インタビュー
満を持して動き出した「TERA」,日本運営プロデューサーが語る次世代ゲームの魅力と国内展開
となると気になるのが,“日本で”いつ遊べるようになるかだ。最近になって開発blogや「TERA LEADER」など,にわかに動きが活発になりつつある「日本版 TERA」に関して,NHN Japan運営プロデューサーの潮田太一氏に,聞ける範囲であらかた話を聞いてきた。目下2011年の最有力MMORPGといわれる本作の現状,とくとご覧あれ。
日本プロデューサーが考える“TERAの魅力”とは
本日はよろしくお願いします。
運営プロデューサーの潮田さんが4Gamerに登場するのは,今回が初めてですよね。
潮田氏:
はい。よろしくお願いします。
4Gamer:
さっそく本題に入りますが,潮田さんから見た「TERAの魅力」というのは,どんな部分なのかを聞かせてください。
潮田氏:
大きく分けて,二つあります。
一つは,MMORPGのジャンルで“ノンターゲッティング”のバトルを実現したこと。それにより,よりリアルで,より現実世界に近い感覚でのゲーム体験ができるようになりました。
TERAでは,常に周囲の状況を距離感で判断する必要があります。ノンターゲッティングのシステムでソロプレイを行うのはもちろん,パーティプレイで仲間と協力して強大なボスと戦うのは,確実に,MMORPGの新しい遊び方だと思います。
4Gamer:
それでは,もう一つの魅力とは?
圧倒的ともいえるグラフィックスです。
4Gamer読者の皆さんはそう聞いても,「いまどき,そんなの売りにならないよ」と思われるかもしれません。日本にはPlayStation 3やXbox 360など,コンソールゲームの文化があって,グラフィックスが綺麗なのは当たり前ですから。私も,今までずっとそう思っていました。
ですが,今回,TERAの最新バージョンを韓国で見たとき,正直いって感動しましたね。そして考えを改めました。こればかりはテキストでは伝えきれないので,実際に動いているところを,ぜひその目で見ていただきたいと思います。
4Gamer:
TERAのグラフィックスは,細かい部分まで,本当に緻密に描き込まれていますよね。
背景に関しても,例えば見晴らしのよいエリアに出て,ちょっと遠くに見える山々とか遺跡とかを眺めると,月並みな表現ですが感動するレベルですね。キャラクターのモーションにもとてもこだわっていて,とくに女性キャラクターにはアート担当の執念のようなものを感じます。
ノンターゲッティングバトル前提のMMORPGを実現
それでは,ノンターゲッティングバトルの醍醐味について,あらためて詳しく聞かせてください。
潮田氏:
スクリーンショットでプレイ画面を見ている限りでは,従来のターゲット式のバトルと比べて,あまり大差がないように思われるかもしれません。しかし実際に動かしてみると,まるで違います。武器を1回1回振るうたびに,自分の目で距離や角度を確かめていかなければならないからです。
もちろん直接攻撃だけでなく,弓矢や攻撃魔法,そして各スキルといった,すべてのアクションに,これが密接に影響してきます。
4Gamer:
ヒーラーの回復魔法にしても,ちゃんとターゲットで狙わないと回復(=命中)できないんですよね。
潮田氏:
回復魔法は大きく分けて2種類があります。一人一人自分でターゲットを合わせるパターンと,自分を中心に半径数メートル内のキャラを全員回復するといったタイプで,これらを状況に応じて使い分けていきます。
とはいっても,決して小難しいわけではなく,最初は誰でも出来るようになっています。そして戦術を追求していくことで,着実に違いが実感できます。ライトな人でも楽しめるし,コアになるにつれ,もっともっと奥深いバトルを堪能できるわけです。
4Gamer:
ノンターゲッティングバトル自体は,日本ではコンシューマを中心にすでに定着していますが,それをMMORPGのゲームジャンルで実現したところが大きいですよね。
はい。こちらからもお聞きしたいのですが,昨年プレイされたG-Star 2009のバージョンと比べて,ノンターゲッティング部分に関してどのように思われましたか?
4Gamer:
去年のバージョンでは,攻撃がヒットした瞬間,ほんの僅かですが引っかかりのようなものが感じられました。今回のG-Star 2010バージョンではそれがなくなっており,打撃感が格段によくなりましたね。
潮田氏:
そこは,去年から最も力を入れてきた改善点の一つです。G-Star 2009当時もTERAに対する期待は高かったのですが,実際に遊んだプレイヤーからの反響は,正直なところ,それに見合うものではありませんでした。
韓国では過去3度にわたってクローズドβテストを行い,お客様からの厳しい評価を真摯に受け止めました。当初のスケジュールでは,もっと早く製品版を予定していたのですが,それを全部最初から考え直して,ベースシステムから改善してきたのです。中途半端なモノを,製品として提供するわけにはいきませんから。
4Gamer:
現在のバトルにおける操作の自然さは,従来のターゲット式のMMORPGとほぼ同じレベルにまできていると思います。これは開発現場では相当苦労されたのでは。
潮田氏:
まったくそのとおりです。ですが頑張った甲斐があって,そのあたりの問題は現在はクリアされています。それを実証するために,今回のG-Star 2010では,パーティプレイのコンビネーションに重点を置いた試遊台も用意させていただきました。
個人的に昨年気になったのは,その部分だけでした。あとは,NHNというパブリッシャがTERAに寄せる意気込みから察するに,極端な話,もう見なくても大丈夫だろうなと。実際にプレイして,そのとおりでしたし。
それにしても……,凄まじいプロモーション展開ですね。
潮田氏:
会場内どこにいても,TERAの文字が目に入りますね。私も,まさかここまでやるのかと驚きました(笑) これだけの規模のイベントで,TERAというタイトルを大々的にアピールできたんだなぁという手応えを実感しています。
いよいよ迫る製品版のリリース。日本サービスの状況は?
4Gamer:
大作RPGがひしめくG-Star 2010ですが,そんな中,TERAはサービススケジュールがある程度固まっているタイトルですよね。
潮田氏:
はい。まずは韓国で,正式サービスに向けて現在最終調整中と聞いています。
4Gamer:
それでは日本版のTERAに関してはどうでしょう。ローカライズ作業は順調に進んでいますか?
僕の理想は高いので,ローカライズやカルチャライズしたい部分は,まだまだたくさんあります。また,オンラインゲームの運営にゴールはありませんし,これからずっと走り続けていくという覚悟を決めています。
ですが,最低限の環境は,ほぼ整ってきていると思います。ここでいう“最低限”というのは,TERAのオンラインゲームとしてのチャレンジを形にして,お客様の期待に応えるという意味です。
4Gamer:
つまり,日本サービスに向けての準備は,着々と整いつつあると。
……となると,スケジュールが気になるところですが。
潮田氏:
それに関してですが,現時点ではお話できないんですよ。
4Gamer:
では,季節だけでも(笑)。
潮田氏:
季節についても,ちょっと(笑)。
ですが,期待頂いているお客様のためにも,少しでも早くサービスできるようにがんばります!
4Gamer:
ほぼ完成とおっしゃる割に,スケジュールについて話せないということは,まだまだ大きな作業が残っているのでしょうか?
ローカライズの作業量がとにかく膨大です。
世界設定に関しても,かなり分厚い背景があるんですよ。テキストだけでも桁違いのボリュームがあるのですが,直訳ではその良さを十分に引き出すことができません。そのため本筋を変えない範囲で,日本に認められるような表現に変えるポリシーで,現在ローカライズ作業を進めています。
ちょっとゲームの背景を説明しますと,TERAというタイトル名は“The Exiled Realm of Arborea”の略で,すなわち“幽閉された世界アルボレア”という意味になります。TERAには,遥か昔に2人の太古神によって作られたアルボレアという世界が,神々の戦いの末に衰退してしまうというストーリー背景があります。プレイヤーが操るマイキャラクター達は,そんな世界で冒険を繰り広げていくのですが……。こういったストーリーを,日本版ではより面白く,より分かりやすくしていきます。日本の皆さんに納得してもらえる出来を目指していますので,細部まで手を抜けません。
4Gamer:
音声はフルボイスで行うのですか?
潮田氏:
もちろん,その予定です。
4Gamer:
G-Star 2010の出展バージョンでは,キャラメイク時のカスタマイズ画面がなかったように思います。最終的に,どのような仕様になるのでしょうか。
潮田氏:
顔に関しては,“目,眉,口元,あごの長さ,髪,色,肌の色,ペイントなどのアクセント”があります。また日本向けのテンプレートも追加される予定です。
コミュニティのエキスパートが考えるゲームコミュニティのあり方
そういえば潮田さんは,いつごろから現在の業務に携わるようになったのでしょうか。
潮田氏:
今年の春に,弊社内でTERAプロジェクトを立ち上げました。私はそれからTERAにつきっきりでして,今年の夏には40日間韓国に滞在して,毎日のように開発やNHN Koreaと協議してきました。
4Gamer:
うは,40日ですか。
潮田氏:
TERAはNHNグループ全体にとっても一大プロジェクトで,日本のサービスに関しても,手前味噌ですがそれに相応しいスタッフを集めています。
私個人に関してですが,実はこれまでは,ハンゲームでコミュニティ周りを担当していました。カジュアルゲームやアバター周りが中心ですね。
4Gamer:
おお,それはちょっと意外かもしれませんね。
潮田氏:
これは私の解釈ですが。ゲームに対して詳しければプロデューサーが務まるかというと,決してそれだけではないと思うんです。お客様に喜んでもらえるゲームを届けるための環境を作り,プロジェクトを推進させる。この流れを作り上げていくことが,プロデューサーの役割ではないでしょうか。
潮田さんがこれまでそういった現場を見続けてきた経験が,TERAプロジェクトに抜擢された理由ということですか。
潮田氏:
まぁ,あとは「潮田は丈夫だから,ちょっとやそっとのことではヘコまないだろう」というのもあるかもしれません(笑)。
4Gamer:
すでにコミュニティ周りで,いくつか動きがありますね。開発者blogやTwitterは,今となっては普通に見られますが,先に発表された“TERA LEADER”はなかなか興味深い試みですね。
潮田氏:
“TERA LEADER”とは,一般のお客様の中で,TERAを一緒に盛り上げてくれる人たちのことです。応募者の中から選出する形で,最初は200名から始めていきます。TERA LEADER達には,良いところも悪いところも含め,TERAというタイトルを広めていってほしいと願いますし,もっといえば,我々運営にもフィードバックしてほしいと思っています。
もちろん,それに見合ったお礼もささやかですが用意します。まずは来年TERA LEADER限定で,社内体験会を開催する予定です。
4Gamer:
あまりほかでは見られない展開ですね。これは潮田さんの発案ですか?
潮田氏:
私とマーケティング担当で一緒に考えました。私としては,既存のMMORPGのパブリッシングにとらわれるつもりはまったくなくて,こういったアプローチも,コミュニティ周り出身の私を採用した理由の一つかな,と。
4Gamer:
TERA LEADERの導入によって,どのような効果が期待できますか?
効果といいますか,運営スタッフの顔やスタンスが,お客様にしっかり見える体制を作り上げたいです。これまで多くのオンラインゲームを見てきて強く思うのは,運営とお客様がお互いに“見えていない”ということです。そういった状況で,仮に何かトラブルが起こってしまうと,気持ちがすれ違いやすいと思うんですよ。そうなると,必要以上にどんどん関係が悪化していきます。
逆に,お互いの顔が見えていれば,相手に同じ感情があったとしても,伝え方は大分違ってくると思うんです。ここは,オンラインゲームの運営で大切にすべき点だと思うのですが,業界内を見渡すとおろそかになっているのでは……,と感じることがあります。
4Gamer:
ユーザーと運営との関係がぎくしゃくしてるタイトルって,結構見かけますよね。
潮田氏:
オンラインゲームで一番大事なのは,お客様同士のコミュニティです。しかしそのために必要なのは,運営とお客様との関係です。これを良好にするための第一歩が,今回発表させていただいたTERA LEADERになります。
4Gamer:
なるほど。
潮田氏:
TERA LEADERに関しては社内でも新しい試みなので,最初は200人という少人数で募集します。まずは,この200名のメンバーに対して,運営の顔や姿勢を直接伝えていき,そして次第に,人数を増やして,TERAを大きく盛り上げていきたいと考えております。
4Gamer:
サービス開始後に痛い目を見てから,運営の大切さをアピールするタイトルは多いですが,サービス開始前から実行に移すタイトルというのはなかなか珍しいですね。
潮田氏:
あとは,現時点ではまだ確定していないのですが,毎週金曜日にTERAの情報をストリーミングで放送することを検討しています。既存のオンラインゲームではなかった展開を検討していますので,よいアイデアがあれば,運営までぜひお伝えください。
設立後10年を迎えたハンゲームのTERAにかける期待
ハンゲームというと,2010年はドラゴンネストのインパクトが大きかったです。プロモーションに関しても,正直いって度肝を抜かれました。
潮田氏:
私は弊社に勤めてから5年半くらいになりますが,入社当時はパブリッシングタイトルがあまり強くありませんでした。そこから一歩ずつ経験を重ね,いうならば私達の同志が“ハンゲーム”というブランドを作り上げていきました。そういった努力の集大成が,ドラゴンネストの結果に結びついたのだと思っています。
現在は社内的にも,「次はTERAだ」という気運が高まってきています。私としては,そういった期待にも応えていきたいですし,なにより,ハンゲームの看板に泥を塗るわけにはいきません。今回のTERAプロジェクトでは,弊社がこれまでの10年間で培ってきたノウハウをすべて注ぎ込んでいく所存です。
4Gamer:
ドラゴンネストのターゲット層と比べると,TERAの場合は若干狭まる代わりに,より深く突き刺さるようなイメージでしょうか?
そうかもしれませんが,狭めるつもりはありません。“これまでMMOを触ったことのある”人を網羅するくらいです。
4Gamer:
そうなんですか。ノンターゲッティングということで,若干ハードルが高くなることが懸念されますが,この点に関してはいかがですか?
潮田氏:
以前のTERAはそうでしたが,現在はバランス調整で大分変わってきてます。序盤は練習用のマップになっていますし,極端な表現ですがオートターゲットに近い感覚でプレイすることも可能ですよ。
プレイ中は結構集中しますし,従来のタイトルと比べて疲れやすかったりしませんか?
潮田氏:
人によってそれはあるかもしれませんが,私達としても,1日に10時間も20時間もプレイしてください,とは言いません。たとえ数時間でも,密度の濃い時間を堪能していただければと思っています。
4Gamer:
それをシステム的に制約する方向は検討されていますか?
潮田氏:
いわゆる「疲労度」のシステムですね。今のところ,その予定はありません。
4Gamer:
次に,ゲームパッドへの対応はいかがでしょうか。
試遊台のインストラクションカードには書かれていませんでしたが,QやEを押すと,なんとなくそれっぽいインタフェースが出てきますよね。
潮田氏:
ええ,もちろん進めています。
アクション性の高いタイトルですし,少なくとも日本で展開するにあたって,ゲームパッドへの対応はマストだと考えています。
4Gamer:
それともう一つ,必要なPCスペックに関してはいかがでしょう。最低/推奨スペックは正式に発表されたんでしたっけ。
韓国版での話ですが,推奨動作環境は「CPU:Core 2 DUOシリーズ以上 VGA:GeForce 8800GT以上(GeForce 7600以上が必要)」です。さすがにスペックが低いとは言えませんが,国内の注目タイトルと比べるとワンランク低い環境ですし,クオリティも負けていません。また,サービスが行われる来年の夏ごろには,これくらいのスペックのPCの価格もこなれてくるでしょう。
4Gamer:
それでは最後に,TERAに期待している,いわば「将来のTERA LEADER」に向けて,メッセージをお願いします。
潮田氏:
私は,趣味で自身でもMMORPGをプレイしていますが,その自分の目線でも,TERAのクオリティは日増しに高くなってきています。だんだん製品版に近づきつつあるのを実感していますし,たとえリリースしたとしても,その手を緩めるつもりはまったくありません。
我々運営チームは,「お客様にとって顔が見える運営」というポリシーの下,お客様と一緒にTERAを盛り上げて,そして成功させたいと願っています。TERA LEADERの皆さんの「俺がTERAをよくしてやるんだ!」という気持ちにも,真正面から応えていきます。これからは叱咤激励をよろしくお願いします。
4Gamer:
楽しみにしています。本日はありがとうございました。
(2010年11月20日収録)
「TERA The Exiled Realm of Arborea」公式サイト
- 関連タイトル:
TERA :The Exiled Realm of Arborea
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