レビュー
指輪物語ファンなら見逃せないアクションゲーム
The Lord of the Rings: Conquest
» 「The Lord of the Rings: Conquest」はタイトルどおり,「ロード・オブ・ザ・リング」の世界をベースにした三人称視点のアクションゲームだ。映画で描かれたさまざまな戦いに,光の軍勢としても,また悪の軍団としても参加できるというファン期待の作品。いつかサウロンの手下になって,わけしり顔のガンダルフを叩きのめしてやりたいと牙を研いでいた大陸新秩序氏が,そんな本作に挑戦したのである。
ガンダルフやサウロンになって大暴れ!
The Lord of the Rings: Conquest
1月22日に,エレクトロニック・アーツは「The Lord of the Rings: Conquest」(以下,LotRC)のPC版を,EA Expressブランドで発売した。LotRCは,「指輪物語」の映画版「ロード・オブ・ザ・リング」三部作をベースにした,三人称視点のアクションゲームだ。開発はPandemic Studiosで,本作は同社の人気作であるスター・ウォーズ バトルフロントシリーズとよく似たゲームシステムを採用している。
キャンペーンの白眉は闇の側にあり!
悪逆の限りを尽くして旅の仲間を討伐せよ!
プレイヤーは光の軍勢として戦うだけでなく,原作および映画版で敵として描かれた,冥王サウロンが率いる闇の軍団に扮することもできる。
シングルプレイのキャンペーンモードは,まず原作/映画版の流れに沿って光の軍勢サイドの「The War of the Ring」からスタートする。マップは全部で八つあり,逐次「拠点を一定時間守れ」「特定の敵を倒せ」「どこそこまで移動しろ」といったような指示が出る。どの方向に移動すればいいかについても,おおむね誘導されるので,それに従って進んでいくと,たいてい最後にボスが登場するので討伐! まあ,必ずしも最後がボス討伐とは限らないのだが,出された指示をすべてクリアできれば,次のマップへのフラグが立つという段取りだ。
基本的にプレイヤーは一介の兵士という設定だが,要所で「ヒーロー」になれる場面もある。すなわちファラミアに扮してフロドを護衛したり,ガンダルフとしてサルマンと対決したり,アラゴルンとなってナズグル相手に大立ち回りを演じたりと,原作の名シーンを追体験できるというわけだ。
さて光の軍勢のストーリーを一通り堪能すると,闇の軍団サイドのキャンペーン「The Rise of Sauron」が選択できるようになる。基本的なゲーム進行は同じだが,ストーリー上,フロド以下,あの旅の仲間達を次々に討伐していくことになるのだ。
これが思いのほか楽しく,ほかにも裂け谷でエルフの遺産を破壊したり,ホビット庄に火を放ったりと,やりたい放題。原作/映画の逆を行く展開に「ひょっとしてオレは今,中つ国の希望を次々に断ち切ってるのか? そうなのか?」と,なんともいえない妙な高揚感に包まれていくのである。
こちらのキャンペーンでも,場面によってバルログやサウロンなどに扮することになるが,一介のオークやゴブリンとしてガンダルフやレゴラスにとどめを刺したときのほうが,なんとなく喜びが大きいのは気のせいだろうか?
なおチュートリアルでは,当然,操作方法やゲームの進行を実際にプレイしながら確認できるのだが,なんと最後に控えているボスがサウロン。最初にプレイしたときは「えっ,いきなりサウロン倒しちゃっていいの? 本編のボスじゃないの?」と思ったが,実はチュートリアルの舞台はゲーム本編より前という設定。物語の発端である「一つの指輪」をめぐるイシルドゥアとサウロンの戦いを描いていたというわけなのだ。さすが世界的に有名な版権モノだけに,そのあたりは抜かりないのである。
若干の難はあるものの「指輪物語」の
戦闘を追体験できる内容は優秀
本作の操作はキーボードのW/A/S/Dキーで移動,Spaceバーでジャンプ,マウスカーソルを合わせてエイミングと,一般的なFPS/TPSに近い。さらにマウスの右/マウスホイール/左クリックで各種基本攻撃,そこにShiftキーとCtrlキーを組み合わせるとスペシャルアタックなどを発動できる。
そのほか梯子を上るなどの行動はEキー,投擲などはFキーと,使用するキーが全般に少なく,ほかのタイトルともよく似た配置なので,非常に馴染みやすいといえるだろう。なおゲームパッドにも対応しており,基本的にXbox 360版と同じ操作ができるようだ。ちなみに筆者はこの記事を書くにあたって,ゲームパッドでプレイしている。
プレイヤーが選択可能なクラスは,ウォーリアー/スカウト/アーチャー/メイジの4種類で,光/闇どちらも共通だ。
ウォーリアーは,剣を使った近接攻撃を得意とし,強力なコンボ攻撃のほか,特殊攻撃として「Fire Attack」を使う。また敵の攻撃をガードできるだけでなく,敵のガードを崩すことも可能だ。
スカウトは「Cloak」を駆使した隠密行動を特徴とする。隠密状態のまま背後から襲う「Back Stab」が決まれば,敵を一撃で葬れるのだ。
アーチャーは遠隔攻撃を基本とし,ノックダウン効果のある「Fire Arrow」,鈍足効果のある「Poison Arrow」,複数の敵に当たる「Multi Arrow」の3種類の矢を駆使して戦う。またズーム機能を使ってヘッドショットを決めれば大ダメージも期待できる。
最後のメイジも遠隔攻撃クラスだ。メインの攻撃である「Lightning」は,いわゆる“溜め”が可能で,最大まで溜めるとノックダウン効果が付与する。遠距離範囲攻撃が可能な「Fire Wall」,自分の周囲の敵を吹き飛ばす「Shackwave」,さらには自分/味方の体力回復もできる。
ゲーム中は,マップに用意された拠点でクラスを切り替えられる。ウォーリアーでブンブン剣を振り回して無双! スカウトでボスを暗殺! アーチャーで緻密な狙撃! と,それぞれ得意攻撃が決まったときは爽快。
そのように,局面に応じて随時クラスを替え,さまざまな戦いが楽しめるのも本作の醍醐味の一つ……といいたいところだが,筆者の正直な感想では,メイジが頭一つ抜きん出て便利な印象だ。メイジは遠隔攻撃はもちろん,杖による近接攻撃もそこそこ強力で,さらに自己回復も可能なため,たいていの局面に対応できてしまう。ほかのクラスを喰ってしまっている感は否めず,クラスバランスにやや難ありといえる。
また気になったのは,壁際で戦う場合のカメラの動作。壁際ではカメラが一人称視点に近くなってしまい,攻撃されたときに自分がどういう状態に陥っているのか把握できないことがあるのだ。どうも動かないと思ったら,ノックダウンしていたというケースもある。
そもそも壁際に追い詰められるような立ち回りをするな,というのももっともな話ではあるが,狭い通路を近接系のウォーリアーやスカウトで抜けようとすると,どうしても避けられない。これも,筆者が遠隔攻撃を主とするメイジを使ってしまいがちとなった一因だ。
なお上記のとおり,ヒーローとして原作の登場人物を選択できる場合がある。例えばアラゴルンはウォーリアーを基本としながらも,多段ヒットの遠隔攻撃が使えたり,ガンダルフやサルマンはただでさえ強いメイジがさらに強化されていたりと,ヒーローはより強力な存在で,いささか反則みたいな強さだ。本作ではメイジが万能選手ということもあって絶対とはいい切れないのだが,通常はヒーローに扮したほうがその後の展開が有利になるので,選択肢が出たらぜひ彼らの圧倒的パワーを体験していただきたいところ。
またマップによってはエントやトロルに扮したり,馬やオリファント(象)に乗ったりして敵を蹴散らすシーンも出てくる。それぞれ操作感が独特で若干扱いにくい面もあるが,敵を見下ろしながら潰していく爽快感は大きい。
簡単操作で「あの戦い」に参加できる
ファンならずともオススメの一本
本作はオンラインマルチプレイにも対応しており,最大16人での対戦モードを楽める。対戦モードは,拠点を占領する「Conquest」,いわゆるキャプチャー・ザ・フラッグである「Capture the Ring」,キル数を競う「Team Deathmatch」と「Hero Team Deathmatch」。いずれもマルチプレイ対戦としては一般的なものばかりで迷うところはないが,裏を返せば本作ならでは,指輪物語ならではという部分がキャラクター以外にないのは残念なところだ。またシェアで勝るコンシューマ版が同時発売されたせいか,PC版のオンラインマルチプレイは残念ながら大盛況ではないように見受けられる。まあ筆者も四六時中チェックしたわけではないため,たまたまピークの時間帯を外してばかりいるだけなのかもしれないが……。
さて,いくつかツッコミどころはあるものの,原作の指輪物語および映画版のファンなら本作をかなり楽しめるだろう。というのも,有名な登場人物に扮したり,あるいは頭部によじ登って巨大生物を瞬殺したり,バリスタやカタパルトも使った戦い方も試せたりと,さまざまな点で「なるほど,あの場面はこういう感じなのか」と実感できるからだ。
今までは映画版をもとに頭の中で補完するしかなかった原作/映画の戦闘シーンを,ゲームなりのアレンジが施されているとはいえ,こうして追体験できるのは大変面白い。
また日本の多くのゲーマーにとって,こうした剣と魔法のファンタジーをベースとする世界観は,例え指輪物語を知らなくとも馴染みやすいのではないだろうか。操作が一般的で難しくない点を踏まえても,PC版,コンシューマ版含めて日本語版の発売にも期待したい。
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