このゲームの読者の評価
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Shadow Harvestは三角関係 65 - 投稿者:のらくろ(男性/30代)
- 投稿日:2011/09/07
- 良い点
- ソマリアの独裁者Kimoseinの暗殺任務に従事中の
デルタフォース所属の軍人"Aron"は現地軍と協力し、
かの独裁者を追い詰めるための作戦に従事する。
その道中、謎のステルススーツを纏った女性(Myra)を発見する。
彼女もまた、米国の諜報機関に所属し、任務のためにソマリアに降り立っていた。
お互いの行動が交錯し、そして危機が迫った時、
2人は互いの任務達成のために協力関係となる。
彼らはKimoseinを暗殺出来るのか!?そして独裁者を支える謎の存在とは一体何か?
そんなストーリーを持つこのゲーム、
Steam上ではMetascore34点と凄い数字が付いています。
しかし、どれほど口内出血出来るゲームなのか!という私の期待を裏切る
未熟ながらも妙な面白さのあるゲームでした。
まず挙げるのはAronとMyraの2人の主人公による
操作感・ゲーム性の違いが生み出す謎の面白さです。
TPSの視点を採用し、昨今では最早貴重で良い点にも挙げられる、
非自動回復のメディキット回復制がシステムに採用されています。
軍人であるAronの操作からゲームがスタートし、
壁にぶつかる感じに操作すればカバーリングをする中々快適なシステムに
拘りの感じられる射撃音と銃のデザインは魅力的ではありますが、寄り過ぎるカメラ、
倒しても倒されても無反応に近いキャラの死に方、
右耳破壊を狙ってるのかと思う音量出力に、
バグだらけの序盤とその幸先の良いスタートに誰もがゲームを投げたくなるでしょう。
「このゲームやるより草むしりをしたい」と。
しかし2章まで進み、Myraの操作へと替わるとこのゲームの評価は大きく変動します
Aronとは一転し、華麗な女性スパイであるMyraさんは隠密行動を主体とした
ステルス・アクションをする事となります。
最初は照明が付いた部屋の敵の目の前をカバーリングしながら進む、
それでも発見されない様はステルスアクションというよりは
新喜劇みたいな絵面に溜息が出ますが、そこを乗り越えると開発者の趣味全開な
ハイテク兵器と、特殊な武器に魅了される事になります。
ステルススーツは勿論の事、ステルス・キルをした際に特殊なナノマシンを注入し、
死体を透明にしてカモフラージュさせるという今まで見た事が無いその兵器には
男心をくすぐられます。その他にもMyraさんはクロスボウを武装しており、
通常の矢の他にもアラームを鳴らして敵の注意を惹きつける矢や、
先ほどのナノマシンが塗られ、射殺した相手を透明化させる矢といった、
非常に独特な武器は一見の価値があります。
そしてここから素敵兵器とシステムの歯車が噛み合い始めます。
敵の無反応さが気になる銃撃戦も、前提がヘッドショットの一撃必殺か
ステルスキルであるMYRA編ではまったく気にならず、
正面からの戦いが苦手な彼女のパートでは撃ち合いを起こそうにも起こせません。
ステルススーツのエネルギー残量や特殊矢の本数の絶妙さ、
手抜きとは思えない敵配置は今までが嘘だったかのように面白く、
実はスパイアクションが作りたかったのでは無いかと
邪推してしまうほどの落差を感じます。
そして彼女のパートが終わった後、あのAron編へと移った際には溜息が出ますが、
ここに来て先ほど述べた「謎の面白さ」を味わう事となります。
敵と正面からガチンコし、カバーリングをしながら敵の頭を撃ち抜き、
彼女では死ぬダメージも耐え、タフに進むAron。
MYRA編で制約された事が解放された途端に、
同じゲームをプレイしていたとは思えないほどの面白さを感じる事となります。
一番最初とやっている事が変わらないのに、
こうまで印象がガラリと変わったのは
今までプレイしたゲームでも例を見ませんでした。
更に飽きさせないようにと軍用車の銃座に載って進むカーチェイスが始まったりと
変化もそれなりにあり、二足歩行ロボを操作するステージを経験したら、
最早このゲームの虜となっているでしょう。
MyraのセクシーなQTEや、彼と彼女の軽口の言い合いにも一見の価値があり、
それぞれがキャラクターとしての魅力があるのも良い点と言えます。
ゲームが進むにつれ、ひらすら腹パンチされてる様な難易度へと変わるMyra編よりも
爽快なAron編を望むようになるのもこのゲームの不思議な点なのかもしれません。
ある程度章が進むと、彼女と彼の操作を切り替えて進むステージが増えますが、
2人の主人公で苦労が2倍になるという事は無く、
しっかりと最適解が用意されているのも、設計が難しいであろう
同時操作の悪さを出さなかったのも良い点と見れるでしょう。
未熟さと純粋な失敗が少し目立ちますが、
それでも手抜きされたゲームであるとは思えない部分が
多々あったのは純然たる事実でした。 - 悪い点
- 良い点で少し触れたように、やはりシステム・エフェクトが非常に稚拙です。
まず音声出力が全体を通しておかしい事になっており、基本的に右側に偏っており、
いきなり大きな音を出したり、極端に音量が小さくなったりします。
キャラ同士の会話ではそれが顕著で、もはや字幕が無ければ
何を言っているのかさっぱりな程の小声で会話をされるのは
テストプレイをしたのかを疑う程でした。
デフォルトのカメラの位置もかなりおかしいです。
バイオ4から始まった現代のスタンダード的な三人称視点なのですが、
カメラの位置が異常にキャラに寄っていて、前方がかなり見辛いです。
偉大な先駆者が沢山いるのに、モンハンで壁際に追い詰められたような視点を
どうして採用したのかと疑問に思うほど、悪い点であったと言えます。
アクションゲームでは敵・自キャラのリアクションというのが非常に大事ですが、
それがこのゲームでは致命的に欠けています。
開発者が銃を撃った事がある人は居ても、撃たれたことがある人が居ないのか、
銃撃音・反動感は物凄く素晴らしいのに、弾を当てても当てられても
死なない限り、音やモーションに一切の反応がありません。
自動回復制では無いこのゲームでは無反応さのせいで体力管理が非常にシビアで
「気づいたら瀕死だった」なんて事が頻繁に起きるのは自動回復制では無い
このゲームにとっては非常に悪い点であると言えます。
キツい難易度は時に面白さを誘うエッセンスとなりますが、
このゲームでは序盤にはそこそこの難しさが面白さとして良く機能しています。が、
後半になるにつれてどんどんキツくなり、
特にMyra編は涙が出るほど難易度が跳ね上がります。
ステルスアクションを担当する彼女のパートではこの手のゲームに良くある
「発見されたらゲームオーバー」というステージが多く用意されています。
このゲームの敵の発見判定は非常に変で、非警戒状態の時にMyraが視界に入ると
例え眼の前にいても5秒くらいはジーッとこちらを見て、ようやく発見状態になる
コントみたいな視界をしているのに、死体を発見する等をして、
一度警戒状態になると判定が一転して、
全盛期のサンコンみたいな超視力を発揮して、
「どうやったらそこから判別すんだよ!」と思うような超長距離からも
発見されてしまい、ゲームオーバーとなってしまいます。
トライ&エラーといった再挑戦が簡単かつ素早く出来る設計ならば
ハイテク兵器をいかにして使うかを考え、挑戦する楽しみがあるのですが、
このゲームはゲームオーバーになる度に全体のロードが始まり、
更にそれが非常に時間が掛かるため、苦行でもしているのかと思うほどの地獄を
後半のMyra編で味わう事になります。その反動でAron編が物凄く恋しくなり、
いつプレイ出来るかが待ち遠しくなったりしますが、
そんなメロドラマの乙女心みたいな感情をTPSで味わいたくはありませんでした。
ややネタバレになりますが、最後のエンディングの締めに「誰だお前は!」と
突っ込みを入れたくなる程、最終章に初めて出てくるポッと出の人間に
エンディングの締めの教訓を聞かせられるのは、
このゲームの中でも最悪な点であったと言えます。
続編を匂わし、原初の主目的を達成させ、なおかつ開発者の主張もはさみ込む。
戦争をテーマとしたゲームならばよくある展開かつ表現方法ではあります。
前者2つはちゃんと達成出来ていたのに、
最後の最後が見知らぬ人間の説教では説得力もクソも無い。
EDを見た時には取り残された主人公と同じよう、私もポカーンとしてしまいました。 - 総評
- 「Fateは文学」「CLANNADOは人生」というゲームを何かに例える言葉遊びが
ネット上にはありますが、このゲームで何かを表すならば、
「Shadow Harvestは三角関係」と私は例えるでしょう。
「険悪ムードで初っ端からあの子と喧嘩!素敵な娘に夢中になったけど、
あの子も気になる!そして誤解も解けて、あの娘とは喧嘩しちゃった。
最後に気付いた。私はあの娘が好きでは無く、本当に好きなのはあの子なんだ!」 と、
プレイ中の感情の移り変わりは大体こんな感じでした。
ゲームの批評にこんな事を書くと正気を疑われるかもしれませんが、
これは純然たる事実であり、一度プレイしてみれば"それ"が理解出来るでしょう。
忘れないで欲しいのは、私もまたShadow Harvestに踊らされた
一人の犠牲者に過ぎないという事です。
残念な事ですが、このゲームははっきり言ってMetascore34点の価値はありません。
確かに粗い部分や未熟な部分が目立ちますが、それ以上に情熱を感じられる部分もあり
プレイヤーに楽しんで貰おうという演出や努力、開発者達の嗜好に対する
熱さがヒシヒシと感じられ、30点台特有の空気は一切感じられませんでした。
その未熟さと失敗が折り重なり、このゲームは転んでしまっていると言えますが、
『転んだ者を笑ってはいけない。彼は前に進もうとしたのだ』という名言もある通り、
このゲームが良ゲーになろうと前進しようとしていた事は確かであり、
確かな面白さのある部分があるのを無視され、
不当な点数が付けられて嘲笑われている事に
反論するのはこのゲームをプレイしたゲーマーの責務にも思えます。
良ゲーとしては勧める事は出来ませんが、"ゲームは何故面白いと感じるか?"という
ゲームの永遠の命題に対する一つのヒントとなりうる、
機会があれば是非プレイして欲しいと思える、そんなゲームでした。 - プレイ時間
- 10〜20時間
グラフィックス サウンド 快適さ/運営 熱中度/ストーリー ボリューム 4 3 3 4 5
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