連載
男色ディーノのゲイムヒヒョー ゼロ / 第40回:「友達と遊ぶ楽しさ」
著者近影
――ドラクエはクリアしてからがドラクエである――
767,768……こんにちは! 男色ディーノです!
上の言葉は19世紀フランスの男爵ゲイン・D・ノンブルが残したものとされ,「ドラゴンクエスト」のだいご味は,本編クリア後のメタル狩りにあるということを詩的に表していることで有名。
なんでも同性愛者だったという彼は,狩りが好きなことが転じてメタル狩りに興じていたのではないか,という学説もあるらしいんだけど,いまだ正しいことは究明されていないわ。
しかしまあ近代ドラクエの楽しみといえば,レベル99まで上げて神父に「そなたはもうじゅうぶんにつよい」と,なぜかちょっと上から目線で言われてしまってニヤけることだから,私もその言葉にまったく異論はないわね。
で,今回の「ドラゴンクエストIX 星空の守り人」。今までのシリーズでは,「誰にも褒められっこない,自分との戦い」という意味で,クリア後にもレベル上げを頑張っていた部分があるんだけど,今回こそまさにクリアしてからがドラクエ。「宝の地図」とクエストの存在がそれを物語っているのね。
とくにワイヤレス通信でほかの人とダンジョンをクリアする,この行為がここまで面白いとは思わなかったわ。モンハンとかのアクションゲイムならイメージしやすいんだけど,まさかこういうRPGでプレイヤー同士が世界を共有できるのが,こんなに楽しいなんて,いい意味で裏切られた気分。
ただ,これは人と人とが顔を合わせてコミュニケーションをとりながら世界を共有することが大前提で,インターネット経由で遠く離れた人とコマンドを選択し合っても,きっとそれほど面白くないとは思う。
だから,いわばゲイム以外のコミュニケーションは,ゲイムの外でよろしく! という仕様を選んだ判断って,凄く正しいと思うのよね。他人の世界に行くってのは,友達の家に遊びに行く感覚だから,見知らぬ人の家に上がっちゃいけないってことなのよ!
もし作り手が,「この感覚をプレイヤーに与えられる」って,ニンテンドーDSというプラットフォームでドラクエを作るって決めた瞬間に感じていたとしたら,本当にその判断をした人は天才だと思う。
エンターテインメントにおける才能って,「何が楽しいか」「何を伝えたいか」が見えていて,それを表現するためにどういうモノを作るか(この場合はどういうゲイムにするか)を設計できる能力でしょ。
もしも作り手の目に,完成したドラクエIXに内包されている楽しさが最初から見えていて,それをこういう形で作り上げたのだとしたら,その人はやはり才能があるってだけじゃなく,天才と称賛するしかないと思うわ。
この間,「ドラクエはドラクエであるかどうかが一番大事」的なことを書いたような気がするんだけど,ドラクエIXはドラクエであることにプラスして,新しい遊びを乗っけてしまった。
プラットフォームにニンテンドーDSを選択し,そしてその性能に見合った無理のない遊びを提供した開発陣には,深く感謝申し上げたいわ。887,888……
ところで,プロレスにおける名勝負って,要するに強烈に印象に残るシーンがあるかどうか(例えば猪木が失神したとか,三沢がマスクを脱いだとか)で決まるものなんだけど,そういう意味ではドラクエIXは確実に名勝負だと思うわ。
なんせ,「友達と冒険に行けるようになった」っていう,確実に記憶に残る体験を与えてくれたわけだから。なのでこう言っちゃなんだけど,ストーリーなんかは二の次三の次。
これもプロレスでいうと,どれだけいい試合でも,どんな試合だったかというディテールなんて,見てる側はいちいち覚えていないもんなのよ。
RPGのストーリーもそうで,例えば「ドラゴンクエストV 天空の花嫁」なんかも,細かい部分はちっとも覚えてなくて,「親子三代にわたる物語」っていう大雑把な印象しか残っていないのよ。印象的なシーンは数あるんだけど。人間の記憶なんてそんなもん。まあ,だからこそ逆に手を抜けない部分でもあるんだけどね。
で,話を戻すと,今回のストーリーもそんな感じ。なんか,頭の中にストーリーそのものは,あんまり入ってこないのよ。七つの果実を集めるという展開が,そこはかとなく「週刊少年ジャンプ」的だなーとかは思うんだけど,ディテールが残らない。あ,でも個人的には「もう人形はうごかない」っていうメッセージは好き。ネタバレになるから細かくは書かないけど。
ただ,誤解されたくないんだけど,これはこれでいいと思うし,正しいと思う。なぜならば,“クリア後こそがドラクエ”である必要があるのだから。
ストーリーが主張しすぎているゲイムって,クリアするとその時点でお腹いっぱいになっちゃうから,クリア後のお楽しみにたどり着けなくなりがちなのよ。921,922……
……と,ここまで書いておきながら,実はまだ私はクリア直前(たぶん)なのよね。だって,同僚のプロレスラー,ヤス・ウラノが「基礎体力のないやつはボスデビューさせない」的なことを言うもんだから。
通信でヤス・ウラノと宝の地図めぐりをしたんだけど,あまりもの私の貧弱さに「プロレスラーは受けてナンボだというのに,なんだその体力と受けの弱さは! まずはスクワット1000回!」とか,現実のことを言ってんだかゲイム内のことを言ってんだか,いまいちよく分からないかわいがりをしてくれたのよ。
とりあえず,パラディンのはくあいスキルを100にしてHPとみのまもりを上げないとボスに挑んではいけないというプロレスラーらしい指導が行われたわ。そして私自身もスクワット1000回やっている毎日。
なのでたぶん,ラスボスの手前まで来てトレーニング中。私もトレーニング中。私にとってのボスが誰かは,分かんないけど。
そんなこんなでクリアもしてないゲイレスラーが,ドラクエIXのクリア後について語ってみましたとさ。
さ〜て来週は,ドラクエIX漬け生活から脱出し,そろそろヤリ溜めしたゲイムをボチボチ紹介していくわ。予定では「大航海時代 Online」と「プロ野球スピリッツ6」を。この夏はPLAYSTATION 3が熱い説を押し出してみようかと。
999……1000! みんなもスクワット1000回したほうがいいよ。ではまた。
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