男色ディーノのゲイムヒヒョー ゼロ：第650回「プロレスと『おすそわける　メイド イン ワリオ』は経験が物を言う」

著者近影

　経験というのは，どれくらい重要なものなのだろうか。

　例えばプロレスには，だいぶ年齢が高めの選手が多かったりする。そりゃ，肉体的には若いほうが強いに決まっている。パワーや瞬発力，持久力などはどうしても歳を重ねると衰えてくるし，だんだん身体が硬くなるから回復力や耐久力も落ちてくる。でも，強い50代の選手もゴロゴロいるのがプロレスだ。
　なぜか。それは大きく分けて二つ理由がある。まず，プロレスがビジネスであるということ。どういうことかと言うと，プロレスってショービジネスの面が強いスポーツだから，お客さんにチケットを買ってもらってナンボの世界なのだ。だから，チケットが売れるような価値を持っていれば，選手としての存在意義はある。
　まあ，今の時代で言うと「チケットが売れる」のほかにも「注目度がある」「拡散性がある」「知る人ぞ知る」なども存在意義に数えられるかもしれない。それはTVだけじゃなくネット配信というビジネスモデルが加わったからなんだけども。
　そうなると，長くやっているほうが必然的に人目に触れてきた機会も多いわけで，存在価値も増してくる。たまに「男色ディーノってまだやってんの」という声をネットで聞くことがあるけど，そういうこと。それくらいの距離感の人にもとっかかりを与えることができる。購入意欲を直接かき立てるほどの効果はないかもしれないけど，潜在的な購入意欲を育てることができる。
　CMもそういうもんだろう。もし商品を買わなきゃいけない状況になったとき，名前も知らない商品よりCMなどで聞いたことがある商品を選んじゃうでしょ。そういう価値が，キャリアの長い選手ほど生まれやすい。これが一点。
　そしてもう一点がプロレスの競技性上，「経験が強い」。これまたプロレスがショービジネスだから起こる現象なんだけど，プロレスって面白い試合をしなきゃいけないんですよ。で，生まれたプロレス独自の要素が「相手の技を受ける」。
　相手の技を受けない，相手のいいところを出させない競技だったら，肉体的な要素が一番重要になる。動体視力，筋力，持久力の上に経験が乗ってくる。でも，プロレスは相手の技を受けるかどうか，もっと言えばどうやって面白く受けるかの判断力のほうが重要なのですよ。どう受けるかによって，見ている人の本能や印象をコントロールしなきゃいけないから。だから，経験の要素がほかのスポーツに比べて重視される。よって，キャリアがあるほうが基本的には強い。

　さて，前置きが長くなりました。今週紹介するのは「おすそわける　メイド イン ワリオ」です。「メイド イン ワリオ」シリーズの最新作。正直，私としては悩みました。どちらの切り口で紹介しようか？　と。「おそらく世界一テンポのいいリズムゲイム」としての面か，「経験を重ねたほうが有利なゲイム」の面か。結果，後者を選んだわけですがね。
　そもそもメイド イン ワリオシリーズはテンポがいいミニゲイム集なんだけど，今作は今までに輪をかけてテンポがいいです。それはおそらく対戦や協力といった，複数の人と遊ぶことをメインに想定して作られているから。ホント，次から次へとお題が降り注いでくる感じのゲイムなのですよ。そこが楽しい。
　で，経験が物を言うって要素に関しては，テンポが良すぎるがゆえにパっと見何をすればいいのかが分からない，いわゆる“初見殺し”のミニゲイムが出てくるのですね。分からないうちに始まって，数秒後には終わっていたっていう。こういう「え〜っ!?」っていう感じも，複数人で遊んでいたら笑いに変わるんですね。こういうコミュニケーションツールなのですよ今作は。
　でも，だからこそ攻略法が分かりさえすれば簡単にクリアできる。したがって，何回もプレイしている，すなわち経験しているほうが強いわけです。このゲイムにおける努力は，何回もゲイムを遊ぶこと。それだけで一定以上はうまくなる。


　よくよく考えると，昔からゲイムってそうだったなって思うわ。一人で練習プレイして，友達の前で腕前を披露する。で，うまかったらちょっとした尊敬の目を向けられる。おすそわける　メイド イン ワリオもそう。昔からのゲイムコミュニケーションを鋭く磨き上げたゲイムなんでしょうね。
　もちろん，一人でプレイしても面白い。まずはストーリーモードでキャラクターだったりステージだったりを開放していくんだけど，それも友達と協力しながら進められるのがいいね。ソロ専用の私には関係ない話だけどな。一緒にプレイする人がいる環境なら，とくに激しくオススメできる作品ですな。


　というわけで，今週はゲイムもプロレスも経験が物を言うというお話をさせていただきました。ただ，これってプロレスだけでなく，どんなお仕事でも言えることだよね。仕事の種類によって肉体と経験のバランス配分が変わるだけで。色んな経験をしておくことで危機を回避できるようになるし，回避できなくても心の持ちようをコントロールできる。そういう意味で経験って，ひょっとしたら精神論ではあるのかもしれないけど，人間に精神は必要だからね。精神論を抜いてしまったら，ロボットでいいじゃんって話になってくる。
　まあ，経験のため方や使い方は考え方で変わるって話もあるし，そこはコツがあったりするわけだけど，ここら辺の話はまた別の機会にさせていただければ。具体的には，今後経験について考えさせられるゲイムをプレイしたときにお話しさせたいただければな，と思った次第です。ではまた来週。

今週のハマりゲイム
PlayStation 5：「eFootball ウイニングイレブン 2021 SEASON UPDATE」※PlayStation 4版
Nintendo Switch：「おすそわける　メイド イン ワリオ」
iOS：「龍が如く ONLINE」
iOS：「今三国志」
iOS：「ウイニングイレブン カードコレクション」

■■男色ディーノ（プロレスラー）■■ 男色“ダンディ”ディーノ選手が所属するDDTプロレスは，本日（2021年9月16日）に東京・花やしき内・浅草花劇場大会「Who's Gonna TOP？ 2021 TOUR in ASAKUSA」を，18日に神奈川・横浜ラジアントホール大会「Who's Gonna TOP？ 2021 TOUR in YOKOHAMA」を開催します。どちらの大会でも飯野“セクシー”雄貴選手と共に「全面悩殺する」とのことです。