レビュー
欠点らしい欠点がほとんど見当たらない日本ファルコム会心作
ZWEI II
「ZWEI」シリーズの続編が約7年ぶりに登場!
なお,今回日本ファルコムから「ZWEI II」のパッケージを5本,読者プレゼント用に提供してもらった。さっそく欲しくなってしまったという人は以下のリンク先のプレゼントコーナーから応募してほしい。
「ZWEI II」パッケージプレゼント(5名様)
まずはストーリーから簡単に紹介していこう。飛行機乗り&トレジャーハンターの青年「ラグナ」は,飛行中に突然とある事件に巻き込まれ,浮遊大陸に不時着してしまう。そのときラグナは瀕死の重傷を負ってしまうものの,偶然居合わせた少女「アルウェン」に助けられ,九死に一生を得る。
このアルウェンはなんと,吸血鬼一族の令嬢という人物で,奪われた自分の力と居城を取り戻すべく旅をしていたのだ。ラグナは,恩人であるアルウェンに協力するという形で,以降の冒険を共にしていくことになる。
飛行機乗りのラグナは,正体不明の敵にいきなり撃墜されてしまう。実はこの敵とラグナとの間には浅からぬ因縁が…… |
ラグナはアルウェンから命を救ってもらったときに,常人ならざる力を手に入れる。この二人のコンビを中心に物語が展開していく |
ゲームでは,この一風変わった二人のキャラクターを交互に操っていく。キャラクターの大まかなタイプとしては,ラグナは直接攻撃タイプ,そしてアルウェンは魔法による遠距離攻撃タイプといったところだ。
二人のうち,プレイヤーが操作するキャラクターはいつでも瞬時に切り替えが可能。自分が操っていない側のキャラクターは無敵状態のままAI操作でついてきてくれる。そのためプレイヤーは一人の操作だけに専念でき,状況に応じて適切なキャラクターを切り替える楽しさを存分に満喫できるのだ。二人のキャラクターを操ることによる煩わしさや忙しさは,一切感じない。
ゲーム本編はシンプルなアクションRPG。次第に特殊攻撃やパズル要素も出てくるが,序盤はかなりやさしめの内容となっている |
ダンジョン内で分岐路に出くわすことがあるが,その場合は地面に書かれた数字に注目。これが挑戦時の目安レベルとなっている |
操作システムに関しては,移動のほかに攻撃,ジャンプ,キャラクター切り替え,奥義使用(後述)といったアクションが行える。そのほかキャラクターの使用武器や,サブアイテムなどの選択もできるが,ゲームパッドでも問題なくプレイできる仕様だ。マウスのみ,あるいはキーボードのみといった操作スタイルもサポートしている。
ゲーム構成について見てみると,廃坑や神殿,森林などのダンジョンが複数用意されている。ダンジョンの内部は,3フロアくらいの規模でステージとしてまとまっており,このステージ単位でいくつかに分岐がされている。1ステージのプレイに要する時間は,大体10〜20分前後といったところだ。
各ステージのところどころには中ボスが,そしてダンジョンの最後にはボスが待ち受けている。このボスを倒すとストーリーが大きく進展するのだが,それ以外の分岐ステージに足を運ぶことも決して無意味ではない。なぜなら,ほとんどのフロアには「トレジャー」(宝箱)が隠されているのだ。トレジャーの中には,武具やさまざまな便利アイテムなどが収められているが,とくに注目したいのはレベルアップに必要な「フードアイテム」である。
一つのダンジョンをクリアすると次へ行けるようになる。ストーリー展開は基本的に一本道で,戸惑うことはない |
マップ内の仕掛けの中には,一度ゲームを進めた後にあらためて挑戦することで機能するものもある。トレジャーを取り逃さないようにメモしておくといいかも |
というのも,このゲームはモンスターを倒すことでは経験値が上昇せず,食事を摂ることで経験値を獲得し,レベルアップしていくというユニークなシステムなのだ(食事はライフの回復も兼ねる)。フードアイテムを入手する手段はいくつかあるものの,とりわけダンジョンで得られるものは効果が高く(=ゴージャスな食事),より多くの経験値が獲得でき,早くレベルアップできるというわけだ。
ただし,各フロアにはさまざまな仕掛けが施されており,これらを乗り越えてトレジャーを手に入れるのは,なかなか至難の業である。ゲームの序盤では「スイッチを押す」などといった単純な仕掛けが多いが,次第にヒネリを効かせたものが増えてくる。ときにはプレイの手を休め,じっくり考え込む必要もあるだろう。このゲームは,通常戦闘の難度はそれほど高くはないのだが,その分,「倉庫番」や「ゼルダの伝説」などにも通じる謎解きの割合がけっこう大きいのだ。
アクションゲームとしての魅力は健在
とくに対ボス戦は大迫力
ラグナは主に,伸縮可能な「アンカーギア」という武器を使う。これは感覚的には,攻撃範囲が若干広い直接攻撃のように扱えるが,振るうスピードがとにかく速いのが特徴。しかも一度の攻撃で複数回ヒットし,ダウン中のモンスターにも一方的に攻撃できる。アンカーギアの攻撃ボタンを適当にポンポンと押しているだけで,20〜30程度のコンボなら簡単に繋げることが可能で,これはとても痛快だ。
ラグナはモンスターに接近する必要はあるが,連続ヒットによる大ダメージが見込める。ジャンプ攻撃がとくに使い勝手が良い |
「フックギア」にはゲーム内で最もお世話になるだろう。捕まえたオブジェクトを移動させるギミックは数多く登場する |
そしてストーリーが進展していくと,このアンカーギアに改造を施せるようになる。例えば,モンスターやマップ内のオブジェクトを掴んだり投げたりできる「フックギア」や,刀身に炎をまとわせて大ダメージを与えられる「バーニングギア」,ホバーボードのように滑空できる「グライドギア」などが扱えるようになるのだ。
これらは単純に敵へ与えるダメージを上げるだけでなく,アクションの幅が広がるというところがポイント。先述したマップ内の仕掛けには,これらのアクションを駆使して,はじめてクリアできるものがたくさん登場するのである。ストーリーが進むにつれ,謎解きも凝ったものが多くなり,パズルゲーム的な印象すら強くなってくる。
ゲームの終盤ではなんと,「グライドギア」により空中を飛べるようになる。これを利用して解かねばならない仕掛けも登場する |
アルウェンの魔法攻撃を行うと,画面左上の青いゲージが減っていく。これがゼロになると数秒間のリチャージタイムが必要となる |
もう一人の主人公であるアルウェンは,さまざまな属性の魔法による遠距離攻撃が可能だ。これらの魔法の主なメリットは,一度ターゲットを合わせるとロックオンされ,以降は相手を倒すまで自動的に照準され続けること。また魔法の中には,ロックオンすら必要としないものもある。
攻撃ボタンの押しっぱなしによる連射も可能で,全体的には,アクションのRPGに不慣れな人でも扱いやすいキャラクターといえるだろう。
ただし簡単に攻撃を命中させられる半面,一撃あたりのダメージ量はラグナと比べると若干抑えめになっているので,状況に応じて使い分けていくといいだろう。ステージや敵のタイプによって有利なキャラが違ってくるのだが,これを考えて進めていくのが面白いのだ。
使い分けという意味では,魔法の「属性」も大切だ。アルウェンは主に「地」「風」「水」「火」「光」「闇」の6属性の魔法を扱えるが,モンスターにもそれぞれ相性が設けられている。魔法で攻撃するときは,「地−風」「水−火」「光−闇」といった反対の属性であれば大ダメージを与えられ,逆に同じ属性だとまったく通じないので注意しよう。
土属性の魔法は,攻撃範囲が十字方向へ広がっていく。適当に使いながら歩いているだけでも,ザコ敵ならいつの間にか殲滅できているほど |
奥義は非常に強力だが,どちらかというとアクションRPGの初心者に向けた救済措置に近いかもしれない。これに頼らずともクリアは可能だ |
アルウェンは吸血鬼一族の跡継ぎというキャラクター設定であり,本来は強力無比な力を持っているはずなのだが,ゲームスタート時はとある事情により,その大半が封じられた状態にある。だがダンジョンをクリアするたびに,アルウェンは封じられた力を一つずつ取り戻していく。
言い換えると,本作の難度はゲームクリアだけを基準に見た場合,実はそれほど高くはない。
中級者以上のプレイヤーは,奥義を禁じ手にして対ボス戦を戦ってみてもいいかもしれない。本作に登場するボスは,どれもアルゴリズムがよく練られていて,かなりアツいバトルを満喫できる。同社のタイトルだと,ここ数年の「イース」シリーズの経験者であれば,対ボス戦の面白さが近いといえば伝わりやすいかもしれない。あの興奮が一層パワーアップしているのだ。
なので,決して難度が低いというわけではなく,各プレイヤーが自分に見合った難度に調整しながら遊べるというのが,本作の正しい見方であり,魅力の一つではないだろうか。
老舗PCゲームメーカーの名に恥じない会心のタイトル
ほかにも本作の特殊なシステムがいくつか見受けられる。細かいものが多いが,ユニークな試みが多く,触れずにおくのはもったいないので紹介していこう。
まず,まるでWindows Vistaのように,ユーザーインタフェースに「ガジェット」を任意で埋め込めるのは,面白いアイデアだ。例えばミニマップ機能や,戦闘中のモンスターのステータス情報,トレジャーがある方向を示してくれたりといった機能を,ある程度自由にレイアウトできるのである。
ちなみに前作では,タイミングを合わせて攻撃することでクリティカルヒットを任意で発動できたが,今回は同様のアクションが「タイミングバー」というガジェットで実現可能となっている。
有用なものが多い一方,タイピングゲーム(正解するとお金がちょっとずつもらえる)や,キャラクターのバストアップを映すカメラなど,冗談混じりのガジェットも結構多い。ゲーム本編とは無関係なものの,気分転換になんとなく遊んでみたくなるから不思議だ。
画面左上にはモンスターのステータス情報が,右上にはミニマップとトレジャーがある方向が示されている。この三つのガジェットは最後まで重宝した |
ガジェットの一部はショップでも購入可能。中には有用とは言えないものもあるが,このゲームでは肩の力を抜いて,気楽に使ってみるのも一興かも |
ラグナのキャラクター設定にちなんだ,トレジャーハントの要素もある。トレジャーは主に,ダンジョン内の仕掛けをクリアすることで得られ,町の博物館に飾れる。
そのとき多額の報酬が得られるのだが,本作では金銭でもフードアイテムの購入が行える。つまり長い目で見れば,トレジャーハントがキャラクターのレベルアップにも結びついているのだ。モンスターを倒しても経験値が獲得できない本作だが,各ダンジョンをじっくりとプレイすれば,ちゃんとキャラクターの強さに反映されるというわけだ。
あと,冒険時に「ペット」を連れて歩ける。ペットは「直接攻撃タイプ」「間接攻撃タイプ」「爆弾攻撃タイプ」の3種類いるのだが,よくよく注意して観察しないと,戦闘面における強さはあまり実感できないかもしれない。
ペットに関して重宝するのは,戦闘面よりも,ドロップアイテムを勝手に拾ってきてくれることかもしれない。またペットは無敵なので,早い段階で入手しておくと冒険がちょっと楽になることだろう。
トレジャーをフルコンプしようとしたら,ダンジョン内部の隅々へと足を運ぶことになる。一度のプレイでもボリュームはたっぷりだ |
アクションゲームが苦手なら,先を急がずにトレジャー獲得を目指してみよう。それを寄贈して得たお金でフードアイテムを購入すれば,だいぶ楽になる |
ゲーム中でイージーやハードなどといった難度調節はないのだが,プレイスタイルを変えることで違った側面が見えてくることに感心させられた。それによって初心者にとっては易しく,上級者にとっては手ごたえがあるという,一見矛盾しているように聞こえるゲームバランスを見事に実現している。
例えば各ステージでベストスコアを目指したり,奥義に頼らずにボスの動きを見切って倒したり,得意ではないほうのキャラクターで難局を突破したりする遊び方は,アクションが得意な人にとっても手ごたえがある。「イース・オリジン」での対ボス戦が今でも強く印象に残っている筆者にとっても,本作のボス戦は大いに満足できた。
レビュー記事では伝えようがないが,ファルコムサウンドも健在だ。メリハリが効いた曲が多く,BGMとは思えぬほどの自己主張をするが,そこが実に良い |
前作の後という舞台設定が古くからのファンにとって嬉しい。前作の主人公だった,ポックルは相変わらずの純朴な少年といったところだが,ピピロは大魔術師としての貫禄を感じさせる |
ストーリーに関しては,そこそこの真面目さ,そこそこのギャグ,そこそこのどんでん返しがまんべんなく盛り込まれているといえる。イースシリーズほどシリアスではなく,どちらかというと能天気であり,最後まで肩に力を入れることなくプレイできる。
例えばガジェットのような試みは,ほかのタイトルだと下手をするとふざけた印象を与えかねないが,そう感じさせないところがZweiシリーズの味であり,魅力なのだろう。このテイストは次回作以降にも引き継いでもらいたいところ。
ZWEI IIは,老若男女問わず遊べるという幅広さを実現している。そっくりそのままPSPなどに移植されたとしても,違和感なく楽しめるだろう。近年の同社のラインナップから察するに,その日は案外近いのかもしれないが。
まぁそれはさておき,老舗ゲームメーカーの名に恥じない会心の一作。今のところ体験版がないのが残念だが,興味を持った人は安心してパッケージを手に取ってみてほしい。
ラグナに関しては,トレジャーハントの要素がゲームシステムにたっぷり反映されていたが,一方の飛行機乗りという設定があまり生かされていなかったのがやや残念 |
ちなみに12月にはPSP版の「Zwei!!」がリリースされる。これから,同社にとっての新たな定番ブランドとして浸透しそうな予感がする |
- 関連タイトル:
ZWEI II
- この記事のURL:
- ZWEI II ツヴァイ2 限定特典版
- Software
- 発売日:2008/09/25
- 価格:
- Zwei!! XP DVD-ROM版Software
- Zwei!! XP CD-ROM版Software