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  • セガ
  • 発売日:2008/04/24
  • 価格:7980円(税込)
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見た目に反して骨太なんです! シミュレーションRPGとアクションゲームを融合させた意欲作「戦場のヴァルキュリア」
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印刷2008/05/15 19:26

連載

見た目に反して骨太なんです! シミュレーションRPGとアクションゲームを融合させた意欲作「戦場のヴァルキュリア」


» 3月4日の更新で定期連載から不定期連載へとシフトした,「極私的コンシューマゲームセレクション」を久しぶりに掲載。PCゲーム漬けの普段の仕事から離れたらコンシューマでゲーム漬けという,充実したゴールデンウィークを過ごしたTAITAIが,セガの「戦場のヴァルキュリア」を紹介する。



シミュレーションRPG+アクション+萌え=戦場のヴァルキュリア?


画像集#002のサムネイル/見た目に反して骨太なんです! シミュレーションRPGとアクションゲームを融合させた意欲作「戦場のヴァルキュリア」
 編集部内では,「あっという間に終わった」という嘆きの声ばかりが聞こえた今年のゴールデンウィーク。読者の皆さんは,どんなことをして過ごしただろうか? 4Gamerの読者ならば,きっと「ゲームをして過ごした!」という人も多いはず。「人生是ゲーム」をスローガンに掲げている4Gamer編集部の部員たる筆者も,当然のようにゲーム(だけ)をしていた。……ええもう,読者の皆さんも断じて女の子とデートなんてしてないと信じているというか。
 というわけで,久しぶりの更新となる極私的コンシューマゲームセレクションでは,そんなゴールデンウィークを潰して遊んだゲーム「戦場のヴァルキュリア」を紹介したい。本作は,セガが満を持して発売したPLAYSTATION 3用タイトルの最新作。あの「サクラ大戦」のスタッフが開発を手がけ,音楽を「タクティクスオウガ」や「ファイナルファンタジータクティクス」などで有名な崎元仁氏が担当するなど,非常に“大作感”に溢れる作風が大きな特徴。また,水彩画風のグラフィックスを実現する描画エンジン「CANVAS」や,シミュレーションRPGのシステムをベースに3Dアクション要素を融合させたゲームシステム「BLiTZ」など,本作は,数々の新しい試みに挑戦したチャレンジャブルなタイトルでもある。

描画エンジン「CANVAS」で表現される水彩画風のグラフィックスは,これまでのタイトルと比較しても群を抜いたクオリティ。一言でいえば,イラストをそのまま3D化してしまった,ということになるのだが,グリグリと動かしてどんな角度から眺めても違和感がない(ポリゴンっぽい粗さがない)のが凄い。写実的なグラフィックスばかりが目立つ近年のゲームだが,本作のグラフィックスも一つの頂点ではないだろうか
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 本作の舞台となるのは,現実世界に似た架空世界のヨーロッパ大陸。巨大なエネルギー資源である「ラグナイト」をめぐる,「連邦」と「帝国」という二つの巨大勢力の対立,そしてその狭間で争いに巻き込まれていく小国「ガリア公国」を背景に,政治,陰謀,戦争,人種差別などなど,重々しいテーマが描かれていく。そんな中でプレイヤーは,ガリアに生を受けた青年「ウェルキン」となり,ガリア公国義勇軍第7小隊を指揮して,亡国の危機に瀕している故郷ガリアを救う戦いへと身を投じることになる。
 ゲームシステムは,基本的にはシミュレーションRPGのそれを踏襲。ストーリーパートとバトルパートを繰り返しながら,物語を進めていく。ただ上記のように,バトルパートはアクションゲーム的な要素を融合させた独特のシステムで表現されており,またそれが非常によい案配に練り込まれている点が大きなポイント。グラフィックスも,現世代の中でも最高峰といえるレベルであり,音楽も崎元仁氏が担当している時点で言わずもがな。そのほか,細かい部分からして「丁寧な作り込み」を感じさせる出来映えには,ゲームを見る目が肥えている筆者をして,正直感心させられたほどだ。

世界観は,第二次世界大戦時の世相に近い。ただ,飛行機が戦場に登場していないあたり,戦術的には第一次大戦のそれに近いのかも?
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 ……告白すると,購入当初は実はそれほど本作に期待をしていなかった。というよりも,どんなゲームかすら知らずに買ったという経緯がある。ネットやPlayStation Storeなどで公開されていたプレイ動画を見て,なんとなく「なんかアクションっぽい要素があるらしい」という程度の知識はあったが,逆に言うと,それ以上の事前情報は持っていなかった。……が,プレイしてみると,これが思いの外熱中度が高く,気がつけば,ゴールデンウィークをほぼ本作のプレイのみで潰すハメに。「この面白さはぜひ伝えねば」というわけで,今こうして,レビュー執筆に至るというわけだ。

なんで戦場に女の子が!とか野暮なことは言わないのが漢。まぁ可愛い女の子がいた方が華やかだし……ねぇ? ちなみにキャラクターデザインは,同人誌界ではその名を知られた本庄雷太氏が担当
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ゲームにおける「物語の語り方」の可能性を示す? 独特のブックモード・システム


伝記本を模したインタフェースが特徴的な「ブックモード」。本をめくるようにして物語を進めていく
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 編集部の某氏が呟いた「これってFPSじゃないんですか?」という発言でもわかるように,本作は,ゲーム画面を見ただけではなかなか伝わりにくいゲームシステムを実装している。まぁ内容をよく知らずに買ってしまった筆者もまったく人のことはいえないのだが,ともあれ,本作のゲームシステムを説明していこう。

 さて,先ほども軽くふれたが,本作の大枠のシステム(ジャンルとしてのシステム)は,シミュレーションRPGのそれをベースにしている。メインとなるストーリーは,「ブックモード」という伝記本を模したインタフェースを使って描かれており,プレイヤーは,まるで本をめくっていような感覚で,物語を読み進めていけるようになっている。通常,シミュレーションRPGというと,「イベント→戦闘→イベント→戦闘……」を繰り返していくパターンが多いわけだが,本作では,そのイベント部分を“細かくコマ割りしている”点がユニークかつ斬新な部分。要するに,たとえば全体としては一章毎に10分程度のイベントシーンがあるとしたら,それが2分×5個のイベントとして用意されているといえば伝わるだろうか。

イベントシーンを含め,登場するキャラクターの会話はフルボイス。……というか,主要キャラじゃないサブキャラ(兵士)もすべてフルボイスなのが地味に凄いかも
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従軍記者エレットの発行する壁新聞を読むことで,メインストーリーでは語られない世界情勢や戦局全体の様子などを知ることができる
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 当初は,「これは,細かく分ける意味があるのだろうか?」といぶかしく思ったこの仕様なのだが,少しプレイしてみて,細かく分けられていることが,逆にちょうどよいアクセントになっているとすぐに気が付かされた次第。そもそも,よくよく考えれば,仮に10分ものイベントをただ延々と見させられたら,それはきっと苦痛だったに違いないだろう。イベントを「見させられる」ものではなく,自分の意志(操作)で見ていくもの,というちょっとした心持ちの違いを演出している意味で,これは案外重要なシステムなのではないか。事実,筆者は本作のイベントシーンを鬱陶しく感じたことはない。……これって重要なことですよね?
 また「本」という体裁を採用することによって,過去のイベントシーンをいつでも“読み返せる”のも,このブックモードシステムの大きな利点だといえるだろう。これによって,「あれはなんだったっけ」ということもなくなるし,また物語の終盤にあえて序盤のシーンを見返すことによって,「ああ,この描写はそういう意味だったのか」などと,ストーリーの理解をより深めることも可能になっている。“物語を語る手法”という意味においては,これも,地味ながら非常に画期的な仕組みなのではないだろうか。グラフィックスや戦闘システムにのみ注目が集まりがちな本作ではあるが,こういった“物語/世界の見せ方”の工夫も,もっと評価されていい箇所のような気がするのだ。

ブックモードには,メインの物語が描かれる「ストーリー・パート」のほかに,登場人物や世界観の解説が個別用意されている「人物総覧」「兵器総覧」「博物総覧」などのモードも用意されている。要するに,本作はシステム的にストーリーや世界観を包括的に楽しめるような構造になっているのだ
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「訓練開発」パートでは,プレイヤーが指揮する第7小隊の編成や武器の強化などが行える。ちなみにユニット毎のレベルという概念はなく,レベルは兵科単位で共通のものとなっている点もユニークだ。お気に入りキャラを最強に……というような遊び方はできないが,「永遠の2軍キャラ」が出来ないのは有り難い
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粗はあれど,それを補って余りある魅力を持つ戦闘システム「BLiTZ」


FPSのようにヘッドショットを狙うことも可能で,敵の頭部に上手く銃弾を当てられれば,より大きなダメージを与えられる
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 本作のシステムの中でも,とくにユニークなのが戦闘パートだろう。「BLiTZ(Battle of Live Tactical Zone systems)」と呼ばれる独特の戦闘システムは,本作の最大のウリの一つ。戦闘パートは,大きく「コマンドモード」と「アクションモード」の二つに分けられており,それぞれを使い分けながらゲームを進めていく。コマンドモードでは,戦場を真上から見た俯瞰視点の地図を使いながら,行動させるユニットの選択や援軍の要請,あるいは「オーダー」と呼ばれる特殊命令を行っていく形。コマンドモードには,コマンドポイント(CP)という概念があり,プレイヤーは,このCPを使って上記の各種アクションを実行していくわけだ。
 コマンドモードでユニットを選択すると,CPを消費してアクションモードへと移行する。アクションモードは,キャラクターを後方から見た3D視点のアクションゲーム風となっており,選択されたユニットはAP(アクションポイント)の分だけ移動を行えるというスタイルだ。簡素にいってしまえば,シミュレーションRPGにおけるユニットの移動部分をアクションゲームにしてみた,というようなシステムなのだが,これがなかなかよく出来ており,オーソドックスなストラテジーゲームでは味わえない独特の面白さがある。

ユニットの種類は,戦車,偵察兵,突撃兵,対戦車兵,支援兵,狙撃兵の6種類。それぞれに癖があるので,使い分けが重要となるのだ
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 例えば,背後に回り込んで敵を攻撃! という行動をするにしても,敵に見つからないように遮蔽物を利用したり,あるいは草むらの中をほふく前進したりする必要があるなど,アクションゲーム的なスリリングさが絶妙なバランスで盛り込まれているのだ。またアクションモード中に敵の視界(迎撃範囲)に入ると,攻撃を受けてしまうため,なおのこと地形や敵の攻撃範囲を考えながら行動する必要が出てくる。うかつに飛び出せば,敵の十字砲火を浴びてやられてしまうというわけだ。
 またユニットには向きの概念もあり,例えば,囮ユニットが銃撃を加えて敵の注意をそらし,もう一人のユニットがそのうしろ側から近づく……などいった戦法も可能。敵の視界や向き,それに地形など諸々の要素を考えなけばならないパズル的な面白さは,まさにストラテジーゲームのそれだといえよう。
 ……え? ここまで読んでも本作がどんなゲームだかイマイチよくわからないって? ええい! だったら百聞は一見にしかず! 下にあるプレイムービーを見てみてほしい。本作のゲームの流れがよく掴めるはずだ。




失敗したとき,プレイヤーは何があれば納得できるか。本作で感じたほぼ唯一の不満点?とは


命中率は,照準サークルの大小で表現される。一見,問題なく当たりそうに思えるのだが,このくらいの距離だと案外外してしまうことが多い
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 と,ここまではほぼベタ褒めしまくりな今回のレビューなのだが,本作に不満要素がないわけでもない。中でももっとも不満を感じたのが,攻撃時の命中率の問題だ。簡単に言うと,本作では,結構な確率で「攻撃が当たらないことがある」というだけの話。攻撃判定に乱数を用いるのはストラテジーゲームとしては「当たり前の流儀」なわけだが,ただこれが少しくせ者ではないか?という印象なのである。
 具体的に説明すると,本作では,ユニットの攻撃時に命中率が照準サークルの大小で表現される。円が大きければそれだけ集弾率が低いという意味であり,広いレティクルの中のどこかに弾が飛んでいくわけだ。プレイヤーは,照準モードで敵をレティクルの中に納めて,攻撃決定を実行。当たるか当たらないかは,その後の攻撃判定次第というわけである。そして狙撃兵や対戦車兵など,攻撃が単発のユニットでは,この攻撃判定が鬼門になる。要するに,見た目以上に,また想像以上にそれらはよく攻撃を外すのである。
 プレイしたことがない人には,それこそ「それがなんなの?」という話かもしれないが,例えるなら,FPSでヘッドショットを決めた! という手応えを感じた(画面上では当たってる)のにラグで当たり判定がありませんでしたとか,そういう感覚に近いというか。もっと極端にいえば,スーパーマリオのジャンプの高さがランダムになっていて,タイミングばっちりでジャンプしたのに,運悪く低いジャンプが発動して穴に落ちて死んでしまったとか,そういう類の理不尽さを感じるのである。

左が初期の頃の狙撃兵のレティクルで,右側が後半のそれ。後半になれば武器が強化されて命中率は大分高くなるが,今度は敵が回避行動(ランダム)を頻発するように
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 勘違いしないでほしいが,本作のゲームバランスが悪いという話をしているのではない。別に少し攻撃を外したところでクリアが不可能になるというわけではないし,バランスという意味でいえば,本作のそれは非常に練り込まれているといってよい。ただ,攻撃を外したときになんともいえぬ不快感があった,という事実を述べているのである。普通のストラテジーゲームでは,攻撃をミスってもこのような不快感を感じることはあまりないだけに,筆者自身,本記事で指摘すべきどうかを迷ったのも事実である。
 なぜ不快感を感じたのか? 少し考えてみて,「アクションゲームと乱数の相性の悪さ」に原因があるのではないか? という結論に至った。要するに,さっき話したスーパーマリオの例のような話だ。アクションゲームでは,基本的にプレイヤーの操作に対して乱数を用いることがないのは当たり前だ。FPSなどでは,基本的には狙った箇所に弾が飛ぶ(そのまま当たる),プレイヤーの正しい操作がすなわち高評価につながるようなゲームシステムをベースとしている。だからこそ,練習して上手くなることに面白みを見いだせるわけだ。
 翻って本作では,その操作に対する結果に乱数を用いている。要するに「正しい操作をしたのに,結果が伴わないことがある」という,アクションゲーム(アクションパートに限るが)としてはやや矛盾を孕んだシステムになっているのではないか。つまりは,アクションゲームの常識とストラテジーゲームの常識,この二つがバッティングしてしまっている印象なのだ。筆者が感じたなんともいえぬ感覚は,そういった部分に起因しているように思えてならない。

BLiTZのシステム自体は非常に秀逸だ。この独特の面白さは,本作以外では味わえない感覚なのは間違いない
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 繰り返すが,これは本作のゲームバランスが悪いという話ではないし,この点をもって「BLiTZは失敗だった」などと言うつもりは毛頭ない。むしろ,BLiTZが切り開いた独特の面白さは,これまでのシミュレーションRPGの常識を覆すものだ。個人的には,是非ともより洗練された次回作を遊んでみたいとさえ感じる。新しい試みで,ここまで綺麗にまとめあげた開発スタッフの手腕が賞賛に値することは確かなのだ。ただ,新しい試みに挑戦しただけあって,いくつか課題もありそうだという,それだけの話なのである。

 ともあれ,この「戦場のヴァルキュリア」がシミュレーションRPGの新しいあり方を提示したのは確かだし,本作が国産ゲームの最高峰の一つであるのは間違いない。すでにPLAYSTATION 3を持っているという人なら,買ってみて損をしたと思うことはないはずだ。PLAYSTATION 3をまだ持ってないという人も,ぜひ本作とセットの購入を検討してみてほしいところ。6月には「METAL GEAR SOLID 4」の発売も控えてることだし,そろそろPLAYSTATION 3も買いどき……なのかもしれない。


「戦場のヴァルキュリア」公式サイトはこちら



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■■TAITAI(4Gamer編集部)■■
4Gamer最古参スタッフの一人。面白そうなコンシューマゲーム機のタイトルは「とりあえず買う」といういいお客さんだが,買った数が多くてプレイが追いつくはずもなく,あれもこれも未プレイという積みゲーマーだったりする。


戦場のヴァルキュリア
対応機種:PLAYSTATION 3
メーカー:セガ
発売日:2008年4月24日
価格:7980円/限定版9980円(ともに税込)
CEROレーティング:B(12歳以上対象)
公式サイト:http://valkyria.jp/

※映像,その他権利は株式会社セガに帰属します。
  • 関連タイトル:

    戦場のヴァルキュリア

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