インタビュー
世界初のAAAクラスを実現するフリープレイMMORPGを作りたい「MysticStone」開発者インタビュー
このゲームを開発したRunewalker EntertainmentのPresidentであるJohn Tang氏が来日した際にインタビューの機会を得たので,MysticStoneがどのように作られてきたのか,これからどうなっていくのかなどについて話を聞いてみた。今後のコンテンツ展開について興味深い話を聞けたので,プレイヤーの方はぜひご一読を。
本日はよろしくお願いいたします。
まず,開発の経緯から教えてください。このゲームを作ることになったきっかけはどういうものだったのでしょうか。
Tang氏:
昔から仲間内で「EverQuest」や「Dark Age of Camelot」などのMMORPGをプレイしてしていたのですが,一つ自分達で理想のゲームを作ろうじゃないかということになったのがきっかけですね。
4Gamer:
Runewalkerは,これ以前にもゲームを作っていたのでしょうか。
Tang氏:
Runewalkerとしては,MysticStoneが初めての作品です。ただ,社員は台湾の大手ゲームメーカーでずっとゲームを開発してきていました。
4Gamer:
では,なぜ台湾の企業の作品なのにドイツからサービスされるようになったのですか? これはかなり珍しいことではないかと思うのですが。
このゲームをドイツのゲームショウで展示しているときに,ドイツで運営を行っているFrogstarの社長がえらく気に入ってくれまして,さっそくサービスしたいという話になり,そちらの展開が先になってしまいました。
もともと台湾ではGamaniaからサービスされる予定で進めていたのですが(現在第2次クローズドβテスト中),Gamaniaは非常に多くのタイトルを扱っている会社ですからサービスのタイミング待ちでドイツのほうが先になってしまった形です。
4Gamer:
なるほど,MysticStoneではゲームのテイストがかなり洋ゲーMMORPGを意識しているように思えるのですが,これはドイツでのサービスが決まったからですか。それとも最初からそうだったのでしょうか。
最初から全世界で受け入れられるものを作ろうという方針で制作をしていました。
4Gamer:
MysticStoneは,アジア系のオンラインゲームにしては珍しく,世界中のいろいろな地域でいきなりサービスを開始していますよね。
Tang氏:
英語圏を一つの国として数えて,現在22か国でサービスされており,全部合せると200万人以上の会員数になっています。正式サービスされているのは,そのうち8か国です。ランキングでいうと,クライアントパッケージの発売から2週間連続でamazonのゲーム売り上げ1位になっていました。
4Gamer:
各国のプレイヤーの評判はどうですか。
Tang氏:
そうですね。フリーのゲームなのに有料ゲームと同じようなシステムが揃っていたり,すべてのシステムが大雑把ではなくて細かいところまで作ってあると,すべての国から同じような評価をいただいています。
4Gamer:
このゲームを作るに当たって参考にしたゲームなどはありますか?
Tang氏:
どれか一つのゲームを参考にしているわけではありません。いろいろなゲーム,Ultima Online,EverQuest,Dark Age of Camelot,World of Warcraft,Final Fantasy XIなど,これまでにプレイした数多くのゲームから,どこがよくて,どこを改善できるかなどのアイデアを出し合って作ったものになります。
4Gamer:
このゲームを作るに当たって,基本方針といいますか,なにか心がけていたようなことはありますか?
基本方針としては,新しいゲームに慣れてないプレイヤーでも,すぐにこの世界に入り込めるような要素と,コアプレイヤーでも長くゲームを楽しめるような深みを持たせることの両面を意識して開発していました。
4Gamer:
新規プレイヤーがゲームに親しみやすくという部分で具体的にやったことはなんでしょうか。
Tang氏:
操作性を重視しました。例えば,WoWではキーボードを使わないとプレイできませんが,MysticStoneでは,マウスだけでも操作できるように工夫してあります。PCゲームに慣れてない人でも簡単に遊べるように心がけました。また,一人でも遊べるような要素も入っています。レベルの低いプレイヤーだとダンジョンは難しいのですが,一般フィールドではほとんどソロで大丈夫なようになっています。
4Gamer:
では,コアユーザー向けのコンテンツとしてはどのようなものを用意していますか。
Tang氏:
コアプレイヤー向けには,やはりダンジョンですね。ダンジョンにもいろいろレベルがあって簡単なものと難しいものがあります。難しいクエストを達成しないと入れないダンジョンなどもあり,もちろんそういったダンジョンには強いモンスターがいますので,コアプレイヤーには,やり甲斐のあるコンテンツです。RAIDコンテンツも随時追加しています。
また,装備強化もコアプレイヤー向けの要素です。職業やプレイヤーの考え方によって,さまざまなルーンの組み立て方が可能ですので,プレイヤー独自の装備が作れます。
ギルドキャッスルやマイハウスシステムなども,どちらかといえばコアプレイヤー向けかもしれません。自分の好みで部屋を飾りつけて友達を誘って遊んだりといった遊び方も人気があります。
4Gamer:
ドイツや台湾ではハウジング機能はどういう評判なのでしょうか。
かなり人気がありますね。プレイヤーの少なくとも5%くらいは誰かのルーム内にいるという結果が出ています。これは24時間通じて変わりません。
とくに女性のプレイヤーにルームシステムは人気がありますね。ルームシステムでいちばん人気があるのが家具ですね。とくにプレイヤーの装備を飾ったり,まとめて着替えたりすることのできるマネキンが非常に好評です。珍しい装備を友達に見せたりするのに便利なので,よく使われています。
ハウジングにはかなり人気が集まっていますので,さらに遊べるものにするために現在もいろいろな開発を行っています。
家の中で勉強できるというのが,なかなか新しいと思いました。
Tang氏:
部屋の中で勉強した分は,オフラインでも経験値として累積できるようにしています。
4Gamer:
家の中のアイテムでBuff効果がつくものがありますが,あれは生産系スキルに関係したものしかないのでしょうか。
Tang氏:
残念ながら,それについてはここではお話しできません。まだ仕様の固まっていないものですから,現時点での言及は避けたいと思います。
4Gamer:
分かりました。それ以外でハウジングに追加予定だという機能について教えてください。
Tang氏:
例えば,部屋の中にメイドさんがいますよね。これをもっと遊べるものにすることを考えています。メイドさんを選択できるようにしたり,外見も変更できるようにしたり,一緒に遊んだりできるようなインタフェースを作っています。メイドさんと仲よくなると,メイドさんからBuffをもらえたり,プレゼントをもらえたりすることもあります。
4Gamer:
なるほど,そっち系できましたか(笑)。
Tang氏:
実は社員の中に日本のゲームが好きな企画担当がいまして,彼の発案によって進んでいる企画です。
ゲームの特徴:デュアルクラスとそのバランス
ゲームの特徴としてデュアルクラスシステムがありますが,これはどういった経緯でできたものなのでしょうか。
Tang氏:
これも企画メンバーのなかに,FFXIが好きなのがいまして。FFXI以外にもD&DやGuild Warsなどのシステムを参考にしつつ,作られました。これらのゲームを含め,いろいろなシステムを検討した結果,我々の改良案として導入されたのがエリートスキルのシステムです。
4Gamer:
すでにサービスされている国で人気のあるクラスの組み合わせとかはありますか?
Tang氏:
クラスの組み合わせには,それぞれ特徴があり,現時点ですべてのパターンのキャラクターが確認されています。初心者にも簡単なのはウィザードとプリーストの組み合わせですね。ナイトとプリーストの組み合わせも人気です。
しかし,どのクラスの組み合わせがいちばん強いということはありません。まだ完璧なバランスとはいえないのですが,とくにどの組み合わせが有利,不利というのはほとんどありません。
全体にMelee系は,ちょっと苦しい気もしますが。
Tang氏:
Melee系の場合は装備次第ですね。装備を見ないことにはなんともいえません。
例えば,スカウトは基本的に弱いと思われがちなのですが,このクラスは,対シングルターゲットについていえば最強のクラスに成長します。しかし,適切な使い方が分からないと強くなりません。ローグは,とても恐ろしいクラスです。透明になって後ろに回り込み,大ダメージを与えます。とても人気がありますよ。
ウィザードは簡単ですのでプレイヤーも多いのですが,ダメージを喰らいやすいので,とくに高レベルのダンジョンでは気をつけないとすぐに死んでしまいます。その代わりウィザードの瞬間最大ダメージは,全クラスで最強になっています。レベルの高いダンジョンに入ると,クラスの特徴がよりはっきりするようになってきますよ。職業のバランスは,現在も少しずつ改善を続けています。
4Gamer:
なるほど。ただ,Melee系のクラスは,サブで使用すると特徴が出せていないような気がします。武器に依存したスキルが多いですので,通常スキルがほとんど使えなくなるのは痛いですよね。
そういうことへの対策を兼ねたものがエリートスキルです。エリートスキルの組み立ては,このゲームでいちばん大事な特徴になっていますので,常に調整を続けています。また,本業のスキルをもっとサブでも使えるようにするという動きもあります。ただ,その場合,非常に強くなってしまう組み合わせなども出てきますので慎重に作業しているところです。
現在でも,すべてのクラスの組み合わせについてプレイヤーの行動を観察しています。そのクラスの組み合わせが,実際にどのように遊ばれるのかをよく調べて調整方針を決めています。
新種族エルフは,どんな特徴を持つ?
ドイツで行われた大型アップデートについてお聞きします。エルフを追加した評判はいかがですか。
Tang氏:
最近ドイツで大型アップデートを行ったわけですが,アップデート当日には,ダンジョンから人が消えて,半分以上のプレイヤーがエルフの街にいました。非常に話題になっています。
4Gamer:
エルフは別のスタートポイントなんでしょうか。
Tang氏:
そうです。また新しいビギナーズエリアが追加されています。
4Gamer:
エルフでやっていると,これまでの人間の種族とはすぐに会えるのでしょうか。
Tang氏:
すぐには無理ですが,レベル12になると人間の街に移動できるようになりますよ。
4Gamer:
では,人間側からエルフの街に行くことはできますか?
Tang氏:
普通には無理ですね。ただし,エルフの人にワープゲートを開けてもらうなどをすれば移動は可能です。
なるほど。マップとしてはつながっていないんですね。
Tang氏:
はい。エルフの街は島にあるという設定ですので,人間の世界とは直接のつながりはありません。
4Gamer:
新しく増えるクラスについて教えてください。
Tang氏:
ドルイドとウォーデンですね。ドルイドは,攻撃能力と治療を半々にしたプリーストのような感じです。ウォーデンはペットクラスです。
4Gamer:
これらのクラスは,エルフ専用のものですか?
Tang氏:
はいそうです。
では,逆にエルフにはなれないクラスというのもあるのでしょうか。
Tang氏:
はい。エルフはプリーストとナイトにはなれません。
4Gamer:
エルフ全体の特徴のようなものはありますか?
人間と違うのは,いま説明したクラスの選び方ですね。あとは見た目です。プレイヤーからの要望では,エルフ専用のスキルを作ってほしいというものが挙がってきていますので,現在それも検討中です。
4Gamer:
基本的なパラメータは人間と同じですか?
Tang氏:
現状では同じです。
4Gamer:
あとは,エルフを選ぶと,ハウジングでのメイドさんもエルフになっていたりするんですか。
Tang氏:
もちろんです。
今後は対人戦コンテンツも充実する
すでに22か国で動き出しているということですが,プレイヤーからの評判としてはどの部分が評価されていますか。
Tang氏:
主にPvEの部分ですね。ダンジョンなどは評価が高いです。PvPシステムはまだあまりできあがっていません。今後半年でPvPシステムを拡充していきます。
4Gamer:
PvPには,どんな形態があるのでしょうか。
Tang氏:
基本的に3種類に分かれます。
現在できあがっているものは,ミニ戦場のシステムでパーティ単位での戦闘を行うものです。6対6ないし,12対12までの戦闘ができます。
次に,ギルド対ギルドでの戦闘を行うものですね。ギルド同士で対戦に同意すると,対戦マップに転送されます。これは攻城戦のシステムになっており,来年頭くらいには実装する予定です。
最後のものは,サーバー対サーバーの対戦を行うものです。
4Gamer:
いきなりサーバー間戦争ですか。これは専用サーバーで行うものでしょうか。
Tang氏:
基本的に,プレイヤーにとっては,大きな戦場に移動したという程度で,サーバーを移動したと意識することはないでしょう。
4Gamer:
これは何人くらいで戦うものなのでしょうか。
Tang氏:
マップはいくつかのエリアに分かれています。1エリアに200〜300人という感じで,マップ全体では2000人くらい入れるものになっています。そこで3勢力が戦いを繰り広げます。
4Gamer:
日本のサーバーはまだ二つしかないのですが,2サーバーでも大丈夫なものなのでしょうか。
サーバー間戦争とはいっても,実は一つのサーバーでも大丈夫な仕様になっています。この戦場にはいくつかのエリアがありますので,人数が少なければエリアを限定してやることになると思います。
4Gamer:
その場合,3勢力はどのように分かれるのでしょうか。
Tang氏:
ワールドの場所とは無関係に3種類のNPCのファクションがあります。プレイヤーは,ストーリーの中で自分に合う団体を選んで,そこのファクションを上げていくことになります。ファクションには傭兵の団体など3種類のファクションがあります。
ゲームの背景ストーリーがありまして,この世界はルーンによって生まれてきました。この戦いの部隊になるのは,新しく発見された場所です。この戦場は,いろいろなワールドにつながっています。例えば,新発見された大陸のようなものだと考えてください。三つのファクションの陣営は,それぞれが新大陸で覇を唱えたい。そこで三つ巴の戦いを行うわけです。
4Gamer:
やっと分かりました。ファクションごとの3勢力に属したプレイヤーがサーバーを超えて集まって戦える場所ということですか。こういった構成の対戦システムも珍しいですね。
Tang氏:
はい。
戦場はすでにできていますので,これからギルド対ギルドを実装し,サーバー間戦争に取りかかります。
もう一つの楽しみ:ミニゲーム
このゲームでは,本編のゲーム以外にミニゲームも多く作られているようですので楽しみにしているのですが。ミニゲームについて教えてください。個人的には,タイムアタックみたいなダンジョンが気になっているのですが。
Tang氏:
まず,マラティナというNPCのところでゲームができます。ミニゲームを遊んでいると装備や薬などのアイテムがもらえるものです。ほかにもいろいろなゲームがあり,これからタワーディフェンス系のミニゲームも実装されます。
4Gamer:
ミニゲームはどういう目的で作られたものなんでしょうか。
Tang氏:
ミニゲームを導入したのは,プレイヤーに毎日新鮮な気持ちで楽しんでほしかったからです。
Tang氏:
(馬に乗って競走している場面で)これはカートゲームみたいな感じのミニゲームです。
4Gamer:
これは分かりやすいですね。
Tang氏:
これはチェスボードのようなものです。
4Gamer:
(?)なんか,よく分からないものも多かったのですが(笑),日本での実装を楽しみにしています。
では,最後に日本のプレイヤーに向けてメッセージをお願いします。
我々が作ったRunes of MagicをMysticStoneとして日本でサービスしていくことができて嬉しく思っています。我々はこのゲームを,深みのあるゲームにしていこうと努力しています。プレイヤーに,ほかの無料ゲームとは違う体験を提供できるように頑張っていますので,ぜひ楽しんでいただけるように望んでいます。我々の目指すのは,「World's first AAA Free to play MMORPG.」です。ほかの無料ゲームとは一味違った展開に期待してください。
4Gamer:
本日はありがとうございました。
日本で正式サービスが始まり,ユーザーレビューを見ても,クラス格差がなくていいという意見が非常に多いのだが,個人的に(一応全クラス)やってみての感想だと,やはり格差はあり,もう一歩なんとかならないのかと感じている部分もあったので,そのあたりは重点的に聞いてみている。
スキルが武器に依存していることもあったり,スキルの発動条件が異なるなどで,サブクラスにすると,プリースト,ウィザード,ローグ,スカウトは,
- 回復ができる
- 魔法が使える
- 両手とも武器が使える
- 弓が使える
といったクラスごとの特徴を出せないこともないのだが,ナイトやウォーリアーはちょっと寂しい。ナイトがプリーストをサブにすると,強力なことこの上ないくらい強くなるのだが,プリーストがナイトをサブにしてもたいしたメリットがないというのが実情だ。
ナイトをサブにすると,プレートとはいかなくてもチェイン装備くらいを着けて,ホーリーサインを刻みながら魔法を使うウィザードがいてもいいんじゃないかとか,ちょっともったいない思いが強かったのだ。
このあたりはエリートスキルで調整するほか,まだスキル自体も調整を続けているということで,今後に期待しよう。初の拡張パックに相当するThe Elven Prophecyの大型アップデートも,年内には日本に登場してくるようだ。ドイツ版の公式サイトを見ても,コンテンツはかなり速いペースで追加されているので,今後が楽しみなゲームである。
- 関連タイトル:
MysticStone -Runes of Magic-
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