インタビュー
秋には新職業追加? ライト層にもっと優しいゲームへと舵を切る「夢世界」プロデューサーインタビュー
昨年夏の大型アップデートでは大きな動きがあったものの,このところ鳴りを潜めている感じの夢世界,どうなっているのか? 今回は,シーアンドシーメディア 夢世界プロデューサーの山下養一氏にいろいろ話を聞いてみた。
まず,6月から8月にかけてのアップデート予定から確認しよう。
ざっと見ると,それほど大きな動きはなさそうなのだが,この中からいくつかピックアップして,それらの持つ意味を紹介してみたい。
今年3月,東京モード学園の学生が考えたデザインから10作が選抜され,プレイヤーによる投票が行われた。ほんの3か月前の話なので,覚えている人も多いだろう。その最優秀賞の作品が,今回実装されるようになった。
デザインコンテスト自体は,いろいろなゲームで行われていることなので,決して珍しくはないとしつつも,夢世界でこれを実現できたことの意味は大きいという。日本主導で企画を進め,中国の開発陣と緊密に連絡を取ってコンテンツを作る流れが確立されたためだ。初めての試みなのに,3月に開催し,4月末に受賞作が決まって,6月に実装というのは,かなり早いペースだといえるだろう。
できあがったアイテムを見ると,デザイン画そのものというわけではないが,全体的な再現度はかなり高い。うさぎの髪飾りや尻尾は残念ながら省略されたものの,むしろ,レースやギャザーなどのディテールがなにげに細かくなっている。販売に先立ってゲーム内でお披露目したところ,プレイヤーにも好評だという。
中国のデザインスタッフは,今回のような三面図があると非常にやりやすいらしく,日本独自のビジュアルに出てくるネズミ(レプトン)のキャラクターについても,「早く三面図を送れ」と催促されているという。
アバターアイテム制作のフローができてしまえば,今後はもっと日本主導のデザインがたくさん登場してくるようになるかもしれない。期待しよう。
●マップ自動移動のリファインなど
もっとも,後発の「LEGEND of CHUSEN 2 -新世界-」(以下,LC2)では,さらに磨きがかかって,ほぼ完成形といえるレベルにまで進化し,それが「PERFECT WORLD -完美世界-」にフィードバックされ……と,完美時空のタイトルのユーザーインタフェースは,軒並みかなり充実したものとなっていた。
それを思うと,夢世界のオートランは,ちょっと古めのシステムになってはいたのだが,LC2で実現されていた,クエスト時にNPC名やアイテム名をクリックして自動移動する機能が夢世界にも導入されることになった。自動移動を真っ先に実現したタイトルだけに,これまで入っていなかったのも意外だったので聞いてみると,夢世界ではマップが小規模であるため後回しにされていたのだという。とはいえ,この機能があるのとないのとでは,クエストの進行の難度が格段に変わってくる。
また,これまではクエスト関係のモンスターの場所が分からなかったのだが,これもクエスト部分で表示されるようになった。MMORPGでは広大な世界に放り出されるので,地名やNPCの場所が分からないだけで脱落してしまう人もいるという。夢世界でも過去にそういうことがあったそうで,
「完美時空のタイトルでは珍しくないのですが,夢世界では非常にいいアップデートができたと思っています」(山下氏)
とのこと。
こういったプレイヤーサポートシステムについては,概ね,完美時空の最新仕様が搭載されたと思っていいだろう。
●バランス調整
なぜ,この時点でバランス調整なのか? これは夢世界自体の性格や,今後の方向性と大きく関わっている。
まず,夢世界というゲームだが,きわめて安定して推移しているゲームだという。昨年の夏のアップデートは,かなり好評でプレイヤー数も増えたそうなのだが,その後はあまり大きなアップデートは行われていない。このところ,可愛い系のMMORPGも増えていたりと,市場的には厳しい状況にあるはずなのだが,実は,昨年夏にプレイヤー数が増えてから現在まで,実際にはほとんど人数の変動がないのだそうだ。
そして,定着率が非常に高いことと並んでちょっと驚きなのが,アンケート結果によると,ちゃんとやったオンラインゲームは夢世界が初めてだったというプレイヤーが6割強だったという事実だ。これは,一つには,オートランをはじめとして遊びやすいシステムになっていること,そして次にゲームの要求スペックがかなり低いことが要因として挙げられるだろう。
オンラインゲームプレイヤーの多くは,現在プレイしているゲームと似た新作が出れば,ちょっと手を出してみるくらいのことはしてみるものである。こと,基本無料のゲームであれば。しかし,一度でも便利なシステムに触れていると,機能の低いゲームを続けるのは難しくなることも多い。遊びやすさというのは重要な要素だ。
また,そもそも完美時空の第1弾である「PERFECT WORLD -完美世界-」も,ビジュアルの割にさほど重いゲームではなかったのだが,第2弾である夢世界では,さらに徹底した軽量化が行われており,非常に低スペックなPCでも軽快に動作するように作られている。中国の低スペックPCで動くように作られたわけだから,日本ではたいていのPCで動くくらいになっている。実際,夢世界以前は2Dのゲームしかしてなかった(動かなかった)という人も多いのだという。
サービス開始から2年半が経過しており,ヘビープレイヤーも多いゲームではあるものの,調べてみるとそういったヘビープレイヤーの多くは,実はもともとライトプレイヤーだったというわけだ。
これまでのアップデートがヘビープレイヤー用のコンテンツ追加を中心としたものだったのに対して,これからはハイエンドコンテンツの追加と並行して,ライト層に焦点を当てたコンテンツ強化に力を入れていくのだという。ゲームの位置付けを考えれば,きわめてまっとうな方向性であろう。
そのための土台整備ともいえるのが,バランス調整である。コンテンツを追加していく前に,見直しが行われている。
重要なのは,これも日本主導で行われるということだ。夢世界は,現在,中国,日本,韓国,台湾でサービスされているタイトルなのだが,市場的にも傾向としても日本が平均的な位置にあるため,日本を基準に調整するのがよいという結論に落ち着いているのだという。開発側も,日本からの意見,とくに日本のプレイヤーの意見を重視するようになっているとのことで,今後は,もっとプレイヤーの要望が多く取り入れられるようになりそうである。
秋には新職業?
これまでは,魔法職を除けば普通の近接職しかいないというクラス構成であり,近接とはいえ,スキルを使えばかなり遠距離の敵にも攻撃できたりするなど,役割分担しにくく,パーティ内での立ち位置が微妙なクラスが多かった。パーティプレイが,やや大味になるのもやむをえまい。
既存の職業に変更が加えられるかは不明だが,もっと確度が高い情報として,新クラスの導入が予定されていることを挙げておかねばなるまい。
これはプレイヤーに対して行ったアンケート結果が大きく影響しているようだが,これまでとは少し毛色の違った職業を追加する方向で開発が進んでいるようだ。バランス調整を行ったうえで,秋には新職業が2種類ほど追加される予定だという。
既存の職業からのジョブチェンジでなれる職業にするのか,それとも新種族のような形にするのか,そういったあたりを現在開発と詰めているところだそうだ。人間以外の種族を加えたいという思いがある半面,これまでのプレイヤーが選べるものにしたいという思いもあるようで,構想としては,魔族のような種族の追加が検討されているようだ。
職業としては,忍者タイプのアサシン系と弓系が予定されているとのこと。意外な感じもするが,弓職はこれまでいなかったのだ。まあ,近接職でもスキルで結構長射程のものがあったりするので,遠隔専門という需要は低かったのだろう。
秋の実装,それもかなり早い時期を目指しているとのこと。いずれにせよ,新種族実装決定の発表を心待ちにしよう。
そのほか,今後入るかもしれない要素としては,ユーザーアンケートで最多得票となったという「飛行」が有力視されている。
個人的には2段ジャンプのほうを推したいのだが,アンケート項目には入れてなかったそうで,その点は山下氏も悔やんでいたようだ。「PERFECT WORLD -完美世界-」の移動が爽快なのは,飛行よりも2段ジャンプによるところが大きい(ノーマルジャンプも普通のゲームとは段違いの飛距離なのだが)。完美時空のゲームは,どうも仕様がだんだん似てきて個性が薄くなる傾向にあるので,夢世界は「飛行なしの2段ジャンプあり」で「すべての屋根に登れる」仕様がベストバランスではないかと思うのだが……。
サーバー統合について
サーバー統合の必要性としては,まず人口比が挙げられる。プレイヤー人口自体はあまり変動がないそうなのだが,サーバー内人口というのは,たいてい多いところに人が集まる傾向があり,2サーバーで人口差がついていると,だんだんと格差が広がっていくことがある。現状では,ジュエルとフラワーの2サーバーの人口比が3:1に達しており,フラワーサーバーのほうでは多人数のイベントが実施できないなどの問題が出てきている。
プレイヤーへのアンケートでは,約7割の人がサーバー統合を希望している半面,2割強の人が反対しているという。この2割の人を無下にもできないため,統合に向けては慎重に進めてきていたようだ。
では,統合に反対している人は,なぜ反対なのか? アンケートで得られた反対の理由としては,狩り場が混むことや,特定チャンネルで行われるイベントに入れなくなるおそれがあることなどが挙げられているという。まあ,ただでさえ狭いのに人が増えるのは困るというわけだ。
狩り場の不足は,サーバー単位のチャンネル数を増やすことで対応できる。1チャンネルの収容人数はサーバー機材の強化とメモリの搭載量などで増やせることは確認できているという。シーアンドシーメディアでは,これまでにサーバー機器の強化を行ってきており,現状では十分に対応できると確信しているとのこと。サーバーが統合された場合に増える人口は約30%。サーバーをそれ以上にパワーアップして対応するというのは分かりやすい話ではある。
チャンネル増とキャパシティ増で対応できるなら,一般的にいって,サーバー内に人が多いほうがプレイヤーのメリットも大きいといえるだろう。
GMなどを集中的に投下することで,イベントなどのクオリティアップも期待できるかもしれない。少なくともイベント開催回数は半分にできそうなので,余力はほかの部分に向けることが可能になる。
一般にネガティブなイメージで語られることの多いサーバー統合なのだが,そもそもなんでサーバーを分けるかというと,物理的に1サーバーでは処理できないからというのが主な理由である。サービス開始から2年半経過したゲームでは,なにもしなければ2年半前の機材が使われている。一方,ムーアの法則によると,2年も経てば,機材も2倍以上のものが手に入るわけだから,適切に機材のリプレースを行えばサーバー統合は必然といえるのかもしれない。露店一つ取ってみても,人が多いほうがプレイヤーメリットは大きいのだ。
一般的に,新規プレイヤーを増やすなら,新サーバーを立てるという手法もよく使われる。実際,シーアンドシーメディアでも「PERFECT WORLD -完美世界-」などではそちらの方策を取っている。しかし,夢世界で行われようとしているのはまったく逆方向の施策である。これはなぜだろうか。
「夢世界のプレイヤーさんは,新たなユーザーに対しても積極的に交流をし,相互にコミュニケーションをとり,良い世界を創ってくれています。自分で運営していて言うのもあれですが,かなり素晴らしいと思います」(山下氏)
「ほかのオンラインゲームと比較して,世界が狭いから」(山下氏)
だという。街に行けば多くの露店が集中してあり,初心者がいればすぐに目につく。積極的に声をかける上級プレイヤーも多いのだという。
ちなみに,レベル40以上では,コミュニティへの所属率が8割を超えているとのこと。クランメンバーの募集がチャットで行われるのは,どのゲームでも同じだろうが,メンバー募集のついでに初心者用Tipsなどをつぶやく人も多いのだそうだ。自然発生的なコミュニティが,このゲームの大きな魅力となっているのだ。
最初はコンテンツも足りず,不具合もあって,オートランくらいしか見るところがなかったというゲームが,現在ではコンテンツも充実し,
「まだまだ足りない部分も勿論ありますが,『夢世界』は良い意味で安定してきて,やっと一つの作品になってきたと感じています」(山下氏)
という。ここにきて開発側の協力体制もいっそう強化され,日本主導のコンテンツも進み始めている。地盤固めを終え,秋の新職業追加など,大きな動きに出ようとしている夢世界。今後の展開に注目したいところだ。
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