連載
男色ディーノのゲイムヒヒョー ゼロ:第300回「インディーズの存在価値」
私が所属するDDTというプロレス団体に,ケニー・オメガというカナダ人プロレスラーが出ていたんだけど,このたび彼はDDTとの契約を終了し,業界最大手の新日本プロレスに戦いの場を移すことになったわ。
ケニー・オメガは主にカプコンのゲイムが好きでね。今年の東京ゲイムショウでも4Gamerブースで試合をしたんだけど,試合がない日も「バイオハザード リベレーションズ2」(PC / PlayStation 4 / PlayStation 3 / Xbox One / Xbox 360)を試遊するために幕張まで来るほどのゲイム好きなの。
そんな彼の新日本プロレス挑戦は,ちょっとしたニュースとして報じられているんだけどね。要は日本が好きで,体力的にピークの今だからこそ,日本の最大手の団体に挑戦したい,と。そういうことみたいなのね。これ,私としては凄く考えさせられるニュースでね。エンターテイメントを提供する側の志の話になってくるのかなって思っているわ。
この連載では,プロレスとゲイムのエンターテイメントとしての共通点を無理やりでっち上げて述べることが多いんだけど,実際のところプロレスとゲイムとでは構造的に違う部分も多いのね。いやまあ,当然のことなんだけど。だから本来,一概には比べられないことのほうが多いのよ。例えば,ゲイムは多人数で一つのソフトを作り上げるエンターテイメントで,ソフト(サービス)と商品が同じ。でもプロレスは,試合がソフトだとするとクリエイターである選手がそのまま商品だったりもするし。
それでもやっぱり,商品に対してお金を払ってくれるお客さんがいて,それに向けてどう楽しんでもらうかを提供するっていう意味では,共通しているのよね。何を提供したいのか。どんなものを提供したいのか。
これ,8bit風ゲイムテイストのアクションRPGでね。おっと。8bitって言っても,最近の若い読者には分かりづらいかもしれないから,ハッキリ言ってしまうと,ファミコン風なわけ(厳密にはファミコンだけが8bitのゲーム機ってわけじゃないんだけど)。で,ケツ論から言うと,凄く面白い。中毒性の塊ね。それこそ昔のゲイムにありがちな,面をクリアしていくゲイムで,ヤればヤるほど強くなるから,まあどんどんプレイしちゃうわよね。
このゲイムの何が凄いって,ファミコン風のアプローチをとることによって,当たり前のハードルを下げているという点。最近のゲイムって,ファミコン時代と比べてハードの性能は上がっているし,データの容量も大きくなっているじゃない? グラフィックスもそれなりのものが求められるし,ヤり込み要素だったりデータベースだったりといった,“+α”のボリュームがあるに越したことがない状況なのね。あくまで基本的には,だけど。
でもこのゲイムって,ファミコン時代のアプローチを徹底することによって,現在の消費者がゲイムに求めるもののハードルを当時の水準まで下ろすことに成功しているのよ。そのうえで実際にプレイしてみると,ちゃんと現在のゲイムとして作り込まれていることに気付くんだけどね。マップを作ったり,3DSのダウンロードプレイで4人同時に遊べたりといった形で,やり込み要素も用意されているし。
言い方は悪いかもしれないけど,力を抜くところは抜いて,入れるべきところにしっかり入れているって感じ。だから,ゲイムとしてちゃんと面白いし,ヤったらヤった分強くなるっていうゲイムならではの努力の反映もあるし。何より安いしね。
インディーズゲイムの在り方としては非常に刺激を受けたわ。ゲイムを通じてお客さんにどう楽しんでもらいたいのかがハッキリしている。値段まで含めて,大手にはなかなか真似できない楽しませ方だと思ったわ。
ケニー・オメガの場合は,今までインディーズで作っていたんだけど,これからは大手で自分のプロレスを作って,より多くの人に届けたいという選択をしたわけ。単純に,大手で通用するんであれば,それは凄いことだと思う。私にはできないことだからね。
でも! ここからが志やら気概の話になるんだけど。大手じゃなければ面白いものは作れないのか? と聞かれたら,私は「否!」と答えるわ。答えたい,という願望も込めて。
まあ,大手の作品のほうがプレイしている人数も多いだろうし,大手のほうが日本経済への役にも立っていることでしょう。でも,だからと言って内容に関してまで,インディーズが大手に必ず劣っているわけでは決してない。そりゃね,同じことで勝負すりゃ負けるわよ。だって,かけられる時間,投資できる金額,さらには投入できる人数に至るまで,何から何まで環境が違うんだもん。
プロレスでもよく論じられるの。「大手で通用するかどうか」が。ファンが言うのはまあ一つの見方として否定はしないけど,プロレスマスコミまでがその論点で語りがちなのね。
私に言わせりゃ「大手で通用することがそんなに大切なことなのかな?」って話なのよ。エンターテイメントというビジネスで必要なことは,消費者が払ってくれたお金に対して,それに見合うか,それ以上の価値を与えられるか。すなわちソフトに対してお金を払ってくれた人を楽しませることが重要。今,そうやって成立しているものが,そのまま大手で通用するかどうかなんて直接は関係ないからね。
確かにね。大手のように大人数のお客さんを相手にした場合に,同じソフトで同じようにお客さんを満足させられるかとなれば,話はちょっと変わるわ。ただ,それすらインディーズが作った世界観に,大手の価値観を持ち込まれても……と思っちゃう。大手の基準で語るのは,大手から発売されたときだけにしてほしいわよね。
例えば,インディーズのゲイムをプレイしておいて「大手では発売できるレベルじゃないな」って言われたとしても,それ,いっそ褒め言葉ですらあると思うのよね。インディーズの存在価値って大手の劣化版ということではなく,インディーズならではの価値観を生み出すことにあると私は思っているから。
じゃあどうやってお客さんを楽しませるかといったら,大手がやらない,やりたくてもできない方法を選ぶしかないじゃない。いや,繰り返すけど,単純に大手は凄いのよ。誰だって東京大学に入れるわけじゃないのと同じで。でも,東大に入るのは凄いけど,じゃあほかの大学では価値はないの? ブランド力や学力というモノサシだけでは勝てないかもしれない。でも,人間ってそれだけが求められるわけじゃないから,ほかの大学でも,人間として勝負するポイントは作り上げられるでしょ? っていうそういう話。
……というようなことを,みんなでまもって騎士 姫のトキメキらぷそでぃをプレイしながら思いました。勝手に親近感を覚えたというかなんというか。
というわけで,ケニー・オメガには頑張ってほしいわ。だって,一緒に同じソフト作ってきた選手が,大手でも通用したらそれはやっぱり嬉しいじゃん。ここまで大手だインディーズだと言ってきておいてなんだけど,それはそれで痛快じゃん。
これを読んでるプロレスに興味がない読者も,深夜のプロレス中継に彼が出てきたら,ちょっと興味持って見てくれると嬉しいな,と思う次第です。カプコン好きのケニー・オメガと覚えていただければ。そんな感じで今週は。
今週のハマりゲイム
(文字通りゲイムスロットにハマっているゲイム)
PlayStation 4:「戦国無双4」
PlayStation 3:「魔都紅色幽撃隊」
PlayStation Vita:「絶対絶望少女 ダンガンロンパ Another Episode」
PSP:「サモンナイト5」
Wii U:「ゼルダ無双」
Wii:「ドラゴンクエストX 目覚めし五つの種族 オンライン」
ニンテンドー3DS:「みんなでまもって騎士 姫のトキメキらぷそでぃ」
Xbox 360:「剣の街の異邦人 〜白の王宮〜」
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- 関連タイトル:
みんなでまもって騎士 姫のトキメキらぷそでぃ
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