インタビュー
新ポータル「55Shock!」で提供される,「エクストリームファイター」&「Fun! Fun! Buggy!」とは?
このオープンにあたっての55Shock!の謳い文句は「日本最安値」というもの。オンラインゲームポータルとしては後発となるわけだが,昨今の日本のオンラインゲーム市場を見るにあたり,なぜ今このタイミングでのオープンなのか? そもそも何を基準に最安値? という疑問は尽きない。そこで,これに対する回答を得るべくインタビューに臨んだ。
その際,サービス予定の「エクストリームファイター」「Fun! Fun! Buggy!」の2タイトルについても興味深い話を聞くことができたので,まずはそちらを紹介しよう。
なお,この2タイトルについて話してくれたのは,ハイファイブ・エンターテインメント 代表取締役 CEO 澤 紫臣氏と,ショックウェーブ エンターテインメント メディア部 マネージャー 岡山博紀氏だ。
「エクストリームファイター」はカジュアルな対戦格闘
本日はよろしくお願いします。
まずはエクストリームファイターについて,概要から説明していただけますか?
澤 紫臣氏(以下,澤氏):
ハイファイブが以前から手がけている日中韓の国際分業の一つとして開発しているオンライン対戦格闘ゲームです。中心となっているのは,韓国のGame2Joyになります。当然,海外各国でのリリースも計画されていますが,まずは日本でお披露目という形で,当面は55Shock!の1タイトルとしてサービスを開始します。運営担当は,ソリッドネットワークスさんです。
4Gamer:
Game2Joyというのは耳慣れないデベロッパですが。
澤氏:
実は僕も出会うまでは知らなかったんです(笑)。韓国ではゲーム開発人員が流動的ということもあり,他社での開発経験のあるエンジニア達が,さまざまな苦労を乗り越えながら,このゲームを完成させるべくずっと頑張ってきたみたいですね。
4Gamer:
そんなチームに澤さんが出会ったんですね。
澤氏:
ええ。韓国のオンラインゲーム市場が飽和して新たな成功を掴みにくくなっている中でも,「ゲームで一旗挙げてやろう!」と考えている人達がけっこういるようで,彼らもそのうちの一組です。
4Gamer:
では,エクストリームファイターとは,具体的にどういったタイプの対戦格闘ゲームなのでしょうか?
澤氏:
こちらのムービーをご覧ください。
このとおり,オーソドックスな3D対戦格闘ゲームです。「鉄拳」などをイメージしていただければいいかと。
4Gamer:
そういえば,ちょうど先日,ダレットの「ストリートファイター オンライン マウスジェネレーション」がオープンβサービスを開始しましたね。
澤氏:
ああいったオンラインゲームに特化するにあたっての大胆なアレンジはないですね。エクストリームファイターは,往年の対戦格闘ゲームタイプで,殴り合い蹴り合いで勝負がつきます。ただ,ゲーム自体は非常にカジュアルなものを目指しています。
4Gamer:
当面はキーボードで操作することになりますよね。
澤氏:
ええ,パッド対応も検討しています。日本での展開にあたっては,当然気にしていきたい部分ですよね。
4Gamer:
実はエクストリームファイターによく似た韓国産のオンラインゲームを,東京ゲームショウで試遊したことがあるんです。それは「バーチャファイター」より「鉄拳」っぽい操作体系が採用されていましたが,エクストリームファイターはどちらのタイプですか?
澤氏:
鉄拳タイプで,両手両足を使った打撃技のほか,投げ技もあります。まだ開発バージョンなので中途半端な部分もありますが,技自体はコンボも含めてかなり充実してますよ。
4Gamer:
対戦は1対1だけですか?
澤氏:
開発途上ですが2対2や3対3も用意しています。チーム編成やマッチングなどについては,今後のαテストなどで検証しながら作り込んでいく予定です。
αテストは8月実施予定。ただしあくまでも“テスト”
4Gamer:
55Shock!の発表会では,αテストを2008年夏に開始するとのことでしたよね。
澤氏:
ええ,8月にはやりたいと考えています。ただ,現時点で7体のキャラクターがいるんですが,αテストでどこまで公開するかは未定です。ゲームとしてはロビーがあって,最低限ルームを立てて1対1の対戦ができるくらい……にはなる予定です。
4Gamer:
本当の意味でのテストを,最低限の内容で行うというイメージですね。
韓国などで稼働実績のあるタイトルではないですからね。最近ではテストと銘打っていても,ほぼ完成品でないと受け入れてもらえないという状況になっています。とくにカジュアルゲームはプレイに慣れるまで何時間もかけてジックリやり込むものではないですから,未完成の状態で1〜2回対戦しただけで「なんじゃこりゃ」という話になってしまいかねません。結果としてマイナスの話題ばかりが先行してしまうのも,こちらとしては不本意なんですよ。
4Gamer:
確かに,メーカー側が純粋なテストのつもりで行っていても,プレイヤーは完成品のゲームで遊ぶようなつもりで臨んでしまってがっかりするような傾向はありますよね。事前の意思疎通がうまくできていないというか。
澤氏:
とくに対戦格闘ゲームですと,ラグなども大きな問題になりますからね。その部分のデータを取りたいので,“あくまでもαテストです”というところは,ちゃんと伝えていくつもりです。ただやっぱり,「まだこれだけしかできていないのか」といわれてしまうのかなぁと思うと,ちょっと怖いですね。
4Gamer:
それにしても,対戦格闘ゲームはプレイヤーのPCや通信の環境によってラグなどが発生しやすいように思うのですが,エクストリームファイターではこのあたりの課題をどうやってクリアするんでしょうか。
澤氏:
キャラクターの手足が大きかったりということや,ある程度大味なモーションもあって,体感的な重さや遅さはある程度ゲーム側でラグを吸収できるように考えています。それでも回線の問題やPCスペックの差など,ラグの要因になるものはいろいろありますから,αテストで検証します。
4Gamer:
日本で対戦格闘ゲームというと,コンマ1秒を争うようなプレイヤーも珍しくないのですが。
澤氏:
ええ,正直見た目も含めて鉄拳を想起させますから,当然そういうプレイ感を期待する方もいるでしょう。でも,カジュアルゲームであるという前提に立つと,そういうストイックさを求められるゲームは,食い合わせが良くないかなと思ってます。
4Gamer:
対戦格闘ゲームって,猛者ばかりがしのぎを削り合ってるイメージが強くて,初心者にとってハードルが高くなっていますからね。
澤氏:
例えばMMORPGですと,クリックするだけで遊べるというのはインタフェースの革命だったと思うんですよ。RPGをキャラクターチャットにしてしまって,その結果,誰でもプレイできるようになった。それくらいのことが格闘ゲームに起きてもいいと考えているんです。ただ,ゲームデザイナーとしてもきちんとした格闘ゲームを作りたいと思っているのは当然です。それと同時に,裾野を広げる可能性も考えていきたいんです。
新たな広告配信システムを利用した展開も……?
4Gamer:
ビジネスモデルについては,どういった形を考えていますか?
基本的にはアイテム課金制です。ただ,アイテムを買ってなんぼというゲームではない,ということは理解しています。どんなに格好いい衣装を買っても,結局は自分と対戦相手にしか見えないですからね。その意味では,ダレットさんがギャラリー機能などを上手に使っているなあと感心しています。まあ,エクストリームファイターでは,アイテムを売りこそすれ,それだけで商売になるとはあまり考えていません。
4Gamer:
ほかの収益手段を考えている……と?
澤氏:
ええ。ショックウェーブさんや,運営のソリッドネットワークスさんと相談しながら進めています。具体的にはまだ確定していないんですが,例えば何か大会を企画したとします。その参加権をアイテムと組み合わせて販売するようなアイデアも出ています。ゲームを提供するポータルさんによって,少し形態を変えることもあるでしょうね。
4Gamer:
少し詳しく教えてもらえますか?
澤氏:
今後はポータルさんも,スタンダードなアイテム課金だったり,月額課金で複数のカジュアルゲームをパックにしたり,あるいは完全無料で広告収入だけでやっていったりと,さまざまな形態が登場すると思うんですよ。そうした場合に,柔軟に対応できるようにしておきたいと。エクストリームファイターは,従来タイトルのように,開発済みのものを輸入してきただけではないですから,仕様を追加したり新しい販売形式を導入したりしやすいので,そこの強みを活かしたいと考えています。
4Gamer:
ポータルの収益モデルに合わせて,柔軟にゲームを変えていくということですか。
そういえば御社は,ゲーム内広告にも熱心ですよね。
澤氏:
はい。以前からいろいろチャレンジをしていて,痛い目も見てきました(笑)。まだ未定の部分が多いんですが,エクストリームファイターでは新たな広告配信システムも実装可能です。
4Gamer:
どんなシステムなんですか?
澤氏:
以前は,単にテクスチャを企業ロゴのものなどに置き換えるだけでも,いちいちプログラマーの手を煩わせていました。なので,そうした作業からクライアントのチェックを経てゲーム内に実装するまで,2週間程度必要だったんです。ところがこの新システムですと,ホームページの更新と同じくらいの作業で済み,事前に掲載期間を設定しておけば自動的に切り替わったりもします。3Dゲームですと,プレイ時の角度によって見えたり見えなかったりということもありますが,それもカウントできます。
4Gamer:
これまでのデメリットを克服した形になるんですね。
澤氏:
ええ。ただ,従来のオンライン広告のようにページビューやインプレッション,クリックレートなどで効果測定してしまうと,日本のオンラインゲームはプレイヤー数などの問題で広告媒体として成立しないとも思うんですよね。そこで,スポンサーを募って冠大会を開催してゲーム内にスポンサー広告を入れたり,最近流行のプロダクト・リプレイスメントで何か具体的な商品をゲーム内に登場させたり……といった形での展開を考えています。とくにショックウェーブさんは,そうした広告に関して専門的にやられてきていますから,もう少しブラッシュアップした形で提案していこうかと。
4Gamer:
新たなビジネスモデルも含め,ちょっと変わった展開を期待できそうですね。それではαテストの詳細発表を楽しみにしています。
「Kart Rider」対抗作として生まれた「Fun! Fun! Buggy!」
では続いて,Fun! Fun! Buggy!について聞かせてください。
岡山博紀氏(以下,岡山氏):
このタイトルは韓国のWINDY SOFTが開発し,ソリッドネットワークスが運営します。いわゆる「Kart Rider」クラスのカジュアルなレーシングゲームです。
4Gamer:
韓国ではすでにサービスされているんですか?
岡山氏:
WINDY SOFTはKart Riderの対抗作として,Fun! Fun! Buggy!を開発したんですが,戦略的な意味で,韓国や中国といったKart Riderがシェアを持っている地域ではなく,フランスやタイで展開しています。クオリティはKart Riderと比較しても遜色のないレベルになっていますよ。ちなみに各国でタイトルが異なりますので,Fun! Fun! Buggy! で検索しても引っかからないと思います。
4Gamer:
どうりで見つからないと思いました(笑)。
ゲーム内容も教えてください。
岡山氏:
こちらもまずは,ムービーをご覧ください。
このゲームのマルチプレイモードには,レース中にお邪魔アイテムを拾って対戦相手同士で足を引っ張り合う「アイテムバトル」と,コース取りとテクニックだけで競い合う「スピードバトル」があります。それぞれに個人戦とチーム戦があります。スピードバトルは最大16人参加可能で,カジュアルゲームとしては最大クラスになります。
4Gamer:
なるほど。大人数プレイが一つの売りであると。
岡山氏:
1位のプレイヤーがゴールするとカウントダウンが始まります。ゼロになるまでにゴールできなかったプレイヤーにはポイントが与えられないシビアなシステムですが,その分スピーディーな展開になり,みんながゴールするまで待たされるようなことはありません。
またロビーがちょっと面白い仕様になっていまして,チャットで絵文字,いわゆる「^_^」や「^^」などを入力すると専用のエモートが発生します。まだ仕様を把握しきれていないのですが,世界的にも対応しているようでして「:)」などでも発生します。
4Gamer:
戦略的なタイトルだけに,随所に国際的な部分が仕込まれていると。
岡山氏:
はい。さらに一人プレイ要素が充実しているのも特徴で,「ライセンスモード」と「ゴーストモード」があります。前者はチュートリアルで,後者は自分のランキングと比較して一つ上の順位のプレイヤーのゴーストと擬似対戦できるモードです。ゴーストに勝てば,ランキングも一つ上がるわけです。いわゆるやり込み要素で,私個人的にもお勧めのモードです。やり込みばかりにプレイヤーが集中して,対戦が盛り上がらなくなったらどうしようという心配もあるのですが(笑)。
4Gamer:
ゴーストは,自由に選択できないのですか? 例えば世界1位のプレイヤーのゴーストを呼び出したりとか。
岡山氏:
今はできませんが,要望があれば検討します。自分より少し上手な人に勝っていくことで,徐々に上達してランキングを上げるのが主な目的なんですよ。
4Gamer:
コースの種類にはどんなものがありますか?
岡山氏:
森など9つのテーマがあり,それぞれ主にスピードレース用のオーバルタイプや,カーブの多いテクニカルタイプなど4パターン程度のコースが用意してあります。
「Fun! Fun! Buggy!」はインターネットユーザーもターゲット
レーシングゲームというとスピード感や爽快感も重要ですが,何かポイントはありますか?
岡山氏:
ドリフトから派生するミニターボが大きなポイントとなります。成功したときの爽快感はもちろんですが,テクニカルなコースではこれを使いこなせるかどうかで勝負は大きく変わります。
4Gamer:
その他の操作についてはどうでしょう? 開発が韓国ということで,恐らくキーボード主体かと思うのですが。
岡山氏:
カーソルキーを中心とした,比較的理解しやすいものです。Shockwaveのお客様も対象としていますから,難しい操作は分からずともとりあえずカーソルキーをガチャガチャやっていれば何となく遊べて,次第に慣れて上手くなっていく感じですね。パッドについては検討段階です。
4Gamer:
キャラクターやバギーの組み合わせで,コースの得手不得手などはあるのでしょうか?
岡山氏:
キャラクターは4種類用意されますが,見た目の違いだけで能力差はありません。反面,バギーの性能差は大きいです。バギーはかなりの種類があるのですが,当面は限定した4種類だけを実装します。バランスを見ながら,ニーズのある所を実装していこうかと。またキャラクターとバギーは衣装などのアイテムでデコレーションすることができます。
4Gamer:
バギーは多数用意されるとのことですが,キャラクターはどうでしょう? 追加の予定はありますか?
当然あります。また,実はキャラクターのデザインにはこだわっている部分があるんです。というのもオンラインゲームでは,プロモーションにアニメ調といいますか“萌え系”のキャラクターを使うことが増えていますよね。
4Gamer:
ええ,実は記事でもそういったキャラクターを掲載したほうがいいかなと思うことがあります。
岡山氏:
私自身もそちら寄りの人間ですので,以前はそれが当たり前だと考えていました。ところがShockwaveでサービスしているゲームの場合,いわゆる萌え系よりも,むしろUS直輸入といった感じのカトゥーン系の方が受けがよく,クリックされる回数に実に10倍くらいの差がついている事実があるんです。
4Gamer:
ほう,ちょっと意外ですね。
岡山氏:
というのはShockwaveの場合,ユーザーの5割以上が女性,さらにその中心が主婦なんですよ。すなわちオンラインゲームプレイヤーではなく,インターネットユーザーに近い存在なんです。そういった方々に萌え系はアピールしないんですよ。
それを踏まえて,Fun! Fun! Buggy! でもカトゥーン系のキャラクターでハードルを下げ,コアゲーマーよりはインターネットユーザーにアピールする戦略を取っています。
4Gamer:
ビジネスモデルは基本プレイ無料のアイテム課金制ですよね。
岡山氏:
はい,現金で購入していただいたゲーム内ポイントを使って,衣装などのアイテムを購入していただく形になります。またレースで上位に入るともらえるポイントでも購入できます。
4Gamer:
現金で購入したポイントと,ゲーム内で稼いだポイントで購入できるアイテムに差はありますか?
岡山氏:
それは現在検討中です。
4Gamer:
アイテムによってバギーの能力は変わりますか?
岡山氏:
変わるものと変わらないものがあります。ただゲームの仕様上,バギーの能力ではなくレース中に拾ったアイテムが勝敗を決める部分も大きいですから,バランスが崩れるような心配はないと思います。
4Gamer:
それでは今後のスケジュールについて教えてください。
岡山氏:
7月2日の55Shock!スタートと同時にオープンβテストを開始します。そのあと調整がつき次第,正式サービス開始となります。誰でも簡単にプレイできますので,ぜひ試してみてください。
4Gamer:
本日はありがとうございました。
岡山氏によれば,同じカジュアルといっても55Shock!としてはエクストリームファイターはどちらかというと従来のオンラインゲームプレイヤー向け,Fun! Fun! Buggy!はインタビュー中にもあるようによりライトな層を対象にしているそうだ。
多くの人のニーズを満たさなければならないゲームポータルとして,そうした単純なゲームジャンルに拠らないカテゴライズは必要不可欠。このインタビューでは,より具体的にどんなプレイヤーを対象に,どのようなビジネスを展開していくつもりなのかといった方向性についても,ところどころで語ってもらえた。
ただ,実際に55Shock!のローンチ時にプレイできるタイトルは,Fun! Fun! Buggy!と,既存タイトルであるMMORPGの「ストラガーデンNEO」の二つだけ。正直なところ,スタートダッシュをかけるには,少々寂しいラインナップのように思える。あとは,このラインナップが,これまでいわゆる“オンラインゲーム”をプレイしてきた人々ではなく,Shockwaveのサービスを利用してきた人々の目にどのように映るのかによって,当面の成否が問われることになるのかもしれない。
さて岡山氏からは,インタビューの本題であった55Shock!の戦略についても話を聞いている。そちらは別の記事で掲載しているので,興味のある人は併せて参照してほしい。
「55Shock!」
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エクストリームファイター
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