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「リネージュ エピソード6 ラスタバド〜決戦〜」開発者インタビュー
そんなEP6の日本での実装に合わせて,韓国NCsoftのリネージュデザインチームから,Park SungMin氏,Kim MinKyu氏,Um Jae Ho氏の3名が来日した。日本のプレイヤー達が,EP6に対してどのような反応を見せるのかをモニタリングすることと,GMチームとのミーティングが来日目的だったそうだが,4Gamerではこれ幸いとばかりにインタビューを申し入れた。
リネージュの開発に深く関わる3人のキーマンは,EP6の内容をどう見ているのか。また今後,リネージュをどのように育てていくのか。韓国で9年目,日本で5年目を迎える長寿タイトルの,現在と未来についてアレコレ聞いてみた。
■クロスランカーの総決算としてのEP6
本日はよろしくお願いします。EP6の詳細について伺う前に,まずはEP6のどのパートを担当されたのかを,お一人ずつ教えてください。
Park SungMin氏:
私は,EP6に限った話ではなく,リネージュ全体のコンセプトや設定を担当しています。
Kim MinKyu氏:
デザインチームでマネージャーをしています。今回のEP6では,各チームの調整や,スケジュールの進行管理などを担当していました。
Um Jae Ho氏:
私は,主に「汚された祝福の地」というコンテンツを担当しました。
4Gamer:
なるほど,お三方の担当を聞く限り,かなり幅広い質問に答えてもらえそうですね。ではさっそく。
韓国では3月に,日本では6月26日に実装されたEP6ですが,日本のプレイヤーの反応はどうでしたか?
Kim MinKyu氏:
つい先ほどまで,日本語版リネージュをモニタリングさせてもらい,プレイヤーの反応を確認していたのですが,我々の予想よりもずっといい反応が得られています。EP6に限定していえば,韓国での実装時より手応えがありました。
4Gamer:
日韓のプレイヤーでは,EP6への反応がそんなに違いますか? 具体的にはどういった違いなのでしょうか。
Kim MinKyu氏:
そもそも韓国では,事前にアップデート内容などを確認できるテストサーバーが公開されています。つまり韓国のプレイヤーは,テストサーバーでプレイしたのち,バランス調整やバグ修正が行われた正式バージョンを,あらためて本サーバーでプレイするわけです。
一方日本では,韓国テストサーバーの情報を,ゲームメディアやファンサイトなどを通じて事前に入手し,気分を盛り上げてから,正式バージョンを体験しますよね。日本のプレイヤーのほうが新鮮な気持ちでプレイできているためか,新コンテンツに対するワクワク感のようなものが,ひしひしと伝わってきました。
4Gamer:
確かに日本では,大型アップデートの実装日はちょっとしたお祭り騒ぎになるのが恒例になっていますね。
さて,EP4,EP5に引き続き,新エリアやクエストが多数導入されるEP6ですが,開発スタッフとしてとくに注目してほしいポイント,見どころがあったら教えてください。
Um Jae Ho氏:
私がオススメする見どころの一つは,今話に出たクエストの追加についてですね。それらはプレイヤーがこれまで感じていた不便さや,物足りなさを補うために実装しました。
新たなエリアやモンスターの追加は,狩りに関しては楽しめても,リネージュの世界の中で今何が起きているのか,という物語性を楽しむものではありませんでした。EP6では,これまで以上に物語性を重視し,ゲームの進行や過去のクエストに関する「なぜそうなったのか」という部分を,深く掘り下げてみました。
4Gamer:
「汚された祝福の地」にまつわるクエストには,とくにそういった意味合いが強い印象を受けました。
Um Jae Ho氏:
そういってもらえると非常に嬉しいです。そのクエストでは,汚された祝福の地で何が起きたのかを知ると同時に,リネージュ世界の歴史についても思いを馳せることになるでしょう。
4Gamer:
つまり,各地で受けられる新クエストの実装は,報酬アイテムの入手などがメインではなく,リネージュのバックストーリーを強化することが目的ということでしょうか。
Um Jae Ho氏:
はい,まさにそのとおりです。
■完結するストーリー,
■補完されるシステム
ところで,以前EP5の実装に合わせて,Kimさんにインタビューしたときに,「日本のプレイヤーは単なるお使い/討伐クエストではなく,ゲームの世界観やNPCの過去などが少しずつ明らかになるような,ストーリー性の強いものを好む。海賊島エリアと関連クエストは,日本のプレイヤーを強く意識して導入した」というお話を聞きました。EP6でも,そのことを意識して,物語性に重きを置いているのでしょうか。
Kim MinKyu氏:
もちろん日本のプレイヤーの傾向や嗜好は考慮していますが,それだけではありません。EP6は,ラスタバドのダンテスをめぐる物語が結末を迎え,いわばパート2(クロスランカーの一連のアップデート)の締めくくりとなるアップデートです。また「欲望の洞窟」では,2種族の対立構造を描き出すために,EP6は自然と奥深い内容をもったアップデート内容になりました。
4Gamer:
なるほど,物語としての起承転結を付けるとともに,各種システムの完成度をも高めたアップデートだということですね。
そんなEP6の開発において,とくに苦労した部分,ゲームバランスの調整のために悩んだことなどはありますか?
Um Jae Ho氏:
新たな変身モンスターについては色々と悩みましたね。プレイヤーが実際にどう感じるかを考え,何度もテストを重ねました。
「汚された祝福の地」については,なぜこの土地が生まれ,そして汚されてしまったのか。「生命の樹」と「オーク」をめぐる物語の枝分かれに苦労しました。これを最終的に一つのストーリーラインにまとめるのは,非常に大変でしたね。ちなみに韓国では,汚された祝福の地はプレイヤーからの人気が高く,苦労したかいがあったと思っています。
Kim MinKyu氏:
ラスタバド,船の墓場,汚された祝福の地という三つの大きなコンテンツを,同時に開発しなければならなかったEP6では,スケジュールの管理と,異なるチームとのやりとりの調整で非常に苦労しました。
ちなみに私は,パート2の初期段階からリネージュに関わってきました。なのでダンテスが最終ボスだというのは知っていましたが,ではどのようにプレイヤーをダンテスまで導くのか,ギルタスを登場させるか否かといった,クライマックスの見せ方には大変頭を悩ませました。
Park SungMin氏:
ほかのメンバーも言っているように,EP6はパート2の終結を意味する大切なアップデートです。もう,すべての部分で苦悩しましたね(笑)。
4Gamer:
そういった皆さんの苦悩を経て,EP6がプレイヤーの手元に届いたわけですね。今振り返ってみて,EP6でやりたかったこと,やるべきことは,すべて出し切れましたか? その満足度を点数にするなら,何点くらいになるでしょう。
Um Jae Ho氏:
私の場合は,点数をつけるとすれば60点ですね。EP6は,結果として高レベルのプレイヤーキャラクターを中心としたアップデートになってしまい,低〜中レベル層には少し寂しい思いをさせたのではないでしょうか。
ただ,これは繰り返しになりますが,EP6ではストーリー性を高めることで,プレイヤーにゲームの明確な目的を与えられたので,総合的に見て,自分では60点とします。
Kim MinKyu氏:
これだけの大規模なアップデートを無事に完成させたということで,100点をつけたいですね(笑)。
もちろん,プレイヤーが不便に感じる部分,つまらないと思う内容に関しては,0点という判断をします。今回は細かい部分に気を配ることができなかったという自覚はありますので,今後きちんと,コンテンツの追加や改善を行っていく予定です。
Park SungMin氏:
パート2のエンディングとして,多様なコンテンツや長大なシナリオを作り上げたことに関しては,80点をつけたいです。今年で9年目を迎えるリネージュの,長いサービスの間には,さまざまなエリアとモンスターが追加されてきました。しかしEP6では,単なる新モンスターの追加ではなく,モンスターのAIやエリアの多様性を引き出し,戦闘の面白さをアピールできたと思っています。
4Gamer:
皆さん,なかなか高い点数をつけましたが,EP6に対する満足度や達成感は,かなり高かったことが伺えますね。
Kim MinKyu氏:
先ほど私は100点といいましたが,それはタイトなスケジュールの中,本当に頑張ってくれた開発スタッフ達のために,満点をつけてあげたいという意味でもありました。実際にプレイヤーの皆さんがEP6を楽しめなければ,0点です。実際には,平均して50点というところになるかもしれませんね。
■「パート3」はどんなアップデートになる?
先ほどから「パート2のエンディング」「ラスタバドの終結」という言葉が何度か出てきています。EP6で,ストーリーの流れに一旦区切りがつくわけですが……,次の大規模アップデートでは,どんな物語が展開されるのでしょうか。今後のリネージュの方向性などを教えて下さい。
Kim MinKyu氏:
しばらくの間は,大きなアップデートを行う予定はありません。メインシナリオとは関係のないゲーム内ミニゲーム,今まで手を入れる余裕のなかった部分の改善/修正,EP6のプロローグ/エピローグ的な小さな物語,そして,次のパート3へつながるような内容のアップデートを考えています。
4Gamer:
パート3について,もう少し詳しく教えてもらうことは可能でしょうか。
Kim MinKyu氏:
パート3は,まだ方向性を決めているような段階ですね。パート2の反省点を生かして,メインシナリオだけではなく,その周辺のサブクエストも充実させたいです。まだはっきりとしたことはいえませんが,韓国では2008年の実装を目標にしています。
4Gamer:
おお,思ったよりも早い段階で情報が公開されそうですね。今後の発表を楽しみにしています。
ところで,2006年8月にEP5の導入記念として行われたオフラインイベント「The Lastavard Eve」では,「EP6以降はマップの追加をはじめとする“量”ではなく,“質”を重視したアップデートを目指したい。クラス間のバランス調整や,これまで面白そうだなと思いながらも,実現できなかったコンテンツを実装していきたい」とお話しされていました。こういったバランス調整については,具体的にどのような案が出されているのでしょうか。
Kim MinKyu氏:
まず,ナイトの新魔法の追加,ペットと狩り場のバランス調整が挙げられます。そのほかには,攻城戦の活性化を目的とした城主クランのメリットを増やしたり,場合によっては下方修正も考えられるでしょう。また,PK行為に関する調整も行われる予定です。
Park SungMin氏:
PK関連については,PK側のプレイヤーがあまりに大きなリスクを背負ったり,不利にならないようなバランスを考えています。
4Gamer:
日本では現在,10回のPK行為でキャラクターが地獄行きになりますよね。
Park SungMin氏:
ええ。でも韓国では,100回PKしないと地獄へ行けません(笑)。日本のプレイヤーはPKをとくに嫌う傾向があるので,多少厳しく設定しています。そのあたりのバランシングも含めて,PKシステムを調整していきます。
■目新しさではなく面白さを追求
■リネージュだからこその開発方針
それではゲームの詳細を少し離れまして,リネージュというタイトル全体についていくつか質問させてください。
MMORPGというジャンルに限定しても,今は数え切れないほどのタイトルが出てきています。韓国のMMORPG市場で,リネージュというタイトルはどのあたりのポジションをキープしているのでしょうか?
Kim MinKyu氏:
韓国の話になりますが,リネージュは来年で,サービス開始から10年目を迎えます。非常に歴史のあるタイトルですが,サービス開始から現在まで,人気ランキングのトップ5から外れたことは一度もなく,韓国では「最もメジャーなMMORPG」というポジションをキープし続けていると,我々は認識しています。
Park SungMin氏:
2DグラフィックスのMMORPGとしては,間違いなくトップクラスの人気だといえるでしょうね。
4Gamer:
では,長寿タイトルの作り手として,コンテンツを古く感じさせないためにとくに気を配っていることはなんでしょうか。
Kim MinKyu氏:
これは韓国だけの傾向かもしれませんが,韓国のリネージュプレイヤーは,あまり大きな変化を求めていないようです。そういったプレイヤーの傾向が,リネージュを今まで支えていたのかもしれませんね。
もちろん「ここを改善してほしい」といった要望はありますし,それに対してはきちんと向き合いますよ。ただ,グラフィックスやインタフェースを大幅にリファインするということは,プレイヤーが望まない限り,実施するつもりはありません。
Park SungMin氏:
時間が経つにつれて,コンテンツやグラフィックスが古く感じられるというのは,当然でしょう。しかし既存の要素を変えてしまうのではなく,新たな要素を加えることで,それまでと異なる雰囲気作りを心がけていきたいですね。
4Gamer:
なるほど。リネージュは日本でも,今年で5年目を迎える長寿タイトルですが,その運営を担当するエヌ・シー・ジャパンに対しては,なにか要望や意見がありますか?
Kim MinKyu氏:
そうですね……。日本での運営は,確かにエヌ・シー・ジャパンにお任せしていますが,だからといってすべての責任を押し付けてしまうつもりはありません。開発側の我々にも,日本でリネージュを成功させる責任があります。
そこで一番重要なのは,やはり情報の共有でしょう。我々がエヌ・シー・ジャパンにお願いしたいのは,日本のリネージュプレイヤーの傾向の把握です。どんなことに興味を持ち,どういったゲームが好きなのかという情報は,日本で受け入れられるコンテンツの開発に,どうしても必要なことですから。
4Gamer:
情報の共有に関しては,非常にうまくいっているようですし,心配はなさそうですね。 では,そろそろお時間ということで,最後に日本のリネージュプレイヤーへ向けてメッセージをお願いします。
Kim MinKyu氏:
日本のプレイヤーは,シナリオの内容をとても重視していると聞いています。4年以上続いたクロスランカーの中でも,「エピソード6 ラスタバド〜決戦〜」は,物語の締めくくりにあたるので,ぜひとも楽しんもらいたいと思います。
また,今後はより一層,日本のプレイヤーの声をゲームに反映させていきたいとも考えています。パート3にも,大いに期待していてください。
Park SungMin氏:
リネージュというゲームが,ゲーム大国日本のプレイヤーに愛されていることは,とても光栄ですし,感謝しています。私達はリネージュの発展と,よりよいサービス提供を常に考えているので,これからもリネージュを愛してください。
Um Jae Ho氏:
日本のリネージュファンには,とても感謝しています。ゲームをプレイする中で,物足りない,改善してほしいと感じることは,今後も積極的に意見を送ってほしいです。
4Gamer:
本日はありがとうございました。
インタビューにもあるように,「リネージュ クロスランカー」の一連のアップデートは,――今後もしばらくは,小規模なコンテンツの追加やバランス調整は行われていくようだが――EP6で一応の区切りを迎える。
EP6は中〜高レベル層を対象とするアップデートになっているため,すべてのプレイヤーがすぐに楽しめるという内容ではないものの,次なる大規模アップデート「パート3」の開幕までは,まだまだ時間がある。ラスタバドやギルタス,汚された祝福の地などをめぐる物語性の高いコンテンツを楽しみつつ,パート3に備えてキャラクターを育てておくといいだろう。
リネージュは,韓国で9年目,日本では5年目を迎えた長寿タイトルだが,その安定した人気を見る限り,今後も多くのMMORPGファンに愛されていきそうだ。継続的なアップデートにより進化するオンラインRPGの,一つの理想型ともいうべきポジションをキープし続ける同作には,MMORPGというゲーム/サービスに不可欠な要素すべてが盛り込まれているのかもしれない。これまでのMMORPGはどうあるべきだったのか。そして今後のMMORPGには何が必要なのかを考えるサンプルとして,リネージュの動向を追い続ける必要がありそうだ。(ライター:麻生ちはや)
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