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Intel,タブレット向けSoC「Bay Trail Refresh」における省電力化の秘密を解説。年内には低価格Windowsタブレットも続々登場
2014年9月26日,Intelの日本法人であるインテルは,都内で記者説明会を開催し,開発コードネーム「Bay Trail Refresh」と呼ばれるAtomプロセッサの最新ラインナップと省電力化の工夫について説明した。説明会の概要を通じて,Bay Trail Refreshの強化点とラインナップ,電力管理の秘密を見ていこう。
Bay Trail Refreshは従来SoCよりグラフィックス性能が20%向上
説明会では,まずインテルにてクライアント事業開発部 事業開発マネージャーを務める山中 徹氏が登壇し,AtomとAtom採用タブレットの現状について説明した。
山中氏によると,2014年のIntelはタブレット端末への採用に力を入れたこともあり,Atom搭載でハイエンド製品から100ドル未満の低価格帯までをカバーするラインナップ(Stock Keeping Unit,SKU)を構築し,すでに130以上の製品が市場に投入されているという。
それらのタブレット端末に使われているSoCが,Bay Trail Refreshと呼ばれる2014年モデルのAtomだ。プロセッサナンバーの数字部分が「37x5」または「37x6」となっているものがそれに当たる。「C0 step」と呼ばれる改良されたこのAtomは,2013年モデルの「B2/B3 step」――具体的には「Atom Z3770」や「Atom Z3740」など――に比べて,グラフィックス性能が20%ほど向上していると山中氏は述べた。
7インチサイズのAtom搭載Windows 8.1タブレットを手にしたクライアント事業開発部 事業開発マネージャーの山中 徹氏 |
山中氏が挙げたBay Trail Refreshのポイント。ゲーマーとしてはグラフィックス性能の向上がやはり気になるところだ |
グラフィックス性能向上の鍵は,統合型グラフィックス機能の動作クロックが引き上げられたことにあるという。2013年モデルが最大動作クロック680MHzまでだったのに対して,2014年モデルでは833MHzと,1.22倍ほど引き上げられているのだ。Bay Trail Refresh搭載のタブレット端末なら,ゲームグラフィックスの表示がより快適になっている可能性がありそうである。
また,Bay Trail Refreshでは,全製品がAndroid OSの64bit版に対応するという。次期Android OSである「Android L」では,64bit実行環境が正式にサポートされることになっているが(関連記事),Bay Trail Refreshならこれへの備えもできているというわけだ。
ちなみに,Bay Trail Refreshで64bit版Windowsに対応するのは,ビジネス製品向けに位置付けられている最上位の「Atom Z3795」だけとされている。といっても,ほかのBay Trail Refreshが64bit命令に対応しないというわけではないようで,実際は,Intelが64bit Windowsでの動作検証を行っているのがAtom Z3795だけ,ということらしい。
新ステート「S0ix」の採用でシステム全体の消費電力を下げる
説明会の後半は,Atom搭載タブレットがいかにして消費電力を削減しているのかについて,インテル モバイル&コミュニケーションズ事業部の平井友和氏が説明する形で行われた。
平井氏によると,Atom搭載タブレットはプラットフォーム全体の消費電力を削減したことで,バッテリー重量を減らして製品を小型軽量化できるようになったという。とくに重要なポイントは,スタンバイ中の消費電力を減らしたことにあると山中氏は述べた。コンテンツ作成が得意で,継続して作業を続けることの多いPCと,コンテンツを消費することに長けたタブレット端末では使われ方が異なり,それを踏まえた消費電力の最適化が必要というのだ。
たとえば,タブレット端末では画面のオン/オフはPCよりも頻繁であるし,スリープ状態からは迅速に復帰する必要がある。その一方で,スリープ状態でもネットワークにつながっていなければならず,通話やメール受信,アプリの通知などを受信しなくてはならないので,PCのように全デバイスが寝てしまうわけにはいかない。
モバイル&コミュニケーションズ事業部の平井友和氏 |
PCとは使われ方の異なるタブレット端末では,用途に適した電力管理が必要となる |
タブレット端末における消費電力削減のポイントとして平井氏が説明したのが,「S0ix」(エスゼロアイエックス)と呼ばれる特殊な電力状態(ステート)である。
平井氏の解説は専門的な内容だったので,かいつまんで説明すると,S0ixとはPCで一般的な電力制御規格「ACPI」が定義しているスリープモード「S3」に近い低消費電力状態でありながら,より短時間で動作状態(S0)に復帰できるステートだ。これはAtomだけが備えるものではなく,Haswellこと第4世代Coreプロセッサにも導入されている仕様である(関連記事)。
S0ixには,「S0i1」「S0i2」「S0i3」の3種類が用意されているそうだが,Bay Trail Refreshで使われているのは,S0i1とS0i3の2種類で,数字が大きくなるほどプラットフォーム全体の消費電力は減るという。
S0ixが必要とされたのは,先に挙げたタブレット端末に求められる要素,とくに迅速な復帰とスリープ中のネットワーク接続を実現するためだ。
たとえばWindows 8で導入された「Instant Go」(※Intel側での呼び名はConnected Standby)に対応する端末は,スリープ中でも一定間隔で目覚めて,ネットワークを見に行ってメールや通知の確認をしたり,マシンのチェック(カーネルメンテナンス)をしたりしたうえで,再びスリープ状態に戻る必要がある。しかし,古くからあるS3状態まで落ちてしまうと,CPUや各種デバイスが再び動作状態に戻るまでに時間がかかってしまうし,動作を終えてまたスリープに入るのにも時間がかかる。無駄が多くなってしまうわけだ。
そこで,より短時間で復帰したり低消費電力状態に変わったりできるモードとして,用意されたのがS0ixである。
Windows 8.1搭載のAtomタブレットでは,[電源/スリープボタン]を押して画面をオフにしてから数秒〜数分経つと,マシンの状態はS0i3に遷移する。この状態でも,マシンは定期的に短時間だけ目覚めて,システムのチェックをしたりネットワークを見に行ったりという処理をこなしては,すぐに休眠状態に戻るという動作を繰り返す。そしてユーザーが再び[電源/スリープボタン]を押して画面をオンにすると,極めて短い時間で通常動作の状態まで戻る。
S0i3状態の消費電力は30mW程度とのことで,タブレット端末として快適な使用感とバッテリー駆動時間の長さを実現しているというわけだ。
Qualcomm製SoCを採用するAndroidタブレットに比べると,Atom搭載のWindows 8.1タブレットは,まだバッテリー駆動時間がやや短く,重量もやや重い傾向にあるのは事実だ。しかし,こうした工夫が積み重ねられていくことによって,Atom搭載タブレットのバッテリー駆動時間も伸びていくことだろう。ゲーマーにとってもタブレット端末の選択肢が増えるわけで,こうした進化は大いに歓迎したいところだ。
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