インタビュー
ついに実装される「TERA」史上最大のアップデート! 「アルゴンの女王 PART.1」の見どころについて日本版運営プロデューサー鈴木氏にインタビュー
「TERA The Exiled Realm of Arborea」公式サイト
キーワードは「循環」。TERA史上最大規模のアップデート
4Gamer:
本日はよろしくお願いします。さっそくですが,5月23日に実装される大型アップデート,「アルゴンの女王 PART.1」の見どころについて教えてください。
なんといっても,新しいコンテンツが追加されることです。というのも,「戦場」と「政治」(2011年10月19日のアップデート「統べる者,競う闘志」のこと)が追加されてからのTERAでは,インスタンスダンジョンの追加やバランス調整に関するアップデートがほとんどで,完全に新しいコンテンツは導入できていなかったんです。
今回の「アルゴンの女王 PART.1」では,「循環」をキーワードにBluehole Studioが開発を進めました。
4Gamer:
「循環」,とは具体的にどのようなことでしょうか。
鈴木氏:
厳密なテーマではないのですが,さまざまな場所を巡るたびに,新たな目的が生まれるという意味で使っています。
これまでのアップデートは,主に「アイテム」が目的になっていましたが,今回はそれ以外の目標……例えばNPCからの「信用」などを盛り込んでいます。
「アルゴンの女王 PART.1」には,「NPCギルド」というNPCの勢力が登場しますが,彼らから信用を得るために色々な場所を巡ったり,新コンテンツである「暗黒の領域」へ踏み込んだりと,いろいろな場所へ行くたびに新たな目的が生まれ,それがさらに次の目的につながるようなシステム開発が行われています。これを「循環」と表現させてもらっていますが,「アルゴンの女王 PART.1」ではまだまだ「循環」不足ですので,今後も引き続きアップデートを行いたいポイントとなっています。
4Gamer:
韓国ではすでに実装済みのアップデートですが,それを日本に持ってくる際の苦労などはありましたか?
鈴木氏:
TERAはアップデートのスケジュールが非常に確定しづらいんですよね……。今回のアップデートは,本来であればゴールデンウィーク前に実施する予定だったんですが,ギリギリになって2週間ほどの延期を決定しました。当時の韓国バージョンのままでは不具合が多く,そのままアップデートするわけにはいかなかったんです。
4Gamer:
なるほど。ということは日本では,ある程度修正が加えられたバージョンで実装されるわけですね。
鈴木氏:
もちろんです。韓国でのサービスを通じて不具合が洗い出されているので,不具合を解消してから日本のプレイヤーに提供したいという意向がありました。そのため,日本ではアップデートの実装を1か月後ろ倒しにしました。
4Gamer:
かなりギリギリな状態での作業が続いていたわけですね。
鈴木氏:
「アルゴンの女王 PART.1」の実装は日本が一番遅く,あとからサービス開始したはずの北米版やEU版のほうが,先に実装されている状況です。北米版やEU版はゼロからのスタートになるため,今回のアップデートの重要コンテンツである「暗黒の領域」(関連記事)などの,高レベル向けのエンドコンテンツに関しては,問題にはならないんです。
4Gamer:
「暗黒の領域」に不具合があっても,北米版/EU版のプレイヤーは,簡単にそこまでたどり着けないということでしょうか。
鈴木氏:
そのとおりです。すぐに暗黒の領域を開始しなければならない理由がありませんからね。しかし,先にサービスを開始した日本では,多くのプレイヤーが早い段階で,「暗黒の領域」に挑戦できる状況になると思いますし,しっかりと調整できていないと問題になります。そこで,韓国版での不具合修正が必須だったわけです。
4Gamer:
ちなみに,韓国版と日本版の実装のタイムラグは?
通常のタイムラグは2か月半といったところですね。ただ,今回は65万文字分のテキストを翻訳するという物理的な問題もあったので,普段よりも少し時間がかかってしまいました。TERAでは2012年2月以降大きなアップデートがなかったので,「早く実装してほしい」という声を多く頂いていており,その点に関しては申し訳なく思っています。
4Gamer:
多くがレベルキャップに到達している日本のプレイヤーのことを考えると,実装の先延ばしを決断するのも非常につらいところでしょうね。
鈴木氏:
実は,本当にアップデートすること「だけ」を優先するために,「アルゴンの女王 PART.1」のコンテンツの半分だけを先に実装しようかと,開発元と協議したこともありました。しかしそれでは,これまでと同じで,新しいインスタンスダンジョンを攻略したらおしまい……という部分が変わらないため,今回は取りやめました。
4Gamer:
プレイヤー間では,しきりにエンドコンテンツ不足が話題になっていますが,その認識は,日韓双方で認識しているわけですね。
鈴木氏:
もちろんです。エンドコンテンツの定期的な導入は,TERAにとっては非常に優先度の高い課題といえます。
4Gamer:
日本のプレイヤーの消費速度は,韓国と比べて速いほうなんでしょうか。
鈴木氏:
TERAはレベル上げが比較的容易なゲームですから,韓国と比べてそこまでという話ではありません。もっと消費を遅くするために,レベル上げのバランスを単にキツくしただけでは,プレイヤーにストレスが溜まりますし,アクション性が強いゲームなだけに,疲労度も高くなってしまいます。そういった点をBluehole Studioと話し合い,これまで日本版は「レベルアップに必要な経験値を少なくする」という方向性で調整してきました。
4Gamer:
なるほど。それは日本版のプレイヤーにとってはありがたい方向性ですが,それゆえにエンドコンテンツ不足も目立っている……ということもありそうですね。
鈴木氏:
それはありますね。ただし今回の「アルゴンの女王 PART.1」に関しては,韓国でのサービス状況を鑑みて,レベル59〜60まではレベルアップに必要な経験値を多くすることにしました。韓国版では多くのプレイヤーが,関連クエストがすべて終わらないうちに60レベルに到達してしまっているのですが,日本版ではクエストをすべて終わらせて,フィールドで少し狩りをするくらいでレベル60になるようなバランスを考えています。
ウォーリアーが激変する「ストックシステム」
そして個性豊かな「装飾アクセサリ」の追加
今回のアップデートでは,とくにウォーリアーが劇的に変化しています。今までのTERAでは,「全員異なった職業でパーティを組む」という,いわゆる「職被り×」というセオリーがありましたが,「ストックシステム」(関連記事)は,ウォーリアー同士なら「ストック」を共有できるんですよね。これは大規模戦争などを想定したシステムなんですか?
鈴木氏:
そういうわけではないのですが,確かにパーティ構成に何らかの変化は出せそうな仕様変更なので,反響を楽しみにしています。極端な話ですが,全員ウォーリアーのパーティなら,素早く「ストック」を溜めて一気に解放することで,敵をサクサク倒せるかもしれません。装備が被ってしまうという問題は変わらないですけど……。
4Gamer:
ウォーリアーを使っている人にとっては楽しみなアップデートとなりそうですね。
鈴木氏:
ウォーリアーはこれまでの経緯的にも,変化が多いクラスなので,楽しんでいただけると嬉しいですね。ウォーリアー,バーサーカー,エレメンタリストに関しては,プレイヤーから色々な意見をいただくことの多いクラスとなっているので,Bluehole Studioでも,いわゆる「不遇職」が生まれないバランスの実現を目指しています。
4Gamer:
分かりました。次に,今回のアップデートで大量に追加される,「装飾アクセサリ」(関連記事)について教えてください。
装飾アクセサリは,製作や採集のレコード達成報酬のほか,デイリークエストをこなしていくことでも入手できます。デイリークエストとは,各NPCギルド勢力から毎日依頼を受けることができるもので,これをこなすことで「信用ポイント」がもらえます。そして信用ポイントと引き替えでもらえるアイテムの中に,装飾アクセサリや,乗り物の「黒豹」などの入手に必要なアイテムがあるという感じです。
信用ポイントは,狩りをしたりクエストをクリアしたりすることで増えていきます。信用段階を高めることで,受けられるデイリークエストの種類が増えたり,NPCに話しかけたときの反応が変わったりもします。
別の手段としては,製作や採取のスキルをマックスにした報酬として,装飾アクセサリを入手することもできますよ。
4Gamer:
信用段階を高めるためには,各勢力との付き合い方が重要になると思うんですが,特定の勢力と仲良くしたら,別の勢力とは険悪になってしまったりするんですか?
鈴木氏:
いえ,プレイヤーはどの勢力とも仲良くできます。ある勢力の信用段階を高めたら,別の勢力の信用段階が下がるということはありません。信用ポイントで入手できるアイテムは勢力によって違うので,ぜひさまざまなクエストを受けてほしいですね。
4Gamer:
装飾アクセサリを持っていると,ゲームが有利に展開できるようなことはありますか? 例えば,能力がアップするようなものですとか。
鈴木氏:
すぐにといった予定はありませんね。先々の話はまだ未定なのですが,現在のところ装飾アクセサリは,外見のみが変化するアバターアイテムとなります。
「暗黒の領域」攻略サポート
利便性の高い新システム「自動パーティマッチング」
4Gamer:
「アルゴンの女王 PART.1」で追加される新コンテンツ,「暗黒の領域」についてもお聞かせください。
暗黒の領域とは,アルゴンとの戦いの最前線である「カノビア戦線」「アルゴネア」「カルゴネア」で目撃されている怪現象です。突如として黒い空間が広がり,その中に奇怪で強力なモンスターが出現します。プレイヤー達がここでアルゴンと戦い,ある程度の戦果をあげると封じることができますが,放置しておくと暗黒の領域が拡大したりもします。
4Gamer:
放置することによる直接的な悪影響はあるんですか?
鈴木氏:
実は現在のところ悪影響はなく,しばらくすると暗黒の領域は収束していきます。ストーリー的には,「突如現れた暗黒の領域へ調査隊を送り込む」という段階なので,仮に悪影響が発生するにしても,「アルゴンの女王 PART.1」以降のアップデートで発生していくことになるかと思います。
4Gamer:
今後のアップデート次第では,ゲーム世界に大きな影響を与えるようになるかもしれないわけですか。
鈴木氏:
暗黒の領域から出てきたモンスターが街に侵攻してくる……というシーンが「アルゴンの女王 PART.1」のムービーにありますが,今後ゲームでも同様に街が襲われ,NPCがいなくなるなどの悪影響が出てくるのかもしれないですね。
ただ現時点でも,暗黒の領域を通じてしか入手できないアイテムが存在するので,ここで戦うことのメリットはあります。プレイヤーの多い時間帯に暗黒の領域が出現するように調整する予定ですが,モンスターの強さや出現頻度などは,参加人数に応じて自動的に調整されるので,参加人数が多くても少なくても楽しんいただけると思います。
4Gamer:
暗黒の領域には,「自動パーティマッチング」という新システムも実装されているそうですね。
鈴木氏:
はい。暗黒の領域が発生した際に,必要レベルなどの条件を満たして領域内に侵入すると,自動パーティマッチングに参加するかどうかを確認されます。これを承諾すると,条件にあったパーティに自動的に編入される仕組みです。
また,暗黒の領域内にいるプレイヤーは,Publicクエストを自動で受注するので,イベント的な感覚で楽しめるのではないかと。「襲撃系イベント」がオート化されているような感じでしょうか。
4Gamer:
自動パーティマッチングは,利便性の高さもさることながら,新しい人間関係の構築にも効果がありそうですね。
鈴木氏:
そうですね。高レベル帯では,盾役のランサーがなかなか見つからず,その結果,ゲーム内の人間関係が固定化しやすい状況になっています。もちろん仲間内でプレイするのも楽しいんですが,暗黒の領域はお祭り感覚で楽しめるコンテンツでもあるので,ぜひ一期一会の冒険を楽しんでほしいです。
不正利用者対策やプレイヤーの声への対応に注力
最大規模のアップデートでTERAを盛り上げていきたい
4Gamer:
今回の自動パーティマッチング機能とは直接的な関係はないのですが,TERAには以前から,サーバー間パーティマッチング機能が実装されていますよね。その実施直後から,海外からの接続が増えていると感じられるのですが,実際のところはどうなのでしょうか。
それについてはプレイヤーからもご指摘をいただいており,おっしゃるとおりの状況となっています。2012年1月後半の時点では,BOT(自動で狩りを行う不正プログラム)が減少した非常にいい状態にあり,BOTが投入されても,素早い対処が可能な状態でした。このタイミングでサーバー間パーティマッチング機能が実装されたため,手動操作での不正利用者の増加につながってしまったんです。
4Gamer:
パーティが組みやすく,自分が戦わなくても他の人が勝手にモンスターを倒してくれるというところに,不正利用者が目を付けたわけですか。
鈴木氏:
ええ。しかも人間が操作している場合,取り締まりがBOTよりも非常に難しいんです。ログなどを追っても明確な証拠が見つけにくく,プレイヤーからもおしかりをいただいているというのが現状です。
ですが,こちらも新規の取締方法の導入を進めていて,実際に狩りをしている末端の不正利用者だけを制裁するに留まらず,その元締めを叩く手段も検討しています。
4Gamer:
なるほど,ゲーム内アイテム/通貨の流れなども徹底的にチェックするわけですね。
鈴木氏:
コストはかかりますが,不正利用者に制裁を加えるためには必要です。TERAは運営チームの姿が見えにくい状態になってしまっているので,「制裁が行われていないんじゃないか」「運営と不正利用者がつながっているんじゃないか」といった不安を抱いているプレイヤーもいるかもしれませんが,もちろんそんなことは一切ありません。
不正利用者の取り締まりに関しては,開発元のBluehole Studioもかなり気にしていて,「お客様のストレスが溜まっているじゃないか」「RMT相場が上がっているじゃないか」と,頻繁に連絡が飛んできますね。
4Gamer:
せっかくなので,お聞きしたいのですが,プレイヤーからの声としてはどのようなものが目立ちますか?
鈴木氏:
「韓国に入っている良いアップデートが日本には来ていない」という声をよくいただきます。例えば「1等級と呼ばれている装備のドロップ率2倍」であったり,2011年12月のアップデートの事前告知で記載されていた「ランサーとウォーリアーのヘイト上昇」などですね。
まず「1等級装備のドロップ率2倍」ですが,これは日本版を制作するタイミングの問題で,今まで実装できていなかったというのが実情です。「アルゴンの女王 PART.1」のタイミングで実装しますが,遅れてしまったのは確かです。ただ,韓国での調整内容でとくに良いものについては,できるだけ良い形で早めに日本に持って来たいと考えているので,交渉や調整を継続して行っています。
4Gamer:
その成果として分かりやすい具体例はありますか?
先日韓国で実装され反響のあった,レベル58以下装備のデザイン抽出のアップデートを,5月23日時点で導入しています。これは本来「アルゴンの女王 PART.1」で組み込む予定のなかった要素で,「1等級装備のドロップ率2倍」をお待たせした代わりと言っては何ですが,どうしても早めにお届けしたい内容でしたので,Bluehole Studioに無理を承知でお願いして,今回の実装に含めていただきました。また,今後日本向けのアイテムを作ってもらうなどの調整を行っています。
次に「ランサーとウォーリアーのヘイト上昇」ですが,この仕様は,実は日本版も韓国版も同じ状態になっています。
4Gamer:
なんと。てっきり,何らかの理由により日本版への実装を見送っていたのかと思っていました。
鈴木氏:
告知の仕方にちょっと問題があったんですよね……。韓国版のアップデート仕様書や告知には,当初ヘイト上昇に関する項目が存在しており,これを元に日本でも,事前告知をさせていただいたんです。この項目は,アップデート1週間前の仕様書までは存在していたんですが,事前告知後に届いた新たな仕様書からは,削られていました。
4Gamer:
なぜその仕様は削られてしまったんでしょうか。
鈴木氏:
Bluehole Studioに問い合わせたところ,「バランス調整のため」という返答がありました。また,ヘイト上昇スキルの状態は,調整を何度か繰り返した後の韓国版と,当時の時点で同じバランスであるとの回答でした。
そこで我々は,告知から該当の項目を削除させていただいたんですが,韓国版では告知が出たままだったので,韓国版のみにヘイト上昇の仕様が実装されている,という誤解を生んでしまうことになりました。
4Gamer:
韓国の情報を追っている熱心なプレイヤーほど,誤解しやすい状況だったわけですか。
鈴木氏:
両国のバージョンを綿密にテストするレベルで比べてみないと,まず分からない仕様だったことも,誤解が生まれた理由の一つになっています。とはいえ,説明不足の状態を作り出してしまったことについては,我々も申し訳なく思っています。
4Gamer:
なるほど,そういう事情があったんですね……。それでは最後に,「アルゴンの女王 PART.1」を楽しみにしているプレイヤーに,メッセージをお願いします。
鈴木氏:
「アルゴンの女王 PART.1」は,エンドコンテンツ不足という,サービス開始当初から存在していた根本的な問題に切り込み,これを解消すべく取り組んだものの第1弾になります。一度TERAから離れてしまったという人も,アップデートに合わせてカムバックキャンペーンを実施しますので,ぜひもう一度TERAを遊んでみてください。
また,これを機会にTERAを遊んでみようと考えている人にも,気軽に挑戦してもらえればと思います。TERAはレベルアップのペースが早く,先行しているプレイヤーにも十分追いつくことが可能です。ギルドに所属すれば,高レベルのベテランプレイヤーからいろいろ教えてもらえると思いますので,ぜひ遊んでみてください。
4Gamer:
本日はありがとうございました。
「TERA The Exiled Realm of Arborea」公式サイト
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