連載
男色ディーノのゲイムヒヒョー ゼロ:第490回「『ザンキゼロ』はゲイムの強みの集合体」
例えば,今私がしている“文章を書く”という行動にしたって,ペンと紙を使うのか,PCを使うのかという選択肢があって,それぞれに強みと弱みがあるの。
紙とペンの強みとしては,個性を出しやすい,文字の大きさや絵を入れるなど自由にスペースを使うことができる,その結果として気持ちが伝わりやすい……っていうところかしらね。一方で弱みは時間がかかる,手間がかかる,データ管理しにくいって点。そして,PCの場合の強みは速く書ける,文章の切り貼りができる,データ管理ができる,手軽って点。弱みとしては,ぱっと見の個性が出しにくい点。
こんな具合に,選択肢ごとの強みと弱みを天秤にかけた結果,私はPCで文章を書いているのですね。ただ,それはあくまで4Gamerの連載用に文章を書く場合における選択なわけで,例えば誕生日プレゼントに添える手紙で文章を書く場合はペンと紙に書いたほうが気持ちが伝わる気がするし,何より効果的だと思うの。つまりは場面ごとに,強みと弱みに応じた選択をしているわけ。
もちろん人間だってそう。強みと弱みがある。ここ大事。人間って厄介なもんでね,自分で自分のことが分かっていなかったりするのよね。見た目だけじゃ分からないし。でも,もし自分が世の中に必要とされたいならば。もしくは自分を世の中に対して役立てたいならば。できれば,自分の強みと弱みを把握しておくことをオススメするわ。
41歳にして思うんだけど,就職活動って結局こういうことなんでしょうね。「自分の強みはこれで,(弱みはこれですけど)御社に合っていると自分は思うんですよ,どうですかね?」っていう。で,それが自分のヤりたい仕事の場合は強みを増やしにいく。強みの部分で嘘をついちゃうと長くは続かないからね。強みと弱みは絶対にあるんだから。そのとき,自分自身に対する謙虚さは必要ないの。せっかく発覚した性格を即刻正確に把握し自覚ゥ。……韻を踏んでみましたYeah。できるだけ正確に。それも能力の一つですから。
そして,幸せになるには自分に合う場所に自分を持って行かないといけないわけですよ。自分では望んでいても,合わない場所っていうのも残念ながらあるんです。野球をヤッている人はだいたい大谷翔平になりたいわけです。でも,現実はそうではない。ただ,目指すのはいいことよ。目指さないことには,自分に向いていないってことにも気付けないからね。
そしてこれも重要なことだけど,向いている向いていない,強み弱みを最終的に決めるのは自分だってこと。他人から言われることもあるでしょう。でも,それって結局は自分の人生に対して責任をとってくれない外野が言うことだからね。重要な参考意見にはなるけど,決めるのは自分。あの鐘を鳴らすのはあなた。人のせいにする人生は,なんかイヤじゃん。これもあくまで私の美意識では,だけど。
要するに,強み弱みを把握する能力は,幸せな人生を送るためにも重要な要素だと私は思うのです。
では。ゲイムにおける“強み”って何でしょう。映画に比べて,TVに比べて,読書に比べて。ゲイムの強みは何なのでしょうか。
映画の強みは,映画館という場で大迫力の映像を複数の人々に対して同時に押し付けられること。DVDやネット配信になるとまたニュアンスは変わるけども。ただ,“作り手が制作した世界を観客に押し付けることができる”“味わう人は「見る」という感覚だけで楽しめる”といったあたりは変わらないでしょうね。
TVの強み。映画と同じく“作り手が制作した世界を視聴者に押し付けることができる”“視聴者は家というプライベートな場でマイペースに楽しめる”“無料”“チャンネルを選べる”という感じかしら。
となると読書の強みは,“想像しながら楽しめる”“いつでも読み返せる”“比較的手軽にマイペースに向き合える”あたりかしら。
そしてそれらの娯楽に対してゲイムの強みは,私が思うに“自分で行動を選べるところ”じゃないかしら。自分で主人公を動かして,物語を作っていく。ゲイムによって作られたストーリーに沿うこともあるけれど,それでもプレイヤーは選ぶことができる。それがゲイムならではの強み。自分が主人公と共に歩める。こういった感情移入をさせる仕組みとしては,ゲイムが一番強いんじゃないかしら。だからこそ,私はゲイムが好きなわけで。
「ダンガンロンパ」シリーズを生み出したスパイク・チュンソフトが〜っていう触れ込みだったけど,私はそこはあんまり気にしていないのね。確かに,こういう世界観が好きだなあスパチュンは……とは思うけども。あとは,国民的アニメの声優さんを使って遊ぶのが好きだなスパチュンは……とも。ただそれは,このゲイムの面白さの本質ではないわ。もちろんいいスパイスにはなっているんだけどね。
このゲイムって,死んでもやり直せる。というか,死なないことには進まない。死んで生き返るストーリーではなく。ちゃんと全力で頑張って,でも死んで。そこからやり直してストーリーを進めていく。こういう体験ってゲイムにしかできないわよね。その死んでやり直すっていう“ゲイムの強み”そのものをゲイム化した感じなのよ。
ゲイムにおいて“死ぬ”って,基本的には失敗なのね。でも,このゲイムでは死ぬと,死んだ原因に対して耐性がついて強くなる。そうすることで同じことでは死ににくくなるのよ。死んだからこのゲイムをやめようってことにはならない。むしろ,死んだからこそ強くなれたと思えるし,実際に強くなっている。ただ,死ぬとアイテムが散らばっちゃうのが難点だけど。
でも,死ぬことで強くなるっていう点と,寿命が2週間程度しかなくて死んだら生まれ変わって子供から再スタートできるって点をシステムにうまく取り込んでいるから,ゲイムをプレイしてるなって気にさせられる。
そして,注目すべきはストーリー。これこそ人間の弱み強みを表現したストーリーなの。まだ最後の最後まで行ってないから定かではないけど,おそらく中盤の後半あたりであろう今のところは,各キャラクターが過去のトラウマを乗り越えて前を向いている展開なのね。
で,ゲイム中では回し役のキャラクター達が掛け合いという形で,「今の時代,こういうのはダメなんだよ」ってツッコミながらも,その手の表現をガンガン出してくる。いわば,ダメだとされることを逆手にとって表現しているわけで,これができるのもゲイムの隠れた強みだと思ったわ。いろんな娯楽があるけども,表現の自由がある程度確保されているのは,実はゲイムなのかなって。
なので,“ゲイムっぽいゲイム”“ゲイムの強みを体現したゲイム”をプレイしてみたい人には,ザンキゼロをオススメしたいと私は思う。先に断っておくと,ストレスを感じることもあるわ。でも,尖ったゲイムやちょっと変なゲイムを遊ぶうえでは,それって絶対に避けて通れないことだからね。人間にも弱み強みがあって,パーフェクトな人間がいないように。弱みを見せないことはできるかもしれない。そして,弱みを見せづらい,見せてしまえば叩かれるような世の中になっている。でも,強みと弱みを隠さない,隠そうともしない,そんなゲイムを私は愛おしく感じてしまう。
強みはもちろん,弱みも。それごと受け入れることができるか? 私達はある意味,このゲイムに試されているのかもしれない。夏は暑い。けど,暑いから味わえる感覚もある。受け入れよう。ただ,熱中症には気を付けてね。ではまた来週。
今週のハマりゲイム
PlayStation 4:「ザンキゼロ」
Nintendo Switch:「進め!キノピオ隊長」
iOS:「PUBG MOBILE」
|
キーワード
(C)Spike Chunsoft Co., Ltd. All Rights Reserved.
(C)Spike Chunsoft Co., Ltd. All Rights Reserved.