていきたいと思っています。
例えば日本やアメリカは,カジュアルゲームという市場がこれから成長する可能性が高い国なので,そのマーケットに向けては自社のカジュアルゲームを集中させて攻略します。両方とも,MMORPGというジャンルにおいても十分に成長の余地があると思いますし。その二つの市場に対しては,MMORPGとカジュアルゲームをバランス良く供給しながら,大作を中心とする認知度の高いコンテンツ――今までのような韓国内だけのコンテンツではなくて,海外マーケットをも全部含めるような――として勝負したいと思っています。
4Gamer:
そこまでおっしゃるということは,その“認知度の高いコンテンツ”という意味において何か具体的な動きが?
Jung氏:
アメリカで有名なコンテンツと,日本の有名なコンテンツをオンラインゲーム化することを,もうすぐ発表する予定です。
4Gamer:
どんなコンテンツですか? 映画ですか? コミックですか?
Jung氏:
基本的な協議は終わったんですが,契約書にサインする直前なんですよ。すいません,まだ言えません。
4Gamer:
何かヒントはありませんか?
Jung氏:
まだちょっと困ります(笑)
4Gamer:
まぁそれはそうですね(笑)。
じゃあ質問を変えます。それは,CJIGが作っている6タイトルと関連する話ですか?
Jung氏:
いえ,CJIGの6タイトルは別に進行しています。
「魔球魔球」と「A3」の開発元であるAniParkがあるじゃないですか。実はCJは,あそこの資本を55%持ってるんですよ。そのAniParkから4タイトルが出ますし,今まだ言えませんが韓国国内の某開発社の資本も70%押さえています。その会社から2タイトル。
そしてCJIGで6タイトル持っていますので,全部で12タイトルのプロジェクトが進行しています。先ほど述べた有名コンテンツのゲームは,さらに別なプロジェクトです。開発はCJIGに任せると思いますが。
4Gamer:
うーん,そんなに大量にプロジェクトが動いてるんですね。
Jung氏:
来年には,その中から6タイトルが公開される予定です。
4Gamer:
CJIGは純粋な開発オンリーのデベロッパカンパニーなんですか? 例えば,CJ本体からCJIGに“こういうゲームを開発してくれ”というオファーが飛ぶと,CJIGがそこからどこか開発会社を捜すのではなくて,CJIG自身が作ると考えてよいですか?
Jung氏:
ええ,そのとおりです。
4Gamer:
この12タイトルは,それぞれがそれなりの規模感を持った大作……というイメージなのですが,“カジュアルゲームのポータル”というイメージを払拭すべく,ドスっと腰の据わった大きめのタイトルを自社開発でどんどんパブリッシュしていく,そういう形に移行しつつあるんですか?
Jung氏:
そういうわけでもないですよ。12タイトルの中には,カジュアルゲームもあるしイースオンラインなども含まれています。さらにそれらとは別で,大作として5年間をかけるプロジェクトも別進行しているといった具合です。
基本的にMMOは70〜80名の規模で作っていますし,これからのNetmarbleは,低年齢層のカジュアル向けポータル,じゃなくて,ある程度の開発力も持っている,デベロッパとしてのイメージを併せ持つような方向で展開するつもりです。
4Gamer:
やはり今までは,比較的年齢層の低い人がメインユーザーだったんですね。
Jung氏:
そうですね。ボードゲームに関しては30〜40代が結構多いですが,ご想像どおり10代の人も相当多いですし,結局ファミリーサイトとして,親と子供が一緒に楽しめるサイトになっていました。
4Gamer:
20〜30代のコアゲーマーに向ける部分が弱かったのでしょうか。
Jung氏:
おっしゃるとおりです。
4Gamer:
この12本を始めとするプロジェクトで,そのあたりをもうちょっと強化しようという意図も入っているわけですね。
Jung氏:
そう考えていただいて問題ないかと思います。
4Gamer:
先ほどイースオンラインという名前が聞こえましたけど,日本のユーザーはとても気にするタイトルなんです。今,どんな状況で,どのタイミングで日本に来そうですか?
Jung氏:
イースオンラインに関しては,今日(編注:11月9日)から初めての1次クローズドβテストが始まったばかりです。そのβテストの動向を見ながら改善することも把握していきますし,それらのいろいろな結果を見てオープンβテストの日程を決める予定です。
最近ファルコムの加藤会長とお会いしたんですが,ファルコム側の意見は「韓国側で安定運営できたあとで日本でサービスする」というものです。
4Gamer:
日本のパブリッシュはCJインターネットジャパンですか?
Jung氏:
日本での権利は,当然ファルコムさんが持っています。CJインターネットジャパンは,優先権に関してファルコムさんと相談している最中です。
4Gamer:
映画なんかと同じような優先権ですか?
Jung氏:
いえ,ちょっと違う感じです。このイースオンラインに関してですが,昔はCJ InternetとeSofnetが開発をしていたのですが,その3社がいたときからの契約関係が非常にややこしいものになっています。……私の立場からはちょっといろいろ言いづらいですね(苦笑)。
#編注:関連記事は「こちら」。旧デザインのページなので表示が崩れる可能性があります。
4Gamer:
なるほど。では素直に日本での告知を待つことにしますね。
■「カジュアルゲーム」の定義はいかに
4Gamer:
ところで話していてちょっと悩んだので,話のレベルを戻させてください。Jungさんは,カジュアルゲームというジャンルの定義はどのようにお考えですか? 日本や韓国,欧米の会社それぞれがそれぞれに違うイメージを持っていますし,そもそも社内統一さえキチンとできていないところもあると思います。正直なところお恥ずかしい話ですが,4Gamer編集部の全員が同じ見解を持っているかというと,そういうわけでもないと思いますし。
Jung氏:
確かに言葉だけが一人歩きしている感じはありますね。
CJ Internetにおける「カジュアルゲーム」という言葉の定義は決まっています。「Massiveではない」「プレイ時間が短い」「低年齢層がプレイする」。
4Gamer:
その場合の低年齢というのは何歳ぐらいですか?
Jung氏:
10〜20歳前半くらいでしょうか。女性がプレイしやすいようにデザインされたゲームも,カジュアルゲームとして分類しています。
4Gamer:
女性といえば,北米マーケットなどは,最近カジュアルゲームにおける女性の比率がとても上がっていると聞いています。そのあたりも踏まえて,何か北米展開独自の要素を入れたりとかは考えていらっしゃいます?
Jung氏:
あぁ,そのへんはちょっと私は違う印象を持ちました。アメリカのGDCなどにも参加して話を聞いてみたのですが,アメリカで女性達がプレイしているカジュアルゲームは,「ダウンロードして簡単にプレイできる」というものです。我々や,たぶん日本の会社さんが考えているであろうカジュアルゲームは“オンラインゲーム”や“コミュニケーション”が重要視されていますよね。
4Gamer:
確かにそうですね……。しかし今おっしゃったように,日韓の業界内では,なんとなくとはいえ同じような定義を持っている「カジュアルゲーム」ですが,ユーザーさんはどうなんでしょうか。
Jung氏:
といいますと?
4Gamer:
ユーザー自身が無意識のうちに,ハードゲーマーとカジュアルゲーマーの住み分けというものができているような気がしています。そこで気になるのが,韓国のCJのユーザーさんの動向と日本のユーザーさんの動向には,明確な違いがあるかどうか,なんです。
Jung氏:
なるほど,そこは他国展開にあたって重要な部分かもしれませんね。
4Gamer:
ええ。日本での「カジュアルゲーマー」というものがもし韓国とは違う分布を描いているなら,運営会社もそれを見失わずに対応することが求められると思いますし。
Jung氏:
そういう意味なら,日韓のユーザー層は明確に違うと思いますよ。
4Gamer:
どのあたりですか?
Jung氏:
ポイントはいくつかあるんですよ。
例えば日本のユーザーさん達は,ユーザー層の拡大は遅いけど,ハードゲーマー達までもが層の中に存在するので,その没入度が凄く高いです。それに伴って,購買力も韓国に比べると10倍くらい高いですね。韓国で同時接続1万人のゲームの売り上げは4〜5億ウォンくらいですが,日本で同じ同時接続なら20〜30億ウォンの売り上げになります。
4Gamer:
おや,そんなに差があるものなんですね。アイテム課金発祥の国韓国では,もう少しみんなお金を使うのかと思ってました。
Jung氏:
もちろんみんなお金を使ってはくれるのですが,日本のハードゲーマーのみなさんは凄いんですよ(笑)。
また,日本のユーザーさんはアイテムに関して執着する傾向が高く,“変身”の要素が大好きですね。私の個人的分析では,日本で立ち上がっているゲームポータルがなかなか成功できない理由は,韓国と同じようにカジュアルゲーム中心で展開してしまったからだと思います。それは,日本のユーザーさんの好みとは違ったんですね,きっと。
4Gamer:
アバターという存在一つ取っても,日韓でずいぶん違うと聞いています。
Jung氏:
そうですね。韓国ではゲームをするためにアバターを購入するんですが,日本はアバターを楽しむためにアバターを購入します。そういう面から見ても,両国のユーザーさんは結構違うと言ってもいいのではないかと思います。
4Gamer:
しかし,同じ同接数で売り上げ規模が6倍違うというのは,単純にアープが6倍高いと考えて良いですか?(編注:アープ=顧客単価。1ユーザーあたりが支払っているお金)
Jung氏:
もちろんアープが6倍なんですが,それにも二つの意味があります。単純に6倍のものを買ってくれるという意味が一つ。もう一つは,むろん極論ではありますが,値段が6倍でも日本のユーザーさんは購入してくれる,という意味です。
4Gamer:
100円のものを600円にしても売れる,ということですか?
Jung氏:
ええ。むろん極論ですし,すべてに当てはまるわけではないですが,そういう傾向は非常に高いです。それくらい日本のユーザーさんは「アイテム」にこだわるんですよね。
■アイテム課金モデルはどのように構築される?
4Gamer:
なるほど。そんなアイテム課金がビジネスモデルの中心ですが,Netmarbleには,アイテム課金以外の収益構造には何がありますか?
Jung氏:
アイテム課金,アバター販売,Web広告の三つが収益モデルです。
4Gamer:
一度誰かに聞いてみたいと思ってたんですけれど,それを聞くのに最も適した人が今目の前にいるので聞かせてください(笑)。
アイテム課金などで成立するビジネスモデルというのは,プロジェクトを始めるときに,ビジネスレイヤーの初期設定をどのように行うんですか? 例えば月額課金だと,“何人入ってくれるだろうからいくら”というデザインがあると思うのですが,アイテム課金がそれをどのようにデザインしているのか,以前から気になっていたんです。
Jung氏:
なにより大事なものは,やっぱり「経験」ですね。今までに色々なジャンルの色々なアイテムを販売した経験があるので,同接1人当たりの売り上げ平均額とか,10代をターゲットとしたアクションゲームでの売り上げ実績とかのデータが蓄積されているのです。
そういうことを色々と考慮して判断すると,ほぼ実績と違わない数値が引き出せるのです。
4Gamer:
今までの経験から来る数字なんですね。
Jung氏:
そうですね。もちろん経験だけではなくて綿密な分析も行いますが。例えばこのゲームはどういうアイテムを販売するのに適しているのか,例えば他社のゲームのアイテム販売は,どういう部分で成功しているのか。
そういったことをキチンと分析して,その上に“経験”をプラスして判断するようにしています。
4Gamer:
なるほど。長い歴史を誇る会社だからこそ出来ることですね。
■運営ノウハウであと5年は安泰
4Gamer:
ところでJung社長は,韓国のオンラインゲームマーケットが今後どのようになっていくかとお考えですか? また,先ほど日本は大事なマーケットだとおっしゃってくれていたので,日本のマーケットにも注目していると思うのですが,日本のマーケットは今後どのようになっていくとお考えですか?
Jung氏:
私の考えの中での韓国オンラインゲーム市場は,今後5年間は順調に成長する見込みです。なぜならば,今の主軸である年齢層が20代なので,この年齢層があと5年はオンラインゲームで遊び続けるだろうな,と。
日本は……うーん,そうですね,来年までは難しいマーケットになると思いますが,最終的にはコンソールマーケットが再び発展する市場になるんじゃないでしょうか。
4Gamer:
そんな状況の中で,日本と韓国のゲーム文化の融合とか協調路線とかというのは,どういう方向に進むべきだと思っていますか。
Jung氏:
人によって諸説さまざまですが,韓国と日本の協力は結構うまくいっている気がしています。
でもこれからそう簡単ではないですよね。なぜなら今までは,日本は素晴らしいコンテンツを持っていて,韓国は素晴らしいテクノロジーを持っていた,と。でも日本がテクノロジーを持った後は,協力というよりも競争になるわけですよね。まぁあくまでも個人的な意見ですが。
4Gamer:
日本の会社がオンラインゲームのテクノロジーを得ることが相当早いとお考えなんですね。
Jung氏:
全体に適応できる話かどうかはちょっと微妙かとは思いますが。
例えばコーエーさんを例に見ると,初めてのオンラインゲームのタイトルと,その後の大航海時代Onlineや三國無双BBなどを比べてみると,クオリティが格段に高くなってますよね。まずはコーエーさんみたいな大きな会社から,オンラインゲームというものに適応していくんだと思います。
日本の会社が積極的にオンラインゲームに参入してこなかったのは,やはり純粋にコンソール市場が大きすぎるからでしょう。でもコーエーさんやスクウェア・エニックスさんを筆頭に,一部着々と準備を進めているので,将来的な展望は十分いいものだと思っています。
4Gamer:
韓国ゲーム業界がオリジナリティのあるゲームを作るようになるのと,日本の開発会社が十分なネットワークテクノロジーを得るようになるのと,どちらが早いとお考えですか?
Jung氏:
なかなか難しく,かつ答えづらい質問ですね(笑)。私の考えでは,日本が開発ノウハウを得ることのほうが早いと思います。しかし見逃せない点は,韓国が今までかかって溜めた運営のノウハウでしょうか。これは相当重要かと思います。突き抜けた一部の日本の会社さんを除けば,あと5年間くらいは安泰じゃないでしょうか。
4Gamer:
確かに運営ノウハウに関しては韓国は安定してますからね。日本は,そのあたりの問題はまだまだこれからだと思います。
Jung氏:
自社展開の経験則的に言うならば,日本では,GMもそうですが,プロマネをできる人がいませんよね。Web開発スタッフも足りないですし,そもそも開発者の数も足りません。そのへんを解決することが急務ではないかと思います。
4Gamer:
なるほど。日本も今後負けないように伸びていってくれることを,私も期待しています。色々と興味深いお話をありがとうございます。
率直に述べることを許してもらえるならば,カジュアルゲームポータルというものを,個人的に軽視していたことは否めない。しかしCJ InternetのJung氏の話を聞くにつれ,その認識は“誤解”に変わってしまった。彼らがひとたび動き出したら,オンラインゲームの業界図さえ,塗り替えかねないインパクトがあるのだ。
圧倒的な会員数を抱え持つサービスサイトは,そのユーザーごと次のサービスにシフトできる。頭で分かっていたことではあるが,ここまで大きい数字と大きな展望を聞かされると,改めてその威力に感服してしまう。
しかもCJ Internetの展開は,単に「カジュアルからMMORPGへ」というレベルのものではない。アメリカやヨーロッパも踏まえて世界を見据え,実際にその方向で動き出しているのだ。この勝ちパターンがひとたび認知されると,新しい作品が我先にとこぞってNetmarble上で展開するその姿――しかもワールドワイドで――が容易に目に浮かぶ。すでに日本でも,ハンゲームがその勝ちパターンに入りつつある。新作はハンゲームに持っていけば,ある程度の獲得ユーザー数が事実上コミットされるのだ(むろん,その後の料率などのビジネスレイヤーの問題はあるが)。
Jung氏の言葉を信じるならば,日本マーケットも十分に考慮したうえで今後の展開を行っていくとのこと。本家Netmarbleの展開や,少しだけ触れた「著名コンテンツのオンラインゲーム化」なども踏まえ,今後2,3年は目が離せそうにない。
−−2006年11月9日収録
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