連載
男色ディーノのゲイムヒヒョー ゼロ:第345回「冒険の書が消える」
これ,もはやことわざや慣用句として,国語辞典に登録されてもいいレベルじゃないかと思うわ。意味としては,「今まで積み重ねてきたものが一瞬で無に帰す様,または一瞬で絶望感を味わう様」。用例としては,「1万ポイントぐらい貯まっていたTポイントカードを紛失するなんて,冒険の書が消えたとはまさにこのことだな」。
ええ,今週実際にあったことですよ。本当につらい。
財布ごと落とした場合も確かにつらいんだけど,それってある種,事件としてダイナミックじゃない。極端な話,話のネタにもなる。ヘタしたら,カンパしてもらえたり,元気づけようって奢ってもらえるケースだってあるかもしれない。要は,財布を落とすっていう不幸は,個人に起きる事件としてはけっこう大きいの。その分,周囲の善意による回収も,多少であれば見込めなくもない。
それに比べると,Tポイントカードを紛失するっていうことのスケールの小ささよ。話のネタとしてはこぢんまりしすぎだし,回収もできやしない。そして,この4年間ぐらい地道に貯め込んできたポイントが無かったことになるという,今までの努力は何だったんだという虚無感。まさに,冒険の書が消えた気分。
しかし! 人生で初めて冒険の書が消えてから,もう30年近く経つわけで。この30年は,私を成長させてくれたわ。絶望感しかなかった当時に比べ,今の私は冒険の書が消えたことよりも,その冒険が私に何を与えてくれたのかに目が行くようになっている。
人生で,失ったものよりも得たものを数えるスキルを身につけたのね。「ドラゴンクエスト」シリーズは,私に楽しい時間を与えてくれた! 敵に対する知識も,新しい街の場所も! もう一度立ち上がり,新たに冒険をするにあたって,その知識は決して無駄にはならない。失った後に,それでも自分に残ってるものこそが,本当に私が得たものなんだ! さあ! 数えようではないか! Tポイントカードを失うことで私が得たものは……! ……あれ? 何も…あれ?
ストーリーはもう知っているのよ。オリジナル版で遊んだから。ということは,ストーリーが楽しみってわけじゃない。システムだって,一度プレイしているんだから,そこまで新鮮な驚きはないはずなの。じゃあ,私は何が楽しみでDQVIIIをプレイしようというのか。発売を心待ちにしているのか。
それはね,「ドラクエだから」としか言えない。これがすごい。レベル上げなんて作業の一つなわけじゃない? でも苦じゃない。なぜならドラクエだから。もはやドラゴンの謎なんて解いてなんかいない。でもそれでいい。なぜならドラクエだから。
もうね。ドラクエにまつわるすべてのことは,基本的にすべて「それでいい,なぜならドラクエだから」で片が付いてしまう。これがすごい。本当にすごい。要は,理屈抜きってことだからね。理屈を抜かれてしまったら,理屈で否定することができなくなってしまうのよ。そこにまで持っていくことの難しさたるや!
こう書くと「ドラクエは何でも許される」って思ってしまうじゃない。まあ,実際にそういう部分はあるんだけど,でも! ドラクエを作る人達,携わる人達のプレッシャーは尋常じゃないと思うわよ。私がドラクエシリーズについてこの連載を書くときにいつも言ってることだけどね。“ドラクエがドラクエであることの難しさ”。常にドラクエでいながら,新しいことに挑戦しなければならない。
小さい頃,だいたいの人は考えたことがあるでしょ? もし自分が金持ちの家に生まれたらって。金持ちには金持ちの苦労が絶対にある。金持ちだからこそのハンデは,必ずある。まあ,お金があるに越したことはないけどね。ただ,物事にはメリットとデメリットがあって,だいたい他人の芝生は青く見えるわけですよ。でも,芝生を青くキープするには,どれだけの労力とお金がかかってるんだってところまで注視する人は少ない。
ドラクエも,ドラクエであるための努力は絶対にしている。芝生が青いのには青い理由があるの。確かにね,条件は違う。ほかのゲイムとドラクエとでは。そんなもん,仕方がない。ドラクエじゃないゲイムは,ドラクエにはなれない。だったら,なろうとしなくていいんじゃないかしらね。ドラクエじゃないところで勝負すればいい。そして,ドラクエはほかのゲイムを否定しない。ドラクエはドラクエでいてくれればいい。私は,ドラクエも好きだし,ほかのゲイムも好き。それでいいじゃないか,と思う。
ゲイムじゃなくてどの業界もそうなんだけど,大手が強いのは当たり前なのよ。だって大手だもん。じゃあ中小に戦う術がないのかといえば,そんなことはない。大手がやらないこと,もしくはやれないことを武器に戦う。それしかないよね。大手がイラつけば,それはしめたもの。自分達の戦い方が大手にはできないということの証明だから。まあ,それが実際に商売になるかどうかは別問題だったりするけど。
大手がルールを作る。そのルールの側面を突く。大手と同じやり方では戦えない。中小が独自にパイを広げて,そうやって業界全体が大きくなって活性化する。そう。すべてがドラクエじゃないから,ゲイムは面白いんだと思う。
結局何が言いたいのかというと,私はDQVIIIがものすごく楽しみだってこと。ストーリーをもうすでに分かっていようが,レベル上げの作業が待っていようが,楽しみなものは楽しみなんですよ。だってドラクエだから。ドラクエはドラクエでどっしりとドラクエであってほしい。そう思う。
そんな感じで,今週はゲイムをろくにプレイしていないのがバレバレな週でした。いや,先週も言った通り,両国国技館でプロレスの試合あったから。まあ,今週からまた毎週土日には試合があるんだけどね。
でも,DQVIIIはどんなスケジュールでもプレイするので,来週はおそらくプレイしたてのDQVIIIについて。そんな感じで今週は許してもらえまいか。ではまた来週。
今週のハマりゲイム
(文字通りゲイムスロットにハマっているゲイム)
PlayStation 4:「トロピコ 5」
PlayStation 3:特殊なDVD ※死亡確認→復活予定
PlayStation Vita:「不思議のクロニクル 振リ返リマセン勝ツマデハ」
PSP:「サモンナイト5」
Wii U:「Splatoon(スプラトゥーン)」
Wii:「ドラゴンクエストX 目覚めし五つの種族 オンライン」
ニンテンドー3DS:「妖怪ウォッチバスターズ 赤猫団」
Xbox 360:「剣の街の異邦人 〜白の王宮〜」
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- 関連タイトル:
ドラゴンクエストVIII 空と海と大地と呪われし姫君
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