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男色ディーノのゲイムヒヒョー ゼロ / 第38回:「ドラクエはプロレスである」
著者近影
これはもう謝るしかないわ。ごめんなさい。
何がってドラクエよドラクエ。正直,今回の「ドラゴンクエストIX 星空の守り人」には,あんまり期待してなかったの。でも,ごめんなさい。ナメてたわ。面白いじゃない。
ニンテンドーDSで発売って発表された時点で,あんまり期待できないのかなーなんて予感があって,発売延期になったときには,そんな悪い予感がさらにふくらんだりもしたんだけれど,そういったことすべてに対して謝りたい。いや,謝らなければなるまいて。
もうね,面白いとかどうとかっていうより,ドラクエなのよちゃんと。イヤ,大前提としてちゃんと面白いんだけどね。
ひとまずダーマ神殿までプレイして感じたのは,今回のドラクエはプロレス。……お! 私ったら今なんだかいいこと言った風!
「ドラクエはプロレスである――男色ディーノ――」
はーい名言できました! 今後どこのインタビューでも私この名言ブッ込んでいくから覚えといて。
で。ドラクエIXのどの辺がプロレスかと言いますとですね,二つあります。まず一つ。あり方。
もうドラクエぐらい世の中に影響のあるタイトルって,ほかにないじゃない? だからこそ,どのナンバーシリーズをプレイしても,プレイヤーはそれをドラクエだと認識するような作品でなければならないのよ。極端なことを言うと,面白いかどうかは二の次三の次。プレイヤーが遊んだときに「あ,ドラクエだ」と思えることが大事なのね。
例えば,プロレスの試合ではボクシングを始めてもいいんだけれども,ボクシングの試合でプロレスをすることはできないじゃない? それと同じで,仮にドラクエ内にシューティングゲイムが内包されていても,プレイ感覚がドラクエであればそれは許される。でも,シューティングゲイムとしてのドラクエは絶対にあり得ないわけよ。
その証拠に,Wiiの「ドラゴンクエストソード 仮面の女王と鏡の塔」は,ドラクエの外伝的なものとしては成立しているけど,ナンバータイトルにはなり得ないじゃない? もしも今後,Wiiでドラクエの正統な続編が出るとした場合,ドラクエ内にドラゴンクエストソード要素があるのは構わないけど,ドラゴンクエストソードをベースとしたドラクエだったら,それは違うだろう,と。そういうこと。
ドラクエはドラクエなのよ。もうドラクエのゲームジャンルはRPGではなく,「ドラクエ」でいいと思う。かつて,プロレスは格闘技か? という論争に対して故ジャイアント馬場さんがおっしゃった,「プロレスはプロレス」という言葉と同じ意味で「ドラクエはドラクエ」。
これが「ドラクエはプロレスである」の根拠の一つね。
二つめ。これはちょっとゲイム内の演出に突っ込んだ話になるんだけど,戦闘シーンについて。
プレイの仕方はまったくもって従来のドラクエと変わんないのよ。「たたかう」だとか「じゅもん」だとかのコマンド選ぶだけ。なんだけど,ドラクエIXはコマンド選択後に,上画面でちゃんとキャラクターが動き回るのね。
それによって,敵モンスターとの距離感であるとか,剣を振る間合いだとか,攻撃を受けたとき,与えたときのリアクションがしっかりと描かれていて,さながらアクションゲイムのように戦闘を見て楽しむことができるのよ。これによって,戦闘のリアリティが増しているってわけ。
ただ! 私は騙されないわ。いくらリアリティがあるからといっても,ドラクエの戦闘はあくまで特殊な戦闘なの。どういうことかというと,例えばそれこそアクションゲイムが本当の戦闘だとしましょうよ(本当の戦闘じゃないけど)。
その場合,プレイヤーは極力ダメージを負わないように相手を倒すことを考えてプレイするわけじゃない? だからうまく立ち回れば,自分はノーダメージで相手を倒すことも可能なの。それこそ,格闘技にだってそういう側面はあるわね。
でも,いくらリアリティが増したからといっても,ドラクエは違うわ。敵も自分も,交互に行動を選択することができるの。要するにドラクエには,相手の攻撃を受ける瞬間が必ずあるってこと。
もちろん,一撃で敵を倒せたり,結果的にノーダメージで戦闘が終わることはあるわよ。でも,基本は「相手の攻撃を受ける」っていうスタンスがあって成り立っているのね。
だから,戦闘としてはアクションゲイムのほうがリアルよね。というか,相手の攻撃を受けたくない,避けたいっていうのは,人間として普通。でも,必ず相手に攻撃の機会があるっていうリアリティのなさが,ターン制のRPGすなわちドラクエの面白いところなのよ。
ほら,ね? プロレスと一緒でしょ? 攻撃は,するだけじゃなくてされることが必ずあるわけ。だから私は,世の中の人に言いたい。プロレスを見て「なんで今の技を避けないの?」とか,「なんでロープに振られたら返ってくるの?」とか,そんな民度の低いことは言わないでほしい,と。
アンタが言ってることは「なんでふしぎなおどりの最中に攻撃しないの?」「なんで自分は逃げられないときがあるのにメタルスライムは確実に逃げられるの?」って言ってるようなもんだから。
「ドラクエはプロレスである」。
うーん,いつになくまともなことを言ったような気がするわ。
本当は今週,「PLAYSTATION 3で『大航海時代 Online』始めたんだけどプレイ開始できるまで,一悶着も二悶着もあった」とか「そういやドラクエIXはシリーズで初めて予約して発売日に並んで買った」とか「徹夜組からいろんな意味での熱気が漂っていた」とか,そこら辺のエピソードを書くつもりだったんだけど,そんなことドラクエIXの面白さに比べたら取るに足らんことだ!
たぶん来週もドラクエについて語ると思います! そして今からまた旅立ちます! 最後にもう一度,今日生まれたあの名言でお別れしましょう!
「ドラクエはプロレスであり,ドラクエIXは上質なプロレスである」
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