連載
コンシューマゲームセレクション:第24回「アルトネリコ2 世界に響く少女たちの創造詩(メタファリカ)」
» 編集部のgingerに美少女ゲームの原稿を書かせたら,「ほかのどの原稿を書くときより生き生きしている」と一部でもっぱらの評判。今回取り上げる「アルトネリコ2 世界に響く少女たちの創造詩(メタファリカ)」も美少女ゲームなんだろうなあ,と思っていたら,本人曰く“骨太RPG”なんだとか。さてその真相やいかに。
大地を紡ぎだす創造詩「メタファリカ」をめぐる冒険が始まる
大地の消えた雲海にそびえ立つ1本の塔と,その塔にしがみつくようにわずかに残された土地に人々が住む世界。そして,歌うことで詩を力にする「詩魔法」と,その歌い手である特殊な種族「レーヴァテイル」の存在という世界観を前作から継承しつつ,本作では新たな世界で新しいストーリーが展開される。
本作の舞台,「メタ・ファルス」では,神との戦争を掲げる「大鐘堂」と,それを批判し,神との共存を掲げる「神聖政府軍」との争いが続いている。大陸を創造する詩「メタファリカ」を歌い,緑の大地を生み出そうとする大鐘堂に対し,神聖政府軍は,神によってこれまで幾度となく阻止されてきたメタファリカを紡ぐことは,神の意志に反するとして対立しているのだ。
そんな中,プレイヤーは大鐘堂の騎士クロアとなり,レーヴァテイルである大鐘堂の御子クローシェや,同じくレーヴァテイルの幼馴染み,瑠珈(ルカ)らと共に,メタファリカを紡ぐための冒険を繰り広げていくことになる。
ストーリー自体は,前作をプレイしていない人でも問題なく楽しめるが,共通の世界観を持つシリーズ物の常として,前作をプレイした人であればニヤリとさせられるセリフやキャラクターがたびたび登場する。前作をプレイしておいたほうが,本作をより楽しめることは確かだ。
前代未聞のお風呂レベルアップシステムで
好みのムスメを調合せよ!
しかし,ムスメに関する誤った知識にかけては右に出るものがない筆者なればこそ,前作アルトネリコが発表された当時,この単語を目にして即座に脳裏にひらめくものがあった。つまり,こういう推測だ。
●ムスメ調合例
ツンデレ+絶対領域+メロンパン+日本刀+炎=???
するとどうだろう? アナタ好みの素敵なムスメが一丁上がりというわけだ。さりげなく人の好みにすり替えているが,そんな細かいこと気にしているとムスメに嫌われちゃうぞ。大人の事情により???に何が入るのかは各自で想像してもらいたいが,こんな風にして成分(?)を調整し,自分好みのムスメを育成するゲームに違いない。……と筆者は考えていたのだが,この当てずっぽうはカスリもしなかった。
では,どのあたりが“ムスメ調合”だったのかと言うと,ヒロイン達の歌う詩魔法のカスタマイズや,ヒロイン達に着せ替えさせるコスプレ衣装/後述のダイブシステムやトークマターなどで,ムスメとの絆を深くするシステムの総称だ。もちろん,そんなアルトネリコシリーズの続編である本作にも,“ムスメ調合”は健在だ。しかもそれは,前作のはるか斜め上を行っている。
前作では普通のRPGらしく,戦闘を通じてレベルアップしていたヒロインのレーヴァテイル達だが,本作ではそうではない。ではどうするのか? そう,お風呂に入ればよいのである。むしろ,お風呂に入らなければヒロイン達はこれっぽちも成長しないと言い換えてしまってもいい。
「デュアルストール」と呼ばれる,この前代未聞のお風呂レベルアップシステムこそ,本作における“ムスメ調合”の真骨頂。ゲーム内ヘルプでは,ボスクラスの敵や,宝箱から入手できる「デュアリスノ結晶」をお風呂にひたし,そのお湯につかることで,結晶の持つ力を安全に体内に取り込めるのだと説明されている。いくらなんでもそれはないだろうとツッコミたくなるところだが,ここはムスメ達のバスタオル姿に免じて,男らしく目をつむろうではないか。いや,やっぱり目は開けておくべきか……。
結晶によるレベルアップは,一つにつき一人1回までなので,同じ結晶を使って何度もレベルアップすることはできない。しかし,ヒロイン達は入浴中に結晶に触れることで,その結晶が持つ効果を取り込めるので,お風呂に入るときはありったけの結晶を入れておくのがいいだろう。
ヒロインの精神世界にダイブすると
恋愛アドベンチャーゲームに?
ヒロイン達の心の世界であるコスモスフィアには,ヒロイン自身の別の人格や,そのヒロインの目から見た周囲の人々(たいていの場合,かなり極端な性格が設定されている)が登場し,およそ現実世界では考えられないハチャメチャなストーリーが繰り広げられる。
前作のアルトネリコは,このRPGと恋愛アドベンチャーをミックスさせたようなゲームシステムもさることながら,なんでもないセリフを,わざわざ思わせぶりな言い回しで表現すると,なんとなくエッチな感じがするという,偉大な発明によって話題を集めたタイトルでもある。
個人的にはこれは,「なんでもない画像にモザイクを入れると,なぜかエッチに見える」という発明に匹敵する,世紀の大発見の一つではないかと考えており,この路線は本作でも変わらない。
コスモスフィアは階層構造をなしており,そのときダイブしている階層での悩みをすべて解決すると,ヒロインの精神世界に「パラダイムシフト」と呼ばれる変化が起こり,より深い心の中を見せてくれるようになる。また,パラダイムシフトが発生したときに,ヒロインがその階層で着ていたコスチュームが手に入ることがあり,戦闘中に着用できるのもおなじみの要素だ。
これらのコスチュームには,メイド服,制服,巫女装束,体操着といったものが用意されており,選んだコスチュームによってヒロインのステータスや外見が変化する。どうやって精神世界のコスチュームを外に持ち出すのかとか,そもそもなぜこのような服がこの世界に存在するのかは気にしない。
ヒロイン達の悩みは一見さまざまな形を取って現れるが,どのヒロインの本心も結局のところ,あるがままの自分を受け入れてもらい,主人公と結ばれたいというところに帰着してしまう。したがって,コスチューム集めをしつつ,主人公とヒロインがすったもんだの末に結ばれるさまをニヤニヤしながら楽しむのが,コスモスフィアの正しい遊び方であると筆者は愚考する。うん,自分でも分かっているので,それ以上は言わないでほしい。
コスモスフィアをクリアすると,コスチュームが手に入ることがある。その理由はよく分からないが,ムスメにコスプレさせることにはなんの異存もないので,良しとしたい | ||
普段は見られない,ヒロイン達の違った一面が垣間見えるのも,コスモスフィアの楽しみの一つ。一番右は3人めのヒロイン,ジャクリ。ふくれっ面が大変可愛い |
さらに強化された詩魔法システム。合体魔法で敵を一掃!
まず,戦闘は「アタックフェイズ」と「ディフェンドフェイズ」を交互に繰り返して行うようになった。アタックフェイズはその名のとおり,こちらから攻撃をしかけるターンで,画面右下の「フェイズタイムゲージ」がなくなるまで,何度でも攻撃できる。敵に直接攻撃を行うのは前衛の役目で,アタックフェイズ中に,ヒロインの要求を示す「エモーションインジケーター」に応えるアクションを行うことで,詩魔法の威力を示す「バーストゲージ」がグングン上がる。
またディフェンドフェイズ中は,敵の攻撃に合わせてタイミングよくボタンを押して防御することでダメージを軽減できる。防御が成功すると,ダメージの軽減と同時に,これまたバーストゲージがグングンアップするのだが,うまくガードできないとガンガンダメージを受けてしまうので,実に気が抜けなくなった。
さらに,戦闘に参加できるレーヴァテイルが2人になったというのが,もう一つの大きな変更点。これに伴って追加されたのが,ヒロイン2人が力を合わせて詩を歌う「合体魔法」だ。合体魔法は,戦闘中に2人のヒロインの「ハーモニクスゲージ」が重なり合ったときに発動し,特大の威力を発揮する。
また,詩魔法の威力を高めるもう一つの方法が,本作で追加された「レプレキア」システムだ。これは,「I.P.D.」と呼ばれる暴走中のレーヴァテイルを保護し,その力を借りることで詩魔法の威力をさらに高めてしまおうというもの。レプレキアは,戦闘中に特定の条件を満たすことで使用可能となり,最大で100人のI.P.D.レーヴァテイルと力を合わせて歌うことで,詩魔法を飛躍的に強化できる。
元々,通常の戦闘でもバーストゲージは軽く1000%単位で上昇していくのだが,レプレキアを使用することで,あっという間に数十万%までアップする。こうなるともはや,バーストゲージをパーセント表示することに何の意味があるのかさっぱり分からなくなってしまうが,とにかくすごい威力ということだけは理解できる。レプレキアと合体魔法は併用できるので,ボス戦での効果は絶大だ。というか,ザコ相手ではレプレキアや合体魔法を出す前に決着がついてしまうことが多い。
I.P.D.レーヴァテイルの役割はこれだけではない。本作ではなんと,保護したI.P.D.レーヴァテイルをそのまま“装備”してしまうというシステム,その名も「ムスメパワード」が用意されている。あまりといえばあまりのネーミングにビックリだが,ムスメ達は戦闘を有利に進めるための最大四つのスキルを持っており,装備することでその恩恵を受けられるので,これを利用しない手はない。
どうやって装備しているのかまったくの不明だが,おんぶでもしているのだろうか……。ムスメを装備しちゃうというその発想には,日頃は決して人前で帽子を脱がない筆者でも,脱帽するほかない。
RPGと美少女ゲームを愛する
すべての人にオススメの一本
こうした一つ一つの要素がプレイの足枷ではなく,ゲームを進めていくうちに無理なく自然に楽しめるように散りばめられているバランス感覚は見事というほかない。また,アルトネリコシリーズの伝統として,本作でもヒロインごとのマルチエンディングが採用されており,すべてのエンディングを見るだけでも十二分に楽しめる。
たしかに本作は,そのキャラクター性や,ネタとしか思えないシステムにばかり目がいきがちだが,ゲームそのものの完成度は,決して“ネタゲー”の一言で片づけてしまえるものではない。一度プレイしてみれば,本作で見られるちょっぴりエッチな小ネタや,極端なまでに“ムスメ”にこだわったゲームシステムはすべて,“萌え”そのものに対する制作者側のパロディであり,本質はきっちりと作り込まれたゲーム性やエンターテイメント性にあることがお分かりいただけるだろう。
そして,このことを理解したうえで,あえて美少女ゲームの文法のど真ん中をいく展開を楽しむのが,本作の醍醐味なのである。RPGが好きで,美少女ゲームのノリも嫌いじゃないという人であれば,本作は間違いなくオススメしたい一本だ。
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アルトネリコ2 世界に響く少女たちの創造詩(メタファリカ)
対応機種:プレイステーション 2メーカー:バンプレスト
発売日:2007年10月25日
価格:7140円(税込)
CEROレーティング:B(12歳以上対象)
公式サイト:http://ar-tonelico.jp/at2/
- 関連タイトル:
アルトネリコ2 世界に響く少女たちの創造詩(メタファリカ)
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(c)GUST CO.,LTD. 2007 (c)BANPRESTO 2007
- アルトネリコ2 世界に響く少女たちの創造詩 PlayStation 2 The Best
- ビデオゲーム
- 発売日:2008/08/07
- 価格:¥5,970円(Amazon) / 6741円(Yahoo)