連載
男色ディーノのゲイムヒヒョー ゼロ:第376回「ゲイムは“もし”を具現化したもの」
だからといって,その“もし”と今とを比べることはできない。まあ厳密には比べるところまではできるんだけど,比べてもどうしようもないからね。そのとき考える“もし”って,きっと成功しているパターンを想定するものだろうから。実際には,成功するとは限らないっていうか,世の中思いどおりにならないことのほうが多いからね。想像している“もし”を,そのとき実際に選んでいたとしても,想像どおりに進んでいないケースのほうが多いと思うわよ。今までの私の経験で言うと。
例えば,私がプロレスなんてヤっていなかったら,今頃はそれなりの収入で休日にはそれなりに楽しい余暇を過ごして,それなりの幸せを掴んでいたんだろうな……なんて,夢想することはよくあるのよね。でも,よくよく考えたら私,休日は外に出ないし,コミュニケーションに難があるし,同じところで働くのは苦手だしで,ろくな幸せを掴めている気がしないのよね。
結局,なるようになって今の私がいる気がするのよ。なので,何が言いたいかというと,“もし”はあんた自身が生み出した最大の妄想だってこと。良くも悪くもね。ありもしないことを考えるのは,そりゃまあ楽しいわよ。妄想だから,何でも自分の思いどおりにできる。
で,私がゲイムを好きな理由もそこにあるのよね。なぜなら,ゲイムって要は“もし”を具現化したものだから。現実では絶対にありえないことを現実の世界に存在するゲイムの中で再現できる。しかも,遊びという形で。スポーツゲイムのようにリアリティあふれる“もし”でもいいでしょう。RPGのように絶対にあり得ないファンタジーの世界で着実に成長して,世界を救うことだってできる。
ありとあらゆる“もし”を自分の体験として遊ぶことができるから,私はゲイムが好きなのよね。しかも,最近ではもう私の想像を超えた“もし”が数多くプレイできる。私の頭では想像できなかったような世界までも体験できる。だから,最近のゲイムって面白いのよね。
そして“もし”,妖怪ウォッチと「三国志」の世界が混ざり合った新しい遊びが生まれるとしたら。それが今回紹介する「妖怪三国志」なの。妖怪ウォッチファンでもあり三國志シリーズファンでもある私が,プレイしないわけにはいかないわよね。で,実際もプレイしてまんまとハマっちまっているところなんだけど。
どちらのファンにとっても気になると思うのよ。「結局このゲイムは妖怪ウォッチと三國志,どっち寄りなんだ?」ということが。私はね,遠慮しないわよ。どっちの作品に対しても愛があるわけだからね。その前提で,もうハッキリ書いちゃう。
妖怪ウォッチはね,ゲイム界を統一しようとしているのよ,きっと。ここで言う統一とは,ボクシングで言う複数階級制覇のこと。妖怪ウォッチはある種,RPG部門ではチャンピオンになった感があるじゃない。知名度的にも,売り上げ的にも。で,今度は複数階級制覇に挑戦しようとしてるの。
ゲイム界の階級って,体重じゃなくてジャンルなのよね。まずは去年の夏に「妖怪ウォッチバスターズ」でアクション部門に打って出て,成績を残した。で,今度はシミュレーション部門として今作を送り込んできたのよ!
ただし,妖怪ウォッチにシミュレーションゲイムのイメージはない。そこで,とっかかりとして目をつけたのがシミュレーションゲイムの代名詞的タイトルである三國志シリーズなのね。シリーズもの,しかもスピンオフ作品のタイトルって実はけっこう大事でね。どういうゲイムなのか,タイトルやメインイラストといった,最初に目に入ってくるものでイメージできないと,ライト層はその作品を手に取りにくいのよね。
実際に,妖怪三国志というタイトルから,このゲイムがシミュレーションゲイムであることをイメージすることはそんなに難しくないでしょ。そういう意味で三國志はうってつけの題材だったのよ。
私が思うに,理由はそれこそ「イメージが対極にあるから」。そもそもだけど,三国志って面白いのよ。私が好きっていうのもあるけど,現実に好きな人はとことん好きじゃない。それぐらいのパワーがあるコンテンツなの。ただ,どうしても人を選ぶ側面がある。
知ってみれば面白いのに,知るきっかけがない。ビジネスにしてもそうで,ある一定の熱烈なファンはいるけども,なかなかそれ以上の上積みを望みにくい。三國志ビジネスを伸ばすことを考えた場合,まずは浸透度を上げることが肝要なのよね。
そこで,妖怪ウォッチなの。ゲイム界の中で,世の中への浸透度では名実共にチャンピオンクラスのコンテンツと手を組むことによって,今まで届いていなかった層に三國志を届けることができる。それゆえのコラボなのね。
したがって,今回は妖怪ウォッチの世界観に三國志が乗っかったと私は見ているわ。だから正直なところ,三國志要素は最低限しかないの。ただね,妖怪ウォッチ側から見た場合,三國志シリーズへの愛がないかと言えば,そんなことは決してない。
というのもね,ゲイムの三國志の面白さを一つ徹底して突き詰めている部分があるから。すなわちこれ妖怪武将の多さ。ゲイムの三國志の楽しみ方の一つに,武将を集めるっていう要素があるじゃない。それがちゃんと突き詰められているのよ。
400を超える数の妖怪武将が出てきて,それを集める楽しさは,確かに三國志シリーズのそれと似ているのよね。出てくる妖怪が多いっていうのは妖怪ウォッチの魅力でもあるわけだから,それこそがゲイムとしてのコラボが意味を持つポイントだったわけね。そこに対する面白みを掘り下げているのかな,という印象。
シミュレーションゲイムというと難しそうだと思う人は多いと思うけれども,難度に対する配慮がものすごく行き届いているのも好印象。まったくシミュレーションゲイムをプレイしたことのない人でも,きっと問題なくプレイできると思うわ。通常のステージであれば,1ステージあたり5分程度でさくっと終わることもあって,武将妖怪を集めるためについついムキになって繰り返しプレイしちゃうの。
まとめると,妖怪ウォッチも三國志も損をしていない,上質なコラボだと私は思うわね。どうでもいいけど,キャラクターの絵柄は基本的に妖怪ウォッチのものなんだけど,一騎討ちのときになぜか三國志らしい劇画調の挿絵が入る部分が私的なツボ。“もし”私が三國志を知らない子供だったとしたら,何かしらのトラウマになっていたかもしれないぐらいにシュールなシーンなので,そこは必見ね。
“もし”妖怪ウォッチが好きで,三國志を知らない人がいるならば。ちゃんと妖怪ウォッチなので安心してプレイしていいわ。“もし”三國志が好きで妖怪ウォッチはまだ手にしてない人がいるならば。その人もプレイしていいと私は思っている。従来の三國志的なディープさはないけど,それでもシンプルにシミュレーションゲイムとして面白いゲイムだから。
人生に“もし”はないわ。でも,あなたに“もし”興味のあるゲイムがあるならば,この連載を読んで“もし”少しでも興味の沸いたゲイムがあるならば,プレイしてみることをオススメするわ。だって,人生は一度きりなんだから。楽しく過ごせる時間を,見過ごす手はないと思う。未来のあなたにとって,良い“もし”の時間を,今チョイスできることを願いつつ,今週は筆を置かせていただきます。
今週のハマりゲイム
(文字通りゲイムスロットにハマっているゲイム)
PlayStation 4:「信長の野望・創造 戦国立志伝」「ウイニングイレブン 2016」
PlayStation 3:特殊なDVD ※死亡確認→復活予定
PlayStation Vita:「金色のコルダ4」
PSP:「サモンナイト5」
Wii U:「Splatoon(スプラトゥーン)」
Wii:「ドラゴンクエストX 目覚めし五つの種族 オンライン」
ニンテンドー3DS:「妖怪三国志」
Xbox 360:「剣の街の異邦人 〜白の王宮〜」
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- 関連タイトル:
妖怪三国志
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