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[CJ 2007#46]中国最大(?)のシングルゲームパブリッシャ網元網に聞く,海賊版問題とゲーム販売
そこで,網元網のマーケティングディレクター 聞 宇(Wen Yu)氏および何人かのスタッフに,中国におけるパッケージゲームビジネスについて聞いてみた。話題はあくまで網元網の事業に限られるわけだが,我々がふだん意識しない,海賊版のもう一方の被害者の存在を確認しつつ,今後の中国におけるシングルゲーム販売の話題をお届けしよう。
網元網というブランドでパッケージ販売ビジネスを展開する中視網元娯楽科技(CITVC Netempire Entertainment)は,中国中央電視台(CCTV)グループの一員。現在扱っているPCパッケージゲームは,Electronic ArtsとUbisoft Entertainment,コーエー,工画堂スタジオ,宇峻奥汀科技(台湾)の製品だ。ただし,ゲーム本体やマニュアルの翻訳部隊を内部に持っているわけではなく,例えば工画堂スタジオの「ブルーフロウ」を扱ったときは外部の会社に依頼し,コーエーならばコーエー自身が担当するなど実務はケースバイケースであって,ローカライズと販売の全体を差配するのが仕事である。社員は総勢100名ほど。中国を東西南北で分けて,四つの事業所を持っている。製品を卸す先である小売店は,中国南部の事業所所轄分だけで300あるという。
世界のパッケージゲームビジネスは,長期的に見てダウンロード販売に比重を移していくという見通しがあるが,網元網では今年(2007年)の6月に通販サイトを立ち上げており,年内にダウンロード販売サービスを開始するという。
また「遙かなる時空のなかで2」も扱うことから,中国における恋愛シムの動向について聞いてみると,過去にも台湾製の「明星志願」や,「心跳回憶」こと「ときめきメモリアル」がヒットしたので,十分に期待できるそうだ。
さて。中国市場を舞台としたパッケージソフトの販売ビジネスとなれば,いかなる意味であれ海賊版の横行が話題に上らざるを得ない。正規版を扱う彼らにとって,海賊版はアタマの痛い問題のはずだ。さまざまな局面で,彼らは海賊版と対決している。
対決の第一種目は価格だ。網元網のソフトは49元から69元で,69元のものが多い。ローカライズ版ソフトは従来200元から300元の値段が付けられていたそうで(確かに149元といった数字はよく見るものだった),この価格設定は「やたらと高価な正規版」という構図を打破するものである。
第二はローカライズ版の発売タイミングを早めて,原語版のコピーや改変版として海賊版が流通する時間的余地を狭めてしまうこと。そして第三はコピー対策だ。網元網の製品にはすべてインターネット認証が導入されており,さらにソニーのSecuROMも近く導入予定だという。
網元網は政府の関係部局とも連携しており,中央政府の文化部新聞出版署,地方政府の工商局,公安局,文化局と協力体制をとる。2004年から2005年にかけては全国で海賊版の取り締まりが強化され,大きな成果が上がったのだという。また,これは全体の文脈としてどう受け取るべきか少々微妙なのだが,同社には,そうした関係部局のOBも勤めているそうだ。
日本のゲームデベロッパ/パブリッシャに向けてアピールしたい事柄はないか聞いてみたところ,中国でナンバーワンのシングルゲームパブリッシャを目指す網元網は,まだまだ欧米日とのパイプが細いのが課題。中国市場に魅力を感じるメーカーさんは,中視網元娯楽科技の公式サイトには,日本語の会社説明もあるので,ぜひ気軽に声を掛けてくださいとのことだった。
ともあれ,当然のことながら中国国内にも海賊版ゲームの“被害者”が大勢いて,自身の事業を守るために努力していることは実感できた。彼らが,少しずつでも市場の認識と慣行を改善していってくれることを,切に祈りたい。(Guevarista)
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