業界動向
Access Accepted第426回:E3 2014で発表されなかったゲーム
出展された新作タイトルの数が例年以上に少なく思えたE3 2014だったが,各パブリッシャが開発中の作品がそれなりに揃い,2014年末に向けての期待が高まる内容ではあった。しかし,中には制作発表されながらも,今回のE3 2014に出展されなかった作品も少なくない。というわけで今回は,8月に開催が予定されてるドイツのgamescom 2014に期待を寄せつつ,E3には出てこなかったゲームにスポットライトを当てよう。
新作タイトル出展数が減少しているE3
2014年6月10日〜12日,ロサンゼルスで開催されたE3 2014。開催前日にプラットフォームホルダーや大手パブリッシャが行うプレスカンファレンスと合わせて,今年もまた欧米ゲーム業界最重要のイベントが行われ,終わった。今年は,PlayStation 4とXbox Oneという新世代コンシューマ機が欧米で始動してから初のE3であり,販売台数で一歩先を行く雰囲気のSony Computer Entertainmentを,KinectなしのXbox OneをリリースしたMicrosoft,そして「大乱闘スマッシュブラザーズ」「ゼルダ無双」といった人気の高いIPを擁する任天堂が追撃するという構図に,多くのメディアやゲーマーが注目することになった。
E3を主催する北米の業界団体ESA(Electronic Software Association)の発表によると,E3 2014の参加者は,メディアを含めて約4万8900人だったという。前年比で700人ほど多い程度だが,一部の人気作を除いて試遊待ちの長い列を見ることはあまりなく,どちらかというと昨年より空いていた印象を受けた。セキュリティは年々厳しくなっており,会場の入り口で必ず写真付きの身分証明書を見せなければならないのが面倒だったが,そのおかげなのか,見るからに遊びに来たという人の姿は少なく,ブース/ホール間の移動も,また「飛び入り試遊」もしやすかった。
ただ,ひとつ気になったのは,取材対象になりそうなタイトルが思ったよりも少なかったことだ。イベント終了直後,いつもなら取材したゲームの記事を会期中に書き切れず四苦八苦しているものだが,今年はほとんどやり残しがなく,これは,筆者の10年以上におよぶE3取材経験においても,珍しいことだ。
なぜE3に出展されるゲームタイトルが減少しているのかという理由は,Electronic ArtsのCOOを務めるピーター・ムーア(Peter Moore)氏が語ってくれた。6月14日に掲載したインタビューでムーア氏は,数撃ちゃ当たる式に同じ人気ジャンルのゲームを何本も投入するのではなく,「プロジェクトを少なくする代わりに,個々の作品の開発と広報に多くのリソースを割り当てる」というのが,現在のパブリッシャの主流の考え方になっていると述べた。考えてみれば当然の話であり,これによってタイトルの質的向上や,発売後のサポートが十分に図られるのならば,消費者にとってもありがたいことだ。
さて,おそらくいろいろな理由があるのだろうが,出展を期待されていたのに,結局今回のE3 2014には出展されなかったタイトルもいくつかある。
というわけで今回は,E3 2014で公開されそうで公開されなかった新作タイトルを以下にリストアップした。8月にドイツで開催されるヨーロッパ最大のゲームイベント,gamescom 2014での登場に期待を寄せつつ,チェックしてほしい。
Halo 5:Guardians
発売元:Microsoft Games開発元:343 Industries
発売予定日:2015年秋
E3 2014開催直前に正式な制作発表が行われたため,多くのゲーマーが初お披露目を期待していたXboxプラットフォーム専用の人気シリーズ最新作「Halo 5: Guardians」。Microsoftのメディアブリーフィングでは,トレイラーが公開され,2014年12月にβテストが実施されることが明らかになったものの,それ以上の情報公開はなかった。
その代わり……と言えるかどうかは分からないが,過去のシリーズ4作をまとめてグラフィックスをアップグレードした「Halo: The Master Chief Collection」が,欧米で11月にリリースされる予定だ。「Halo 5: Guardians」のβテストに参加できるアクセスコードも同梱されるとのこと。
2015年のE3で新作が大きくアピールされるのはほぼ間違いないので,今のうちから過去作品をプレイし直しておくのもいいかも知れない。
Quantum Break
発売元:Microsoft Games開発元:Remedy Entertainment
発売予定日:2015年
「Max Payne」や「Alan Wake」などで知られるRemedy Entertainmentの最新作「Quantum Break」も,残念ながらE3 2014に出展されなかったタイトルの一つだ。もっとも,初のデモ公開がgamescom 2014で行われることがすでに発表されているので,それを楽しみにしたいところ。
Remedyらしい緻密なグラフィックスや,時間をコントロールするというゲームシステムなど,いろいろと興味深い「Quantum Break」だが,やはりその最大の注目点は,Xbox Liveで放映されるドラマシリーズとの連動だろう。非常に野心的な取り組みであるだけに,うまくいくかどうかを気にしながら,とりあえずは8月を楽しみにしたい。
Until Dawn
発売元:Sony Computer Entertainment開発元:Supermassive Games
発売予定日:未定
gamescom 2012に行われたSCEのプレスカンファレンスで,「パペッティア」と並んで制作が発表されながら,その後まったく音沙汰のないホラーアドベンチャーが「Until Dawn」だ。2013年末の海外メディアの報道では,プロジェクトがキャンセルになっていないことが伝えられており,「PlayStation 3向けで,PlayStation Moveが必須」のタイトルとして,2014年11月の発売を目標にした開発が継続されているという。
「Until Dawn」は,死んだ友人を弔うために山荘にやってきた男女7人が,奇怪な現象に遭遇するという内容で,1980年代のホラー映画風の画面や演出が特徴だ。Moveを懐中電灯として使いながらプレイすることになるらしく,「夜明けまで」というタイトルどおり,一夜の出来事が描かれるようだ。それ以上のことはあまり分かっておらず,なんとも気になるゲームであることは間違いない。
Mad Max
発売元:Warner Bros. Interactive開発元:Avalanche Studios
発売予定日:2015年
映画「マッドマックス」を題材にした作品で,荒廃した世界を舞台にさまざまなミッションやカーアクションに挑むという。とはいえ,E3 2014のWarner Bros. Interactiveブースは「Batman: Arkham Knight」や「Middle-Earth: Shadow of Mordor」などで盛り上がっており,どこを探しても「Mad Max」の姿はなかった。
本作の開発を担当するのは,「Just Cause」シリーズでおなじみのスウェーデンのAvalanche Studiosで,「Just Cause」同様,オープンワールドを背景にしたハチャメチャでスピーディなアクションが期待されている。
2015年5月には,27年ぶりのシリーズ最新作となる映画「Mad Max: Fury Road」が全米で公開される予定になっている(配給はWarner Bros.)ので,それにタイミングを合わせているのではないか。
Hitman 6
発売元:Square Enix開発元:IO Interactive
発売予定日:未定
E3 2014会場に設置されたSquare EnixブースにはEidos Interactive関連の新作展示がなく,ファンにとってはなんとも物足りない感じだったはず。出展されるかもしれないと思われていたのは,2014年1月に存在がほのめかされた「HITMAN」シリーズの第6弾だ。発表によれば,前作「HITMAN ABSOLUTION」で使用されたゲームエンジン「Glacier 2 Engine」を大幅に改良したものが利用されるとのことで,新世代コンシューマ機版も予想されている。
シリーズ最新作では,これまでのようなミッションベースではなく,自由に世界中を動き回りながら暗殺ミッションを請け負うというオープンワールドのゲームシステムが採用されるとのことで,公開されている画像は,主人公であるエージェント47が,空港で次のミッションを引き受ける街を選んでいるようにも見える。AIやマルチプレイモードも強化される予定なので,続報に期待したい。
Beyond Good&Evil 2
発売元:Ubisoft Entertainment開発元:Ubisoft Montpellier
発売予定日:未定
2003年にリリースされ,大きな評価を得たアドベンチャーゲーム「Beyond Good&Evil」。その続編となる「Beyond Good&Evil 2」の存在が公式に明らかにされ,ティザー映像が公開されたのは,なんと今から6年前のE3 2008直前,2008年5月のことだった。以来,「次のE3で公開」という噂は幾度となく出てくるものの,実際の状況はまったく見えない。
開発を担当するのは,Ubisoft Entertainmentの顔ともいえる「Rayman」シリーズの生みの親であるミッシェル・アンセル(Michel Ancel)氏と,彼が率いるUbisoft Montpellierだ。細々とだが止めることなく開発を継続することで知られるUbisoftだけに,現在も妥協のない制作が続けられていることに期待を持っておきたい。
著者紹介:奥谷海人
4Gamer海外特派員。サンフランシスコ在住のゲームジャーナリストで,本連載「奥谷海人のAccess Accepted」は,2004年の開始以来,4Gamerで最も長く続く連載記事。欧米ゲーム業界に知り合いも多く,またゲームイベントの取材などを通じて,欧米ゲーム業界の“今”をウォッチし続けている。
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