連載
男色ディーノのゲイムヒヒョー ゼロ:第550回「“そんな奴”がいてもいい」
最近,生きにくい世の中ですよ。
私は入場時,男性客に対してブチュブチュキスしながらリングに上がるんだけど,それについて「ゲイの人がみんなそうやって無差別にチューする人達だと思われる」から,そういう表現はいかがなものか,なんて言われることがあるの。
うん。その考え方自体,私は否定しないわ。ただ,そう思うのは自由だけど,普通に考えたらそもそも性的指向に関係なく,普段からブチュブチュする人ってあまりいなくね? ゲイの人全員が私のような行動をとるかどうかはちょっと考えたら分かる……と思うんだけど,でも「分からない人がいるかもしれない」と言われたら「そうですね」としか言いようがないからなあ……。
あと,上記と直接は関係ない話だけど,プロレスの世界に一般常識を持ち込まれても……ってことは思うのです。そもそもプロレスなんて,一般社会でヤっちゃいけないことのオンパレードだからね。好き嫌いは自由に評していただいて構わないけど,嫌いだから排斥しようとするのは別の話だと思うわけですよ。「嫌いだけど,“そんな奴がいてもいい”」って思っていただけないものでしょうか?
ってことで今週の本題です。ええ,“そんな奴がいてもいい”っていう話。見世物の世界では,好き嫌いがハッキリ分かれる表現ってものがあるのよね。先日,「キングオブコント2019」で優勝したどぶろっくがいい例で。
まあ,要は下ネタですわな。好き嫌いがハッキリと分かれる。だからこそ,賛否もきっちり分かれるわよね。私はめちゃくちゃ面白いと思ったわ。
あれっていくつか要素があって,ミュージカル仕立てで下ネタをやったって面白さと,ゴールデンタイムの大きな賞レースで下ネタをやったって面白さ,あとは設定から何からお膳立てもていねいでその積み上げたシチュエーションで下ネタかい! っていうシンプルな面白さなど。お笑い素人の私でもこれだけ気付けるくらい,そしてプロが見たらもっとあるんだろうなってほど,何層もの面白さを積んだネタだったと私は感じたの。
でも,受け付けない人は受け付けない。それはもう,下ネタである以上はしょうがない。ただ,そういうコンビがいてもいいと私は思う。
でもちょっと前向きに考えて見ると,表現する人にとって今がチャンスなのかもしれないわね。大衆の好き嫌いを恐れ過ぎなかったどぶろっくのネタが,ゴールデンタイムにハマったように。大衆の好き嫌いを恐れずに信念を貫くことで,“そんな奴”になれるチャンスが今なのかもしれない。
確かに今は,昔と違って一人一人の意見がSNSで可視化されていて,しかもデータとして残る時代ですよ。だから,嫌いだという意見は目につきやすい。で,何も思っていなかった人もそちらに引っ張られてしまいがち。結果,嫌われないような言動を選ぶ傾向にあるわよね。みんなが。
だからこそ,逆に言うとチャンスなのよ。嫌われたり,受け入れられないケースがあるという覚悟さえできれば,多くの人とは違う“そんな奴”も一つの生き方になりうると思うわ。クセがあるゲイムもまた同じ。
初心者殺しとも言っていいほどのヤれることの多さ,初っぱなからの情報量の多さは時代に反してると言っても過言じゃないと思う。ただ,めちゃくちゃ奥が深い。私的には,面白い。
トラブルが起こったとしても,ゲイム内のどこかに因果関係を見つけられるのよ。国民の幸福度が低いのはなぜか? それは国に娯楽がないから。お金がなかなか稼げないのはなぜか。ありふれたものしか輸出できていないから。といった具合に。
あと,例えば原発を建てたらメリットとデメリットがあるように(あくまでゲイム内の話よ?),どちらかを取ればどちらかが立たないような,そういうケツ断を迫られることも多々あるのね。それがまた,じわじわと面白い。
とはいえ,やっぱりとっつきにくい。いくらチュートリアルがあるとはいえ。もうそこは覚悟してください。ただ,とっつきにくいけれども,奥は深い。ぶっちゃけ,気軽にゲイムを楽しみたいタイプの人に,このゲイムは向いていないわ。でも,そのぶん街造り系のゲイムが好きな人にとっては,たまらない完成度を誇るゲイムじゃないかしら。
私は心から思う。こんなゲイムがあってもいい,と。もちろん,こう書くと誤解されるんだけどね。誰にでも分かりやすくて,子供からお年寄りまで楽しめるようなシンプルなゲイムも私は好きなんです。で,どっちがいいとかどっちが悪いとか,そういうつもりもないんです。
もちろん,私にも好き嫌いはあるわ。ただ,嫌いで不愉快だから「消えろ」とか「やめろ」とかそういうことは言わない。というか,思わない。「まあ,“そんな奴”がいてもいい」「そういうゲイムがあってもいい」とは思う。好きでも嫌いでも,どちらのケースでも。そうやって個性を尊重できればいいなあとは思うのです。
とまあ,今週はトロピコ 6の内容というよりも,存在のあり方について語ってしまいましたが。シミュレーションゲイムとしての完成度は抜群です。この手の複雑なゲイムが好きな人にだったら間違いなくオススメ。逆に,小難しいゲイムが苦手な人にまで,無理にでも遊んでほしいとは言いません! ただ,“そんな奴”が存在し続けるためには,ある一定の成果を残さなきゃいけないから,トロピコ 6には売れてほしいと思うのです。
……と,同じく“そんな奴”でもある私が言ってみました(カテゴリーが違うけど)。ではまた来週。
今週のハマりゲイム
PlayStation 4:「トロピコ 6」
Nintendo Switch:「Forager」
iOS:「龍が如く ONLINE」
iOS:「ハンドレッドソウル」
iOS:「ウイニングイレブン カードコレクション」
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